外国人の「参政権」について - 日本や他の国ってどうなってるの?

Twitter上で、「在日韓国人は選挙権を持っていない」という発言に対し、「#在日韓国人は韓国の国政選挙権を持っています」というハッシュタグが話題となりました。

日本では、海外にいる日本人の不在者投票制度がありますが、日本に住む外国人による参政権は認めておりません。参政権という日本の国家運営で重要な権利について、今回は、日本やその他の国で「外国人の参政権」というテーマでまとめました。


「外国人参政権」とは?選挙する権利とされる権利がある。

「外国人参政権」とは、その国の国籍を持たない外国人が政治に参加する権利のことです。具体的には、「選挙権」といって、選挙に投票できる権利と、「被選挙権」といって選挙に出馬して選ばれる権利があります。

また、選挙システムは大きく「国政選挙」と「地方選挙」に分かれていて、例えばEU諸国では「地方選挙」の外国人参政権を条件付きで認める国が増えてきている傾向にあるようです。ただし、「国政選挙」への「外国人参政権」を認めている国はとても少ないようです。

日本では「外国人参政権」は認められていない

日本では、日本国憲法第15条に公務員を選ぶことは「国民固有の権利」と書かれているため、国政選挙での選挙権は国民に限定されています。つまり「外国人参政権」は憲法上認められないという解釈が主流のようです。

第十五条
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

出典
e-Gov|日本国憲法

憲法だけでなく、具体的に選挙のルールを定めている公職選挙法でも、選挙権・被選挙権は「日本国民」に限定されており、「外国人参政権」は認められていません。

公職選挙法が適用されない、「条例による住民投票」では投票できる場合もあるようです

そもそも、「外国人参政権」を認めていないのは「公職選挙法」です。公職選挙法は、国会議員や地方議員、首長など、公職に就く人を選ぶ選挙なので、例えば「自治体の合併などについて住民投票で争う」などの場合は、公職選挙法の適用の対象になりません。

このように、公職選挙法が適用されない選挙については、「外国人参政権」を認めるかどうか自治体ごとに条例で決められることになっています。

「外国人参政権」を認める住民投票を行う自治体

令和2年(2020年)12月時点で、住民投票で「外国人による投票」を認めている自治体をご紹介します。

常設型の住民投票条例が設置されているのは全国で78自治体ありますが、外国人の投票を認めているのはそのうち43の自治体のようです。

▼参考:武蔵野市「武蔵野市住民投票条例(仮称)骨子案」(外部サイト)

「外国人参政権」を認めた実績がある自治体

・北海道:増毛町、遠軽町、稚内市、北広島市、美幌町、北見市、苫小牧市、占冠村
・岩手県:宮古市、奥州市、滝沢市、西和賀町
・宮城県:柴田町
・埼玉県:美里町、鳩山町
・東京都:小金井市
・千葉県:我孫子市、流山市
・神奈川県:逗子市、大和市、川崎市
・新潟県:上越市
・石川県:宝達志水町
・静岡県:掛川市
・愛知県:高浜市
・長野県:小諸市、信濃町
・滋賀県:野洲市、愛荘町、米原市
・大阪府:岸和田市、大東市、豊中市、阪南市
・奈良県:生駒市
・三重県:名張市
・兵庫県:穴栗市
・鳥取県:北栄町、日吉津村
・広島県:広島市、大竹市
・山口県:山陽小野田市
・大分県:杵築市

地方自治体での「外国人参政権」については、永住権を持つ外国人を中心に、納税などの義務は果たしているのだから参政権も認めるべきという考え方がある一方で、国防の観点から反対の声も根強いようです。


「外国人参政権」が認められれば、制度上は外国人による日本の侵略行為が可能になるという危険性を訴える反対派と、そのような仮定の話で恐れるのではなく、実際に今、日本に暮らす永住外国人の権利を認めようという賛成派による議論は続いています。

Twitterの反応

武蔵野市の住民からは初めて市議のリストを確認したという声も。市民の政治参加のきっかけにはなっているようです。

海外では「外国人参政権」は認められてる?国政選挙については認める国は少ない

日本では、一部の地方自治体の「住民投票」にのみ認められていて、公職選挙については認められていない「外国人参政権」ですが、ここでは海外の状況についてご紹介します。

海外には、「地方選挙」に限らず、「国政選挙」についても「外国人参政権」を認める国まであります。「外国人参政権」を認めている国についてご紹介します。

「国政選挙」で、一部の「外国人参政権」を認めている国にイギリスがあります

海外でも、「国政選挙」の「外国人参政権」を認めている国はほとんど存在しません。

しかし、その中でも国政選挙で「外国人参政権」を認めているのが、イギリスやニュージーランドです。ただこの外国人参政権も特殊なものですので後述します。

これは、大英帝国時代にニュージーランドがイギリスの植民地であった歴史などが背景にあるようです。イギリスが大英帝国時代に植民地としていた国などを中心に構成されている「コモンウェルス オブ ネイションズ」、日本語では「英連邦」や「イギリス連邦」と呼ばれている超国家的組織があるのですが、そのコモンウェルス市民には、イギリスの国政選挙権が認められています。

