台湾社会の抱える不安と今後の課題

今回は、台湾社会の抱える不安と今後の課題について、台湾在住の日本人女性に、現地目線でレポートしていただきました。

はじめに - 海外旅行では人気上位の国「台湾」

日本では、海外旅行先として「台湾」を選ぶ人が非常に多く、ブランドデータバンクによれば「行ったことがあって、お気に入りの海外旅行先」の調査の結果、2018年は男女ともに「台湾」が1位に輝きました。

このように、日本人に人気の旅行先である台湾は、確かに素晴らしい国ではありますが、実際にそこで生活すると見えてくる様々な社会問題や不安もあります。

本記事では台湾が抱える4つの社会問題について解説します。

その1:日本同様、少子高齢化が進む台湾

少子高齢化が問題視されている日本ですが、台湾も少子化、そして高齢化が進んでいます。

国際統計のグローバルノート調べによると2019年の出生率は日本が1.43%で202か国中世界184位なのに対し、台湾は1.13%で199位。人口を維持するためには2.1%以上の出生率が必要だと言われているので、どちらも深刻な少子化、そして今後更なる人口減少が予想されます。

では、なぜ台湾の出生率は上がらないのか。

その最大の原因は子育てのために必要なお金が足りないことだと考えられています。

台湾は共働き世帯が7割を超えると言われています。小さい頃からの教育に熱心な台湾では日本円にして毎月8~10万円、あるいはそれ以上を子供の教育に費やします。台湾の平均月収は16万円前後だと言われているので、給料の半分近く、もしくはそれ以上を1人の子供が小さいうちから教育に使っていることになります。ですから、子供を2人以上持てない世帯が多いのも納得です。

よく「台湾は物価が安い」と言われますが、物価が安い分給料も安いので、物価の恩恵を受ける多くは観光客。台湾在住のほとんどの世帯は、1人の子供への教育費と家族が暮らす生活費でいっぱいいっぱいなのです。

その2:深刻な産業空洞化

台湾が抱える社会問題の1つとして産業空洞化が挙げられます。産業空洞化とは、企業が海外に工場を持つことにより、国内の製造業が衰退することを言います。台湾では昔から繊維や革製品、靴、木材製品といった軽工業を多く生産してきました。

1980年代以降にはハイテク産業なども活発になり、世界でも認められる産業立国となってきていました。しかし2000年以降、製造業は衰退の一途を遂げています。これは台湾内の企業が求める技術者の育成が追いついていないことも原因の1つで、そのため台湾の企業は中国本土で即戦力を集めるという動きが強まりました。

先進国に多くみられる従来の産業空洞化は、単純労働を海外工場に任せることによりおこる
ものでしたが、台湾の産業空洞化はこういったタイプとは異なり、技術者が不足しているため海外に依存するもの。これは今後の台湾内の技術の進歩・発展を妨げる原因となるため、従来のものより深刻な産業空洞化だと言えます。

その3:増える外国人労働者

人材不足により1991年より外国人労働者の受け入れを始めた台湾。台湾で働くことができるのは、ベトナム・インドネシア・フィリピン・タイ・マレーシアのみですが、2019年現在、台湾の外国人労働者は70.6万人。台湾の人口はおよそ2378万人なので、外国人労働者の比率は非常に高いと言えます。

外国人労働者が増加することは労働力の補填というメリットもありますが、反対に

・外国人労働者の差別
・外国人労働者同士でのトラブル
・職場での窃盗、職場からの逃亡などの犯罪を起こす

など様々な問題を引き起こす可能性もあります。出生率が低く、海外から労働力を輸入しなければならない状況にある台湾ですから、今後ますます外国人労働者が増加することが予想されます。外国人労働者と台湾人とのトラブルを無くすためには、文化などの違いをお互いどのように理解し、譲り合っていくかが重要となってきます。

その4:新型コロナウイルス感染症が台湾に与えた影響

2020年3月頃より世界規模で感染拡大が起こっている新型コロナウイルス。台湾では2019年末より注意喚起や対策などが行われており、その内容が素晴らしいと世界中で評価されていました。

