夏休みは先生にとって「休み」なのか?
「いよいよ待ちに待った夏休み!」海水浴、虫取り、スイカ割り…子どもたちにとって、夏休みはとても楽しみなイベントで、いろいろな遊びをします。これはどの時代も一緒ですよね。
さて、それでは先生方も子どもたちと同様の夏休みの時間に、海水浴、虫取り、スイカ割り…ができるかといったら、実はそうではありません。
もちろん、先生方に夏休みが全く無いというわけでもありません。しかし、どのようなことを行っているのか、あまり世間には知られていないことが多いと思います。
そこで今回は、小学校教員目線で先生の「夏休み」について解説していきます。
多くの学校は「夏休み」に保護者との個別面談を行う
まずは、イメージのしやすい仕事から解説していきます。
それは、保護者の方々との「個別面談」です。
皆さんが子どもの時にもあったかどうか、覚えていらっしゃいますでしょうか?おそらくほとんどの地域で、夏休み序盤の時期に行われていると思います。
保護者の方々にとっても、子どもと同じ夏休みを取れるわけではありませんから、夏休み序盤の平日は、仕事をされていることも多いと思います。こうした中ではありますが、4月に入学・進級して以来、子どもたちがどのような様子であるかをじっくり伝えるという機会は、この夏休み序盤が最も良いタイミングであると考えられています。
個別面談は、1人あたり10分程度。保護者目線だと「たった10分なんて短い!」というのが率直な感想かもしれません。しかし、教師目線だと、もし担任で30人学級であるならば、10(分)×30(人)で300分、つまり5時間も面談時間がかかるという計算になります。
そうした中で、以下のようなことを考えなければなりません。
・保護者の方々の希望日時はいつか?
・希望日時を踏まえて、どのような順番で日程を組むか?
・どこで休憩時間を組むか?
・保護者はどのような話を聞きたいと希望しているか?
・希望を踏まえて、10分間でどこまで伝えるか
・保護者にも理解して頂きたい、子どもの課題をどのように伝えるか
・どのような成績をどこまで伝えるべきか
…細かく挙げればキリがありませんが、ざっと振り返ってみると、以上のようなことを考えているかなと思います。
もちろん、これは夏休み前にまとめていかないと、夏休み開始すぐの個別面談にも間に合いません。子どもたちが夏休み目前でワクワクしている時には、先生方はセカセカしていると言えるでしょう。
1年間を通して、保護者の方々と短い時間でも個別に話をすることは、教師にとってはなかなか無い機会です。この機会を活かして、保護者の方々と信頼関係を確実に構築していくことも重要です。
夏休み始めの教師にとっての大きなカベが、この「個別面談」と言えるでしょう。
経験年数・職務に応じて受ける「悉皆(しっかい)研修」
教員の業界用語として「悉皆(しっかい)研修」という言葉があります。これは、経験年数・職務に応じて受けなければならない研修のことです。
・1年目(初任者)研修
・3年目(初任者)研修
・5年目(初任者)研修
・10年目(初任者)研修
・学校運営研修
・生徒指導研修
…など、地方によってさまざまな制度や研修があります。
これらは、夏休みに一部行われることが多いです。経験年数による研修は、その名の通りイメージがつきやすいと思いますが、職務に応じて受ける研修は、「学校運営」「生徒指導」など、学校で毎年決められている分掌(ぶんしょう)という役割に応じて、専門的な研修を受ける必要があるということが多いです。
研修の形式も様々です。地方教育委員会の指導主事と呼ばれる方・教員研修専門の機関の方・大学の先生方・民間企業の方…研修内容に様々な方が講師を務めます。中には、教員研修期間に、1週間程度泊まり込みで行うような集中型の研修もあります
以上のような悉皆研修は、必ず先生方全員が夏休みに行っている訳ではありませんが、一定の割合で受けなければならない研修です。これも先生方の夏休みの仕事の一つと言えます。
他にも様々な研修…「教員免許状更新講習」や民間研究団体など
上記の悉皆研修以外にも、様々な研修があり、夏休みに行われています。
まず、「教員免許状更新講習」があります。これは、平成21年に教員免許更新制が導入されてから、免許状の有効期間が10年間となり、それ以降は2年間で30時間以上の免許状の更新講習を受けなればならないというものです。
細かなルールがあり、詳しい説明はここでは省略しますが、更新時期に該当する先生方は、夏休み期間に受講することが多いです。
次に、各地方教育委員会等が主催する希望制の研修も多く行われています。出張として勤務校に申請して、各先生方の判断で学ぶことが多いです。
他にも、民間研究団体による研修もあります。有志の先生方がいわゆるサークルのように集まって、セミナーを企画するというものです。夏休み期間中に、様々なイベントが企画されています。
他にも、分類の仕方によっては細かな形式の研修がありますが、夏休み期間はこのような研修が多く行われています。先生方も、こうした場に積極的に参加することが多いです。
地域によって…プール開放・地域の祭り巡回・サマースクールなど
地域によっては、他にも様々な夏休みらしい先生の仕事があります。
プール開放
夏休みが開始された時期に、1週間程度行われることがあります。最近は、教員の働き方やプールの管理などの関係で、行う学校も少なくなってきているようですが、まだまだ行われている学校も多いです。
地域のお祭り巡回
こちらも学校外のことではありますが、実施している地域は多いと思われます。
子どもたちもお金を持っていて、遅い時間に遊ぶ訳ですから、トラブルなども少なくないのが現状です。
学校も地域に支えられている訳ですから、教員もそのようなお祭りに巡回という形で参加することがあります。
サマースクール
私立小学校では入試広報などの観点から、幼稚園向けに行っていることが多いですが、公立小学校ではあまりそうしたことはないと思います。
しかし、地域の方をお招きして、普段の学校の授業でなかなかできないような教育イベントのようなことが行われることもあります。
まとめ
いかがでしたか?
夏休みは先生にとって、全て休みではないということが、おわかりいただけたのではないでしょうか?
最後に筆者の私事ではございますが、それでも民間の方々と比較して、まとまった休みになることは事実ですので「羨ましい!」と言われることもあります。
こうしたまとまった休みを活かして、海外旅行などを楽しむ先生も周りにいらっしゃいます。子どもたちに様々な経験をしてね~と先生が言うわけですから、教師もそのような経験を積み重ねるのは大切なことですよね。
もちろん、今回は小学校の例でしたので、中学・高校となるとまた一変します。部活動の指導が未だに大変であることが多く、お盆期間もなかなか…ということも耳にします。しかし「働き方改革」が後押しして、少しずつ改善されてきているのではないかと思います。
研修や各種業務についても前向きに捉えて、子どもたちの夏休み期間の安全を祈りながら、まとまった休みは十分に休み、先生も先生ならではの充実した夏休みを送っていきたいものです。
コメント
コメント一覧 (1件)
夏休みに学校の先生がどんな仕事をしているのかを知ることができて面白かったです。特に保護者面談について、一人10分の面談時間でも30人学級の先生にとっては5時間かかる(準備を含めるとそれ以上)大変な仕事なんだなと感じました。