生活環境課の仕事について見てみよう
銃刀法や危険物に関する取り締まりを行う
生活環境課の任務のひとつに、銃刀法に関する取り締まりや対応があります。
警視庁の生活環境課には、課内庶務を行う環境管理係、銃砲刀剣類所持の申請受理や許可を行う銃砲刀剣類対策係、有毒物質や化学物質などの危険物を運搬する際の届け出事務を担う危険物対策係があります。
2009年7月には銃刀法が改正され、ダガーナイフを含めた5.5cm以上の特殊な形状のナイフは法律上「剣」と扱うことになりました。インターネットでも購入できるダガーナイフを所持する若者が増えたことを受け、犯罪防止のための「ダガーナイフ規制」と呼ばれています。また、秋葉原の日曜日の歩行者天国で発生した連続殺傷事件を受けて、両刃のナイフは所持しているだけで違反になると改正されました。日本で発生した事案や情勢を受けて、改正する機会も多い銃刀法を常に的確に取り扱うことが求められる部署です。また、銃刀法の改正を受けて、生活環境課では改正後銃刀法違反となるナイフなどを所持していた場合に、希望者からの依頼を受けて廃棄処分も行っています。
警視庁では、環境事案と保健衛生事案も生活環境課で取り扱う
また、産業廃棄物の不法投棄など、環境を脅かす犯罪のことを環境事案と呼びます。環境事案の情報収集や相談を行う環境第1係、環境事件の捜査を行う環境第2 から 第4係も、警視庁では生活環境課に属しています。
他に、医師免許など必要な免許を持たずに医療行為を提供するなど保健衛生に関する犯罪を保健衛生事案と呼びます。保健衛生事案の情報収集を行う保健衛生第1係、保健衛生事件の捜査を行う保健衛生第2、第3係も警視庁では生活環境課に属しています。
なお、環境事案・保健衛生事案を取り扱う部署については、各都道府県警察本部によっては生活環境課ではなく経済に関する犯罪を取り扱う「生活経済課」内にセクションを設けていることもあります。
保安課のお仕事について見てみよう
風俗営業法など風俗に関すること、パチンコや競馬など公営ギャンブルから違法カジノの取り締まりまで賭博に関すること、不法滞在やビザの不正利用など、外国人労働者雇用関係に関することを担うのが保安課です。
風俗営業に対する手続きや査察を行う風俗営業係、査察係
警視庁の保安課には、保安課内の庶務と風俗営業許可申請手続きに関する業務を担う風俗営業係、違法な営業を行っていないか、お店の許可申請は出されているかなどを抜き打ちでチェックする、いわゆる風俗営業店舗への査察(ガサ入れ)を行う査察係があります。
賭博関係を担う保安第1係と外国人労働者雇用関係捜査を行う保安第2係
違法カジノ店の摘発などギャンブルに関する犯罪の取り締まりや、賭博犯罪捜査を行う保安第1係、外国人の不法就労や不法滞在の摘発や調査など外国人労働者雇用関係捜査を担う保安第2係があります。
風俗事案・売春関係捜査を行う風紀第1係、風紀第2係
風営法や売春防止法に違反した事件や犯罪、わいせつ事犯やパチンコやパチスロなどの遊戯機を使用した賭博に関する事犯、競馬や競輪、競艇など公営競技関係法に違反した事犯を全て風俗事案と呼びます。警視庁では、これらの風俗事犯を捜査する風紀第1係、風俗事犯の中でも特に売春関係の捜査を行う風紀第2係があります。
少年育成課のお仕事を見てみよう
青少年の育成の疎外となる犯罪や障害の防止や取り締まりを行うのが少年育成課です。「少年企画係」「学校地域係」など、取り扱う任務に応じて更に多くのセクションに分類されます。
少年のための環境整備や家出捜索手配を行うセクション
警視庁の少年育成課は、まず少年が事件や事故、犯罪に巻き込まれないための任務を行うセクションがあります。課内の庶務や少年警察の統計などを行う少年企画係、少年に対する広報活動などを行う少年規範係、関連機関である学校への連絡などを行う学校地域係、成人向けの図書やサイトなど、少年に有害な環境の浄化と育成のための適切な環境整備を行う少年環境係、家庭内、学校内などで少年に関する相談を受ける少年相談係、家出をしてしまった青少年の捜索や手配などを行う保護相談係があります。
少年の福祉に関する事案を取り扱う福祉犯第1~4係
少年少女に対する淫行、禁止薬物や喫煙、飲酒、労働基準法違反や買収法違反に抵触する行為など、少年の心身に有害な影響を与え、福祉を阻害する犯罪のことを「福祉犯」と呼びます。福祉犯の取り締まりや捜査を行うのが、福祉犯第1から4係です。
福祉犯の捜査や指導を行う福祉犯第1係、福祉犯の捜査の他児童ポルノ法違反の取り締まりを担う福祉犯第2と第3係、インターネット異性紹介事業児童誘引行為規制法の届出と違反の取締り、実務指導、行政処分を行う福祉犯第4係に分かれています。
少年センター
色々な困難な状況下にある少年の保護や相談を請け負う、いわゆる青少年の駆け込み寺の役割を担っているのが各都道府県警察本部に配置されている少年センター、もしくは少年サポートセンターです。少年センター、もしくは少年サポートセンターは生活安全部の少年育成課に属しています。
少年センターもしくは少年サポートセンターでは、学校や家庭でのいじめ、暴行、児童虐待などの肉体的・精神的に不当な扱いを受けた少年の保護を目的とした施設です。心理担当の職員が、少年少女本人のプライバシーを厳守した上で安心して相談できる体制を整えています。また、肉体的、精神的な被害を受けた少年の立ち直りも支援した活動も行っています。
