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「SDGs」とは何か?-「SDGs」を巡る4つの論点

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目次

はじめに

近年、二酸化炭素の排出や女性の権利向上など、環境、人権をとりまくさまざまなトピックがニュースを賑わしています。

これらのニュースの中で世界的に注目を集めているのが「SDGs」です。

これまでも「SDGs」のように世界的な目標を決めて人権保護や環境問題に取り組もうという試みはありましたが、「SDGs」に関しては政府や国際機関だけではなくビジネスにも実体的な影響を及ぼそうとしています。

「SDGs」とは何か?

「SDGs」とは「Sustainable Development Goals」の頭文字を取った用語で、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」のことを指します。

目標は17のゴール、169のターゲットから構成されており、2015年に国連サミットで採択されました。これらの目標を2030年までに達成するために政府や企業が世界的に協力していこうというのが「SDGs」のコンセプトです。

前身となったMDGs

「SDGs」はゼロから目標が設定され、突発的に立ち上がったテーマではなく前身として「MDGs」という目標があります。

「MDGs」とは「Millennium Development Goals」の略語で日本語に訳すと「ミレニアム開発目標」のことを指します。

「ミレニアム」開発とあるように2000年9月に国連サミットで採択されたモノで、発展途上国における飢餓や貧困の撲滅などの8つのテーマを目標としていました。ミレニアム開発目標の期限は2015年までで、「MDGs」の後継として設定されたのが「SDGs」です。

対象が拡張された「SDGs」

MDGsから「SDGs」に目標が更新されるにあたって、テーマも増えましたが一番大きな違いはこの目標の主体です。MDGsの目標を達成しなければならない名宛人は国家政府であったのに対して、「SDGs」の名宛人は「全ての国、全てのステークホルダー及びグローバルパートナーシップ」となっています。

ステークホルダーとは、直訳すると「利害関係者」のことを指しますが、端的に言えば企業のことだと考えられます。国際的な企業は国家の枠を超えて活動しますし、経済活動は環境や従業員の生活にも大きな影響を与えます。

これを受けて、環境問題に関心が高い、もしくは政府の意向を忖度する企業は既に続々と「SDGs」に対応した経営をはじめています。


「SDGs」の「ゴール」について

「SDGs」は17のゴール、169のターゲットによって構成されています。各ゴールに対して平均10個程度のターゲットが紐づけられており、各ゴールは次のとおりです。

「SDGs」の17のゴール

1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
8.働きがいを経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任、つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう

1,2,3,4,6番の目標などはMDGsからの継続的なテーマでありますが、8,9,12番の目標などは企業のガバナンスを意識したゴールであると考えられます。

これらのゴールを達成するために、さまざまな国家、企業がターゲット達成に取り組んでいます。

「SDGs」が社会に与える影響

「SDGs」の理念に賛同して実現に協力する方、どこか懐疑的な視点から眺めている方など「SDGs」に対する理解は千差万別です。しかし、多かれ少なかれ「SDGs」は行政や企業の活動について影響を与えています。

日本国内における「SDGs」が社会に与えた影響についていくつか解説します。

金融庁がESG投資を推進する

ESG投資とは企業の環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に対する取り組みを重視する投資スタイルのことで、端的に言えば「SDGs」に取り組むことによってESG的な投資価値が向上します。

そして、金融庁はESG投資を推進しています。2018年6月の「SDGs」推進本部の幹事会の「金融行政と「SDGs」」という発表の中で金融庁は「SDGs」に対する基本的な方向性として、「企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大を目指すという金融行

政の目標にも合致するものであり、金融庁としてもその推進に積極的に取り組む」と説明しています。

また、金融庁が示す機関投資家の行動指針(スチュワードシップ・コード)を2020年春に改定して、ESG投資を重視することを明記すると発表しています。

さらに、厚生労働省所管の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は公的年金の運用に関してESG投資を重視、18年度末には3.5兆円をESGに基づいて投資を実施していると発表しています。

▼参考:
》金融行政とSDGs
https://www.fsa.go.jp/policy/sdgs/FSAStrategyforSDGs.pdf

》投資家指針、ESG明記-金融庁 来春改定で普及後押し
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53177140Q9A211C1MM8000/

》公的年金、ESGに3.5兆円投資 18年度末
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47015470V00C19A7EA4000/

経団連が企業行動憲章を改定する

「SDGs」に関する取り組みは、政府機関だけではなく企業にも広がっています。象徴的な出来事として挙げられるのが、経団連の企業行動憲章の改訂です。


経団連は加盟企業の行動指針として企業行動憲章を公表しています。この行動憲章が2017年に改訂されました。改訂について経団連は「Society 5.0 for 「SDGs」」をコンセプトとして「今般、経団連では、Society 5.0の実現を通じたSDGsの達成を柱として企業行動憲章を改定する。」と発表しています。

また、企業行動憲章を改定するだけではなく、加盟企業による「SDGs」に関する取り組み事例を収集、公開しており、「SDGs」に関する啓もう活動にも注力しています。

経団連に加盟していない企業も数多く存在しますが、大企業の中には「SDGs」に積極的に取り組んでいる企業もたくさん存在していて、中小企業にもその活動が浸透しつつあります。

▼参考:
》企業行動憲章
https://www.keidanren.or.jp/policy/cgcb/charter2017.html

》Keidanren「SDGs」
https://www.keidanrensdgs.com/home-jp

内閣府、「SDGs」未来都市、自治体「SDGs」モデル事業を選定

地方自治体に「SDGs」が普及するように内閣府が中心になって政府の普及活動に力をいれています。

2018年から政府は「SDGs」関するモデル事業に取り組む都市の認定を行っており、2020年度の事業も2020年3月2日まで募集しています。過去には神奈川県川崎市、福井県鯖江市、和歌山県和歌山市などが選定されており、選定された都市と提案内容は内閣府地方創生推進事務局のWebサイトから確認できます。

