イギリスの医療制度(2022年6月)

イギリス在住の日本人による、イギリスや日本に関する記事レポートです。今回は「イギリスの医療制度」についてまとめました。


はじめに

2021年7月30日に厚生労働省より公表された日本の平均寿命は、男性81.64歳、女性87.74歳と過去最高年齢を更新しました。平均寿命を国際比較した場合、男性は世界2位、女性は世界1位でした。男女共に合わせた平均寿命では世界で一番の長寿国となったのです。

イギリスと比較してみると、イギリスの男性の平均寿命は79.8歳で世界第19位、女性は83.0歳で世界30位でした。

医療先進国であるはずのイギリスで、どうしてこのような差が出てくるのでしょうか。医療制度の違いから探っていきたいと思います。

イギリスの医療制度

イギリスの医療は無料

イギリスの医療は国立医療サービス(National Health Service総称:NHS)が管轄、運営しています。税金をしはらうことでNHS番号を取得することが出来ます。但し、無職、低収入、難民などに対してはボランティア団体による支援などで取得ができる場合もあります。番号を取得することが財政的にできず、医療を受けられない人も一定数いることは確かです。NHSを利用して受ける医療行為はすべて基本的に無料になっています。但し医薬品に関しては患者が全額負担しなければなりませんので、薬漬けになるほど大量の薬が処方されることはないように見受けられます。

NHS番号を取得するとGP(General practice)と呼ばれるかかりつけ医院を、登録します。大抵は居住地に近い医院を登録するのが一般的です。ほとんどの医療行為を受ける場合はこのGPを通じて行われます。

診察が必要なときは

日本の様に、自分の判断でどこの病院に行こうと決めることはできません。例えば、耳が痛いから耳鼻科、目が痒いから眼科、皮膚に炎症が起きたから皮膚科、子供の具合が悪いので小児科などと、自分の判断によって病院に行くことや、連れてゆくことができないのです。出来るのは歯医者や整体ぐらいです。

具合が悪くなったらまずはGPに予約を入れ、症状を説明します。症状によっては何日も待たされることがあります。特にコロナ禍の管理下の状態の際には、GPの予約が数週間も先にならないと取れないという問題もありました。仮に急病など深刻な症状の場合は、救急のある病院に駆け込むことができます。救急と言っても多くの人がやってくるので診察をしてもらうまでには長い時間待つ覚悟が必要です。

更なる診察が必要な場合

GPの受診で、医師が更に検査や大きな病院での診察が必要と判断された時のみ、次の医療段階の紹介を受けることが出来ます。但し、GPを通じて予約を取得するため、次の予約取得まで数週間から数カ月待機することも珍しくありません。

自己負担医療

急いで検査、診療を望む場合は、自己負担で医療を受けることが可能です。但し、自己負担となった場合、医療費も高額となります。また、自己負担により治療を希望したとしても、どこの病院でも医療行為を受けられるわけではありません。自己負担の医療行為を受け付けることが出来る病院が限られているため、病院探しから行わなければなりません。

保険会社が販売している医療保険に加入している人が自己負担医療を選択することが殆どです。なぜならば個人で全額負担するのはかなり高額だからです。但し、その場合でもGPの診断証明書において、さらなる医療が必要と診断されなければ受けられないという規定を設けている保険会社が多く見受けられます。

一般企業が販売しているような医療保険をイギリスではプライべートと呼びます。通常NHSが利用するような病院は使用できない事がほとんどです。プライベート医療を利用したいときは自分が加盟している保険会社に利用可能病院を指定してもらい、自分で予約をとり、診察の手順を踏むのが通常です。


歯科医療

歯科医療もNHSの医療範囲なので無料で受けることが出来ます。しかしながら、緊急の歯科治療は無料範囲外なため、かなり高額になります。
現在はコロナの影響で多くの歯医者はNHSの無料患者の受け入れをしていません。そのため、歯科治療が必要な時は、自己負担を余儀なくされます。虫歯の治療1本につき1万円以上請求されることもしばしばです。

