【市民の皆さんの窓口】市役所「市民課」の1日の仕事の流れ

地方公務員である「市区町村役所の職員」、今回は、市役所でもっとも皆さんと触れる「市民課」の戸籍業務の仕事内容・1日の流れについて解説します。朝礼からはじまり、窓口業務、退庁までの流れについてや市民課に配属されてよかったことなどをまとめました。


某市役所に勤務し9年目になります。現在は市民課にて戸籍業務を担当し3年目になりますが、異動前は教育委員会に5年、介護福祉課に1年おりました。

このように市役所内では異動があり私みたいに入庁後1年で異動になる場合や、5年で異動となる場合等、異動サイクルは様々です。将来公務員を目指す方や公務に従事されている現職の方、働く皆様への役立つ情報を配信して参ります。

では、今回は3年目になる私の市民課の1日の流れをご紹介していきます。

仕事は、朝礼と事務連絡から始まります。 8:25~8:30

市役所特有の光景かもしれません。

どの課に配属されても朝8時25分になるときちんとチャイムが鳴り響き、全員が整列します。その部署の部長、課長を筆頭に全職員がビシッと整列します。毎日交代で1名が前に出て自分のトークを始めます。この順番は予め毎月順番が割り当てられており、私は9年たってもこの朝礼に慣れはしていません。

しかし、人前で自分の話しをするというのは例え数分であっても起承転結を考える必要が生じある意味度胸はつきます。月1回は必ず回ってくるので年間で12回、10年いれば120回は登壇していることになり経験値が上がります。中には、毎回のトークで笑わせ、一日の始まりを快適に過ごせる位の空気作りの上手な方や、ご自身の日々の生活で気が付いたことや家族ネタなど、テーマ設定は自由なので話し手となるのはハードルが高くても毎日の朝礼は案外発見や気づきの場となっていました。

その後は、各グループリーダーが一日のスケジュールを順次伝えていきます。出張や会議等、その日の大事なスケジュール等を各職員が把握出来るよう情報共有出来る大事な朝のミーティングの時間となります。

いよいよ開庁 「窓口業務」の開始 8:30~17:15

開庁時間は8:30からではありますが、正面玄関の鍵を宿直職員が8時過ぎには開けるのでお客様が早々に窓口に集まってきます。

月曜日の午前中はお客様が集中します。ゴールデンウイークや正月等の休み明けの月曜日は長蛇の列になります。死亡届や婚姻届等の戸籍届書や、転入転出等の住民異動届書、又は国民健康保険加入や喪失等の手続き等、どの対応についても窓口に来庁されるお客様のニーズは生活に密接した案件になるので緊張ずくめです。

窓口応対だけでなく電話応対も合わせて行います。お客様からの相談や質問だけでなく市役所間での戸籍照会や住民異動照会も受け付けます。

窓口や電話応対をしながら前日までの戸籍届書の記載確認等をしていきます。


戸籍は生活の中ではあまり意識しないものであり、私自身も自分の本籍がどこなのか、本籍地番はどこだ?と聞かれても戸籍担当になった当時は答えられませんでした。住所と本籍がどう違うかなんて日々の中では意識せずとも生活が出来るからです。

ですが、戸籍は、人生の節目には必ず出てきます。出生、婚姻、離婚、養子縁組、死亡等、大事なイベントの際には必ず伴います。

多くのお客様が相談に来られる内容としては、

・婚姻届はどこに出せばいいの?
・証人はいるの?
・出生届はいつまでに出さなきゃいけないの?
・認知したいけどどうしたらいいの?
・妻の連れ子を養子縁組するには?
・離婚しても自分の子どもの親権は自分がほしいのだけどどうしたらいい?
・離婚しても氏はそのまま使いたいのだけど使える?
・死亡届、届出人は誰でもなれる?

これらはほんの一例ですが、日々の戸籍の相談内容は一人一人の大事な切実な内容であり、もしかしたらこちらの回答次第でお客様に一生の疑問や不安をお渡ししてしまうことになりかねません。

相談の段階だけでなくとも、実際戸籍届出が行われた後、戸籍記載事項を見誤ってしまった場合、戸籍訂正等が発生します。戸籍訂正には法務局の許可が必要になったり、お客様ご自身に法務局に行って頂く場合が生じたりと、一瞬の過ちが大変な負荷をお客様に背負わせることに繋がります。

お昼休憩は交代でとります。 12時~13時

上記のように開庁から閉庁までずっと気をはった状態が続きますが、お昼時間はきちんと1時間あります。この間はお昼当番が2名~3名窓口対応に交代であたるので自席でお弁当を食べたり、外出して公園で食べたりします。

お昼当番の方が窓口で手一杯になっていると自席で食べている職員が代わりに窓口や電話応対にあたるときもあります。

退庁です。保育園へダッシュ! 17時15分

私自身は小さい子どもを持つシングルマザーな為、きちんと17時15分で退庁し保育園送迎にダッシュで走りました。

戸籍届書や住民異動が多い3月、4月が市民課の一番の残業時期になります。残業する際は、リーダーに残業の理由と残業予定時間を伝えます。リーダーが毎月人事にグループ内の残業時間数を報告しています。

残業手当はきちんと出ますが、きちんと出る課とサービス残業扱いになってしまう課と差がありました。その違いは何かと言えば、ズバリリーダーの人格によるといえます。ここら辺は当たり外れの世界と思われます。

各自治体で取り組まれているサービスで違いはあると思いますが、当市では毎週火曜日が窓口延長時間として夜7時まで開庁時間を設けておりました。

これも夜延長当番を決めて市民課職員が交代で出ておりました。夜7時まで残らなきゃいけないときは月1回程度とはいえ、夕方一旦子どもを保育園から家へ落とし、ダッシュで夜当番に向けて車を飛ばしていました。

