世界を揺るがすトランプ関税。この関税がアメリカ一般家庭の生活にどの程度の影響をもたらしているのか。考えてみたいと思います。
(※アメリカ在住日本人レポートです。)
関税導入による一般家庭への影響
大学の研究機関による試算では、相互関税の影響で輸入商品の価格が軒並み上昇するとされています。生活に直結する食料品への影響は、生鮮食品の価格が4%、食品全体では2.8%の価格上昇が見込まれていて、ひと家庭あたりの生活費は年間2000ドルから3500ドル増えると予測されています。もし輸入品を全く買わずに国内で生産された商品だけを買ったとしても、材料費や輸送費が上がってしまえば、追加コストは値上げという形で消費者に転嫁されるはずなので、支出の増加は避けられません。
現在の物価状況
関税によるアメリカの物価上昇は不可避であると言われていて、いずれにしても私達の暮らしに影響が出るのは確実のようですが、関税発表後から今現在までの間で、スーパーで売られている商品の値段に大きな変化はまだ出ていないように思えます。その理由として
1 関税が末端の価格に反映されるまでに半年から1年のタイムラグがある
2 2020年以降からアメリカの物価がずっと上がり続けていて、国民が物価の上昇に鈍感になっている
などが考えられます。
タイムラグを考慮に入れると、トランプ大統領が相互関税を課す大統領令を発動したのが2025年の4月と6月だったので、物価に本格的な影響が出るのは年末くらいになるのでしょうか。輸入品は20〜30%は値上がりするという話ですので、多くの人々が価格上昇前の買いだめに奔走しています。特にアップル製品は9割が中国製ということもあり、40〜50%も値上がりする可能性があるそうで、関税が上乗せされる前に買っておこうとiPhoneのパニック買いも起こっています。
物価高だけではなく中身の量が減るシュリンクフレーションも起こっている
アメリカの物価高はそもそも今に始まったことではなくコロナ以降からずっと上がり続けています。そうなると物価に対する感覚も麻痺してしまうようで、2025年も物価高傾向が続くと言われても「あぁ、インフレは今年も続くのですね」くらいにしか感じなくなってしまいました。
また最近では商品の値上げだけでなく、価格は据え置いたまま内容量だけが減らされるシュリンクフレーションも頻繁に目にするようになりました。価格やパッケージは変わらないので、ぱっと見では値上げに気付きにくい商品が多いなか、先日いつもは一袋5個入って5.99ドルだったアボカドが3個しか入っていないのを発見した時は、あからさまな実質値上げを実感しました。
今では注意して見なくてもわかるほど薄くなったスライスチーズや、袋のサイズが小さくなっているカット野菜など、実質的に値上げされた商品に何度も遭遇していると、ああこれもまた値上がりしたかと半ば諦めて買い物をしているのが現状です。
更なる値上げが見込まれる食料品
アメリカではコロナ禍でのサプライチェーンの混乱や鳥インフルエンザの流行など様々な問題が重なった影響でインフレが拡大し、ここ5年間で物価が2割以上もあがりましたが、今度は関税という新たな問題によっても日々の食卓に欠かせない商品が値上げされるるだろうと考えられています。
例えばアメリカで日々大量に消費されるコーヒーは、ほぼ100%南米やアフリカからの輸入です。各種香辛料はアジアから、パスタやワイン、チーズやオリーブオイルは欧州から輸入されています。またアメリカに輸入される果物の53%、野菜の89%は、カナダとメキシコに頼っていますし、アメリカのファストチェーン店のハンバーガーもオーストラリア産の牛肉が使われています。これらの品目に関税が課せられれば、チーズバーガーやビッグマックに支払う価格が必然的に上昇することになるでしょう。
相互関税が私達一般消費者の生活にどれほどの痛手を与えるのか、まだ予測の段階です。希望的観測にはなりますが、現在発表されている関税率は実はトランプ大統領がよく使う戦法で、まずはみんなを驚かせ後で妥当な率に引き下げる予定なのかもしれません。もしそうだったとしても、私達一般市民ができることは、無駄な買い物を控え、多少の値上がりには目をつぶり、今後値上げされる商品があまり多くないことを期待するだけです。
まとめ
トランプ関税の影響でアメリカは想像以上に深刻な状況に陥りそうです。本格的な影響が出るのは早くても半年後。無駄な出費を控えて、家計を工夫しながら乗り切っていくしかないように思えます。
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