はじめに
イギリスでは11月5日前後に各地でボンファイヤー・ナイトと称してキャンプファイヤーのような大きな焚火が行われます。同時に花火もあげられることが通常で、露店が軒を連ね、大人や子供達が集って楽しむ夜の伝統的お祭りの一つとなっています。
イギリスでは10月の最後の週末に夏時間から冬時間に変更することもあり、ボンファイヤー・ナイトのお祭りは本格的な冬の到来をイギリス人に知らせる行事でもあります。
そんな伝統的行事に環境保護および動物愛護を訴える人々から「NO」を突き付けられています。
ボンファイヤー・ナイトの由来
ボンファイヤー・ナイトはガイ・フォークス・ナイトとも呼ばれ、その起源は1605年11月5日にカトリック教徒であるガイ・フォークス氏とその仲間が起こした国会議事堂爆発テロ未遂事件にさかのぼります。
当時のイギリス国王であったジェームス1世による激しいカトリック教の弾圧に反発したカトリック教徒が決起し、国会議事堂を爆発させることで、ジェームス1世および国会議員達を暗殺することが企てられたのです。
国会議事堂の下まで坑道を掘り、火薬を引き詰め、建物もろとも爆破し、暗殺する計画でした。ところがこの計画は未遂に終わり、火薬の火付け役であったガイ・フォークスとその仲間は逮捕され、ロンドン塔に送られ処刑されてしまいます。
国会議事堂で会議が開会される11月5日が彼らの決行予定日だったため、毎年11月5日前後がボンファイヤー・ナイト又はガイ・フォークス・ナイトと呼ばれ今日までイギリスの伝統行事となっているのです。
ジェームス1世の存命を祝い人々がかがり火を焚いたことがこの行事の始まりとなりました。各地でガイ・フォークスに見立てた人形を街中引きずり回し、最後にボンファイヤーにくべて燃やすなど、各地で特色化されています。
環境保護の観点
なんといってもイギリス全土で行われる焚火と花火から排出されるCO2が問題視されています。気候変動の歯止めをかけるべく、なお一層の努力を重ねているのに、まさにその行動は逆行と言えるからです。
一部専門家はイギリス全土で繰り広げられているとはいえ、そのCO2排出量は微々たるものだと言及しています。
もう一つの問題は大気汚染です。
イギリスでは家庭内から排出されたゴミなどを各自で焼却処理することは禁止されています。ところがこの夜とばかりに、本来は焼却してはいけない、家庭ごみを燃やす人が後を絶たないからです。プラスチック、オイル、可燃すると有毒物を発生するような物の焼却、通常リサイクル費用がかかる大物家具やマットレスまで燃やそうとする人が出てくるのです。
この問題に対して環境局は、たとえそのようなものが含まれていたとしても大気中を汚染するほどの量ではないと言っていますが、環境保護を訴えている人たちにとっては不適切行為が目に余るようです。
動物愛護の観点
動物愛護精神の強いイギリスでは、花火の音などにより動物が強いストレスを感じているというものです。花火を打ち上げることでどれだけ動物が精神的苦痛を受けるか考えるべきだと抗議するチラシがこの時期になると多く配られます。
まとめ
環境保護や動物保護の観点以外でも、宗教の自由が認められている21世紀に果たしてこの行事の意味があるのかと言う人たちも多く出てきています。
まして、多くの子供も集うこのイベントで、人をかたどった人形を火にくべるのは残酷であり、教育上悪しき習慣ではないかと主張する人たちも少なからずいます。
そのため、最近では花火大会と称するところも多く、ボンファイヤー・ナイトの謂れを知らない人も多くなってきています。今後継続するためには時代に沿ったやり方を探ることが求められそうです。
参考資料サイト
Guy Fawkes Night: How to have an eco-friendly Bonfire Night 2022 | The Independent
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