はじめに 「農林水産省」の組織体制について
先の中央官庁「農林水産省」の基本情報では、その役割や組織構成、予算などの情報をまとめました。「農林水産省」の基本情報は、下記の通りです。
「農林水産省」は、東京都千代田区霞が関にあり、2001年に設置、定員は、17万8,744人です。年間予算(平成30年度)は、約2兆3,021億円です。
今回は、国家公務員総合職や一般職の方がどの官庁へ就職するかの判断材料になるための詳細情報をまとめました。
それでは、今回は基本情報に続いて、詳しい組織体制について解説します。
「農林水産省」の組織概要
「農林水産省」の組織は、「農林水産大臣」を長とし、「幹部」組織と大きく6つの「内部部局」を中心に構成されています。加えて、2つの「外局」とその他の機関などがあります。
なお、「外局」には「林野庁」「水産庁」の2つがあり、その他には、6つの「施設等機関(植物防疫所)等」、「特別機関(農林水産技術会議)」、2つの「地方支分部局(地方農政局等)」があります。
「農林水産省」の組織分析
「農林水産省」の主な業務は、食料の安定供給の確保や農林水産業の発展、農山漁村および中山間地域等の振興などです。
組織のビジョンは、公式サイトに下記の通り、公表されています。
- 「農林水産省ビジョン・ステートメント」
- わたしたち、農林水産省は、生命を支える「食」と安心して暮らせる「環境」を未来の子どもたちに継承していくことを使命として、常に国民の期待を正面から受けとめ、時代の変化を見通して政策を提案し、その実現に向けて全力で行動します。
「農林水産省」の上部組織・下部組織について
「農林水産省」の上部組織はありません。下部組織には、「林野庁」と「水産庁」があります。
6つの「内部部局」について
「農林水産省」の「内部部局」について説明します。
まず、6つの「内部部局」の内訳は、下記の通りです。
1)「大臣官房」
2)「総合食料局」
3)「消費・安全局」
4)「生産局」
5)「経営局」
6)「農林振興局」
「大臣官房」とその業務について
「農林水産省」の「内部部局」の1つである「大臣官房」の主な業務は、農林水産行政の司令塔として基本的な政策ビジョンの立案、法令案の審査、予算編成、国会事務、省内および各省庁との連絡を調整することです。
また、「大臣官房」では、広報をはじめとする情報の受発信、食料自給率の向上、食料安全保障に関する取組み、WTO等の国際交渉や農林水産分野の国際協力などの国際関係の業務も行われています。
なお、「大臣官房」は、「官房長」、2人の「総括審議官」、「技術総括審議官」、「政策評価審議官」、6人の「審議官」、9人の「参事官」、「政策報道官」と6つの課によって構成されています。
1)秘書課:秘書業務、栄典叙位、人事管理の企画、職員情報の管理、職員の人事・給与などを担当しています。
2)文書課:省の総合調整、他府省との連絡調整、公文書類の審査、防災の予防などを担当しています。
3)予算課:予算に関する業務を担っています。
4)政策課:省の技術に関する政策の企画・立案に関する業務を行っています。
5)地方課:地方農政に関する業務を担当しています。
6)広報評価課:政策・事業・行政・独立行政法人の評価に関する総合調整を担っています。
「消費・安全局」とその業務について
「農林水産省」の「内部部局」の1つである「消費・安全局」の主な業務は、国民の「安全な食品を安心して食べる」という命題に応えるために食の安全と安定供給を確保し、消費者が食に対する信頼感を持てるような政策を担うことです。
なお、「消費・安全局」の業務には、「後始末より未然防止」の考え方の下、科学的な根拠に基づいて生産現場から食卓まで食品の安全を確保し、家畜や農作物等の病気や害虫の発生・まん延を防ぐことも含まれています。
さらに、「消費・安全局」では、農畜産物の輸出拡大のため、諸外国との検疫協議を進める一方で、消費者の視点を重視し、品表示の適正化や農林漁業への理解を深めるための食育にも取り組んでいます。
このような「消費・安全局」は、消費者の視点を大切にして国民の健康を守ることが何より重要であるという考え方の下に「食」の安全と安定供給を確保し、消費者が「食」に対する信頼感を持てるように政策することを理念とし、5つの目標を掲げています。
1)農場から食卓までの安全管理の徹底を通じた食品の安全性の向上
2)食品表示の適正化による消費者への的確な情報の伝達・提供
3)家畜や農作物の病気や害虫のまん延防止による食料の安定供給
4)消費者をはじめとした関係者との情報・意見の交換と施策への反映
5)望ましい食生活の実現に向けた食育の推進
「食料産業局」とその業務について
「農林水産省」の「内部部局」の1つである「食料産業局」の主な業務は、高品質な農林水産物・食品の需要拡大を図り、農林水産業の健全な発展を図ることです。
