毎日の市民の生活の安全を守る「生活安全警察」とは?
市民の生活の安全のための任務を担う
生活安全警察とは名前の通り、管轄地域の市民生活の安全のための任務を担っている警察です。警視庁を含むすべての都道府県警察本部に設置されてる地方公務員「警察」の一職種です。ほかに、交通警察、地域警察、刑事警察、警備警察、総務・警務警察というのがあります。
生活安全警察は、大きく分けて6つのセクションに分かれる
生活安全警察は、大きく分けると以下6つのセクションに分類されます。
▼生活安全総務課
生活安全総務課もしくは企画課と呼ばれるセクションには、一般企業のように生活安全部における庶務的な役割を担う「庶務係」や、警備業・質屋営業などの営業申請を始めとした、認可業務などを行う「防犯営業第1・第2係」があります。また、ストーカー対策規制法にのっとったストーカー対策や市民からの相談を担う「生活安全相談室」も、このセクション内に分類されます。
▼生活安全特別捜査隊
「特捜」とも呼ばれ、生活安全警察の管轄内で、生活環境課長の指揮の下で捜査を行うのが生活安全特別捜査隊です。生活安全部の所轄法令違反事件の捜査を始めとした、少年、風俗、経済、環境事件などを各警察署からの応援要請に基づいて捜査をする部隊です。
▼生活経済課
経済、つまりビジネスに関する犯罪を取り扱う課が生活経済課です。取り扱う犯罪の内容によって、警察本部によって異なりますがおよそ第1係から第7係まで設置されています。また、近年問題になっているインターネット上の犯罪やサーバーを標的にしたサイバー犯罪を取り締まる班も生活経済課内に設置されています。
▼生活環境課
生活環境課では、主に銃刀法に関する取り締まりを行っています。
▼保安課
風俗営業法など風俗に関すること、パチンコや競馬など公営ギャンブルから違法カジノの取り締まりまで賭博に関すること、不法滞在やビザの不正利用など、外国人労働者雇用関係に関することを担うのが保安課です。
▼少年育成課
青少年の育成の疎外となる犯罪や障害の防止や取り締まりを行うのが少年育成課です。「少年企画係」「学校地域係」など、取り扱う任務に応じて更に多くのセクションに分類されます。
本ページでは、生活安全警察の前編として「生活安全総務課」「生活安全特別捜査隊」「生活経済課」、警視庁の独立した課である「サイバー犯罪対策課」の4つの課の仕事内容について、警視庁の組織図を元に紹介していきます。
生活安全総務課の仕事について
庶務係(生活安全係、法令指導係、生活安全教養係など)
庶務係などは生活安全部全体の庶務的な任務を担います。他に、生活安全係、法令指導係、生活安全教養係などがあります。
生活安全企画係
生活前企画係は、生活安全警察企画や、生活安全部の所轄法令違反事件の捜査を行う生活安全特別捜査隊の運用を行っています。
生活安全対策係
生活安全対策係は、各警察本部によって異なりますが、警視庁の場合生活安全対策には任務に応じて4つの係があります。防犯団体連絡、精神障害者・浮浪者及び行路病者保護、虞犯者、特殊地域防犯対策を担う第1係、法規・法令関係を担う第2係、地域防犯関係を担う第3係、その他の犯罪対策を行う第4係に分かれます。
地域防犯対策としては、例えば地域の店舗や学校、施設の協力を得て子供が不審者に追いかけられている時や、事件に巻き込まれそうな時にいつでも駆け込んで助けを求められる場所に「こども安全110番の家」(警察本部管轄によって名称は異なります)のステッカーを配布して貼り、犯罪防止に努めるなどです。
防犯営業係
防犯営業係は、申請の必要な営業許可を担うのが防犯営業係です。警視庁では警備業の認定を行う第1係、質屋営業の許可を行う第2係、探偵業の届け出の受理や許可の他、探偵業法違反者への行政処分も行う第3係に分かれています。
ストーカー対策室
ストーカー対策室は、市民からのストーカー被害に対しての相談受理や、対策を立てるのがストーカー対策室です。また、ストーカー行為規正法違反関連の任務のほか、配偶者や高齢者、障碍者に対するDVへの相談受理や捜査、防止のための活動も行っています。他の都道府県警察では「生活安全室」という名前で設けられていることが多いです。
