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新型コロナウイルスのアメリカへの影響

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はじめに

2019年12月以降に中国の湖北省を起点に大流行している「新型コロナウイルス(COVID-19)」ですが、日本を含むアジア諸国をはじめ、ヨーロッパ、中近東、そしてアメリカにも感染被害が広がっています。

2020年3月11日、WHO(世界保健機関)は新型コロナウイルスをパンデミック(感染症の世界的な大流行)であることを正式に発表しました。この発表に先立ち、アメリカでは感染被害をこれ以上広げないために83億ドル(約8,900億円)の追加予算が上下院で可決されました。この予算はマスクや薬の購入代金、ワクチンや治療薬の開発、中小企業支援などに充てることが決定しており、アメリカ政府も対策に余念がありません。

今回は、アメリカでは新型コロナウイルス問題でどのような影響が出ているのか、連日報道される非常事態宣言は何を意味するのか、トランプ大統領はどのように対応しているのかなど、アリゾナ州で生活する筆者目線でアメリカの現状をご紹介します。

アメリカにおける新型コロナウイルス問題の現状

はじめに、2020年3月11日時点のアメリカの新型コロナウイルス感染被害や、非常事態宣言を発表した州など、新型コロナウイルス問題に対するアメリカの現状をご紹介します。

新型コロナウイルス問題に対するアメリカの現状

死者数:33人
感染者数:1,000人
非常事態宣言をした州の数:15州

▼それぞれの州が非常事態宣言をした日
2020年2月29日
・ワシントン州

2020年3月04日
・カリフォルニア州

2020年3月05日
・ジョージア州
・メリーランド州

2020年3月06日
・ケンタッキー州
・ペンシルベニア州
・ユタ州

2020年3月07日
・ニューヨーク州

2020年3月08日
・オレゴン州


2020年3月09日
・ニュージャージー州
・フロリダ州

2020年3月10日
・ミシガン州
・ノースカロライナ州

2020年3月11日
・アリゾナ州
・マサチューセッツ州

感染した人の数字だけを見て比較すると、中国やイタリアよりも被害数は少ないものの、着実に増えているのが現状です。また、被害が広がる前段階で非常事態宣言をする州が多く、日本と比較すると対処するスピード感が早いことが分かります。

各州による非常事態宣言以外にも市や郡などが独自に非常事態宣言を出すケースも相次いでいます。事実、カリフォルニア州のサンフランシスコ市では感染者数や死亡者数がゼロにも関わらず、予防策として市が非常事態宣言を出しています。日本で例えるならば、国(政府)による緊急事態宣言に先立つかたちで、北海道の鈴木知事が2020年2月28日に「緊急事態宣言」をしたことと同じと言えるでしょう。

ちなみに、筆者が住んでいるアリゾナ州では、2020年3月11日に非常事態宣言が発表されました。発表時、アリゾナ州では2名の感染が確認されているだけですが、感染被害が拡大することを想定して医療従事者や老人ホームなどの介護施設で働く人たちを優先的に感染から防ぐ措置を取るとしています。

アリゾナ州は非常事態宣言をしたことで、アメリカの政府機関であるCenters for Disease Control and Prevention(CDC/アメリカ疾病予防管理センター )から1,120万ドル(約12億円)を受け取る予定です。このお金で必要な薬や物資の調達、公共施設などの消毒を実施するとしています。

このようにアメリカでは次々に非常事態宣言が発表される事態になっています。WHOが新型コロナウイルスをパンデミックに認定したことは今後も大きな影響を与えると予想されています。

新型コロナウイルスによる非常事態宣言の意味

アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて各州が「State of Emergency」や「Public health emergency」と言った「非常事態宣言」を公表していますが、この非常事態宣言にはどのような効力があり、新型コロナウイルス問題に対してどのような影響を与えるのでしょうか?

各州が非常事態宣言をすることで、一時的に法の効力が強まります。例えば、新型コロナウイルス問題に対しては、ライセンス制度が異なる他州の医師や看護師が非常事態宣言をした州でも活動しやすくなったり、学校や企業などを法的な強制力を持って閉鎖できることなどがあります。また、この騒動に便乗して企業が薬の価格を吊り上げる行為を罰則化できることも含まれています。

非常事態宣言の最も大きな影響と言えるのが、対策にかかる費用を政府機関から配分してもらえることでしょう。2020年3月6日に成立した緊急予算83億ドルの一部も割り当てられる予定です。非常事態宣言についてごく簡単に言えば、州が政府からの援助を受けてあらゆることを制限または管理しやすくなることと言えます。

非常事態宣言をした州で起きていること

新型コロナウイルス感染拡大を受けて、実際に非常事態宣言をした州では、新型ウイルス検査キットの配布や検査、州兵による学校や公共施設の消毒、隔離措置を受けている人たちへの食料支援、特定地域の閉鎖(封じ込め作戦)などが実施されています。

具体的には、ニューヨーク州のNew Rochelle(ニューロシェル)という街では学校や企業などに2週間の閉鎖命令が下り、住人77,000人が実質的な閉鎖状態にあります。(移動制限はない)

