はじめに
2022年10月25日、トラス氏の首相辞任に伴い、保守党党首選挙で当選したリシ・スナク氏42歳が、20世紀以降最年少のイギリス首相に就任しました。
2015年に初当選してから7年目となります。
スナク氏は最年少のイギリス首相となっただけではなく、インド系移民3世であり、初のアジア系首相となりました。
混迷を続けるイギリスで今後どのような手腕を見せるのか国民は見守っています。
その一方、保守党が与党として政権を担う事に反対する勢力が膨れ上がっていることも事実で、今後の政権運営が注目されます。
リシ・スナク氏とは
- 1980年5月12日、イギリス、ハンプシャー生まれ。
- インド出身の祖父が東アフリカからイギリスに移住。
- 父親は医師 母親は薬剤師。
- 配偶者はインド出身のアクシャタ・ナラヤナ・ムルティさんで、ファションデザイナー兼実業家。父親はインド多国籍IT企業で知られるインフォシスの初代CEOで大富豪として知られている。彼女自身も数十億ドルの資産があるとされている。
- 彼女自身はイギリス国内で非定住者という身分を利用し、イギリス国外で得た収入をイギリス国外で納税していたことが発覚。合法的であったものの脱税疑惑として取り上げられたことで、すぐさま、今後はイギリスで納税することを発表。
- ヒンズー教徒である。
- イギリス名門のウィンチェスター・カレッジからイギリスのフォックスフォード大学、アメリカのスタンフォード大学院でMBA取得。
- ゴールドマン・サックスやヘッジファンドなどで勤務。
- 2015年イギリス総選挙でリッチモンド選挙区から庶民院議員に初当選。議員となって4年目の2019年にはすでに保守党代表として討論会に出席しており、彼の舌弁にはかなりの定評がある。
- スナク氏がボリス・ジョンソン首相時代に財務相を務め、2020年7月8日にはコロナ流行下の雇用維持のために最大で300億ポンド（1ポンド 168円換算）日本円約5兆400億円の追加経済救済策を発表して、注目された。
スナク新首相の政策とは
ボリス・ジョンソン氏の辞任により行われた保守党党首選では、スナク氏とトラス氏の一騎打ちとなり僅差で軍配はトラス氏にあがりました。
しかしながら、二人の党首選テレビ討論会で、スナク氏はトラス氏の減税政策を徹底的に批判していたことは国民の記録にまだ新しいものでした。前首相トラス氏が掲げた、減税政策が大失敗に終わったことで、スナク氏の考えが正しかったとの見方が高まり、今回の保守党選挙で無投票当選を後押しする形になったことは否定できません。
今回の保守党党首選は無投票当選を果たしたため、選挙期間中に政策公約を国民にアピールすることも、演説をすることもありませんでした。
2022年11月7日現在に至るまで、一切政策目標が発表されていません。スナク氏が首相に就任してから名言してきたことや、財務相時代に言及したことを踏まえると下記のような政策が期待されています。
- 減税政策については近い将来必要な政策ではあるが、インフレ政策を最優先とする。
- ＮＨＳ（国民医療サービス）の追加予算によりコロナで滞っていた診療改善に着手する。1年以上も治療待機となっているような地域については臨時診療所などを設置し対処をする。
- 歯科医療事業にいたっては国民医療サービスの利用が出来ない状況があり、国民は全額負担で歯科医療を受けなければならなかった状況を2024年までに改善する。
- 法人税を2023年4月から19%から25%に引き上げ、所得税については基本税率を4%引き下げる方針。
- ロシアのウクライナ侵攻についてはウクライナを支持するものの、英国のウクライナへの軍事介入に対しては反対。トラス前首相が掲げた防衛費の国民総生産比３％への引き上げについても慎重な姿勢をとっている。
- 国民が直面しているエネルギー料金の上昇に関しては、何らかの救済が必要としているものの具体策はまだ発表されていない。スナク首相は今後イギリスが必要なエネルギーは原子力発電と風力、太陽光などの再生利用エネルギーで賄えるとしながらも、即効性があるエネルギー対策にならない事は明白。
- 2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにするというイギリスの目標については達成を目指すために努力を継続することを明言している。
- 難民問題についてはボリス・ジョンソン氏が発表したイギリス亡命者の一部をアフリカのルワンダに移送する政策を支持する。この政策に関しては、未だに実行に至っていない。イギリスに夢をもってやってくる人たちを歓迎するとする一方、今後の難民受け入れなどに関しては基準を厳格化する。
- ＥＵ離脱に伴う法整備を行う。特にＥＵと陸続きで接している北アイルランドの物資の流通については最善策を模索してゆく。
イギリス国民の反応
スナク新首相が誕生してまだ間もないものの、市民の生活は高騰する物価とエネルギー費用で窮地から抜け出せないと感じる人々でいたるところでデモやストが起こっています。
主な抗議内容：生活費危機の終了、富裕層への課税、社会福祉・保障への資金を提供、エネルギー・水・郵便・鉄道の国有化、保守党の撤退等、福祉改革、人種差別、環境災害、戦争、緊縮財政、ヘルスシステム売却、ホームレス等への改善要求
まとめ
これまで長期に渡って混迷してきたイギリス経済、困窮する市民生活が一夜にして激変することはないことは誰もが理解していることですが、あまりの長期化する現状にストレスを感じているイギリス人は多いようです。
特にスナク首相はチャールズ国王の何倍もの資産を有しているなどと揶揄されており、2000ポンドもする靴を履いている首相に一般国民の生活を理解し得るのかと不満を漏らす国民も少なくありません。
参考資料サイト
》Rishi Sunak vows to fix Liz Truss’s mistakes in first speech as PM – BBC News
》NHS seeks £7bn extra as Rishi Sunak says health service spending will be prioritised (msn.com)
》スーナック財務相、雇用維持を柱に最大4兆円規模の追加経済対策を発表(英国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ (jetro.go.jp)
》スーナク氏、英首相としてどんなことをするのか – BBCニュース
本記事は、2022年12月26日時点調査または公開された情報です。
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