日本との大きな違いに、コロナ以前のイギリスでは、無料の歯科医療で歯並びの矯正を多くの子供たちが受けることが出来ていました。そのため多くのイギリスの子供たちは比較的幼少期の段階で歯の矯正を経験している子供が多く見受けられます。

老人医療

イギリスで良く言われるのが「Quality of Life」という言葉です。『より良く生きる』という事です。ベッドに寝たきり状態で生きていることは苦痛でしかなく、決して幸せな人生ではないと考えられています。そのため、イギリスでは延命治療は殆ど行われません。

イギリスでの医療行為は病状を改善するための行為とみなされているため、改善が見込まれない治療は行われません。例えば遺漏などの行為もイギリスでは、行われることは稀です。

ホスピスの存在

イギリスでは、医療行為によって改善しないとみなされた患者さんは、それ以上の医療行為を受けることが出来ません。その後は緩和ケアのような施設である、ホスピスに移動されます。

もちろん、ホスピスに移動することは義務ではありませんし、自宅で余生を過ごしたいと言う人は帰宅することも可能です。

イギリスのホスピスもまた入所は無料です。但し医療とは違い、すべてが税金で賄われているわけではありません。税金以外に寄付金や非営利団体によって集められた資金などによって賄われているのです。有料のホスピスもあり、より良い環境やサービスを受けることも可能です。

イギリスは、スコットランド、イングランド、北アイルランド、ウェールズと各国それぞれ独立運営となっていますが、どの国に至っても半分以上の資金は寄付などの公金以外で運営されています。特に幼児用ホスピスに関していえば全英の83%の必要資金は民間によって集められています。

国名 公金投入率
スコットランド 40%
イングランド 33%
北アイルランド 31%
ウェールズ 24%
全英小児用ホスピス 17%

チャリティー発展国イギリス

イギリスではどこの町に行っても必ずと言っていいほどチャリティー・ショップがあります。イギリス人は自宅で不要になったものなどをチャリティー・ショップに寄付し、その売り上げは各団体に寄付されます。そのため各チャリティー・ショップは必ずそのお金がどこの団体に寄付されるかを示さなければならないのです。

ホスピスに入居している人で、家族がいない人などは自分が死亡した後は自宅を寄付する人も少なくありません。

例えば、

  • 癌患者のためのチャリティー・ショップ
  • 乳がん患者のためのチャリティー・ショップ
  • 子供のためのチャリティー・ショップ
  • 老人のためのチャリティー・ショップ
  • 軍人支援チャリティー・ショップ
  • 人以外にも動物保護のために使用される『キャット・ドック・チャリティー・ショップ』

などもあります。

アロマテラピーの活用

アロマテラピーはフランスやイギリスから広がっていった、自然治癒薬で、日本でいうところの漢方薬にとても似ています。イギリスでは現在でも、現代医学の治療以外にも、ハーブを利用したアロマテラピーが根強く残っており、アロマテラピーを利用した臨床実験も行われています。

そのため、薬局では現代薬と共に多くの自然から抽出したハーブエッセンスを医薬品として購入する人をみかけます。薬剤師もハーブの知識が豊富な人も多く、自然なもので病気を治療したいと願っている人も多くいます。

まとめ

イギリス国民の平均寿命が他国より短いことをイギリス人が気に留めているような様子は全くありません。それよりも常に質の高い生活を長く続けることに意義があると良く口にします。イギリスでは、病院に行くことが日本ほど簡単ではないため、自分の健康管理をしなければいけないという自覚が高いようにも見受けられます。


参考資料サイト

日本の平均寿命 男性81.64歳 女性87.74歳 過去最高更新(令和2年簡易生命表) | 社会保険労務士PSRネットワーク (psrn.jp)(外部サイト)

平均寿命世界ランキング・国別順位(2022年版) (memorva.jp)(外部サイト)

UK Hospice Facts and Figures (hospiceinfo.org)(外部サイト)

本記事は、2022年6月26日時点調査または公開された情報です。
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