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【受刑者の大移動!】刑務所の引っ越し、病人受刑者をどのように護送したか

「刑務官」が読む機関誌「刑政」(矯正協会発行、2018年6月号)に掲載された記事から興味深いものを紹介します。

今回は、行刑史上でも珍しい「病人受刑者の護送」について紹介します。執筆は、元・刑務官の小柴龍太郎氏です。

2019年11月14日更新

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目次
「東日本成人矯正医療センター運営開始」
病人である受刑者の大量移送はどうやって行われたか。
まとめ

「東日本成人矯正医療センター運営開始」

この刑政には、平成30年1月、東京都昭島市に「東日本成人矯正医療センター」が開設されたことが紹介されています。八王子医療刑務所を同市に移転するとともに、医師や医療スタッフ、医療機器などを集中的にこのセンターに配置することによって、東日本全体の受刑者等の医療水準を引き上げようという構想の下に造られたものです。

このセンターが稼働することによって、医療刑務所に送って専門的な治療を受けさせたい受刑者をスムーズに引き取ってもらえるようになると期待できるので、現場の刑務所などにとっては大助かりなことです。重病人を一人抱えるだけで現場の刑務所などは大変なのですから。

病人である受刑者の大量移送はどうやって行われたか。

八王子医療刑務所には重篤な病気にかかっている受刑者などが収容されています。重篤ですから命の危険があるような病人です。また、身体的な病気だけでなく、精神的な病気(精神病など)で重い人たちも収容されています。もちろんベッドに寝た状態で移送しなければならない人だっているわけです。ですから、これらの受刑者たちを大量に同センターに移送することはとても難儀なことなのです。

では、一体、それをどうして行ったか。これは、特殊な受刑者の護送という意味で「刑務官」にとって知っておくべき好例だと思うので、以下に紹介します。

(1)寝たきり状態の者についてはストレッチャーを使って救急車で搬送する計画を立てた。救急車は民間から18台を調達し、計20台を使って2回転させ、38名の受刑者を無事搬送。容態が急変するかもしれない受刑者の救急車には医師も同乗。

(2)車椅子を使用させる必要がある受刑者については、車椅子ごと乗車させることができる民間の大型観光バスをチャーターして搬送。

(3)その他の受刑者については、府中刑務所等から計12台の護送車と「刑務官」65名の応援を得て搬送。

(4)地元警察とは2年前から協議を重ね、護送途中のすべての信号機に警察官が配置され、道路にも立哨警備が施された。

(5)以上の態勢で実施した結果、午前8時に始まり、午前11時34分までの3時間半余りで滞りなくすべての受刑者の護送が完了した。

まとめ

医療刑務所の受刑者全員を一斉に護送するということは、行刑史上もそうそうあるものではありません。担当者は本当に大変だったと想像します。

最近ではオウム事件関係の死刑確定者が東京拘置所から全国の拘置所等に護送されるという例もありましたが、これら特殊な受刑者等の護送は刑務所等にとって極めて責任重大な仕事です。無事に終わって当然であり、万一逃走とか身柄奪取などの事故が起きれば一大事となります。

そこで、絶対にそうならないために「刑務官」たちはXデー(護送当日の日時)の秘密を厳守し、それぞれの役割を確実に果たし、同時に、事態の変化に応じた臨機応変の行動もできるようにしなければなりません。個の力と組織(部隊、チーム)の力が試される。それが、このような特殊な護送なのです。

そして、その護送に関わるよう命じられた「刑務官」は、自分の日頃の勤務を通じて見に付けた力が認められたと大いに喜ぶべきことだと思います。

(小柴龍太郎)

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