イギリスでは歴史的な背景から、かつてはイギリスの国の一部として植民地化していたインドやスリランカ、オーストラリアなど、全54カ国の英連邦諸国の国民について、今もイギリス国内の選挙での選挙権・被選挙権を両方認めていて、最も広く「外国人参政権」を認めている国のひとつです。

ただし、コモンウェルス諸国国籍のコモンウェルス市民以外の外国人については、全く参政権を与えていないという点には注意が必要です。外国人なら誰にでも選挙権があるのではなく、一部のつながりの深い国、昔は同じ国の国民だったけれど、今は「外国人」になっているという国の人について、特別措置があるようなイメージが近いかもしれません。

そのため、イギリスでコモンウェルス市民ではない日本人に選挙権が認められることはありません。

一方で、イギリスの植民地だった歴史があり、コモンウェルスにも加盟しているニュージーランドでは、イギリス人に限らず、1年以上在住している外国人に「選挙権」を認めているようです。ただし、「被選挙権」は認められていません。

「地方選挙」での「外国人参政権」を認めている国はドイツやフランスがあります

国政選挙では「外国人参政権」を認めていないものの、「地方選挙」では認めている、という国もあります。

このようなケースは特にEUに多いようで、EU加盟国の国民であれば「外国人参政権」として、選挙権も被選挙権も認めている国は、ベルギー、フランス、ドイツなどです。


また、「相互主義」といって、相手国で自国の国民が「外国人参政権」を認められている場合に、自分の国でもその国の外国人については「外国人参政権」を認めるという考え方の国もあります。ポルトガルやスペインなどがその例です。

外国に住む日本人については、不在者投票制度がある

国政選挙の「外国人参政権」は認めていない日本ですが、海外で暮らす日本人、いわゆる「在外邦人」については、「不在者投票制度」を整備して、積極的な投票を呼びかけています。

よく、「外国人参政権」と「在外邦人の参政権」については、例えば永住外国人であれば、日本に「消費税」などを納税しているのに対し、「在外邦人」は消費税などは納めないのに選挙権はあるということで、不公平ではないか、と比較して議論されることがあります。

「外国人参政権」と「在外邦人の選挙権」は、本来は別の問題なので、一概に比較できませんが、納税という観点からみると、そのような指摘があるようです。

日本の「在外選挙制度」について、詳しくは下記のページでご紹介しています。

》国外にいても、日本の選挙に投票できる!在外選挙制度について

日本にいなくても、日本の国政選挙に参加できる「在外選挙制度」についてご紹介します。「在外選挙」で投票するためには、名簿への登録が必要です。ご紹介する2通りのいずれかの方法で登録しましょう。

まとめ - 日本に住む外国人には、国籍がある国の「参政権」がある。

以上、「外国人の参政権について - 日本や他の国ってどうなってるの?」でした。

当然ながら、日本に住んでいる外国人には、「日本の参政権」は認められていなくても、国籍のある国の「参政権」を持っています。

ですから、「外国人に参政権を持っていない」とする冒頭のTwitterについては、反論などが多く寄せられ、話題になったようです。

ただ、外国に住む国民の「不在者投票制度」は国によって違うため、日本という外国にいながら、その権利の行使ができているかはその国によって違うでしょう。

もし、日本で「外国人参政権」が認められた場合、自国の参政権と二重で認められることになるのか?その場合EU諸国などに普及している「相互主義」の考え方は適用されるのかなど、国ごとの調整も必要になりそうです。

「外国人参政権」に反対する政党や自治体、研究者も多く、その理由としては想定できる脅威から、日本という国を守ろう、国民の権利を守ろう、という何かを守りたいという強い思いが感じられます。

しかし、このように議論している今も、日本で暮らし、この先も日本に永住したいと考え、働き、納税義務を果たす外国人はいます。彼らが政治に参加できる権利をすべて否定するのは、現実に即していないようにも思えます。

将来、ますます外国人労働者に頼らざるを得ない日本で、今後「外国人参政権」についてどのような議論が展開されるのか、注目されています。

本記事は、2020年11月16日時点調査または公開された情報です。
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