【孤育てからの脱却】地域が取り組む子育ての為の支援の「今」

日本の課題を考えるシリーズ。今回のテーマは「孤育て」です。核家族化が進み、誰にも頼れない状態で子供を一人で育てている母親も少なくありません。そんな閉鎖された環境での子育ては、「孤育て」とも呼ばれ、色々な弊害が出てしまいます。孤独なお母さんの現状とそれを支えるサービスについてまとめました。


周りには誰もいない…ひとりで子育てに取り組むお母さん

孤育てを生む原因はさまざま

少し前までは、配偶者もしくは自分の両親と一緒に同居をして、夫婦だけでなく家族全体で子育てをするのが当たり前でした。地域でも、近所づきあいが盛んで、子供は地域で育てるものとして、自分の子供ではなくても、悪いことをしたら大人が子供を叱る事も当たり前でした。

核家族化が進み、共働き世帯が増え、男女の働き方やライフスタイルも様々になりました。色々な原因が重なり、誰にも頼れない中で子育てをするお母さんが多くなっています。

転勤などで知らない環境になる

配偶者が転勤族の場合には、日本全国の色々な所を転々とする為、近所づきあいをする機会に恵まれません。知らない土地で、知らない環境にやっと慣れてきたと思ったらもう次の転勤が決まる事もあります。

常に周りは知らない人がいる環境で子育てをする事になります。

仕事を辞めてから、知り合いがいなくなる

産前産後休暇や育休を取得後、仕事に復帰する女性も多くなりました。一方で、妊娠や出産を機に仕事を辞めた女性もいます。

仕事に復帰をする人は、また以前のように自分の居場所として職場があります。知っている職場の仲間もいます。子育て中は閉鎖的な環境で育児をする事も多いので、仕事はたいへんだけれども、育児のリフレッシュやオンオフが付いて良い、といった意見もあります。

ところが、出産後そのまま専業主婦として子育てを続ける人、特に周りに誰も頼れない中で子育てをする人は、日中は大人と話す機会も少なく、より孤独感を感じる事になります。

頼れる両親がいない

女性は出産時に里帰りをして、実家のお世話になる事も多いです。そのまま、実家や義実家の近くに住む、もしくは同居して、子供を一緒に育てる、時には頼る事もあります。

一方で、両親は既に他界している、大人になってから疎遠になった、介護や病気で頼れない、など何らかの事情で両親や義両親に頼れない人がいます。普段は遠方に住んでいても、いざという時には頼れる両親や義両親を持っている人もいれば、近距離に住んでいるけれども、まったく頼る事の出来ない両親や義両親を持っている人もいます。

配偶者が育児に協力的でない、仕事が忙しい

例え両親や義両親が頼れなくても、周りは誰も知らない環境でも、配偶者の存在があれば二人で育児を乗り切る事はできます。

ところが、配偶者が激務の為に不在がちで頼れない、育児に協力的でないなどの理由により、母親ばかりに育児の負担がかかる事にもなります。


一番頼りになるはずの配偶者にも頼れない状態は、ますます母親の孤独感を募らせてしまいます。それに加えて、二人の子供なのに育児に参加しない夫への不満も溜まってしまいます。

孤育てが長く続くとどうなる…?色々な弊害について見てみよう

話し相手がいない事による閉塞感

ひとりで子育てをする事は、周りを気にせず、気ままに子供と一緒に過ごせると言ったメリットもあります。けれども、孤育てが続く事により、色々な弊害が出てくることも覚えておかなければいけません。

ひとつは、閉塞感を感じる事です。特に、子供がまだ話せない場合には大人と会話する機会も減る為、ひとりで子供を育てている事に対する閉塞感が募ります。小さい子供がいるから、気軽に出かける事もできません。たわいのない会話をする機会もなくなり、孤独感を感じてしまいます。

自分の時間が持てない

たまにはゆっくり買い物をしたい、美容院に行きたいなどのリフレッシュ目的から、医者に行きたい、役所に用事があるなど生活の中で必要な用事を済ませたい時まで、子供が小さいと気軽に行く事ができません。もしも、気軽に子供を預けられる環境や人がいれば、それもできますが、誰にも頼れない時にはそれも叶いません。

