台湾の住宅事情とそのメリットや課題

今回は、台湾に住む日本人女性の目線から、台湾の住宅事情、そのメリットや課題についてレポートしていただきました。

台湾独自の住宅事情について、ぜひご参照ください。


はじめに - 台湾では家を買いたい人が多い

台湾の人々は「家を購入する=財産を築く」という認識を持っており、家を買うということに対する意識は比較的高い人が多いです。

しかし、家を買いたいと思う人が多い一方で、都市部から離れた土地に家を築くことには消極的であることがほとんど。「家を買うなら通勤や生活に便利な土地で」という考えから、都市部やその近郊でのマイホーム購入を希望する人が増えています。

台湾の住宅で多いのはマンションや長屋

台湾で今主流となっているのは、一戸建てよりもマンションや長屋です。

台北市などの都市部では、比較的安価な900万~1000万台湾元くらいのマンションも増えてきていますが、日本円に換算すると約3200~3600万円。若い世代には支払いが大変な価格だと言えます。

長屋は台湾の伝統的な家のスタイルの1つ。厳密には3階建ての家が非常に近い距離で建てられており、壁などを共有しているわけではありませんが、連なった長屋のように見える住宅です。

一戸建ては富裕層や農家に多い

家を買うことに強い意欲を示す台湾の人々ですが、経済的な事情から一戸建て購入が叶わないケースも多いです。

台湾では一戸建て住宅を別墅(ビェスー)と言います。これは恐らく豪邸のような意味を持つ言葉です。実際、台北市などの都市部で一戸建てに住んでいる人はごく僅か。大半の人がマンションや長屋に住んでいるのです。

台北市内の住宅の価格を見てみると、マンションや一戸建ての1坪当たりの値段は100万~200万台湾元。日本円で350~700万円くらいするのが一般的です。50坪のマンションや土地を購入しようとすると5000万台湾元、日本円で2億円近くし、これは東京都で一戸建てを購入するよりも高いと言えます。一般的な家庭では都市部で一戸建てを買うことはほぼ不可能なのです。

とはいえ、土地やマンションが驚くほど高いのは台北市のみ。その他の主要都市、台中や台南、高雄、新竹なども台北市に続いて土地などの値段は高いものの、台北市ほどではありません。都市部やその郊外を離れ、田舎にいくと、土地の値段は一気に下がります。

よって、都市部から離れた地域で農家などを営む家庭にも、一戸建てを所有している人は多いです。

日本同様、台湾でも田舎へ行けば行くほど土地や家屋の価格は下がり、購入しやすくなります。しかし、台湾は前述の通り、通勤などの利便性を考え都市部での生活を希望する人が多いので、田舎に新たな一戸建てが増えることはあまりないようです。


台湾の住宅ローンや住宅にかかる税金について

日本で住宅や車を購入する場合、現金一括支払い(キャッシュ)をする方も一定数存在しますが、多くはローンを組んで分割払いをします。台湾も日本同様、住宅ローンという制度が存在し、特に若い世代を中心に住宅ローンを組む人が増えています。

2000年代に突入してから、台湾における住宅ローンの負担は年々増加。2007年のデータによると、銀行からの個人に向けた融資のうちの約7割は住宅ローン。マイホームを持つ多くの台湾人が、住宅ローンの支払いに月収の半分近くを持っていかれ、生活を圧迫しているそうです。

台湾の住宅にかかる税金は、地方税の中の直接税である「土地税」や「家屋税」です。台湾の税金は国税と地方税に分かれており、どちらも直接税と間接税が存在します。国税の直接税は所得税や贈与税など、間接税は関税や証券取引税などが挙げられます。

一方の地方税の直接税が家屋に関する税金、間接税には娯楽税や印紙税などがあります。台湾の住宅に関する税金は比較的安価であることで有名です。

世界と比較しても、台湾の住宅、不動産に関する税金は非常に安いと言えます。しかし、税金が安いことが原因となり、台湾では不動産の投機が増加し、その影響で住宅の価格が高騰しているという問題点も存在します。

台湾の住宅に関する良い部分

台湾の住宅の良い部分として挙げられるのは、

・賃貸なら比較的家賃が安い
・長屋もほぼ1戸建て

という点です。

物件にもよりますが、一戸建てなどの値段が非常に高いとされる台北市でも、賃貸なら家賃は1人暮らしで1万台湾元前後(約36,000円前後)、2人暮らしなら2.5万台湾元前後(約90,000円前後)、ファミリ―向けは3万台湾元前後(約108,000円前後)と、決して払えない価格ではありません。

台北市といえば台湾の首都、つまり日本の東京と同じポジションですが、東京で4万円以下の賃貸物件を見つけるとなると、23区を離れ、交通などがやや不便な場所に行かなければいけません。学校や職場などの関係で台北市に住む必要がある場合は、物件を購入するよりも賃貸に済んだ方が、経済的であり現実的かもしれません。

また、前述した台湾にある昔ながらの長屋は、長屋と言いつつも全ての住戸が独立しており、家と家の間に僅かですが隙間があります。つまり、マンションのように隣の家と壁や柱などを共有しているわけではないので、「縦長の一戸建て」という感覚で住むことができます。

日本でも、東京など土地の値段が高い場所では3階建ての縦長の住宅が多く建設されています。コストを抑え独立した空間を得られるということで、長屋を愛用する台湾人が多いのも納得です。

台湾の住宅のデメリットや今後の課題

台湾の住宅のデメリットは、

・台北市を中心に都市部の物件が高い
・住宅にかける金額の高さが、若い世代の家計を圧迫している
・田舎は土地が安いものの、利便性の面から住む人が減っている

といった点です。


この記事でご紹介した通り、台湾の首都、台北市には一戸建ては少なく、住んでいるのは富裕層ばかり。台北市に住む多くの人はマンションを選択せざるを得ませんが、そのマンションすら値段が高すぎて買えないという若い世代は多いのです。

比較的安価な予約販売制のマンションも存在しますが、その数はごく僅か。また、900~1000万台湾元というのも一般的な会社員の給料から考えると、決して安いものではなく、家計を大いに圧迫することには変わりないのです。

しかし、都市部やその近郊での生活を諦め、田舎へ移住する、という人は少ないです。田舎では仕事がない、通勤に不便など、様々な問題があることから、現在都市部へ通勤をしている人達にとって、安くても田舎に住むという選択肢は存在しません。

家計を圧迫しても、住居スペースが狭くても便利な場所に住みたい、と思うのは日本の東京、そしてその近郊に住む人たちも同じかもしれません。通勤・通学のために高いローンを支払ってでも便利な場所に住みたい、というのは世界共通の意識なのかもしれませんが、若い世代がもっと手軽に、理想の家を手に入れるためにも、「住む場所」にかかるお金を見直し、政府の補助などを強化していく必要があると考えられます。

まとめ -「住む」ために働く現状を打破することが重要

以上、「台湾の住宅事情とそのメリットや課題」でした。

台湾の都市部は利便性にも優れ、仕事も豊富にある場所です。しかし、土地や物件の高さから、一戸建てはおろか、マンションすら手軽に買うことができない状況となっています。

マイホームを手に入れることに前向きな人が多い台湾で、若い世代がより家を手に入れやすくするためには、「住」を手に入れるために多額のローンなどを支払わなければいけない現状を変えていく必要があります。

家そのものの価格を見直すこと、政府がマイホームに関する補助制度を整えること、田舎への移住の推進や田舎でもできる仕事を増やすこと、都市部へのアクセスをよくすることなど、まだまだできることはたくさんあるのではないでしょうか。

本記事は、2020年11月11日時点調査または公開された情報です。
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