ストーカー犯罪の防止のための活動やストーカー対策企画調整を行うストーカー規制係、ストーカー行為規制法違反の疑いのある人物に対しての警告や、事件に対しての捜査を行う対策第1係、配偶者暴力防止被害者保護法(DV法)違反の捜査、高齢者虐待防止法及び障害者虐待防止法違反の捜査、東京都迷惑防止条例違反捜査を行う対策第2係に分かれています。
ストーカー対策室ではストーカー対策に関する相談を受け、必要に応じて東京都公安委員会が当事者へ聴聞を実施し、禁止命令を発します。その後改善が見られない場合はストーカー規制法によって処罰される体制になっています。配偶者相談支援センターとして相談ができる他、関連各機関と連携を取って相談者のプライバシーに配慮され、安心して相談できる体制を整えています。
》参考URL
警視庁 ストーカー被害にあわないために
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/higai/dv/stoka.html
警視庁 配偶者からの暴力
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/higai/dv/haigusha.html
子ども・女性安全対策室(通称:さくらポリス)
子ども・女性安全対策室は、警視庁では、生活安全総務課内に子供や女性をターゲットにした痴漢などの公然わいせつ行為やつきまといを専門に取り締まるのが子供・女性安全対策室です。市民が安心して相談できるように「さくらポリス」の通称が付けられています。
この部署は、情報係および性犯罪などに関わる安全対策の内容によって対策第1 から第3係に分かれ、任務を行っています。また、性犯罪捜査員の指定を受けた女性刑事が対応を行うなど、できるだけ市民の要望に応えた対応ができるように努め、痴漢や性犯罪など言いにくい事案もすぐに申告ができるように、市民に配慮した取り組みを行っています。
参考:
警視庁 さくらポリス
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/anzen/anshin/sakurapolice.html
生活安全特別捜査隊について
生活安全課の執行部隊
生活安全特別捜査隊は、生活安全警察の全管轄内の経済、地域、環境、風俗、少年に関する事件に対して、各所轄警察の応援要請に基づいて捜査を行う執行部隊です。
基本的に第1課や第2課などの2つ以上のチームに分かれて編成されています。
警視庁の子供と女性のための生活安全特別捜査隊「さくらポリス」
子ども・女性安全対策室の通称である「さくらポリス」は、児童買春や違法風俗など、女性が被害者や加害者になりやすい事案の捜査や、非行防止など多岐にわたる活動を行う警視庁の女性警察官で編成される生活安全特別捜査隊の名称「さくらポリス」としても使用されています。
さくらポリスでは、地域で子供に不審者が声がけをする「声かけ事案」や「不審者目撃事案」などの情報を一括してまとめています。中には子供や女性に道を聞いただけなどでも、不審に思い通報されるケースもありますので、通報内容の真偽性や同一人物の事案がないかのチェックも、さくらポリスの捜査員が行っています。
警視庁の採用サイトでは、生活安全特別捜査隊「さくらポリス」の女性巡査長の一日について紹介しています。
参考:
平成29年度警視庁採用サイト 警察官・警察行政職員紹介 警察安全警察
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/saiyo/29/person/safety02.html
生活経済課の仕事について
経済第1係から第9係まで
経済犯罪を担う警視庁の生活経済課では、振り込め詐欺や盗難などの不正な方法で入手した通帳からの払い戻しや引き落とし、マネーロンダリングなどの悪質な金融犯罪、悪質な金融関係、不動産関係業者への取り締まり、詐欺や悪徳商法の取り締まりや偽ブランド品・違法コピーした音楽CDやDVDの不正取引など知的財産侵害に関する案件などを取り扱っています。
