先生の負担減につながるか?「教員免許更新制」が廃止に(2022年5月)

「教員免許更新制の廃止」を盛り込んだ教育公務員特例法と、教育職員免許法の改正法が2022年の5月11日に参議院本会議で可決され、成立しました。これによって、10年に一回、講習付きの更新が必要だった「教員免許」が更新なく、無期限で使えるようになるそうです。


10年ごとに更新が必要だった「教職員免許」の更新が不要に!

もともと「教職員免許更新制」は2009年に「教員の質の確保」を目的に始まりました。現在の「教職員免許」は10年ごとに失効するので、期限前の指定の時期に講習を受けて免許更新しなければなりません。

しかし、この免許更新の制度には、「多忙な教員の講習受講の時間確保が難しい」、「教員免許保有者が、別の職業から教員に転職、復帰したい場合に障壁となる」、「産休・育休中の臨時教員を確保しにくい」、更新忘れによる「うっかり失効」など、教員不足や教員の負担を増長させてしまっている問題点がありました。

この件に関しては、以下の記事も合わせて参考にしてください。

教員免許の更新制が廃止へ 教員の「人手不足」は解消される?(2021年8月)

無期限となる「教員免許」で「教員の質」はどう保つ?

教員免許の更新時の講習受講を義務付けた現行制度は7月に廃止されます。

代わりに、新しい制度では、教員が自主的に研修を受ける形に移行するようです。教員の「資質向上」につなげるため、2023年度からは教員ごとの研修記録作成を、教育委員会に義務付ける制度を導入するようです。

教員ごとの研修記録を作成することで、研修を受ければ何でも良いというような状態は防がれるようですが、どのような研修メニューが用意されるのか、本当に有益な講習等を全ての先生たちが受けられるようになるのか、注目が集まります。

現場は更新制廃止を歓迎!現役教員の96%が更新制廃止に「賛成」

今回の教員免許更新制廃止について、「日本トレンドリサーチ」の調査によると、現役教員の96%が賛成しているようです。

教員目線から、「手続きの時間や費用などの負担が減る」「今は教員として働いていない人が復職しやすい」といった、教員の負担減を歓迎する声や、教員のなり手不足解消への期待の声も紹介されています。

しかし一方で、教員免許を持っていない人の半数以上は、更新制廃止に「反対」または「どちらかというと反対」と回答だったようです。

反対意見としては、子どもを持つ親の立場から「教員の質が下がりそう」であったり、「問題を起こした先生が簡単に復帰できそう」などの不安があがったりしていました。


▼画像引用元:日本トレンドリサーチ|【教員免許更新制度の廃止】「現役教員」の96.0%が「賛成」、一方で免許を「保有していない」方の57.6%は「反対」(外部サイト)

(運営元:株式会社NEXER https://www.nexer.co.jp

まとめ

このページでは、2022年7月から廃止となることが決まった「教職員免許更新制」についてご紹介しました。

昨年の2021年夏には、当時の萩生田文部科学大臣が「早ければ2023年には廃止したい」と表明していた教職員免許の更新制度ですが、予定よりも早く、末松文部科学大臣の下、2022年度中に廃止が決まることとなりました。

教育現場や、教員不足に悩む地方の政治家からも強い要望があった「更新制」が撤廃されることで、教員確保につながったり、教員の負担が減り、本来の業務に打ち込む時間を確保できるようになったりすることが期待されています。

しかし、一方で、教員の資質低下や、問題を起こした教員の復帰が簡単になるのではないか、といった懸念があることも指摘されています。

教員免許更新制に代わる、教育委員会による教員ごとの「研修記録の作成」の制度が、そのような不安や懸念を払拭するための新たな施策になるのか、注目されそうです。

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本記事は、2022年6月12日時点調査または公開された情報です。
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