台湾における警察制度や日本との比較

今回は、台湾の警察制度についてまとめました。台湾で警察官になるための手順、日本の警察制度との類似点や相違点、台湾の警察制度の問題点、課題などを解説します。


はじめに - 日本の警察制度と類似している台湾警察

どの国にも警察は存在しますが、その立ち位置や制度などに関しては国家によって微妙に異なります。

台湾の警察はまず中華民国内政部に「警政省」が設置されています。そして直轄市や省轄市、県などにはそれぞれ、警政省が指揮する「警察局」があるのです。台湾の警察の組織・制度については日本と似ている部分が多いとも言われています。

台湾で警察官になるには

台湾で警察官になるには「台湾警察専科学校」を卒業し、その後警察官になるための試験に合格する必要があります。日本にも警察学校がありますが、日本の場合、

1)公務員試験に合格
2)警察学校で訓練(高卒:10か月、大卒:6か月)
3)修了後は警察署などで研修

といったステップで警察官になることができます。警察学校に入る前に既に公務員試験に合格しているので、警察学校在籍中も給料が支払われます。

一方、台湾で警察官になる場合は、

1)台湾警察専科学校を受験・合格
2)学校で2年間学ぶ
3)卒業後に警察の試験を受ける

といった手順を踏む必要があります。

2年間の専科学校であること、その後も試験があることは日本と異なった部分だと言えます。台湾警察専科学校には警政署だけでなく、消防署や海巡署の基幹要員を目指す人も通います。

2年間と長いものの、在学中の学費や食費、教材費は全て無料です。しかし、退学や除籍になると在学期間分の学費などを返さなければなりません。無事卒業できても、その後3年以内に試験に合格しなかった場合や、合格しても4年以内に退職した人についても学費などを返還しなければいけないようです。

台湾警察専科学校のみならず、4年制の中央警察大学などを卒業しても、警察官になることができます。


台湾における警察の立ち位置や印象

警察の印象や街なかに置ける立ち位置などについては国によって異なります。

インドネシアなどでは警察は恐ろしく、絶対的な存在だと言われています。日本のように取り締まりなどを行っている警察官に対し、民間人が暴言を吐いたり反抗したりするような光景はまずないと言います。車同士が多少ぶつかる程度の事故であれば、警察の介入を恐れ示談で済まされることも多いようです。

台湾の警察については人による部分もありますが、権力や存在感について「弱い」と感じる台湾人も多いようです。取り締まりに関しては「次回から気を付けます」と言えば見逃してもらえることもあるようですし、警察官がいる、警察官が来るということを恐れない人も少なくありません。

一方で、台湾の警察について「弱い者いじめ」をする存在だと感じている台湾人もいます。業績のために切符を多く切る警察も一定数おり、そんな警察官の横暴な言動などを取り上げ「警察は免許を持った暴力者である」と評されることも。

また、これは台湾に限ったことではありませんが、警察官でも罪を犯すことはあります。台湾では警察官の犯罪が少なくないらしく、そういった部分を切り取り、警察官に対しより悪い印象を覚える人もいるようです。

日本における交番のおまわりさんの役割

警察、と一言で言っても部署などによりその仕事は様々ですが、私たちの最も身近にいる警察官というと、やはり交番のおまわりさんでしょう。交番のおまわりさんは警察署の「地域課」に所属している警察官です。交番のおまわりさんは普段、

・交番での道案内
・遺失物などの処理
・地域のパトロール
・各家庭への巡回
・近くの事件現場に駆け付ける

などの仕事をしています。都会では自転車に乗ってパトロールをしている姿をよく見かけますが、もちろんパトカーを使用しての巡回も行います。パトカーを使用することで、交通事故や犯罪防止に繋がるだけでなく、事件などが起こった際には迅速に現場へ駆け付けることも可能です。

