はじめに
長引く鳥インフルエンザによって、イギリスの食鳥業界は、大打撃を受けています。同時に、ロシア・ウクライナ戦争による飼料の高騰という二重苦に見舞われたことで、今年は多くの食鳥農家が七面鳥の飼育をやめたり減産しています。そのため、今年のクリスマスシーズンには必ず七面鳥の供給が不足となる事態に陥ると、今から消費者に警告を鳴らし始めたのです。
イギリスの鳥インフルエンザ状況
2021年の夏ごろからイギリス全土で発生し始め、これまでに120件、その確認が報告されています。現在でもその状況は収束しておらず、イギリスにとっては初めて経験する長期に渡った戦いとなっています。
鳥インフルエンザは他の動物や人体に顕著な悪影響があることは報告されていませんが、その可能性を全く否定することも出来ません。また、食鳥農家以外にも、野生の鳥や自宅で飼っているペットに関しても注意を払うように協力を呼び掛けています。
2022年1月に鳥インフルエンザに感染した人が1人報告されていますが、重症化には至りませんでした。但し、野生で死んでいる鳥などを見つけた場合も触らないように注意喚起しています。
例えば、自宅で飼っているペットの鳥であっても、疑わしい様子が目に見えたり、野生の鳥3羽以上が池や川など同じ場所で死んでいるのを見かけた場合は、すぐに報告が出来るように専門のホットラインも設けられています。
イギリスではペットであっても家禽を飼育する場合は、必ず登録が義務付けられています。50羽以上飼育する場合は法的に決められた設備を完備することが必要とされています。
スコットランドでは2022年1月までに数千羽の野鳥が死んでいるのが見つかっています。主に巣を密に作る習性のある野鳥にその被害が顕著にみられるということです。
研究機関発足
2022年6月20日、イギリスの著名科学者達により、鳥インフルエンザを収束するための専門研究団体の設立が発表され、イギリス政府は150万ポンド(約2億5000万円 1ポンド=167円)の援助資金の拠出を約束しました。主な研究内容は以下の通りです。
1)現在鳥インフルエンザウイルスに指定されているウィルスの仕組みを解明する。
2)鳥インフルエンザのウィルスがどのように異種間の鳥に感染してゆくのか、特に家禽農家で飼育されている食鳥に対して、どのようにそのウィルス感染が拡散してゆくのかを研究する。
3)鳥インフルエンザの発生地域図の作成
4)今後の発生予見モデルの開発
5)カモは比較的その被害が少ない理由を含め、種類によって鳥インフルに対する抵抗力の違いを探る。
6)鳥インフルエンザが動物から人への人獣共通感染病になることを防ぎ、今後パンデミックが起きるような伝染病にならないように、リスク緩和を講じる。
ロシア・ウクライナ戦争による飼料高騰が食鳥農家に追い打ち
イギリスではクリスマスシーズンには1,000万羽の七面鳥が食べられるといわれています。しかしながら今年は、鳥インフルエンザの蔓延とロシア・ウクライナ戦争による食鳥飼料の高騰により、多くの家禽農家が七面鳥の飼育をあきらめたり、減産していることが分かってきました。
農家によっては飼育数を前年の20%減、50%減にしてリスクの低減を講じているために、今年のクリスマスに供給される数は確実に減少することが推測できます。
昨年までは1トンあたり150ポンド(約2万5千円 1ポンド=167円)であった飼料が、戦争が始まって以来300ポンド以上(約5万円)と倍に跳ねあがりました。その費用は価格に跳ね返されることは必須のため、今年の七面鳥はかなり高額になりそうです。
労働者不足
イギリスがEUから離脱したことで、単純労働作業をしてくれる労働者を確保することが難しくなりました。特に農産業分野においてはその影響は少なくはありません。食鳥産業もその中の一つです。
そのため、イギリス政府は2024年までとして、半年滞在することが出来る園芸作業に特化したビザを発給することでその人材を補うように調整しています。
まとめ
鳥インフルエンザの感染拡大については未だ確かな解明はされていませんが、ウィルスが靴底や洋服に付着して蔓延しているのではないかとも言われています。コロナの蔓延が緩やかだった日本に対して、家の中で靴を脱ぐ習慣がその原因ではないかと言われました。今回この鳥インフルエンザの感染拡大を機に、イギリスでも家の中で靴を脱ぐことが日常化するようになるかもしれません。
参考資料サイト
Farmers warn of ‘definite’ turkey shortage this Christmas – BBC News
UK’s top scientists join forces to battle bird flu outbreaks – GOV.UK (www.gov.uk)
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