地域おこし協力隊とは何か?-実は公務員?

地域の活性化は、特に地方では、非常に重要な課題です。しかし、一口に「地域活性化」といっても、それを実現するのは簡単なことではありません。

本記事では、地域活性化のための制度である、「地域おこし協力隊」の概説と、地域に与える影響について説明します。

はじめに

地域創生の手段として2008年に創設されたのが「地域おこし協力隊制度」です。

この制度は、いわゆる都市部の住民を地域に受け入れてその地域のプロモーションや農林水産業に従事してもらうことによって、地方の活性化をしようという制度です。2018年度には5,000人を超える人材が地域おこし協力隊として派遣されて、地方で活躍しています。

地域おこし協力隊とは?

まずは地域おこし協力隊制度の概要について説明します。地域おこし協力隊制度の原資について国から特別交付税が支給されるので、上手に利用することによって地方創生に役立てられます。

地域おこし協力隊の制度

地域おこし協力隊は2008年に「地域力創造プラン」の中心施策として誕生した制度です。地方自治体が地域おこし協力隊の募集を行い、希望者が応募します。選考を経て、採用となった人物は地域おこし協力隊として1年から3年程度、嘱託を受けた地域で活動します。

地域おこし協力隊の活動は多岐に渡り、地方創生のサポートをしたり、地元の農林水産業へ従事したり、都市との交流・移住を促進したりとさまざまな「地域協力活動」を行います。

地域おこし協力隊を採用した地方自治体には総務省から隊員一人について報奨金の原資として200万円から250万円、活動費の原資として150万円から200万円が支給されます。4年目以降も地域おこし協力隊として活動してもらうことも可能ですが、4年目以降の隊員の報奨金、活動費については特別交付税措置がなされないので自治体が負担しなければなりません。

さらに任期の最終年度もしくは翌年に隊員が起業する場合は100万円を上限に経費が支給されます。また、地域おこし協力隊を募集する経費についても一地方自治体当たり200万円までを総務省が負担します。

総務省からの特別交付税措置が手厚く自治体の負担が少ないため、地方創生の手段として人気の制度の1つとなっています。

地域おこし協力隊の人数

地域おこし協力隊の人数は毎年増加しています。下の表は総務省が公表している制度発足からの隊員数や実施自治体の数を示したデータです。

総務省の「地域おこし協力隊推進要綱」に基づく隊員数のグラフ
出典)https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/02gyosei08_03000066.html

制度発足から順調に隊員数、自治体数ともに増加しています。2018度には1,000以上の自治体が地域おこし協力隊を採用し、5,000人以上の隊員が活動しています。

ちなみに3年が基本的な任期なので、既に地域おこし協力隊を卒業した方々もいます。同じく総務省の調査によれば、隊員の約6割は任期終了後も定住して、定住した隊員の約3割は起業していることが報告されています。

総務省は2024年には地域おこし協力隊を8,000人にすることを目標にしています。そのために隊員数の拡充や隊員への地場産業の事業承継支援、地域おこし隊よりも気軽に参加できる「おためし地域おこし協力隊(仮称)」の創設、OB・OGのネットワーク化などさまざまな施策に取り組んでいます。

▼詳細:http://www.soumu.go.jp/main_content/000555576.pdf

地域おこし協力隊になるためには?待遇は?

地域おこし協力隊の募集要項は各地方自治体によって定められています。まずは、赴任したい地方自治体に地域おこし協力隊制度があるのかについて確認してください。ちなみに、赴任する地方自治体に関わらず、住民票はその地域に移す必要があります。選考内容はその地方によって異なり、筆記試験、面接などを経て地域おこし協力隊に配属されます。

給料は総務省からの報奨金の原資に合わせて15万円~20万円程度に設定されている場合が多いです。一人かつ地方ならギリギリ生活できる金額ですが、家族を養わなければならない場合などは厳しいでしょう。

雇用形態は非常勤特別職もしくは嘱託職員となる場合が多いです。立場上は公務員ですが、任期があり、待遇も異なります。勤務時間については社会保険などを適用するために最低限必要な時間分だけ勤務して後は自由、他の公務員職に準じて規定が作成されているパターンの2つがあります。

前者の場合でも休んで良いというわけではなく、隊員個人が自分で何をするか決めて地方での活動に従事しなければなりません。

年齢について要件を設けていない自治体も多いですが、地域おこし協力隊のうち女性は40%程度、20代、30代で合計75%程度となっています。比較的若年層向けのサービスだと言えます。

▼詳細:http://www.soumu.go.jp/main_content/000555576.pdf

地域おこし協力隊の活躍

地域おこし協力隊は地方に入り込んで、さまざまな地方創生のための活動を行っています。本章では地域おこし協力隊の活動事例について紹介します。

国の伝統工芸品「秩父銘仙」を振興する:埼玉県秩父市

秩父市では国の伝統工芸品に指定されている「秩父銘仙」という着物の振興のために地域おこし協力隊制度を活用しています。隊員が機織りの技術を承継し、市内小学校で出前事業を行ったり、広報誌「はたおと秩父」を発行したりと秩父銘仙の魅力を発信しています。

