【医療費が全て無料】日本と比較したスペインのいいところ・悪いところ

今回は、スペイン在住の日本人に、「スペインのいいとろ・悪いところ」をコラムにして書いていただきました。公務員の方は、この機会に他国のいい点・悪い点、そして日本とは異なる、スペイン独自の習慣などを知ってください。


はじめに – 「スペイン」について

スペインは、南ヨーロッパのイベリア半島に位置する国で、首都はマドリードです。ラテン系民族が多いので、スペイン人は「陽気で明るい」というイメージを持つ人が多いようです。

本記事では、スペインに済む日本人の目線で、日本と比較したスペインのいいところと悪いところについてスペイン在住の日本人にレポートいただきました。

日本と比較した、スペインのいいところ7つ

まずは、日本と比較して感じた「スペインのいいところ」を7つ、挙げてみました。

スペインのいいところ1:一日の食事が5回あること

スペイン人は一日に5回食事をします。

一日に5回も食事の時間があるので、その度に家族や同僚や友達との会話の時間も沢山あります。カフェにも頻繁に行ったりするので、知らず知らずのうちに顔見知りが増えたり、仲良くなる人もいるので、人と人の出会いの場になり、とても良いことだと思います。

以下、5回の食事の詳細について説明します。

1回目 「DESAYUNO(デサユーノ)」
「DESAYUNO(デサユーノ)」は、朝起きて仕事や学校に行く前にとる、簡単な朝食のことです。

コーヒーやココア、オレンジジュースといった飲み物にトースト、またはクッキーやマドレーヌ、シリアルを食べます。トーストのパンはバゲットが一般的です。オリーブオイルと塩とトマトのすり下ろしを混ぜたのもの、オリーブオイルに塩を振ったのもの、バターにジャム、先程のトマトソースの上に生ハムを乗せたものといった感じが主流です。

2回目 「ALMUERZO(アルムエルソ)」
2回目の食事は、「ALMUERZO(アルムエルソ)」といい、朝食を食べてから2~3時間後の9時~10時頃に食べます。

朝食と似たような軽食をカフェで食べたり、仕事場や学校ではボカディージョと言われる、バゲットにハムやチーズ、パテを挟んだものやサンドウィッチを持参して食べたりします。この他、バナナやリンゴ等の果物を食べる人もいます。

日本の学校ではない習慣ですが、スペインの学校では必ず毎日このアルムエルソを家からそれぞれ持参するため、学校では食べる時間もしっかりと準備されています。仕事先でも15分程アルムエルソの時間が当たり前の様に取られます。


3回目 「COMIDA(コミダ)」
13時~15時の間に食べるのが、昼食(コミダ)です。一日の食事の中で一番量があります。前菜・メインプレート・デザート・コーヒーという形です。

4回目 「MERIENDA(メリエンダ)」
「MERIENDA(メリエンダ)」は、17時~19時頃に食べるおやつのことです。甘いものを食べる人もいれば、コーヒーにチョコレートという人もいます。

子供は公園で遊びながらボカディージョを食べることが多いです。日本では遊びながら何かを食べることはしませんが、スペインでは割と普通の光景です。おばあちゃんが公園で走り回る孫を追いかけながら、ボカディージョを一口ずつ口に入れていく光景をよく目にします。

5回目 「CENA(セナ)」
「CENA(セナ)」は、20時~22時に食べる夕食のことです。食べる時間が遅いためか、一般的には量もそんなに多くないです。

スペインのいいところ2:医療費が無料なこと

スペインでは全ての国民の医療費が無料です。スペインには公立病院と私立病院の2種類の病院があり、医療費が無料となるのは、公立病院です。

公立病院なら、出産も無料ですし、大きな手術ももちろん無料です。夜間の救急に訪れても無料ですし、入院費用も無料です。そして医療水準は世界的に見てもとても高いので安心です。そのためか、EU内で発行されるEU保険証を持ち他の国からの訪れる人もいる程です。

ただ、公立病院では順番待ちをして診察・検査・手術となるので、それが待てないから私立病院へ行くという人もいます。私立病院は医療費全額負担になるので、予め月々保険に加入して訪れるという人が殆どです。月々50ユーロ程の保険料が一般的です。薬は薬局で購入しますが、薬代も子供と高齢者は全て無料となります。

また、歯の治療も順番待ちの予約制ですが、無料で診てもらえます。しかし、ある程度時間がかかっても待っていられる歯のトラブルならいいですが、「今この瞬間、虫歯が痛む」などの歯の問題は待てるものではないので、お金を払って私立医療歯科で治療することが多いです。

