はじめに - 家族と祝う「Thanksgiving Day(感謝祭)」
アメリカでは、2020年11月26日は「Thanksgiving Day(感謝祭)」です。ほとんどのアメリカ人にとってサンクスギビングデーは一年の中でとても重要な日とされており、普段は離れている家族と一緒にお祝いすることが一般的です。
毎年10月末のハロウィン、11月末のサンクスギビング、そして12月のクリスマスはまとめて「ホリデーシーズン」と呼ばれ、この3ヶ月間だけは毎月のように楽しいイベントがあるため、アメリカ人はウキウキした気持ちになっています。
しかし、2020年に限っては新型コロナウイルスの影響で必ずしも楽しい季節とは呼べないようです。アメリカでは11月以降連日10万人を超える新規感染者が出ており、一部の州や都市ではホリデーシーズンにも関わらずロックダウンが実施されています。
そんななか迎えたアメリカのサンクスギビングデーの様子を筆者の実体験を交えてご紹介します。サンクスギビングデーはアメリカの文化を知るうえで欠かせないことですので、ぜひ参考にしてください。
アメリカの「サンクスギビングデー(Thanksgiving Day)」について
サンクスギビングデーは、イギリスからアメリカ大陸にやってきた移民たちが、その土地での収穫をお祝いしたことが起源とされています。日本で例えるなら「お正月」、中国であれば「春節」のような、国全体でお祝いする特別な休日です。
アメリカではサンクスギビングデーに家族や友人らが揃って「豪勢な食事」でお祝いすることが一般的です。最も知られているのは「七面鳥(ターキー)」の丸焼きでしょう。そして、ジャガイモを茹でて潰した「マッシュポテト」、クランベリーを使ったジャムのような「クランベリーソース」などが定番です。
どの家庭にも異なるレシピがあるとされており、多くのアメリカ人女性はこの時だけは料理に腕を振るいます。デザートにはアップルパイやパンプキンパイなどが用意されることが多く、どの家庭も2、3日かけて料理を準備します。
アメリカは日本のように「国民の休日」が多くないため、サンクスギビングデーは非常に特別な意味を持っています。アメリカで生まれ育った人であれば、サンクスギビングデーとクリスマスだけは絶対に帰省する、または家族と過ごすという人が多く、日本ではあまり知られていないほどの熱狂ぶりです。
そして、サンクスギビングデーと言えば、近年日本でも広まりつつある「ブラックフライデー」でしょう。サンクスギビングデーは毎年11月の第四木曜日と決まっているため、次の日の金曜日に合わせるようにして、あらゆるお店が「年に一度の大セール」を実施します。
どんなに安くしても必ず黒字になることから「ブラックフライデー」と呼ばれるようになりましたが、この日ばかりは間違いなくアメリカの経済が大きく動く日として知られています。
このように、アメリカのサンクスギビングデーは家族とお祝いする日というだけでなく、全米で多くの人が移動したり、料理やプレゼント、ショッピングなどが活発になることから、アメリカ経済に対しても大きな意味を持っている日と言えます。
2020年のアメリカの「サンクスギビングデー(Thanksgiving Day)」の様子
アメリカ人にとって特別なサンクスギビングデーですが、2020年は新型コロナウイルスの影響によってこれまでとは違った日になりました。
新型コロナウイルス感染拡大の懸念
最も懸念されたのが「サンクスギビングデーに合わせた国内移動」です。2020年は11月第三週末だけで300万人がアメリカの空港を利用しています。11月22日(日)だけで約105万人が空港を利用しており、新型コロナウイルス感染拡大以降最も多い利用者数になりました。
次期大統領のバイデン氏は、新政権の最重要課題として新型コロナウイルス対策を掲げているため、サンクスギビングデーに合わせた国内移動の自粛を呼びかけていました。また、マスク着用に抵抗する人たちに対してもマスクをするよう呼びかけるなど対応に追われています。
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は国民に対してホリデーシーズンの外出自粛を呼びかけ、一緒に住んでいない人と集まることを控えるよう注意喚起しています。