本来であれば法的な拘束力や予算がないため、このようなことは不可能ですが、非常事態宣言をすることで一定の拘束力を持って実行できます。それぞれの州で新型コロナウイルスの感染を抑制するためには法的な強制力や柔軟性があった方が良いため、各州は非常事態宣言をしているのです。決して感染者数や死者数が爆発的に増えて非常事態になっている訳ではありません。

新型コロナウイルス問題がアメリカ政府に与えた影響

アメリカ政府は新型コロナウイルス感染拡大を受けて経済救済対策と感染拡大防止措置を取らざるを得なくなりました。その背景には2つのポイントがあります。ひとつは「株価暴落」、そしてもうひとつが「WHOによるパンデミック認定」です。


株価暴落

2020年3月9日のニューヨーク株式市場では、過去最大の下げ幅となる2,000ドルを超える株価暴落が起こりました。これを受けてトランプ大統領は10日に政府として減税などを含めた大規模経済対策の用意があることを発表しますが、具体的な案が提示されなかったため11日のニューヨーク株式市場は過去2番目の下げ幅となる1,000ドル以上の下落を記録しました。

中国経済が一時的な停止状態になったことで、アメリカの株価下落は予想されていましたが、予想を上回る影響があったことからトランプ大統領も対応を迫られる事態になりました。トランプ政権にとって好調な株価こそが最大の魅力だったために、今回の株価暴落は大きな痛手と言えるでしょう。

2020年11月に控えている大統領選に向けて株価下落をなんとしても阻止しなければ、トランプ政権は危機管理に弱いという評価を受けてしまう可能性があります。トランプ政権としては是が非でも経済への影響を最小限に抑えたいという思惑ですが、影響はあまりにも大きかったようです。

入国停止措置

2020年3月11日、トランプ大統領は「イギリスを除くヨーロッパ各国からの渡航を30日間停止すること」を決定しました。この措置はイタリアを中心にしてヨーロッパで感染が拡大していることや、WHOによるパンデミック認定が決定付けたとされています。

加えて、2020年1月頃には既にワシントン州で感染が始まっていたとされているにも関わらず対策を打たなかったこと、そして事態が大きくなるまで新型コロナウイルス検査キットを手配しなかったCDC(アメリカ疾病予防管理センター )の失態などが相次ぎ、トランプ政権は現実的な感染拡大防止措置を取らずに過ごしていたと評価されるようになりました。後手に回ったトランプ政権は大慌てで「欧州渡航30日間停止」に踏み切ったのです。

経済救済対策と感染拡大防止措置のふたつは新型コロナウイルス問題がアメリカ政府に与えた大きな影響と言えるでしょう。とくに入国停止措置が今後どの程度アメリカ経済に影響を与えるかは未知数のため、トランプ政権への影響はしばらく続きそうです。

トランプ大統領の対応

トランプ大統領はアメリカで感染が確認されてから3月上旬まで新型コロナウイルスに対する具体的な対策を示すどころか、フェイクニュースによって混乱が起きていると特定のメディアを批判することを続けていました。また、中国などの特定地域からアメリカへ入国することを停止した措置を高く評価し「命を守った」と自身の対応を正当化しました。

さらに、2020年3月9日の自身のツイッターでは、アメリカでは毎年のように27,000人から70,000人のアメリカ人がインフルエンザで亡くなっており、新型コロナウイルスによる死者数22人、感染者数546人(当時)を比較するように紹介し「このことを考えるように」と釘を刺す事態になりました。

そして、2020年3月9日に株価大暴落、11日にWHOによるパンデミックの認定が起きたため、慌てて国民に向けて演説をすることになります。この演説で「イギリスを除くヨーロッパ各国からの渡航を30日間停止」する大胆な措置を発表しました。

当初は強気だったトランプ大統領ですが、アメリカ国内の反応は冷ややかで、トランプ大統領が自身を正当化する度にむなしく響く状況になっています。とくに経済界からは速やかな減税策の提示や、利下げの実行などが求められており、今後どのように具体的な対応をするか注目されています。

トランプ大統領が最も懸念するのは2020年11月の大統領選への影響で、このままでは不十分な危機対応による経済の失速が問題視されることは間違いありません。対照的に、政権奪還を狙う民主党にとっては格好のチャンスでもあります。トランプ大統領が初期対応の失態をどのように巻き返すのか注目されます。

まとめ

このように新型コロナウイルス問題はアメリカ人の健康被害だけでなく、アメリカの経済や国家安全保障に影響を及ぼしています。今後も感染が拡大した場合、さらに多くの州で非常事態宣言が発表され、より多くの範囲で経済への悪影響が予想されます。

新型コロナウイルス問題は、低い失業率や高い株価などの好調な経済を売りにしていたトランプ政権にとっては大きな痛手でになることは間違いありません。さらに、この問題は2020年11月のアメリカ大統領選にまで影響を及ぼそうとしています。

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本記事は、2020年3月17日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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