台湾の選挙制度と今後の課題について

本記事では、台湾の選挙制度と今後の課題についてまとめました。日本の選挙制度との違い、日本とも共通している投票率低下の問題などを解説していきます。

はじめに - 台湾の選挙の歴史

台湾の総統選挙は1948年より始まりました。

しかし、第1回から1990年の第8回までは、当時の最高政権を握る国民大会によって選出されていました。

それが1988年より総統代行、1990年に総統に就任した李登輝氏による政治の民主化により、中華民国憲法を修正。

1994年に国民全体が総統・副総統を直接選出する「直接選挙」へと制度が改正されました。そしてこの直接選挙における選挙管理は、行政院の独立機関である中央選挙委員会が行っています。

1996年より開始された直接選挙

1996年、初の直接選挙となった第9回選挙では、李登輝氏が選出されました。その後も総統選挙は4年おき、アメリカ大統領選と同じ年に行われています。

2020年1月11日に実施された第15界総統選挙では2016年に選出された蔡英文総統が再選しています。蔡政権といえば、新型コロナウイルスへの迅速かつ的確な対応が世界中から注目を浴びたのも記憶に新しい話題です。

正副総統選のほかにも、台湾では地方の首長や議会議員を選出する「地方選挙」が行われています。地方選挙は各地域ごとに実施されるのではなく、台湾内で同一日に行われます。

直近で行われたのは2018年11月24日。この統一地方選挙では、国民党が圧勝。与党である民主進歩党(民進党)が大敗する結果となりました。

台湾の選挙活動はアピールがすごい

台湾の選挙活動は、立候補者の強いアピールが印象的です。

日本の選挙では掲示板に候補者のポスターがずらりと並び、選挙カーが毎日街を走りながら投票のお願いに回ります。選挙ポスターのサイズや掲示場所は公職選挙法で定められており、掲示板以外には選挙事務所、演説の会場などにしか貼ることはできません。

台湾でも選挙の為にポスターを掲示することができますが、その規定は日本ほど厳しくありません。台湾の選挙ポスターに関する規定は「学校や公園、橋、道路や公共の施設内に選挙に関する広告物を掲げてはいけない」というもの。ポスター以外の旗やスローガンなども禁止ですが、逆にこれ以外の場所ならどこにポスターを掲示しても良いですし、そのサイズなどにも細かな規定はありません。

選挙の投票日が近づいてくると、台湾の街にはお店の広告かと思うような大きなポスターが多く掲げられます。建物の壁面一杯にスローガンと写真が貼られていることもありますし、高いビルに大きなポスターを掲示することで遠くからも見えるようにするなど、各々が工夫をして国民に「アピール」をします。交差点に対立候補のポスターが並ぶという光景も、選挙シーズンの台湾では日常茶飯事です。

大きなポスターの他にも印象的なのが、選挙カーならぬ「選挙バイク隊」。台湾では候補者の旗を乗せたバイクが道路を走り、アピールを行うこともあります。縦一列に並んだ選挙バイクは日本ではまず見ることがありません。バイク利用者の多い台湾独自の選挙運動だと言えるのではないでしょうか。

台湾の選挙は、投票を印鑑で行う

決められた枠の中に候補者の氏名や政党を記入する日本の投票方法ですが、台湾の投票方法は日本とは大きく異なります。

台湾の投票用紙には候補者の番号、氏名、そして写真が印字されています。その一覧の中から自分が投票したい、と思った候補者の番号の上に投票印鑑を押すだけで、投票完了です。

投票用の印鑑は投票所の机に置いてあります。〇の中に「入」のような記号が書かれているデザインですが、これは「人」という文字で、台湾に住む全ての人々に主権がある、という
を意味しています。投票に使用できる印鑑はこの投票印鑑のみ。サインはもちろんのこと、拇印や持参した自分の印鑑でも投票が無効となってしまいます。