台湾内での感染者の抑え込みは成功したと言えますが、新型コロナウイルスによる経済などへのダメージはやはり防ぐことができず、台湾の社会課題がまた増えてしまいました。

観光客の激減

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、台湾では2020年3月19日からの入境禁止、そして21日以降には海外渡航の全面禁止という措置を取りました。これにより実質鎖国状態と化した台湾には、当然観光客も足を踏み入れることができなくなりました。製造業に代わり観光産業が発展していた台湾にとっては大ダメージです。

観光での収益が見込めなくなったサービス業界への支援、観光に訪れる外国人がいない中で今後どのように経済を回復させていくのか。コロナウイルスの恐怖を乗り切った後も、経済や人々の生活を立て直すための様々な問題が残ります。

サービス業などへのダメージ

観光やホテルなどの業界へのダメージはもちろんですが、飲食店や卸売・小売業への打撃も大きい台湾。経済部(経済産業省)では、条件を満たした企業の給与を数ヶ月に渡り一部負担するという制度を設けることを決めています。

しかし、サービス業界も観光客による恩恵を受けていた部分が大きいため、現在の「鎖国状態」がいつまでも続くようであれば、多くの企業、店舗が倒産を余儀なくされると言われています。実際、サービス業のほとんどが5割以上の減収となっており、経営存続が危ぶまれています。とはいえ台湾内での感染が落ち着いても、コロナウイルスの世界での流行が落ち着かない限り、海外からの旅行者を受け入れることはできません。

台湾のサービス業、そして経済を救うためには、一刻も早い世界でのコロナウイルス終息が必要不可欠です。

中国との関係

長い歴史の中で中国とは異なる独自の国家を築いてきた台湾。

その関係は非常に複雑ではあるものの、現代の台湾は中国からの影響を大きく受けています。特に経済面では、中国の力がなければ台湾は成り立たない、と言っても過言ではありません。今回の新型コロナウイルス感染対策により、そんな中国からの入境を1月下旬という早い段階で禁止した台湾。これは観光客の激減と同等かそれ以上に、台湾の経済を大きく圧迫することとなりました。

それでも中国との往来を制限することが感染防止には重要だという蔡英文総統の判断は、台湾の感染者数を見れば正解だったと言えます。しかし早々に中国をシャットアウトしたとも言える台湾が、今後、中国と以前と変わらない関係を取り戻すことができるのか。台湾の経済は今後の中国の出方にかかっているとも言えるでしょう。

蔡英文総統の今後の対策に注目が集まる

台湾の蔡英文総統は、今回の新型コロナウイルスに対する迅速で適格な対応、素晴らしい決断力で世界中から高評価を得ています。台湾内でも高い支持率を得ている蔡総統が、大きく傾いた台湾の経済や長年叫ばれる少子高齢化問題などに、1つ1つどういった対策を提示していくのかが、今後の台湾の存続や発展のためには重要となってきます。

臨機応変な対応はもちろん、既存の制度の見直しや改善など、台湾の未来の為に彼女に突きつけられた課題は非常に多いですが、政府の正しい決断とそこに続く国民の姿勢が、今後の台湾を変えるカギとなります。

まとめ - 経済回復から課題や不安の解消へ

以上、「台湾社会の抱える不安と今後の課題」でした。

様々な社会問題や不安を抱える台湾ですが、まず乗り越えるべきは経済。経済が回復すれば、少子化や技術者不足などへの対応策を出し、予算を組んで動いていくことも可能となります。

コロナウイルスの終息、中国との関係の回復が、台湾の社会課題や不安をクリアしていくためには必要不可欠です。多くの問題が重なり「台湾」という1つの国家が消失しないためには、蔡総統を筆頭に台湾に住む皆が一丸となって抱える課題を見つめ直し、改善していくことが大切なのではないでしょうか。

参考資料サイト

GLOBAL NOTE
https://www.globalnote.jp/post-3758.html

本記事は、2020年11月1日時点調査または公開された情報です。
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