他国の脅威から日本の空を守る!航空自衛隊の職種紹介<前編>

日本の空を巡視・警戒し、領空侵犯やミサイル攻撃から日本を守る航空自衛隊。近年急増する空からの脅威に対処すべく、日々訓練を重ね、緊急事態に備えています。そんな航空自衛隊は、航空機に関わる職種をはじめ、60種類以上もの職種で構成されています。そこで今回は、航空自衛隊の職種<前編>をご紹介します。


> 後編はこちら 「他国の脅威から日本の空を守る!・・・」

60種類以上もの職種で構成されている航空自衛隊

自衛隊の中で、空から日本の安全や平和を守る航空自衛隊。そんな航空自衛隊の任務は、大きく分けて3つあります。空からの侵略から、国土や国民を守る「防空」、大規模災害が発生した際、人員や物資を輸送して人の命・財産を守る「大規模災害等の事態への対応」、国際貢献活動や国際緊急援助活動などを通じ国際平和に貢献する「国際平和協力」です。

この3本柱からなる航空自衛隊の任務遂行には、様々な職務や役割を持った各職種の働きが非常に重要。航空自衛隊の花形とも言える存在のパイロットはもちろんのこと、各種航空機の安全運行を支える整備員、さらには航空機へ搭載するための物資を管理する補給員など、隊員それぞれに与えられる職務が、航空自衛隊という組織の運営に大きく貢献しているのです。

航空自衛隊では、「飛行」「航空管制」「プログラム」といった20種類以上の職域から、さらに「飛行員」「飛行管理員」「電算機処理員」と細分化されものが職種として隊員に付与されています。この職種の数はなんと60種類以上にも上り、職種の数としては、陸上・海上自衛隊を凌ぎます。

ちなみに職種の中には、幹部自衛官のみに指定されているものや、特定の資格・技能の取得を条件として、現在の職種から変更できる「将来指定可能な特技職」といったものも設けられています。努力次第で何通りもの働き方ができる、航空自衛隊ではそんな各隊員の可能性を引き出す仕組みが確立されているのです。

新隊員教育期間中に隊員の職種が決定する

陸上・海上自衛隊同様に、航空自衛隊の職種は、入隊後すぐに行われる前期教育期間中に決定します。そして、このとき職種決定のベースとなるのは、各隊員の職種適性や各部隊の必要人員数。これに本人の希望が加味され、職種が決定するのです。

前期教育が終了すると、付与された職種の教育を行う術科学校に入校します。術科学校での教育は、各職種に必要な知識及び技能の習得がメイン。部隊に配属後、即戦力として迅速な業務が行えるように教育が進められます。ちなみに、教育期間は各職種によって異なり、1ヶ月~10ヶ月以上とばらつきがあります。

術科学校での教育期間中には、それぞれの隊員が配属される基地や分屯地が発表され、卒業と同時に部隊へ異動。こうしてようやく、一人前の航空自衛官として部隊に貢献していくこととなるのです。

ここまで航空自衛隊における職種の概要について解説してきました。ここからは、航空自衛隊の各職域から、実際に隊員に付与される職種に細分化してご紹介していきたいと思います。

航空自衛隊の最前線で活躍する「飛行」

戦闘機、輸送機、救難機、政府専用機などの、航空自衛隊が保有する航空機を操縦する職種です。この飛行員となるためには、高校卒業後に航空学生として航空自衛隊に入隊する方法と、防衛大学校または4年生大学卒業を経て幹部候補生となる方法の2つがあります。厳しい試験や適性検査へのクリアが必須ですが、晴れて飛行員となった際は、航空自衛隊の最前線で活躍することができます。

航空機の安全運航を地上から支える「航空管制」

飛行場内における航空交通管制業務や、離陸・着陸を行う航空機の誘導、管制に必要な器材の整備などを行います。


飛行管理員

パイロットの飛行管理やフライトプランの作成などを行います。語学、IT、気象などに関する知識を駆使して、操縦桿を握るパイロットを影から支える存在です。

航空管制員

パイロットと交信し、航空機が安全かつスムーズに離着陸できるように誘導を行います。管制業務に関する知識はもちろんのこと、様々な状況に素早く対応できる判断力を要する職種となっています。