地域おこし協力隊制度は地方で消えゆく産業の事業承継を促進したり、そのPR活動を行ったりという場合に使用されやすいです。

▼詳細:https://www.chichibu-iju.com/news/948.html

外国人が串本町の素晴らしさをPR:和歌山県串本町

和歌山県串本町ではトルコ共和国出身の方に地域おこし協力隊に参加してもらっていました。串本町のPR、国際交流、学校訪問、町内外での講演などが主な活動で、任期中は串本町の素晴らしさを海外にPRしてもらっていました。

地方自治体の国際交流といえば、お金がかかる、ハードルが高いと思われるかもしれませんが、地域おこし協力隊に海外の方に入隊してもらうことによって柔軟な国際交流が可能となります。

▼詳細:https://www.iju-join.jp/chiikiokoshi_report_cont/no83/index.html

荒廃した農山村集落を活性化する:岡山県美作市

農林水産業の従事者の減少から地方には荒廃した農山村集落が発生している場合もあります。この集落の活性化に地域おこし協力隊制度を活用しているのが岡山県美作市です。

美作市では限界集落であった梶並地区の空き家を隊員がリノベーション、シェアハウス、古民家バンクなどを開設しました。また、草木染・さおり織などの伝統技術を活用した新ブランドの立ち上げなども行い、限界集落の活性化を行っています。

ちなみに2017年6月時点で任期終了した隊員は17枚、そのうち12名は美作市に定住しています。

詳細:http://www.city.mimasaka.lg.jp/shimin/kurashi/ijyu/chiiki/1450402806300.html

起業家のベーシックインカムを与える:宮城県丸森町

地域おこし協力隊の仕組みを使って、町に起業家を集めて地域振興を行おうとしているのが宮城県丸森町です。

丸森町では「まるまるまるもりプロジェクト」として東北のベンチャーキャピタルなどと連携して、地域内に起業家の卵を集めて、町おこしに協力してもらいながら、町内での起業をサポートする活動を行っています。

隊員が先頭にあたって地元のサイクリングイベントを企画・運営したり、実際に丸森町で起業した下着ブランドが百貨店などでも取り扱われていたりと成果をあげています。

》観光振興の枠に囚われないユニークな地方創生策とは?

地方公務員を目指す方の中には地元に貢献したいという人もたくさんいると考えられます。 しかし公務員になることだけが地元への貢献の仕方ではありません。地元でビジネスをするという貢献の仕方もあります。 今回は、ユニークな地方創生策を行っている自治体として宮城県丸森町について紹介します。

地方創生と地域おこし協力隊

地方創生のために色々な自治体が地域おこし協力隊制度を利用する一方で、色々な成功事例も問題も発生しています。地方創生と地域おこし協力隊を取り巻く問題について是々非々で論点を説明します。

地域おこし協力隊の待遇

まず問題となるのが地域おこし協力隊の待遇です。上で説明した通り、地域おこし協力隊の手取りは月収20万円を切ることが多いです。年収に換算すると手取りで200万円を切るケースもあるので、一般的には低年収の部類の仕事に入ります。

地域おこし協力隊だけでの収入では生活が困難ですし、家族を養うのは更に困難でしょう。また任期も基本的に3年以内なので、卒業した後の生活もきちんと設計しておかなければなりません。

地域おこし協力隊として地方自治体を盛り上げつつ、自分自身の仕事や未来のための活動もしなければなりません。

モラトリアムと地域おこし協力隊

地域おこし協力隊の待遇の低さから、有能な人材が大志を持って地方に行くというよりもモラトリアムの場になりがちです。漠然と「地域に貢献したい・自分探しをしたい」という若者が地域おこし協力隊には多いのではないかと言われています。

もちろん、地域おこし協力隊が参画する隊員のレベルが低ければ地方創生策が失敗するかもしれないのでこれは重要な問題です。

ただし、これは地域おこし協力隊に参加する人員というよりも受け入れる地方自治体の方に大きな責任があります。一般企業の募集でも待遇が悪ければ相対的に集まる人員のレベルも低くなりますし、モチベーションも上げにくくなります。

また、総務省が費用を持つので、とりあえず募集はしてみたものの、受け入れ体制についてきちんと整備していなかったため、行政側からすれば隊員が使えない、隊員側からはブラック行政に関わっているというミスマッチが発生している場合もあります。

ミスマッチは制度設計のミスから往々として発生します。

尖った制度運用で差別化する

地域おこし協力隊制度は地方自治体ごとの制度設計の自由度が高い制度です。よって、上手に活用できる自治体は地方創生のための強力な武器にできますが、反対に制度設計が甘いとかえってその自治体の評判を下げてしまうことにもつながります。

地域おこし協力隊制度を活用して、地域を活性化させるためにはただ公務員のお手伝い要員を募集するのではなく、特定の目的を設定して権限移譲していくような制度運営を行わなければなりません。

まとめ

地域おこし協力隊を開設して10年以降が経過しています。受け入れる自治体数も参加する隊員数も順調に増加していますが、制度設計の自由度の高さゆえに使いこなせている自治体とそうでない自治体の差が拡大しつつあります。

卒業した隊員のその地方への定住効果があることは確認されていますが、ブラックな雇用の温床にならないか、人生のモラトリアムを行いたい人員の貯まり場になっているではないかと痛烈な批判を受けることもあります。

地域おこし協力隊制度を活用して、自治体のファンを増やす、地域を創生できるか否かはその自治体の制度設計に依存します。


本記事は、2020年2月21日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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