絶対王政を築いたイギリスの国王
映画の主人公にされることの多いイギリスの王様と言えば『ヘンリー8世(Henry VIII 1491–1547)』です。
彼の残虐性は有名ですが、その一方で彼はローマカトリック教会から決別し、イギリス国教会を設立し、イギリス国王として最初に絶対王政を築いた人でもあります。絶対王政とは『王様のいう事は絶対に従わなければならない』という国王が絶対的な権力を持つもので、以後清教徒革命(1642-1649)、名誉革命(1677-1689)が起こるまでのイギリスにおいて継承され続けました。
彼は近親者を次々に処刑していったことでその残虐性が世に知れ渡ることにもなりました。
なぜ絶対王政が形成されたのか。
ヘンリー7世の次男として誕生したヘンリー8世は、兄のアーサーが早くにこの世を去ったことによって王位につきました。彼はとても血統にこだわり、自分の地位を継承する王子は直系男子であることに強いこだわりを持っていました。
ところが最初の妻の間には男子を儲けることが出来なかったため、離婚をしたかったのです。そのころ、イギリス全土を取り仕切っていたのはローマカトリック教会で離婚はご法度でした。
そのため、ヘンリー8世はローマカトリック教会から離脱し、自ら英国国教会を立ち上げ、自分がそのトップになり、絶対王政を形成したのでした。
当時のイギリスはローマカトリック教会が強い力を持っていましたが、ヘンリー8世がイギリス国教会を設立し、ローマカトリック教会が所有していいた土地を没収し、国民に分け与えたりしたため、国民から強く支持される一面もあったのです。
※現在イギリスではヘンリー8世によって、時間を知らせるだけのベル塔を残して、破壊されたローマカトリック教会の聖堂跡などを見ることが出来ます。
ヘンリー8世の妻たち
ヘンリー8世には6人の妻がいましたが、男子に恵まれたのはエドワード6世たった一人でした。
1番目の妻:キャサリン・オブ・アラゴン(1487-1536)離婚 娘メアリ1世を出産
ヘンリー8世の兄であるアーサーの妻(当時14歳)でしたが、アーサーの死後、ヘンリー8世の妻となりました。ローマカトリック教会では、兄の妻との再婚は認められるものではありませんでしたが、アーサーとの夫婦関係はなかったとし、無理やり許可を得て結婚をしたのでした。
この結婚に反対をしていた大法官(官僚で最高位)トマス・モア(1478-1535)は後に斬首刑に処せられました。
2番目の妻:アン・ブーリン(1507-1536)斬首刑 娘エリザベス出産
男子を産めなかったアン王女に激怒したヘンリー8世は、アン王女を罪人としてロンドン塔で斬首刑にしました。
※ウィンザー城では無罪であるにも関わらず処刑されたアン王女が首を膝の上にのせ亡霊となって出没するという噂は有名です。
3番目の妻:ジェーン・シーモア(1509-1537)産褥死 長男エドワード6世出産
男子を産んだことに感謝したヘンリー8世は6人の妻の内唯一ウィンザー城内の王室霊廟に葬ることを許可しました。
4番目の妻:アン・オブ・クレーブズ (1515-1557) 離婚
肖像画を見て気に入ったものの実際のアンを見て気に入らず、すぐに離婚。
5番目の妻:キャサリン・ハワード(1521-42) 処刑
2番目の妻のアン・ブーリンの従姉妹。不倫の罪で処刑。
6番目の妻:キャサリン・バー(1512-1548)
ヘンリー8世崩御後、かつての恋人であるトマス・シーモアと結婚
ヘンリー8世の後継者
エドワード6世(1537-1553)
3番目の妻であるジェーン・シーモアとの間の唯一の男子でヘンリー8世崩御ののち、後継者となりますが、王位に就いたときは9歳で、僅か15歳で病死してしまいます。
ジェーン・グレイ(1537-1554)
ヘンリー8世の妹の孫 メアリにより処刑(16歳)
王位継承10日目に最初の妻キャサリン・オブ・アラゴンとの間にできた娘であるメアリに王位を奪われたため、『9日間の王女』と呼ばれました。
メアリ(1516-1558)
ジェーン・グレイを始め、多くのプロテスタントの信者を処刑したことが、『血まみれメアリ』と呼ばれる所以です。
エリザベス1世(1558-1603)
メアリの崩御後王位を継承。エリザベス1世が王位を継承したこの時代が一番繁栄したと言われています。彼女は生涯独身をつらぬいたため、ヘンリーの父親であるヘンリー7世から始まったテューダー朝は彼女で終わりを告げることになりました。
まとめ
世界で最も長い歴史を持つと言われている、日本の皇室は桓武天皇(806年)から始まり、血族で継承されてきています。
イギリスは戦争によって勝利した国王に王位が与えられてきました。
そのため現在のイギリス王女であるエリザベス2世は国王ジョージ5世(1910年に王位に就く)から続くウィンザー朝の家系となります。
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