医者や役所に行くときは、泣き止まない子供を抱えながら仕方なく。買い物や美容院は我慢する…。友達と会って遊ぶ事や、大好きなアーティストのコンサートに行く事などもってのほかです。

自分の時間が持てない事は大きなストレスとなり、子供を「自分から自由を奪う存在」と認識し、虐待に走ってしまう母親も少なくないのです。

張り合いのない毎日から、鬱などになる事も

毎日同じことの繰り返しである孤育ては、張り合いのない毎日となります。

子供が寝返りをした、喃語を話したなどの成長は子育ての楽しみのひとつですが、それも共有できる相手がいないと、自分ひとりが頑張っている事に対して、むなしさを感じるようになります。

また、子育てはとても大変であるのにもかかわらず、評価を受けにくい事であるのも、閉塞感や孤独を感じる要因となっています。子供を懸命に育てていても、あまり「頑張っているね」「偉いね」と評価される事がありません。

これらが重なると、子育てに対する意欲がなくなり、鬱や子供に対するネグレクトの原因ともなってしまうのです。

孤独なお母さんを助けて!こんなにある無料で利用できる支援の手

支援センター・児童館

住んでいる自治体の保育園や公民館、児童養護施設の一室、児童館が子育て支援センターとして開放されている事が多いです。また宮城県仙台市の「のびすく仙台」の様に、支援センター専門の施設もあります。

子育て支援センターとは、主に乳幼児の室内の遊び場です。年齢に合わせたたくさんのおもちゃや、体を動かして遊べるスペースが用意されているので、子供の遊び場としても最適です。保育士や児童指導員が常駐しており、子供を遊ばせながら子育てに関する悩み事相談もできます。気になる事を気軽に相談できる他、子育てに対する不安な事、関する愚痴なども言っても大丈夫です。

支援センターは、気軽に遊べる遊び場として、他の子育て中のお母さんと交流する事もできます。室内にある相談もできる公園、と考えると良いかもしれません。暑い日や寒い日、雨の日でも子供を遊ばせられる、何よりも自分が外に出る機会を作れる場所です。

支援センターや児童館によっては。イベントを開催する事もあります。それらをチェックしてイベントの時だけの参加ももちろん大丈夫です。

子育てサロン

子育てサロンとは、主に地域の民生委員やボランティアの方が主催する催し物の事を指します。地域の公民館や社務所、集会場など地域住民が集まるスペースを借りて開催される事が多くなっています。


子育てサロンは、月に1~2回、決まった曜日に開催される事が多いです。絵本や紙芝居の読み聞かせや、工作、手遊びなど色々な催し物があらかじめ企画されていますので、子供と一緒に楽しむ目的だけでも参加する事ができます。

支援センターのように、参加している他のお母さんや子供と交流するのも良いですし、ただ子供と楽しむだけでも大丈夫です。民生委員がいれば、子育てに関する事で困ったことがあれば相談する事もできます。

育児相談

自治体によっては、公民館や保健センターで、子供の発達や育児に関する事を気軽に相談できる育児相談を設けている事があります。

子供の身長・体重を計測できる他、助産師や保健師、栄養士や歯科衛生士などに子供の発達や健康、栄養状態についての相談をする事ができます。

公民館へ出張で開催されている育児相談の他にも、自治体の保健センターなどでは随時育児相談を受け付けている事があります。また、対面でなくてもすぐに育児の相談ができる、電話相談窓口も自治体には開設されていますので、育児に関する事ならどんな些細な事でも気軽に相談できます。

子育てをしている女性向けのセミナー

自治体では、育児や子供を育てながらも復職を目指したい女性などを対象とした、無料のセミナーや、住民に対する地域活動の報告会を行っている事があります。

そして、セミナーでは無料の託児が受けられる事も多くなっています。子育てで知りたい情報を得ながらも、子供を預けてゆっくりセミナーや報告会を傍聴する事ができます。また、小学生や中学生の保護者向けのセミナーを行っている場合もありますが、託児があれば利用する事ができます。これからの育児の予習としても有益なセミナーとなっています。

