地方公務員の人事異動【市役所職員に聞きました!】市役所と県庁の異動について

公務員であれば、「市役所職員」にしろ「県庁職員」にしろ、「異動」はほぼ必ずあります。異動先によってはライフスタイルまで変わる可能性もあります。

本記事では、公務員の中でも「県庁職員」を夫に持ち、自身も「市役所職員」として働いた経験のあるMさんに、市役所と県庁の異動について、コラムを書いてもらいました。


はじめに - 公務員にとっての「人事異動」は一大イベント!

公務員にとって年度末に発令される「人事異動」は、数年間の命運を決める一大イベントではないでしょうか。今回は、地方公務員の内示の時期や異動の希望は通るのかなど公務員の異動事情を経験に基づいてお伝えいたします。

私の夫は現職の県職員で、私自身は県庁所在地の市役所で事務職員として13年間働いていましたので、県庁と市役所の異動の違いについてもお伝えしたいと思います。

地方公務員の人事異動について 1)異動の内示はいつくる?

民間企業と同様に、公務員も異動が正式に発令される前に「内示」は出るのですが、市役所と県庁では内示の時期は違います。県庁は異動日の約2~3週間ほど前に知らされるのに対して、市役所は1週間前を切った時期に知らされます。

人事課は不測の事態に備えてできるだけギリギリに異動を知らせたいと思っていますし、極秘事項です。それでも、県庁が早めに内示がでるのは、市より県は範囲が広く、異動に関して引っ越しの必要がある人が多いことへの配慮からでしょう。

県内の異動となると、通勤のために車が必要になったり、引っ越しに伴って新居を探したり、学校の転出入手続き、保育園の確保など必要となってきます。そうなってくると、準備の時間が必要ということで早めに知らせてくれるようです。

なお、市役所でも東京事務所や国の省庁へ派遣ということになれば準備期間を考慮して、約3~4週間前には知らせてくれていました。

地方公務員の人事異動について 2)異動の希望は通るのか

私の勤めていた市役所では、毎年10月~11月頃になると「異動希望」を人事課あてに直接出すことが出来ました。上司を通さず直接出せるところがポイントで、課内の目を気にせずに異動の希望が伝えられるようになっています。

内容は、現在の仕事内容とやってきた実績、これからやってみたい仕事・行ってみたい部署、持っている資格、同じ課になると困る職員(親子・夫婦が同じ課になることがないように配慮してくれる)を記入できます。

希望は出しても出さなくても自由ですが、一般的には異動後3年以上たってから提出する職員が多い印象でした。

希望の職場に異動できるかですが、書かないよりはマシといったくらいで書いたから希望どおりの仕事ができるというわけではありませんでした。ただ、これまでの仕事の成果や今後目指したい目標、持っている資格などの根拠を挙げて異動希望する人は通りやすい傾向にあると思います。

地方公務員の人事異動について 3)何年ごとに異動する?

公務員の異動の間隔は職員によって違いますが、新採用の時はだいたい決まっています。


市では採用後3年以内に異動する人がほとんどで、1、2年で異動になった場合には何かトラブルが起きたのではないかとうわさが立つくらいです。新採用後、4年以上異動の対象にならない場合はめったにありませんが、例えば選挙管理委員会で選挙時期がせまっているなどの理由で3年以上異動しない例もありました。

私の所属していた市では、新人はいろいろな職場で経験を積んでほしいという理由から3年ほどで異動させる方針のようです。

県庁は少し異なっていて、本庁勤務では2年で異動、本庁外の職場では3年で異動するのが一般的とのことです。

新採用以降の公務員の人事異動の間隔について:市役所の場合

市役所では、新採用の職員と、新採用以降の職員とでは、異動の間隔は変わってきます。やはり1、2年目で異動する方は所属する課の課長や上司と相性が悪く険悪な関係だったり、仕事がまったくできない人であったりとなんらかのトラブルがあった職員が多かったように思います。

もちろん仕事内容に問題がなくても、忙しい課にいて、妊娠で休暇に入ることが分かっている職員や、課内恋愛が発覚した場合なども異動対象になります。

3年目以降からは、特に問題がなくても異動の可能性がでてきますが、市役所では平均的には4、5年で動く方が多いので、6年以上同じ部署にいると「長いね~」と言われていました。