また、不良少年の補導や少年の犯罪防止を目的とした、夜間の繁華街などを見回る深夜徘徊、解放された警察署道場やスポーツセンターなどを利用して柔道教室や剣道教室の開催を通じた、青少年の健全育成活動なども行っています。
他にも学校やボランティアなどの関係機関と協力し、少年少女に有害なわいせつチラシや広告の撤去などの環境整備活動、非行防止のための広報活動なども行っています。
警視庁管轄内には、大森、世田谷、新宿、巣鴨、台東、江戸川、立川、八王子の合計8か所の少年センターがあります。
参考:
警視庁 少年センター
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/sodan/shonen/shonen.html
少年事件課のお仕事を見てみよう
少年少女が巻き込まれた、もしくは加害者となった事件を取り扱っているのが少年事件課です。
少年事件の指導や捜査を行う
少年事件課では、少年事件課内の庶務のほか、施設から逃走した少年少女の手配を行う指導第1係、少年事件捜査の指導と、家庭裁判所との連絡を行う指導第2係、少年事件の捜査を行う少年事件第1 から第9係に分かれています。
なお、警察本部によっては少年育成課と少年事件課を同一とし、「少年課」を設けている場合もあります。
参考:
平成29年度警視庁採用サイト 生活安全警察 小平警察署 少年第一係 巡査長
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/saiyo/29/person/safety01.html
少年育成課・事件課の取り組みについて
児童ポルノに対する取り締まりの強化
2004年7月、児童買春法及び児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律が一部改正された事を受け、警視庁を始めとした全国の警察本部の少年係では、児童ポルノに関する取り締まりを強化しています。
日本国内だけでなく日本国外で日本人が犯した児童買春、児童ポルノ事犯等の取締りや国際捜査協力を強化するために、警察庁では2004年11月には東南アジア3か国の捜査関係者、非政府組織(NGO)などを招集、児童の商業的・性的搾取対策東南アジアセミナーを開催し、各国の児童買春などの状況や取組みについての意見交換を行っています。
少年と暴力団の関係根絶への取り組み
暴力団やその周辺関係者が関係する福祉犯の取り締まりの強化のほか、過去の補導歴や周辺環境を把握した上での少年の暴力団への新規加入の防止、加入した少年の暴力団からの離脱促進活動なども行っています。
インターネット環境からの福祉犯防止
インターネット環境から、少年育成を阻害する有害な情報や画像が少年の目に触れないように、フィルタリング機能の導入の推奨を行っています。また、児童買春の防止のために出会い系サイトの取り締まりなども強化しています。
薬物乱用防止広報車の配備
危険ドラッグの蔓延など、近年の少年への禁止薬物汚染が深刻化し、社会問題となりました。これを受けて、各警察本部では該当での薬物乱用防止に向けた啓もう活動や、薬物乱用防止広報車による巡回広報活動などを行っています。
参考:
警察白書 第3章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 第4節 少年の非行防止と健全育成
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h17/hakusho/h17/html/G3040100.html
インターネット上での少年に関するFAQの設置
子どもにスマホを初めて持たせる時には何に気を付ければよいか、インターネット上で児童ポルノとみられる画像を見つければどうすればよいか、など市民からの少年が関わる犯罪や事件、困りごとに対するFAQのページを警視庁では設けています。
少年に関することで犯罪や事件に関する可能性があるが、通報や相談をする勇気がない…という方でも、インターネット上で気軽に閲覧できるFAQを設け、少年犯罪や事件の発生の抑止や、市民からの通報や相談がしやすい環境整備をしています。
参考:
警視庁 よくある質問 少年育成について
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/faq/soudan/syoiku.html
まとめ
近年では、インターネットの普及を始めとしたIT技術の進歩によって、私たちを取り巻く生活環境も変化しました。これを受けて、インターネットを通じた風俗や少年福祉に関する犯罪や事件も残念ながら増加しています。生活安全警察部の任務は、世の中の移り変わりとともに多くの対策や取り締まりを担っています。警察本部はもちろん、市民である私たちも世の中の環境に柔軟に対応していく必要があると感じました。
(文:千谷 麻理子)
コメント
コメント一覧 (1件)
保安課の仕事の内容について、改めてよくわかりました。風俗、ギャンブル、カジノは類似分野だと理解できますが、外国人の不法滞在も取り扱い対象ということは初めて知ることができました。