具体的には、日本食・食文化の発信と一体となった農林水産物・食品の輸出促進、ブランドカのある農産物づくりに活用できる知的財産の保護・活用などです。
さらに、「食料産業局」では、農林漁業者等が加工・販売まで行う6次産業化等に力を入れ、農林水産業・食品産業における新たなビジネスチャンスの創造や、未利用バイオマス、再生可能エネルギー等の地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取組なども行われています。
このように、「食料産業局」では、日本の食文化を守りながら世界へ発信する新しい部署として農林水産業の成長産業化を目指し、地域の食や農山漁村にある地域資源をうまく活用して地域を豊かにする観点から、各種の施策が展開されています。
「生産局」とその業務について
「農林水産省」の「内部部局」の1つである「生産局」の主な業務は、農畜産物の生産振興を担い、品目ごとに生産・経営安定対策を行うほか、新技術・新品種の導入を通じた高品質化や低コスト化等の推進などです。
なお、「生産局」では、環境保全型農業の推進や、農業生産工程管理(GAP)の普及による食の安全と消費者の信頼を確保するための取組も行われています。
ちなみに、「農業生産工程管理(GAP)」とは、「Good Agricultural Practice」の略称で、農業における食品安全・環境保全・労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組のことです。
この取組を日本の多くの農業者や産地が取り入れることにより、結果として持続可能性の確保、競争力の強化、品質の向上、農業経営の改善や効率化とともに、消費者や需要者からの信頼の確保が期待されています。
さらに、「生産局」では、畜産・酪農の競争力の強化し、地域全体で収益性を向上させ畜産の生産基盤を強化する畜産クラスター事業が推進されています。
「経営局」とその業務について
「農林水産省」の「内部部局」の1つである「経営局」の主な業務は、日本の農業が今後持続的に発展していくよう農業経営の改善・発展に向けた各種施策を行うことです。
さらに、「経営局」では、農地中間管理機構を活用した担い手への農地集積・集約化を進めるとともに、意欲と能力のある担い手を対象とした融資・税制等による重点的な支援や、新規就農対策等が進められています。
なお、このような「経営局」では、天候等に左右されやすい農業経営を安定化させるためのセーフティネットの確保や農協の指導・監督などの業務も行われています。
「農村振興局」とその業務について
「農林水産省」の「内部部局」の1つである「農村振興局」の主な業務は、日本の農業生産の上で重要なインフラである土地(農地)や水(農業用水)等を保全管理・整備することです。
これと同時に、「農村振興局」では、グリーン・ツーリズムなど都市と農山漁村の人々の交流や、自ら考え行動する農山漁村の取組みの支援、農地・農村景観・伝統文化等の農村地域の多様な資源の保全を推進するなど、ハードおよびソフトの両面からみた総合的な農村の振興を図る取組みも行われています。
「政策統括官」とその業務について
「農林水産省」の「内部部局」の1つである「政策統括官」の主な業務は、日本の食卓に欠かせない米・麦・大豆などの土地利用型作物や甘味資源作物等の生産促進、意欲ある担い手農家への経営安定対策や現場の農家の方々に寄り添った農業政策に取組などです。
この「政策統括官」は、平成27年10月の組織再編によって農政上の重要課題を統括する司令塔として新設され、これまで「生産局」と「経営局」が担当してきた農政の根幹となる水田・畑作農業政策を一元的に担っています。
「外局」について
「農林水産省」の「外局」には、「林野庁」と「生産庁」があります。
「林野庁」について
「林野庁」は、1949年に「農林水産省」の「外局」の一つとして設置されました。
この「林野庁」の主な業務は、森林の保続培養、林産物の安定供給の確保、林業の発展、林業者の福祉の増進および国有林野事業の適切な運営を図ることです。
なお、これらの業務のため、「林野庁」では、森林の整備保全、民有林への指導監督・助成、国有林野事業などの森林・林業に関する事務全般が行われています。
「水産庁」について
「水産庁」は、1948年に「農林水産省」の「外局」の一つとして設置されました。
この「水産庁」の主な業務は、水産資源の適切な保存および管理、水産物の安定供給の確保、水産業の発展並びに漁業者の福祉の増進を図ることです。
まとめ
いかがでしたか?
「農林水産省」は、食料の安定した供給ができるよう、森林や水産資源などの適切な保存や管理に関する業務を効率的に行っています。
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