国王は君臨すれども統治せずの原則とは
「国王は君臨すれども統治せず」には、国王は国の最高権力者として存在しますが、政治的権力は持たず、国の統治権は議会を通じて国民が行使するという意味があります。
例えば2022年現在、95歳のエリザベス2世は、1952年の在位以来、世界一長い間、国王を務めています。エリザベス女王は、イギリスとその他15カ国の英連邦王国及び王室属領・海外領土の君主で、イングランド国教会の首長でもあり国の最高権力者ですが、政治的権力はほとんどなく、国の政治に関しては、首相を中心に内閣が行政の実権を握っています。
なぜイギリス国王は、政治に関与できなくなってしまったのか?
大ブリテン王国を成立させたアン女王には王位を継承できる子供がいなかったため、又従妹にあたるジョージ1世が、1714年に亡くなったアン王女に代わって、国王に即位しました。しかしドイツで生まれ育ったジョージ1世は、英語を流暢に話せず、イギリスの習慣も分からず、政治にも興味がありませんでした。
当時の国王には国家権力が集中していて、議会に対して一方的な権限がありましたが、ジョージ1世は国の政務に関心を持たず、ロバート・ウォルポール(のちにイギリスの初代首相に就任する人物)に任せてしまいました。その結果、内閣と呼ばれる組織がイギリスに誕生しました。
そして内閣は行政を担当するにあたり、議会に対して責任を負う責任内閣制へと発達し、国王は国の政治に責任をとらない代わりに、政治的権力や国の統治権をなくしました。
まとめ
国王は君臨すれども統治せずというと、「国や国民に対して、協力的でない王様がいる」というような否定的な感じを受ける人がいるかもしれません。しかしもしかすると当時国王だったジョージ1世が、政治に無関心な態度を取ったのは、イギリス政治の近代化のためにくだした、合理的な判断だったのかもしれません。
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