任務内容によって全9係に分かれ、課内の庶務のほか経済犯罪の情報収集や分析、資料の整備を行う第1係、高齢者の自宅に訪問販売して高額商品を売りつける…などの悪徳商法の照会や、脱税違反行為など経理に関する捜査を行う経済第2係、法外な利息で貸し付けを行ういわゆる闇金業を始めとした金融関係法令違反事件捜査や間接税法違反事件捜査経済を行う第3係、資産形成に係る金融関係法令違反捜査、金融商品取引法違反及び無限連鎖防止法違反捜査を行う経済第4 ・第5係、関税法、外国為替及び外国貿易法関連法令違反捜査、先物取引受託法令違反捜査を行う経済第6係、土地建物関係法令違反捜査、無体財産関係法令違反取締りを行う経済第7係、特定商取引法違反捜査を行う経済第8係、金融関係法令違反や、経済犯罪捜査を行う経済第9係が設置されています。
警察本部によっては環境事案と保健衛生事案を取り扱うこともある
なお生活経済課は、各都道府県警察本部によっては、廃棄物の山中への不法投棄などの環境に関する犯罪である環境事案、無資格者による不法な医療行為などの保健衛生事案等の取り締まりも生活経済課内にセクションを設けて行っています。警視庁の場合は後編で開設する「生活環境課」内で、環境事案と保健衛生事案等の取り締まりを行っていて、この2つの事案については各都道府県警察によって取り扱う部署が異なります。
金融犯罪対策室
金融犯罪対策室は、悪質な金融捜査を担う金融犯罪対策第1 -から第3係までが設置されています。
警視庁サイバー犯罪対策課の仕事について
都道府県警察本部では生活経済部内に、警視庁は課として独立
IT技術の発達に伴って、サイバー犯罪も多発するようになりました。他の都道府県警察では生活経済部内にサイバー対策対応の班を、警視庁では「サイバー犯罪対策課」として独立した課を設置しています。
警視庁のサイバー犯罪対策課は、ネット犯罪対策内容に応じて捜査第1から10係と、インターネット上の犯罪予告解析や所轄警察署の初動捜査支援、対処法指導を行う機動サイバー班、都道府県警察からの依頼を受けてプロバイダの差し押さえや解析、ネットバンキングを使用した不正送金の初動捜査を行うサイバー犯罪特別対処班などを置いています。
ITに関連した事件や犯罪を追う
「サイバー犯罪対策課」の取り扱う事案は、コンピューターウィルスの作成や拡散などの犯罪、官庁や公的機関、企業のホームページやサーバーへの不正アクセスやハッキングへの捜査や対策、殺害予告や特定の個人の誹謗中傷の書き込みを掲示板サイトやSNSなどのインターネット上への書き込みへの対応などを担います。事件予告の書き込みを発見した、インターネットを通じて嫌がらせをされている、などの電話による市民からのサイバー犯罪に関する通報や相談も受け付けています。
また、サイバー犯罪への取り締まりの他に防止の後方啓もう活動も全国で積極的に展開しています。例えば、北海道警察ではネットカフェなどのサイバー犯罪の温床となりやすい関係事業者と提携をして、「北海道インターネットカフェ等防犯連絡協議会」を設立しています。
まとめ
振り込め詐欺や悪徳商法、公然わいせつなど一般市民や子供、女性をターゲットとした犯罪、見過ごされがちなDVやストーキングへの対処まで、私たちの生活にも密接し起きる可能性も高い事案を取り扱っている生活安全部の仕事について紹介しました。また、特に相談や申告がしにくい事案についても、女性警察官を配置するなど市民がいつでも警察に相談しやすい態勢が整えられていること、そして犯罪防止のために色々な取り組みが行われていることも分かりました。
後半では、少年犯罪や風俗法、銃刀法などを取り扱う生活安全部の仕事についてご紹介します。
(文:千谷 麻理子)
コメント
コメント一覧 (1件)
サイバー犯罪に関することがこの部署であるというのは初めて知りました。大きく分けて6つのセクションというのはわかりやすい説明でした。