公立病院なら金銭的なことを心配することなく、お医者さんにとことん診てもらえるという大きな安心感は、スペインのいいところの一つだと思います。

スペインのいいところ3:毎日が快晴なこと

3つ目は、天気がいいという点です。太陽の国と言われるイメージのまま、毎日が快晴です。澄み切った青い空が、毎日見られます。

夏は日差しが強いので日焼け対策はバッチリ必要ですが、夜は10時でも明るい日々が続くのでカフェやバルのテラスでのんびりバカンスを楽しめます。そんな強烈な太陽の下に洗濯物を干せば、ものの2時間で完璧に乾きます。

スペインのいいところ4:バカンスがとても長いこと

いいところの4つ目は、バカンスに関してです。

大人の夏のバカンスが1ヶ月、子供は約3ヶ月もあります。仕事場では同僚との兼ね合い話し合いでいつバカンスを取るかを決めます。15日ずつ2回に分けて取る人もいれば、1ヶ月まとめてとる人もいます。

日本で子供の夏休みが約3ヶ月もあることになれば大問題ですが、スペインではそれが普通の事として成り立っています。これだけ長いお休みがあれば、やりたいことが沢山出来ます。どこへでも行くことも出来ます。

また、多くのスペイン人は自宅とは別に別荘を持っています。自宅の近くにある別荘ならば週末にも訪れていますが、そうでなければバカンスの時に家族勢揃いでその別荘で過ごすことになります。


スペインは観光大国なので、どの街もホテルのレベルが高く、ウィークリーやマンスリーマンションも選びきれない程の数があります。駅や飛行場の整備もしっかりされており、快適にバカンスの予定が立てられます。

スペインのいいところ5:観光大国なこと

5つ目は、スペインは観光に優れている国であるということです。

スペインは訪れる街によって国が変わってしまったかと思う位に違いがあると言われます。実際にスペインの二大都市のマドリードとバルセロナだけを見ても、大きく違います。街並みも異なり、暮らす人々の雰囲気も異なります。言葉の違いもあります。東京の標準語と大阪の関西弁の違い以上に大きな違いです。なので、国内旅行でも他の都市に行くと新鮮で、非常に楽しめます。

またスペインには世界遺産も多く、長い歴史の中での多民族、異宗教の交流から生まれた独特な雰囲気にも魅せられます。

スペインのいいところ6:パン屋さんとカフェとバルがいたるところにある

街を散歩していると、右にも左にも次から次にパン屋さんとカフェとバルが点在しています。これでもかという位に目につくので、「潰れないのかな?」と思ってしまう位です。しかしながら、この心配は無用のようで、上手く共存する場合が多く、潰れることは少ない様に思います。

朝の7時には大抵のカフェは開いています。日本で流行りのカフェで朝食セットを頼むと、値段も高めで量も少ないような気がしますが、スペインでは安くてボリューム満点の朝食が食べられます。

スペイン人からするとコーヒーは1杯1ユーロから2ユーロ程度(約120円から240円程度、小さな村や町の価格と大都市での価格が異なります)が普通で、その値段で物凄く美味しいもコーヒーだ飲めるので、日本のカフェのコーヒーは高く感じるそうです。日本でも、コンビニやファストフード店のコーヒーは安いですが、やはり質が違うようです。

スペイン人は、カフェにはちょっとした空き時間に行き、カウンターで1人でコーヒーを立ち飲みして仕事場へ戻るということもあります。カフェでくつろぐという意味では同じですが、カフェの利用の仕方が、日本とは違います。

一般的に日本のカフェは、ヒーリング音楽が流れていたり、静かにおしゃべりとしたりという、癒しがメインのカフェが多いかと思いますが、スペインではそうではありません。カフェはくつろぐ場所ではありますが、みんなが集う場所です。大きな声でしゃべりますし、笑います。子供がうるさく走り回っていても問題ないですし、誰も気にしません。スペインのカフェになれていると、日本のカフェはお行儀が良すぎて逆に変な印象を受けます。

スペインのカフェは、午後7時頃に締まる場合もありますが、夜も営業する店も多いです。アルコールも準備されているため、週末は深夜や明け方まで営業しているところもあります。この場合にはカフェのみの営業というよりも、カフェバルとしての営業が多いです。

どの地域でも一年中カフェのテラスは、がやがやと人が集っています。軽食やおつまみ(TAPAS)も豊富に準備されているので、食事をしにレストランへ行くのではなく、カフェのテラスで済ませるという人もいます。特にTAPASは物凄い種類があり、TAPASのみのレストランもある位です。一般的なカフェでは数種類のTAPASがあり、主にビール等のアルコール類の注文時に1皿おまけで付いてきます。ビールの価格はとても安く、コーヒーの値段よりも安い場合もある程です。スペイン人が水の様にビールを飲むのも頷けます。