因みに夜当番は残業扱いではなく振替休日扱いでした。

以上が、市民課の一日の流れになります。


市役所「市民課」に配置されたら

長い公務員人生、異動を重ねながら一度は経験したい課が市民課だと思われます。
何故なら各自治体、平日夜間や、週末土日の日中は宿直・日直対応となり、その宿直や日直を対応するのが市役所職員となるのです。

・ 男性職員は平日17時15分から翌朝までの宿直当番
・ 女性職員は土日の8時30~17時15分までの日直当番

数ヶ月に1度、2人1組でこの宿直・日直が当番で回ってきます。
市民課に配属されたことのない職員であってもお客様が持ってきた戸籍届書を知っている顔で受け付けなければいけないのです。これは正直、焦ります。

宿直室には戸籍届書が出た場合のマニュアルがおいてあり、勿論、入庁したばかりのフレッシュ職員向けに宿直研修も開講されます。
ですが業務としていないものを、いくら事前に情報として聞いていても実際戸籍の届出を受け付けるのは焦ります。実際は、2人1組で対応するので自分が初心者であってもよく分かっている先輩がパートナーとしているのでそこまで支障は出ることはないですが、それでもやはり一度は市民課を通っておくのは今後の人生で大変良い勉強になると思われます。

市民課内どんな部署がある?

一口で市民課といっても、各自治体では色んな部署が統合され、部署名やグループ分けも多岐に異なっていますので当市の場合をご紹介します。

・市民グループ
・国保年金グループ
・消費者センター

当市の場合、3つのグループで市民課が成り立っています。もし、お客様が窓口に出生届を持ってこられた場合、戸籍届だけが発生するでしょうか?

違います。

出生届に伴う、例えば以下の手続きも発生します。

・子どもさんお一人増えたので住民異動届
・子ども医療制度の説明・・医療費の自己負担分を助成する
・児童手当制度・・毎月○○円が保護者に振り込まれる
・健康保険・・お父さんやお母さんが国民健康保険なら国保加入

婚姻届に伴う、例えば以下の手続きも発生します。

・婚姻届に伴う住民異動届
・氏が夫か妻の氏に変わったので通知カードの裏書
・健康保険が国民健康保険なら変更届

死亡届に伴う、例えば以下の手続きも発生します。

・死亡届に伴う住民異動届
・火葬許可証の発行
・死亡届のコピー発行
・水道等名義変更
・市税関係届
・後期高齢者医療保険関係
・国民健康保険・印鑑登録関係
・介護保険関係

等々、ほんの一例です。

市民課職員は、戸籍だけ、住民異動だけ、国保だけというより総合的にお客様のサポート対応出来る姿が望ましいです。
なんといってもお客様が正に一番に訪れる部署です。

相談があって来庁されたのに「あれはあの担当に聞いてください。」「それは私が担当ではありません」では悲しいです。ただ、他の職員にふりたい位各部門が専門的で、奥が深く、今や公務員の職業は多岐に渡っています。お客様も大変忙しいので一度に全部聞いてしまいたいという心境になっておられますし、市役所という場所が行きやすい場所でもありません。

ですので、お客様が来庁された場合は、一度で出来るだけ完了してお帰り頂けるよう全職員でタッグを組んでリレー形式でお客様を総合的にサポートできるよう取り組んでいます。

これは、もしかしたら市役所の良い形の一つかもしれません。一人では自分がサポートできる力は少なくとも各職員が集まれば一人のお客様の困った事案や現状を打破出来る。そして、問題を一人で抱えず職員同士で連携し取り組むことにより自分一人では気づけなかったこともミスも防げ、かつお客様に還元できる。


この、還元出来るという素敵な仕組みこそ、素晴らしい組織力かもしれません。

まとめ – 市民課でよかった話

いかがだったでしょうか?

今回は、3年目に突入した私自身が従事している市民課の一日の流れをご紹介しました。

市民課は毎日お客様が来庁され、相談や困りごと、時には怒って来庁されるお客様もいらっしゃいます。この、市役所という場所にわざわざお越し頂いたお客様が笑顔で帰って頂けるサポートをするのが市民課職員の務めと思っております。最初は困り顔でこられたお客様がすっきりした!と言って笑顔で帰っていかれるお顔をみると本当に嬉しくなります。

この前あった事例を最後にご紹介します。

離婚をしようと10年前に子どもと家を出てなかなか離婚届に応じてくれない夫とこの度、裁判離婚し、やっと決着し届出に至った奥様を担当致しました。

彼女の晴れやかなお顔と、そのつかの間の数分を担当出来た私は思わず「おめでとうございます!」と言ってしまいました。戸籍担当としては感情に流れた言葉はあまり言ってはいけない言葉でしたが、一個人として、ただただ純粋に、彼女の歩んできた重圧、10年の重さが一気に取れた瞬間の涙でした。

本当、戸籍担当なってよかった、市民課に配属されて良かったと思えた瞬間でした。

公僕として、民間として、フリーとして、どんな身だろうが、「働く」ということ事態が誰かの役に立ち、誰かに還元出来る素敵な行為です。誰かに還元出来るということは、結局は還元しようとする自分の素敵さに気づける一番の要素になり得るからです。

自分がどういう生き方をしていきたいか、何をしたいのか、再度考えてみる良い機会かもしれません。

人生でほぼ、「働く」時間が自分の時間を費やします。素敵な自分探し、みつかりますように。

本記事は、2017年5月24日時点調査または公開された情報です。
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