新採用以降の公務員の人事異動の間隔について:県庁の場合

一方で、県庁では異動の間隔は市役所とかなり違っていました。本庁勤務の場合2年目からは異動の可能性が出てきて、同じところに4年いると、一番の古株になっている可能性が高いです。本庁外の職場の場合は少し異動の間隔が長く、本庁の場合の年数に1年足すようなイメージだということです。

市・県のどちらでも言えることですが、新規事業を立ち上げていたり、専門的な知識を有していて他に代えがたい人材だと思われた場合には、本人が異動の希望を出していても上司の意向によって異動が延び延びになることは多いです。

地方公務員の人事異動 4)国の機関や民間への派遣など

地方公務員にも、市役所内、県庁内の異動の他にも、各省庁などの行政機関や民間企業へ「研修派遣」という形で異動するケースがあります。

この研修派遣による異動について、市役所では、福祉系の職場で働いている人に厚生労働省へ派遣を声掛けしたり、回覧文書で案内を出して希望者を募るなどして、面接で選考したのちに派遣する職員を決めていました。派遣される職員は新採用から3年以上たっている20代~30代くらいまでの職員が多いようでした。

県庁の場合も、声かけや案内で希望者を募るのは同じですが選考があるわけではなく、本人が希望しなくても半強制的に派遣されるケースも多いようです。県職員の方が比較的、市よりも派遣される職員が多いため、希望者だけでは必要な数に満たないからかもしれません。

地方公務員の派遣:派遣後には学んだ知識を活かせる部署へ

市・県のどちらも、派遣先から戻ってくると学んできた知識を活かしてもらうために派遣された先と関係する職場に配属されます。学んできたことはもちろん役にたつのですが、それ以外にも研修期間中に国の職員や他県の派遣職員と仲良くなってできたコネクションが県や市での仕事に活かされるということです。

派遣先の仕事は総じて、地方公務員の仕事よりもシビアで忙しく求められることも多いので、戻ってきた人はたくさんの経験をつんで、派遣前とは段違いに仕事が出来るようになっていることがほとんどです。

しかし、厳しさに耐えられず心を病んだり、期間を満了せずに帰ってきたりという人も少なからずいたので、自分の適性を見極めて慎重に決めることをおすすめします。

地方公務員の人事異動 5)出世コースは存在するのか

地方公務員の異動事情について、多くの方が「出世コース」が存在するのか気になっていると思います。「出世コース」の前に説明したいのが、市役所では、異動の「ルート」があると言われていたことです。


この「ルート」には、高齢者・児童福祉・ケースワーカーなどの福祉系の職場を歩んでいく「福祉ルート」や、子持ちの女性職員に多いパターンの市民課、支所、国保等を異動する「窓口ルート」(定時帰庁できる)、市民税課の後に進みがちな「税関係ルート」、庶務係になることが多い「庶務・予算担当ルート」などがあり、職員がそれぞれ得意分野を持てるように、人事担当がそれぞれの「ルート」考えて異動させているということでした。

そして、各ルートで適性を発揮した職員が、課長やその先の役職へと昇級していくようです。

公務員の「出世コース」は存在した!

「ルート」の中でも特に「出世コース」と言われていたのは、企画課、財政課、人事課、市長室、各部の主管課(部全体の企画・予算を取りまとめる課)です。実際にこれらの課の課長や職員と仕事で関わってみると、頭が切れる人や、人当たりが良い人が配置されているように感じました。

公務員は採用から10年程度はあまりは給与に差がつくような昇進の違いはありませんが、勤続年数が経つにつれて、上記の課を回ってきた人が先に主幹や課長になって出世していくことから「出世ルート」は確かに存在するのだと思います。

このルートにのると出世はできますが、その分忙しくて残業も多くなるので、これらの職場には既婚女性は少なく、男性職員が圧倒的に多かったです。

まとめ - 地方公務員の人事異動事情は「市」と「県」で少しずつ違う

いかがでしたか?このページでは地方公務員の異動について、ある自治体の「市役所職員」と「県庁職員」の体験談をもとにご紹介しました。

公務員にとって「人事異動」は避けられないイベントですが、自分の希望の部署に異動出来れば、より仕事にやりがいを感じられるでしょう。

公務員の「人事異動」に対して疑問や不安を感じている人、今の部署から異動したいと考えている人は、以上の体験談をぜひ参考にしてみてください。

(作成日 2020年3月17日/ 最終更新日 2021年6月8日)

本記事は、2020年3月17日時点調査または公開された情報です。
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