街の中心には必ず〇〇広場という大きな広場があります。〇〇広場は大抵四角い敷地になっていますが、その敷地内のテナントを一周りすると、レストラン、カフェが殆どを占めています。

それぞれのお店の前には、お店の入り口がある付近から〇〇広場の中心に向けて机と椅子がずらりと並べられます。特に週末になると、椅子の空きを探すのも大変な位に朝から晩まで人が集っています。2つ3つのお店をはしごしながら楽しむことも簡単に出来ます。

広場内には自動車やバイクは入り込めないため、長居する大人たちと一緒に来ている子供たちも飽きることなく、騒いだり走り回っています。子供たちがいくら騒いでいても、それ以上に大人たちがワイワイと楽しんでいるので、静かにしなさい!!と怒られている子供を見たことは一度もありません。

パン屋さんも朝の7時頃から開いています。スペイン人はお米もよく食べますが、パンもよく食べます。スペイン人は、パエリア(お米料理)の時もプラスでパンを食べたりします。どんなレストランでも、どんなメニューでも、必ず切られたバゲットが籠に入って出されるのです。中華料理レストランに行くと、メニューとは別に「パンも下さい」と言うお客さんもいる様です。

スペイン人にとって、パン(一般的にバゲットのことです。)は毎日買うのが常識です。次の日や、2~3日後の硬くなったパンはそのままは食べずに、他の料理に使われたりします。公園で鳩に餌として硬くなったパンをあげている人もいます。朝のお散歩がてら、行きつけのパン屋さんに行き、1本その日に食べるパンを買うというのが日課の高齢者もいます。

スペイン人は一般的に1週間に1度、スーパーでの買い物を済ませます。1週間分の食糧を買うので、コストコのカートの様な大きなカートに山盛り食糧購入というのが普通です。会社勤めで平日に毎日パン屋さんへ行く時間がない人たちは、スーパーでパンを1週間分買う人もいます。スーパーの帰り道に、行きつけのパン屋さんでパンをまとめ買いする人もいます。1週間分のパンは帰宅後、即冷凍します。パンは1日に1本ずつ冷凍庫から取り出して食べます。その位無くてはならない食品の一つです。

これだけ消費があるパンですので、需要と供給が上手に満たされています。やはりパン屋さんの数がこれだけ多くある意味がわかります。

パン屋さんに売られているパンは、どこのパン屋さんも似通っています。バゲット類の細長くて堅めのパンが数種類、クロワッサン、チョコレートが使われているパン数種類、ピザなどの総菜パンが数種類、マドレーヌ、クッキー類が主なものです。日本のパン屋さんの様に何十種類も総菜パンが並んでいることはあまりないです。流行りのバターたっぷりのクロワッサンやマフィン、お洒落で美味しそうなパンが並んでいるパン屋さんも最近は増えてはきましたが、定番商品にプラスされて販売しています。目新しいパン屋さんを探してみたり、売られているパンが似ているものの、ここのクロワッサンは一味違う、とお気に入りのパン屋さんを探してみる楽しみもあります。


点在する密度は変わりますが、どんな小さな町や村にでもパン屋さんとカフェとバルは沢山あるのが当たり前の光景です。それだけパン屋さん、カフェ、バルを利用するという事が生活の一部になっているのです。

スペインのいいところ7:毎日ゴミが出せること

スペインでは毎日ゴミが捨てられます。

可燃ごみ、紙類、ビン・缶類、プラスチック類と分別されています。100m感覚くらいに可燃ごみ用のコンテナーか大きなゴミ箱が置いてあります。地域によりごみ収集の時間が異なりますが、大抵の地域では収集時間は夜になります。可燃ごみは毎日収集されます。しっかり蓋が閉まるコンテナーやゴミ箱のため、動物が来てゴミを荒らすという心配はありません。

リサイクル出来るゴミも、毎日好きな時に捨てられます。それぞれ色の異なるカラフルで大きなコンテナーが捨てる場所になっています。このコンテナーは200m感覚くらいに設置されています。可燃ごみと同様に収集は夜になりますが、こちらは毎日の収集ではありません。

この他に古着や靴を捨てられるコンテナーもあります。教会のそばにあることが多いで不す。不用になった古着や靴を困っている人へ分け与えられたり、必要としている国々へ送ったりもされています。

曜日も時間も関係なくゴミが捨てられる手軽さは快適な暮らしに繋がります。国民の一人一人がゴミをしっかり分別することへの意識も高いです。可燃ごみにビンが混ざっているという様な問題も少ないです。