アメリカでは11月以降、驚異的なペース(10万人超/日)で感染者数が増加しており、ホリデーシーズンによって大規模な感染が発生すると予想されてきました。一方で、多くのアメリ人にとってホリデーシーズンの自粛は耐えられないようで、国内移動は活発です。
筆者が暮らすアリゾナ州の空港でもサンクスギビングデーに合わせて利用者が増え、3月以降の平均搭乗率が45%程度だったのに対し、サンクスギビングデーの週は70%以上にまで増加しています。
空港を利用した男性の話では「(コロナも政府も)家族に会うことは止められない。ガイドラインが言うことは関係ない」とあり、多くのアメリカ人の気持ちを象徴するようなコメントです。
筆者は予定通りパーティーを実施
筆者は知人の家族のパーティーに呼ばれました。集まったのは10名で、3家族が入れ替わり立ち代り来訪する感じです。お年寄りから赤ちゃんまで幅広い年齢層ですが、過度に心配することはなく、いたって普通のサンクスギビングデーの姿でした。(握手もハグも有り)
アリゾナ州では強制的な感染防止対策は実施されておらず、あくまでもホリデーシーズン中の活動を控えましょうという内容の「Voluntary Quarantine(自主的隔離)」が呼びかけられています。
一方で、隣のカリフォルニア州では「夜間外出禁止」や、レストランなどの「屋内営業禁止」が実施されており、サンディエゴに住んでいる知人は勤務先から州を越える移動が禁止され、帰省できない状態になってしまいました。
また、アリゾナ大学の学生おおよそ1,000名は感染防止を理由に地元への帰省を諦め、サンクスギビングを寮で過ごすことにしたというニュースもありました。これを見かねた大学側は急遽、伝統的なサンクスギビングデーの食事(小分けされた物)を手配し、寮に残った学生たちに配布したそうです。
このようなことから、アメリカ人は伝統的なお祝い事と感染の懸念という状態に置かれていることが分かると思います。アメリカ人の多くは感染を心配しているものの、サンクスギビングは譲れないといった印象を受けます。
アメリカの「サンクスギビングデー(Thanksgiving Day)」の影響は?
サンクスギビングデーに合わせた消費活動は例年よりも活発のようです。
小売業は好影響を受けている
アメリカ最大の小売店であるウォルマートはブラックフライデーセールを1週間前倒しで実施し、実店舗とインターネットの両方で開催しました。(多くの小売店もこのスタイルで実施)
この結果、多くの人がインターネットを通して買い物をし、ドライブスルーで商品を受け取るようになりました。同社はこれに対応するため「ピッカー」と呼ばれるスタッフを全米で約15万人増員しています。
全米小売業協会によると、2020年のアメリカ年末商戦は80兆円規模になると予想しており、前年よりも4%程度増加する見通しです。なかでも、インターネット市場は全体の30%を占めており、コロナ禍においても好調な様子を見せています。
新型コロナウイルス感染拡大はクリスマス前後か
サンクスギビングに合わせるようにして感染者数も増えています。アメリカの感染者数は11月以降、連日10万人を超えるペースで増えていますが、約105万人が移動したとされる11月22日以降、さらに増加しました。
11月24日、これまでよりも6万人ほど多い、16万人の感染が確認されています。この背景には、帰省前にテストを受けた人が増えたことがあると言われていますが、潜在的な感染者数はもっと多く、またそれらが移動していることを考えると今後さらに増加する見込みです。
これが表面化するのがクリスマス前とされているため、アメリカで最も盛り上がるクリスマスシーズンのロックダウンが懸念されています。当然、経済にも大きな影響が生じるでしょう。
まとめ
以上、「感謝祭で感染拡大必須!アメリカのサンクスギビングデー」でした。
アメリカではサンクスギビングデーやクリスマスなど本格的なホリデーシーズンを迎えていますが、新型コロナウイルスによって例年とは異なる雰囲気です。日本ではあまり知られていませんが、この時期のアメリカは移動や消費活動が最も盛り上がる季節でもあります。
コロナの感染が始まってから初めて迎えるホリデーシーズンなので、感染拡大や大流行が懸念されます。ホリデーシーズンが感染者数を増長させるかどうかが注目です。
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