【再就職先も刑務官!】定年退職した後の「刑務官」の暮らしとは?

「刑務官」が読む機関誌「刑政」(矯正協会発行、2018年7月号)に掲載された記事から興味深いものを紹介します。

今回は、「定年退職後の刑務官の再就職先」について紹介します。執筆は、元・刑務官の小柴龍太郎氏です。


退職後をどう暮らすか?

「刑務官」が定年退職してもすぐには年金がもらえなくなって久しいものがあります。そうすると、年金が支給されるまでの間どのように暮らすのかが「刑務官」にとっても重要な問題になります。

中には再就職せずに、それまでに貯めたお金とか退職金で暮らそうという人もいますし、別の人は「再任用制度」を使って刑務所等で再び働こうとする人がいます。

「刑政」7月号にはその「再任用制度」を紹介する記事が掲載されていますので、私が興味を抱いたところを紹介します。

「再任用制度」

「再任用制度」とは、定年で退職した「刑務官」を対象として、年金がもらえるようになるまでの間、再び刑務所等で働けるようにする制度です。これは以前からあったのですが、平成25年度からその運用が大きく変わったということです。

どういうことかといいますと、以前は希望しても必ずしも再任用してもらえなかった人がいたのですが、閣議決定が行われて、希望すれば原則として全員が再任用されるようになったというのです。

これは、退職後の暮らしを心配しなくてもよくなるということですから、「刑務官」としては安心して定年退職まで働けますよね。とっても良いことだと思います。

元上司が自分の部下に

ただし、この制度の下ではちょっとややこしいことも起きます。

例えば、極端な場合、刑務所の所長で退職した人が再任用されると、退職時の階級より下の階級になることとされていますので、例えば統括矯正処遇官になったりします。すると、その刑務所で処遇部長だった人からすると、それまでは上司だった人がいきなり自分の部下になるわけです。これはさすがに困りますよね。

ですから、現場の人事担当部署では、できるだけこのようなことを避けようと、再任用されるときには別の刑務所にしたりするわけですが、すべてのケースが無事に収まるわけでもないし、人事異動の結果、やっぱり元上司が自分の部下になっちゃった、という悲喜劇が起きることもあるのです。

それでも大丈夫

そのような場合は、お互い確かにやりにくいと思うのですが、救いは昇任研修制度によってこのような事態に近いことが刑務所では以前からあったということです。

つまり、刑務所の世界では高等科研修を卒業すると早いスピードで昇任していきますから、研修に入る前は自分の部下だったのに、数年経ったらその部下が自分の上司になって転勤してきた、というようなことが少なからずあるのです。


当然やりにくいのですが、そこは階級社会、納得してやるしかありません。すっかり頭の中を整理して、過去の上司・部下関係が無かったかのように動ける人もいますし(多くの場合はこれ)、仕事中はルールどおりにやるけれども、勤務が明けて飲み会などになると昔の関係が復活するといった器用な人もいます。

ともあれ、このように「刑務官」の世界では以前から似たような現象がありましたので、「再任用制度」が導入されても職場で混乱が起きるというようなことはまずないのです。

その点、ほかの省庁の場合はどうなのでしょうか。相当困った状況になっているのではないかと少し心配になります。

まとめ

このような「再任用制度」を利用して退職後も「刑務官」をやっている人は、平成29年度で1016人いるそうです。「刑務官」10人に対して一人にもならない程度ですが、それでも今後更に増えるかもしれません。したがって、その功罪もこれからいろいろと取り沙汰されるかもしれません。

でも、日本の超高齢化社会は塀の中の方が顕著に進んでいます。高齢の受刑者は若い「刑務官」より刑務所のことをよく知っていて、「刑務官」の威厳が脅かされるといった珍妙なことを起きているとも聞きます。

その点、「再任用制度」によって定年退職したいわば高齢の「刑務官」が多く現場第一線で働くようになることは、高齢受刑者の処遇上好都合なこともあるでしょう。また、若い「刑務官」はそのような経験豊富な先輩から学ぶことも少なくないでしょう。

したがって、若い「刑務官」の皆さんには、これらおじいちゃん・おばあちゃん「刑務官」をけむたがらずに受け入れてやってください。既に退職した私からのお願いでもあります。

(小柴龍太郎)

本記事は、2019年11月13日時点調査または公開された情報です。
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