2022年7月のアメリカの社会状況

アメリカ国内のガソリン価格の高騰と政府の対策(2022年7月情報)

ロシアのウクライナ侵攻が世界経済に悪影響を与え続けているなか、ここアメリカでもガソリン価格が1ガロンあたり約2ドルも上昇し、国民生活に深刻な打撃を与えています。政府も対応に全力をあげているようですが、大きな効果は出ていません。

しかしアメリカは世界最大の原油産出国、なぜガソリン価格がこんなに高騰するのでしょう。

そこで今回は、ガソリン価格の高騰の原因と言われていること、それに対してアメリカ政府のこれからの対応をレポートしていきたいと思います。


ガソリン価格の高騰の原因は、本当にロシアへの経済制裁とコロナの影響?

アメリカでは、ガソリン価格の高騰の主な原因は2つ、

  1. ロシアへの経済制裁と
  2. コロナの影響で原油が不足しているから

と言われています。しかし本当にそれだけが原因なのでしょうか。

アメリカはウクライナ侵攻による経済制裁として、ロシア産の原油輸入を制限しています。

しかし政府が国内の戦略的石油備蓄分から日量100万バレルの石油を放出し、輸入制限した原油の不足分を補っているので、価格高騰の原因とするには少し疑問が残ります。

アメリカはフラッキング技術の開発によって、2017年からサウジアラビアとロシアを追い抜いて、世界第1位の原油産出国になりました。

しかし大量の水を使うフラッキングは環境破壊の問題もあり、政府が自然環境保護のため原油生産を妨げているので、値上がりが起こったとも言われていますが、実際は、1日あたり1200万バレルの原油を連日国内生産し、エネルギー生産量新記録を更新しています。

またアメリカ以外の世界中の石油産油国も、原油の生産量を増やしているので、世界の原油価格は1バレル10ドル以上も下がりました。普通なら原油価格が10ドルも下がると、米国内のガソリン販売価格は、1ガロンにつき25セントは値下げになるはずです。しかし全く値下がるようすはなく、値上がりする一方です。

パンデミックの影響で、大手石油企業の原油精製施設が停止したため、ガソリンやディーゼルオイルなど石油製品の生産量が減ったのも、ガソリン価格高騰の原因とも言われています。しかしコロナ禍で製油所が閉鎖したのは2019〜2020年のことです。ちなみにアメリカ大手石油会社3社の2021年4~12月期決算の業績は、過去最高の黒字になったそうです。

これらの点を踏まえると、ガソリン価格高騰の本当の原因は、原油や石油製品の生産量の問題というよりも、製油所閉鎖による過去の損失を取り戻そうとしている石油会社と、再び原油価格が高騰することを懸念して、小売価格引き下げを躊躇しているガソリンスタンドのオーナー達など、誰かが価格差を着服しているのが問題なのではないかと推測されます。

それでも車なしでは暮らせないアメリカ

本当の理由がなんであれ、ガソリン代や燃料費の高騰は、国民の生活に直結する大きな問題です。

今年5月のガソリン価格は前年同月比48.7%増で、全米で最も高いカリフォルニア州では、1ガロン10ドルの値段をつけている店もあるそうです。


公共の交通網が発達していないアメリカでは、車がないと生活がとんでもなく不便になります。郊外に住んでいると徒歩で買い物に行けるのはごく稀で、最寄りのコンビニでさえ、歩いて行けないことがよくあります。特に5月から9月までの4ヶ月間、日中の最高気温が毎日40℃以上になるフェニックスの場合は、日中歩いて買い物に行くこと自体、自殺行為とも言えます。

またアメリカでは屋内外、昼夜を問わず子供を一人にすると、虐待やネグレクトなどの罪になります。もし通報されたくなければ、学校や習い事、近所の友達の家に遊びに行く時でも、保護者が子供の送り迎えをしなければなりません。送迎の際、ほとんどの保護者は近くても車を使います。

理由は一見安全そうな住宅地でも、強盗や誘拐に遭う危険性もあるからです。このように通勤、通学、子供達の送り迎え、買い物やレジャー、どこに行くにも車が必要なアメリカでは、どんなにガソリンが値上がりしても給油し続けるしかありません。

車は一家に2台以上あるのが普通です。D I Yが盛んなアメリカでは荷物がたくさん積める、大型のピックアップトラックを自家用車にするのが人気です。しかし30ガロン(115リッター)もあるピックアップトラックのタンクを満タンにすると、現在のガソリン価格だと1回の給油で2万円以上もかかります。

大きな車は燃費も悪いので、ガソリン代だけで月10万円を超える家庭も少なくないはずです。もしこのままガソリン価格が下がらなければ、フルタイムで仕事をしている人でも、通勤のためのガソリン代で破産する人がでるかもしれません。

大統領が提案するガソリン価格を下げる3つのアプローチ

現在、ガソリン価格を下げるため政府が行なっている短期救済対策は

  1. ガソリンとディーゼルの連邦税を3ヶ月間一時停止する
  2. エタノールを15%混合した、国産のバイオ燃料へのアクセスを拡大
  3. ガソリンスタンドの経営者に対して、利益の一部を顧客に還元するよう要請

の3つの提案が計画されています。

アメリカではガソリン1ガロンにつき最低18セント、ディーゼルには1ガロンあたり24セントの連邦税を課しています。もしガソリンとディーゼルの免税案が、議会を通過し条例になれば、9月末までの3ヶ月間は、単純計算でガソリンが最低でも18セント安くなる予定です。その他にも各州に対して、ガソリンに対する州税の一時的な停止や、消費者への救済金など、さまざまな形で直接的な救済措置をとるように求めています。

石油会社には石油の精製をもっと増やすよう呼びかけ、エタノールを15%混合した国産のバイオ燃料へのアクセスを拡大して、ガソリン価格の引き下げるよう指示しています。ガソリンスタンドの経営者に対しても、転倒価格を引き下げて、販売利益の一部を顧客に還元するよう求めています。

まとめ

アメリカ政府はここ数カ月、ガソリン価格の高騰に苦しむアメリカ国民を少しでも救済するために、戦略石油備蓄からの歴史的な放出や、石油会社や精製業者による生産能力の増強、市場により多くの供給を行うよう奨励するなど、短期的なエネルギー増産の努力をしています。

どんなに小さな下げ幅でも、ガソリン価格の軽減措置は消費者に歓迎されるでしょう。

しかしガソリンの免税を既に導入したドイツのように、誰かが差額を着服して、一度下がった価格が、またすぐに上がらないようにしてほしいものです。

本記事は、2022年7月6日時点調査または公開された情報です。
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