▼参考:
》2020年度SDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業の選定について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/teian/sdgs_2020sentei.html

》2019年度SDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業の選定について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/teian/sdgs_2019sentei.html

》2018年度SDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業の選定について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/teian/sdgs_sentei.html

「SDGs」を巡る4つの論点

「SDGs」の理念に関して異議を唱える方は少ないと考えられますが、その実効性については賛成・反対でさまざまな立場が入り乱れると考えられます。

また、これらの立場は政治的思想や人生観、経済活動などに密接に絡むものであり、折り合いがつけにくい問題でもあります。

「SDGs」の実効性を巡る4つの論点について紹介します。

足並みがそろわないステークホルダー

「SDGs」は国連が中心になって設定された目標ですが、「SDGs」が達成されるための国際的な協調関係はありません。例えば、国別の二酸化炭素の排出量では中国が全世界の28%、アメリカが15%を占めると言われています。3位がインドの6.4%なのでいかに中国・アメリカが二酸化炭素の排出量の占める割合が大きいかが分かります。

「SDGs」において二酸化炭素の排出量削減は重要なテーマの1つですが、これ一つとっても足並みはそろいません。中国は二酸化炭素の排出を抑制することを目標としていますが統計を見ればほぼ横ばいですし、気候変動対策に関するルールを定めたパリ協定から2019年末に脱退しました。

世界の気候変動対策に関して最も責任があると考えられる、国家でさえ足並みがそろっていません。

具体的なアクションに落とし込めるのか?

環境問題に対する解決策はそもそも一義的に決定できるのかという問題もあります。

日本でも未だに地球の温暖化に懐疑的な論者も存在しますし、クリーンエネルギーの推進策についても火力発電を抑制するならば原子力発電を推進しなければならないですが、火力発電抑制論者が原子力発電反対論者でもあることも多いので実効的な解決策が設定できません。

「SDGs」に設定されているゴールについて反対する論者は少ないとしても、具体的な解決策になった途端に見解がバラバラになり、結局実効性の無い夢の計画だけが残ることにもなりかねません。もちろん、各企業のちょっとした取り組みのレベルなら実行可能ですが、政府が絡むような大きな取り組みとなれば、それだけ実行に関する意思決定が困難になります。


「SDGs」かROE、企業に求められるのはどちらか?

「SDGs」の達成は政府だけではなく、企業の協力も求められます。一般的に「SDGs」に取り組んでいる先進的な企業には事業の永続性が期待されるので、企業価値が高まったりESG投資が集まったりすると言われていますが、理論的な裏付けがあるわけではありません。

むしろ、「SDGs」に経営方針が引っ張られることによって、既存のビジネスのバランスを崩して、余計な経費を発生させかえって企業の収益を圧迫する可能性すらあります。もちろん、職場環境の整備などは「SDGs」にも直接・間接的に影響しますし、事業を永続させるためにも必要です。

ただし、「SDGs」のために原材料、製造工程などに過度に環境に配慮したモノを使ったり、本業とシナジーの無い環境事業に取り組みだしたりすると失敗する可能性が高くなります。

「SDGs」は企業が経営計画と矛盾しない範囲で取り組むべきことであり、一義的に企業に求められるのはROEだと考えるべきでしょう。

補助金のための修辞にしか使用されないのではないか

「SDGs」の理念自体は素晴らしいけれども、日本での具体的な経済活動について落とし込んだ時に、補助金を配る名目にしかならないのではないかという論点も存在します。

このような国際的な政策を実現するために政府は補助金を通じて自治体や企業に取り組みを求めますが、自治体や企業は補助金が目的なので、一度補助金が交付されて「SDGs」な事業を開始しても予算が切れて単年度で事業が終了したり、補助金が交付されるための最低限の取り組みしか行っていなかったりというケースも考えられます。

補助金自体の目的化を防ぐためには補助金を配るだけではなく、自治体や企業に自発的に「SDGs」に取り組むための動機づけが必要ですが、多くの政策がそうであるように簡単なことではありません。

まとめ

「SDGs」に対するコミットメントは政府も企業も巻き込んで国際的な潮流になりつつあります。国連に加盟している政府が採択されたのでコミットしなければならないのはもちろん、企業もESG投資や事業の永続性、ブランディングなどを考慮すると無視できない問題になりつつあります。

ただし、「SDGs」の実効性については本記事で挙げたように4つの論点が存在します。

大事なのは自分が所属している組織のスタンスを決めることです。例えば、自治体なら「SDGs」都市として地域をブランディングしたり補助金を貰ったりと地方創生の機会になります。企業なら「SDGs」対応によってESG投資を流入させたり、環境問題に強い関心を持つ企業とコラボレーションしたりとさまざまなメリットが考えられます。あるいは特に対策をしていなかったとしても、大きなデメリットを受けるわけではないでしょう。

ただし、「SDGs」に関して無知であれば、せっかくのビジネスの拡大や地方創生のチャンスを逃すことにもなりかねません。一般企業のビジネスマン・公務員どちらで働くにしても教養として知っておいて損はないでしょう。

関連記事

》SDGs(エスディージーズ)「持続可能な開発目標」とは?

近よく目にしたり耳にしたりする「SDGs」は、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。2030年までの国際的な取組である「SDGs」とは具体的にどのような意味を持つのか、解説します。

本記事は、2020年2月26日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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