MENU

【市役所職員に聞きました!】「農林課」の仕事内容について

当ページのリンクには広告が含まれています。


目次

はじめに

中核市の市役所で事務職員として働いていた時の経験をもとに、「市役所」の「農林課」の仕事内容ををレポートしたいと思います。

「農林課」とはどういった課なのか

「農林課」は、農業、林業、畜産業の担い手の確保や育成、施設の整備(補助金の支出)などを通して、市内の農家を支えていく仕事を行っています。その業務の特殊性から、課内の半数以上が「農業専門職」として採用された職員で、役所生活のほとんどを「農林課」で過ごします。

私はもともと事務職員として採用されましたが、たまたま大学の学部が農業系だったこともあり、「農林課」には長く在籍していました。

「農林課」の業務1:担い手の確保・育成

「担い手」とはこの場合、農業、畜産業、林業で働く人たちのことをさします。つまり、新しく農業を始めたり(担い手の確保)、農業の規模を拡大したり(担い手の育成)する農家さんを支援することで、市内の農業を維持・拡大することを念頭に業務を行っています。

ご存じの通り日本は高齢化社会ですが、農業、畜産業、林業の高齢化はもっと深刻で、60歳が若手と呼ばれるような世界です。そのため「担い手」といっても若い人だけを指すわけではなく、定年退職後に就農しようとしている人や、すでに農家になって何十年も経つ人の支援も含まれます。

他にも、最近では業務の一環として農業を始めようという企業もありますので、そういった企業への協力も行っていました。

具体的には、各農家の農地に直接行き作物の出来具合や経営状況を確認したり、時には病害虫駆除等の指導を行うといった巡回業務です。こういった業務は、県庁の農業普及員と呼ばれる専門職の職員や農協の職員とともに行っていました。

「農林課」の業務2:補助事業

農家の方がビニールハウスの建設や作物のための冷暖房設備の設置をするときに補助金をもらう「施設整備の補助事業」の調整役や事務作業を行っていました。

一般的な考えからすると、農家さん個人の財産ために補助金を払うのには違和感があるかもしれませんが、こういった補助事業なしには日本の農家は生計が成り立たないのが現状です。

まず、補助事業をするためには予算化する必要があります。業務その1で述べた「農家への巡回」時などに、ハウスなどを建てる要望がないかを聞き取って、使えそうな補助事業を探します。事業化できそうであれば、予算を提出する時期に概算の要望を出します。

補助事業は税金を多額に使うことから、書類の作成には大変厳格な基準が求められます。なぜこの施設設備に補助金が必要なのかといった理由から、購入する一つ一つの部材になぜそれを選ぶことになったのかという理由(性能や金額)、工事業者選定理由などを農家の方と相談しながら書類を作成します。


また、工事が始まれば現場確認ということでカメラを持って現地に行ったり、想定外の問題が出てくれば申請を修正したりと事業が終わるまではなかなか気を抜けません。

補助事業が無事に終了しても、国の「会計検査院」が事業が国の規則にのっとって事業が行われたかを確認に来ます。不正とまでは言えませんが、農家さんのためにグレーゾーンぎりぎりで補助事業を行っているケースもあり、国の監査の時が一年で最も緊張する瞬間です。

「農林課」の1日のタイムスケジュール

・午前8:00 公用車の確保
「農林課」は外に出ることが多い課ですが、業務で個人の車を使うことは出来ないので、公用車と呼ばれる市役所の車を朝一番に確保する必要があります。公用車は常に不足しているので、貸し出し予約ができる午前8時にパソコンで車の予約を取ります。この作業はたいてい若手職員がやっています。

・午前8:25 ラジオ体操第一
始業前の準備体操です。

・午前8:30 始業
音楽が鳴り響き、一日の仕事のスタートです。朝礼で、課長から報告やお小言をもらう他、係ごとの報告や一日の予定を課内のみんなに伝えます。これは、庁外に出ることの多い「農林課」特有のことかもしれません。

・午前8時45分~10時 補助事業の書類作成
県庁や農協の担当に電話連絡をとりつつ書類を作成します。合間に、市民からの家庭菜園やガーデニングの相談の電話などが入ることもあります。朝の時点で公用車をとれていなければパソコンとにらめっこして車の空き待ちをする必要があります。

・午前10時~12時 会議
近隣にある県庁に徒歩で移動し、来年度の補助事業の担当者会議に出席します。

・正午~午後1時 お昼休み
朝注文していたお弁当が職場に届いているので昼食を食べます。午前中に庁外に出ている時には、出先の近隣のお店で昼食をとります。

・午後1時 巡回に出発
朝予約しておいた公用車の鍵を受取り市役所を出ます。開放感からホッとするの同時に、公用車なので気は抜けない時間です。

・午後1時30分~午後3時30分
待ち合わせ場所に到着。今日は、月に一度の部会の圃場(農地)巡回の日なので、県職員、農協職員、農家の方々と車で、部会員の圃場を順に見て回ります。(注)部会とは、ある作物を作っている人たちの団体のこと。例えば、玉ねぎ部会など。

圃場で、病気が出ていないのか出来具合はどうかなどをチェック。問題があれば、帰庁後に対処法などを農家さんに連絡します。巡回の最後に、各職員から講評を行って、事業の予算化の時期であれば要望がないかを聞き取ります。

・午後4時 帰庁
巡回の報告書を作成。

・午後5時15分 退庁
急ぎの案件がなければ帰宅します。議会の時期や監査の時期、台風災害など予定外のことがなければ、午後6時までには退庁できることが多かったです。

まとめ

以上、「農林課」の仕事内容をレポートしました。

市役所の中でも、特殊な業務が多いですが、市民の食を支える一端を担っているというやりがいを感じることができる課でした。


本記事は、2020年3月3日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

市役所職員(市町村職員)を知るために最初に読んでほしいページ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

コメント

コメント一覧 (1件)

  • 市役所の「農林課」という部署を知らなかったのですが、このコラムを読んで、農業や畜産業をしている方とは切り離せない重要な課だとわかりました。外回りが多い仕事だというのは意外でした。地方の食の担い手を育て、補助することの重要性に気づかされる、いい記事でした。

コメントする

目次