また、ゴミ収集のための税金を毎年各世帯で少し払うことになっています。そのため、税金で100%動く仕組みが出来ています。ゴミ収集に関わる事は全て行政の仕事になります。日本の様に地域で協力し交代で行うゴミ当番等の責任もなく、その様な事に時間を割くことは一切ありません。ゴミ収集に始まり、各コンテナーの設置、コンテナーの掃除、消毒、ゴミ収集後のコンテナー周辺の掃除、全て行政が行います。街中に多数設置されているゴミ捨てコンテナーですが、真夏でもゴミの匂いがしたことは無いほどに衛生管理もしっかりとされています。

日本と比較した、スペインの悪いところ3つ

次は、日本と比較して、スペインの「ここが良くないな」と思った点を、3つ説明します。

スペインの悪いところ1:急ぐことを知らない

とにかく時間がゆっくりと流れています。

日本社会の時間の感覚で物事が運ぶことはありません。電車にしてもバスにしても時間通りに来る事は殆どないです。

スーパーやお店のレジで大行列が出来ていてもお構いなしで、店員さんが急ぐというようなことはまずないです。後ろに待つ人の事はお構いなしで、レジの店員さんとお客さんが世間話を始めることもよくあります。日本ではこういうシチュエーションにイライラしてしまう人や、文句を言う人がいますが、スペインではそんなことをいちいち言う人もいないくらいに、この光景が普通のことになっています。

シエスタの時間帯(お昼ご飯の時間帯です)はお店も会社もとにかく一旦閉まります。夏のバカンスで8月中お店や会社がお休みになることもあります。行政機関に何かの必要書類をお願いしたり、何かの手続きをしなければならない時は、この時間の流れで困ることもあります。

夏のバカンスを挟む時期には本当に驚く程時間がかかることもあります。それでも、こういうものだと理解し、この時間の流れを把握しながら暮らしていくことが大事です。時にはしつこくしつこく、強い意志ではっきりとお願いをすることも学ばなくてはいけません。

スペインの悪いところ2:ついつい食べ過ぎてしまうこと

悪いとまではいかないかもしれませんが、とにかく食べ過ぎてしまうことがよくあります。

一日に5回も食事の時間があるため、知らず知らずのうちにスペイン人と同じ様に食事をする様になります。体の調子も食事の時間に合わせられる様になり、それが当たり前になります。そしてついつい食べ過ぎてしまう傾向があります。スペインでは、体が細すぎると更に心配され、もっと食べなさいと皆から食事を勧められます。そのため華奢な体型の人は特に習慣に慣れるまでは注意が必要かもしれません。

スペインの悪いところ3:他人に合わせることをしないこと

スペインでは、出る杭は打たれることはなく、どんどん出ていきます。個性を尊重したり磨くにはとても良い環境です。

しかしながら、団結や統一を重視したい時には、しっかり詳細を伝えなければ上手くいかない場合もあります。

例えば、みんなで何かを行う時に「同じ衣装で揃えたい」という場合、どのような衣装で揃えるのかを、とても細かく詳細に伝える必要があります。日本だったら、大まかな内容を伝えるだけでも、日本人はその背景にあるものまで汲み取り、たいていの人は大きく外れることなく、に多様な衣装で揃うかと思います。

しかし、スペインではそうはいきません。黒いTシャツが必要だと伝えれば、日本ではきっと、たいていの人は黒色の無地Tシャツを準備するかと思います。せいぜい小さなワンポイントが胸に入っているくらいでしょう。

でも、スペインではなぜか、いつの間にか「大体黒色でいい」というニュアンスになり、黒色がなければ紺色、鼠色、むしろTシャツが無ければ黒色のシャツでもOK、となってしまう場合もあります。黒色が入っていればいいと解釈する人もおり、白地に黒色が入っているものを準備する人もいます。中には黒色のTシャツがないからお気に入りの服を準備するという人もいるほどです。


それぞれの個性が光るぶん、考え方や捉え方にも大きな幅が出ます。統一させたい場合には、自分が思う以上に詳細をしっかり伝えなければ、上手くいきません。

まとめ – スペインでの生活は楽しい

以上、私の考える「スペインのいいところ・悪いところ」でした。

行政のサービスに始まり、休暇の期間、食事の回数、個人の時間間隔に至るまで、日本とは異なる部分が多くあることをわかってくれたと思います。特に長期休暇が取りやすい点などは、公務員に関係なく、日本で働く多くの社会人が「羨ましい」と感じる部分ではないでしょうか。

日本にもいい点はたくさんありますが、スペインも同じくらい素敵で、とても暮らしやすい国であることが伝われば幸いです。

本記事は、2020年6月20日時点調査または公開された情報です。
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