セミナーや報告会を受ける目的だけでなく、子供を預けられる機会としても利用できます。

ちょっと待って!無料支援を利用する時の注意

自治体や子育て支援を行っている団体で、色々な子育て支援を行っている事が分かりました。けれども、残念ながら子育て支援を名乗りながら、実は宗教やビジネスの勧誘場所だった、といった被害も出ています。

子供連れのお母さんに「子育ての為のセミナーがあります」「育児サークルがあります」と言って通行中に話しかけられる、いきなり家に訪問させる場合には特に注意しましょう。開催場所も、公民館や市民センターなど、公の場所である事が多い為、「自治体で開催しているセミナー」と誤解しやすくなっています。

少しでも怪しい…と感じた時には、勧誘は断るようにしましょう。信頼できる子育ての催しやセミナーは、地域の掲示板や、広報、自治体の子育て支援向けサイトのページに掲載されています。

幼稚園・保育園で行っている地域支援

園庭開放

幼稚園や保育園では、園舎の一室を子育て支援センターとして開放するだけでなく、他にも色々な地域子育て支援を行っています。

その一つが園庭開放です。広い園庭を持っている幼稚園や保育園で、思い切り子供を遊ばせる事ができます。特に、幼稚園では砂場や子供にも安全に使用できる遊具がたくさんあります。

園庭開放は、その幼稚園や保育園に通っている子供でなくても利用できます。園庭開放は、実際に遊んでいる園児たちの様子や保育士、幼稚園教諭の対応を見る事もできますので、将来子供を保育園や幼稚園へ入れる時にも役に立ちます。

プレ幼稚園

幼稚園就園前の子供を対象に、プレ幼稚園を行っている幼稚園も多くなりました。将来その幼稚園に入園させた保護者を対象としていますが、プレ幼稚園はかけもちで入園する事もできますので、幼稚園選びの参考にする他にも、子供の遊び場としても活用できます。

プレ幼稚園は、無料で行っている所から有料の所まであります。母子同伴の所もあれば、母子分離の所もあります。いずれの場合も、事前登録が必要な事が多く、人気の幼稚園のプレはすぐに定員となってしまう事も珍しくありません。入れたいプレ幼稚園がある時には、事前に募集要項や募集時期をチェックしておきましょう。

ひとりの時間が欲しい、人手が欲しい、そんな時に利用できる支援

一時保育

保育園は、仕事や介護、病気の人が子供を預ける場所というイメージがありますが、一時保育を行っている保育園もあります。一時保育は、パートタイムなどの就業、自分の通院などの用事に使うだけでなく、リフレッシュ目的で利用する事も可能です。

保育園だけでなく、児童養護施設や子育て支援施設で一時預かりを行っている事もあります。

お子さんを数時間だけでも預けて、リフレッシュしてみるのも有効です。お買い物をしても、思い切り家事をしてみても、ひとりでぼんやり過ごしても、何をしても良いです。


一時保育を利用するには、事前の登録や面接が必要になります。詳しくは、一時保育を実施している保育施設に直接問い合わせをしてみましょう。

ファミリーサポートセンター(ファミサポ)

ファミリーサポートとは、自治体で提供している子育て支援制度です。子供を少しの間だけ預かって欲しい時や、保育園や幼稚園の子供がいる時に、用事がありお迎えの時間に間に合わないので、お迎えとその後の保育をお願いしたい時などに利用できます。

一時保育や預かりと違う点は、提供会員と利用会員に分かれている事です。あらかじめファミリーサポートに登録をし、利用会員の元に提供会員が訪れる、もしくは提供会員か利用会員のどちらかの自宅で保育を行う形になります。

一時保育の様に事前準備が必要ではない、比較的安い料金で利用できるなどのメリットがありますが、事前登録が必要になります。また、提供会員も保育士などの資格を持っているわけではないので、相性の悪い提供会員が来てしまうなどのデメリットもありますが、気軽に利用できる事、もしも合わないと感じる人が来た時には、他の提供会員に変えて貰える、もしも気に入った提供会員が見つかれば、ずっとお願いする事もできるなどのメリットもあります。

そして、ファミリーサポートセンターは「助け合い」が根本にある制度です。自分が育児の手を離れた時には、今度は提供会員として自分の様に育児で頼れる人がいない人へのサポートもできます。

本記事は、2017年8月16日時点調査または公開された情報です。
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