そんな町のおまわりさんに対しては「いてくれて安心」だと感じる日本人が多いと思います。日本では、交番のおまわりさんは地域の安全を守ってくれる優しい存在といった印象が強いです。違反を犯した場合はもちろん厳しく取り締まられるため、若干煙たいと思われることもありますが、何かあれば警察を頼る人が多いのも事実。制服姿のおまわりさんやパトカーを見ると身が引き締まる思いになるのは、それだけ警察に力があるとも言えます。

台湾と日本の警察の差異

台湾と日本の警察には、共通する部分もあれば異なる部分もあります。

警察は人が人を取り締まる存在。法律やその立場が違えど、基本的な部分は世界で共通しているといえるでしょう。その危険で過酷な仕事内容から、給与が一般的なサラリーマンよりも高いのも、共通点の1つです。では、台湾の警察と日本の警察で異なる部分は一体何でしょうか。

最も大きな差異は、やはりその存在感でしょうか。前述の通り、台湾の警察は取り締まりに関して日本よりも「緩い」と言える部分があります。違反をしても取り締まっている警察官によっては「次からは気を付けるので見逃してください」とお願いすれば、切符を切られないこともあるそうです。

日本ではそういったことはなく、どんなに小さな違反でも厳しく取り締まられます。これを「点数稼ぎ」と捉える人も少なくありませんが、日本の警察の意識の統率がしっかりとできている証拠なのではないでしょうか。

台湾のように警察官によって対応が違ってしまうと、「お願いすれば大丈夫」「警察は怖くない」と評価される原因にもなり、警察の抑止力が弱まってしまうので危険です。

台湾の警察が抱える問題や課題

台湾の警察が抱えている問題、今後改善すべき課題は大きく3点。


1)より多くの人員の確保
2)警察全体での意識の統率
3)台湾内における警察の印象や位置づけの改善

警察官は厳しい労働環境に身を置く職業ですので、志望者は決して多いとは言えません。日本でも警察官志望者が減少しているという問題がありますが、台湾も同様に、深刻な人員不足が叫ばれています。台湾の警察は労働環境や制度を整え、より多くの優秀な人材を確保しなければなりません。

そのためにも、警察内での意識の統率は非常に重要です。前述のような取り締まりの曖昧さや警察官の犯罪の多さでは、台湾の人々の警察に対する信頼度は高まりません。

また、台湾ではノルマ達成や罰金による売上確保のため、月末には取り締まりが増えるという噂があります。つまり「月末だけ違反に気を付けていれば大丈夫。他の日はもし取り締まられても「次から気を付けます」と言えばいい」という意識が台湾人の間に根付いてしまっているのです。こういった国民の意識を変えるためにも、制度を見直し、警察官の意識を揃えなければいけません。

日本でも警察官に良くない印象を覚える人はもちろん存在しますが、「おまわりさんがいれば安心」という人は多く、更に結婚相手に「高給取りで安定した警察官」を希望する人も少なくありません。

しかし、警察官は弱いものいじめをする存在だという印象が強い台湾での警察のイメージはあまり良いものではありません。台湾の警察は公務中の怪我や死亡の確立も高いので、いくら給料が良くても警察官自身の安全、そして家族の立場などを考えると、交際相手や結婚相手としても選ばれにくいようです。

こういった警察への悪印象を払拭し、よりクリーンで安全な公務内容となるような改善も、台湾の警察には必要なのではないでしょうか。

まとめ - より優秀な警察官を排出するための制度の見直しが必要

以上、「台湾における警察制度や日本との比較」でした。

台湾における警察のイメージや立場はあまり良いものではありません。もちろんまじめな警察官や親切な警察官も存在しますが、仕事の大変さや警察官の犯罪率、公務中の怪我や死亡などの悪い部分が目立ってしまい、警察官の人員確保にも難航しているのが現状です。

今後、台湾の警察は1人ひとりの意識を変え、制度や労働環境を整えることで、より優秀な人財を確保していく必要があります。国際化に伴い在留外国人も増加する中で、犯罪大国とならないような対策が重要となってくるのではないでしょうか。

本記事は、2020年10月27日時点調査または公開された情報です。
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