また、2人以上の候補者の番号に印鑑を推すのも無効です。日本でも投票者や政党の名前以外に余計な記入をすると投票が無効になってしまいますが、台湾でも日本でも、無効となることがわかっていながらこういった行為を行う人が一定数存在するのも事実です。

また、台湾の選挙では、

・政党のマークや候補者の名前の入った服で投票に行ってはいけない
・投票所への危険物の持ち込みや危険行為NG
・他者の投票に干渉しない(投票の呼びかけも禁止)
・投票用紙を他者に見せる、破る、持ち帰ることはできない
・携帯電話やカメラの持ち込みや撮影はできない

などの禁止事項があります。どれも当然と言える内容で、選挙の重要性はどの国でも同じであることがわかります。

台湾では、投票率は年々下降気味

1996年から始まった直接選挙は、台湾の民主化に大きな影響を与えました。

4年に一度行われる総統選は台湾の人々にとっては重大なイベント。台湾の人達は一人ひとりの一票が社会を、政治を変えることができるという意識を強く持っているので、留学や就労のために海外にいても、選挙のためだけにわざわざ台湾に戻る人も少なくありません。高齢者だけでなく若者の政治に対する興味や意識も比較的高い台湾ですが、実は投票率が下降していることが問題となっています。

総統選の直接選挙が行われるようになってからの投票率の推移は以下の通りです。

1996年:76.0%
2000年:82.7%
2004年:80.3%
2008年:76.3%
2012年:74.4%
2016年:66.3%
2020年:74.9%

2000年をピークに年々下降した投票率は、2016年には過去最低の66.3%を記録。投票率が上がったのは、中国との関係悪化や「逃亡犯条例」改正案による香港での混乱などが理由だと考えられます。

とはいえ、今年初めに行われた第15回選挙では8.6ポイントアップしたものの、グローバルノートによると2019年議会選挙投票率ランキングで台湾は193か国中105位。特に高くも低くもないといった結果に留まっています。

ちなみにこのランキングで、投票率53.68%と言われている日本は更に下位の146位。G7の中でもアメリカ(185位)、フランス(148位)に次ぐ投票率の低さとなっています。世界の投票率を見てみると、上位10か国はいずれも90%を超えています。

投票が義務付けられている、投票に行かないと罰金や罰則があるといった国も多いですが、実は投票率が最も高いベトナムやラオスでは、投票に関する義務や罰則は設けられていません。国民の政治への関心の高さが、直接投票率に繋がった形だと考えらえます。

台湾でも下降気味だった投票率が様々な危機などにより回復しました。政治や外交がスムーズに行えることがベストではありますが、1人ひとりが政治に参加するという気持ちを持つには、トラブルが起こる、それを乗り越えるといったこともときに必要なのかもしれません。

まとめ - 投票率アップが今後の課題

以上、「台湾の選挙制度と今後の課題について」でした。

台湾で行われる正副総統選、地方統一選などは選挙運動や投票方法は日本とは異なり、我々日本人から見るとユニークな一面もあります。台湾の人々の政治に対する興味・関心は高く、自分の投じた1票が政治を変える、という強い思いをもって選挙へ行く人も多いです。

2020年の総統選では投票率が回復したものの8割には届かず、台湾の人々の「選挙離れ」が深刻な問題となっているのは事実。投票率を更に上げるためには罰則や義務付けを行うという方法もありますが、苦しい時代を乗り越え自由を手に入れた台湾において、選挙の義務や罰則の導入は難しいと思われます。

台湾、そして日本でも「清き一票」の重さや価値を多くの人が感じられるようになれば、投票率アップを見込めるのではないでしょうか。国民の「声」の大切さを説いてくれるリーダーの登場で、これからの選挙や政治が変わっていくことを信じています。

参考資料サイト

GLOBAL NOTE
https://www.globalnote.jp/post-12889.html

本記事は、2020年11月7日時点調査または公開された情報です。
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