航空管制器材整備員

航空管制員が使用する、航空管制装置の点検・整備を行います。器材が示す数値やデータが航空機の安全運行にダイレクトに関わるため、正確かつ迅速な対応が求められる職種となっています。

領空侵犯をいち早く察知し対処する「要撃(警戒)管制」

日本の領空に侵入する航空機をいち早く発見・識別し、必要に応じて戦闘機を誘導します。いつ発生するかわからない領空侵犯に対応すべく、日頃から訓練を重ね、即応体制を整えています。

要撃管制員(幹部指定職種)

領空の警戒監視の任務にあたり、戦闘機等のパイロットに指示を出します。戦闘機やパトリオットミサイルを有する各高射群への情報伝達を行うため、要撃管制員は幹部自衛官のポストとなっています。

機上要撃管制員(幹部指定職種)

警戒管制機などに搭乗し、レーダーやスコープ等を使用して味方の戦闘機へ指示を出します。要撃管制員同様、幹部に付与される職種です。

警戒管制員

早期警戒機や早期警戒管制機、全国のレーダーサイトなどにより、24時間日本の上空を監視します。いち早く領空の侵犯を察知し、緊急発進に備えるための要とも言える存在です。

機上警戒管制員

早期警戒機や早期警戒管制機に搭乗し、レーダーの監視を行う職種です。

コンピューターシステムの管理を行う「プログラム(電算機)」

早期警戒システムや気象解析予報システムなど、航空自衛隊が保有するあらゆるコンピューターシステムの保守や管理、プログラム構築などを行います。

プログラム員(幹部指定職種)

コンピューターのプログラム作成や管理を行います。プログラム員は、航空自衛隊の各種システムに大きく影響することから、幹部に付与される職種となっています。

電算機処理員

航空自衛隊のコンピューターシステムの運用、監視、保守管理等を行なっています。航空機の運行はもちろん、装備品等の管理もすべてコンピューターシステムで管理されているため、電先処理員の任務は非常に重要です。

気象をあらゆる面から観測し各所に伝達する「気象」

気温、気圧、風向、雲の高さなどから、気象状況を読み取り、航空機を操縦するパイロットへの共有及び飛行ルートの指示を行います。

気象観測員

あらゆるデータから気象情報を習得・予測し、航空機の安全運行を気象の面からサポートします。誤った情報はパイロットの危険に直結するため、常日頃から専門知識の習得が求められます。

気象器材整備員

気象データを正確に取得するためには、気象器材の存在が非常に重要です。気象器材整備員は、そんな気象器材の維持管理や整備点検を行なっています。航空機の安全飛行において、頼れる存在とも言える職種です。

航空自衛隊における攻撃の要!「高射」

高射に属する職種は、「ペトリオットミサイルシステム」と呼ばれる地対空ミサイルシステムを操作し、侵攻してくる敵の航空機を爆破する任務を担っています。空からの攻撃から、国民を守る要とも呼べる存在です。高射に分類される職種の中には、最新鋭のシステムに関する知識習得のため、アメリカへ派遣される機会が設けられています。


高射操作員

ペトリオットミサイルの準備や発射、また付随するレーダー装置の運用等を行います。隊員同士の連携によって防空戦闘を整えている高射操作員は、チームワークが非常に重要となる職種です。

基地防空操作員

対空兵器を実際に操作し、空からの攻撃に対して航空自衛隊基地を守ります。航空自衛隊の職種の中でも、実際の戦闘に関わることができる職種の一つです。

基地防空電子整備員

空からの攻撃に対処して航空自衛隊基地を守る「対空兵器」に備わっている、レーダー装置の点検・整備を行います。

基地防空機械整備員

全国各地に配属されている基地防空隊に所属し、対空兵器の点検・整備を行います。数種類ある対空兵器は大きさや構造がそれぞれ異なるため、対空兵器ごとの専門知識習得が必須となる職種です。

高射電子整備員

航空機やミサイルを捉えるレーダー装置や、発射の指令を担う射撃管制装置の、点検・整備を行います。

高射機械整備員

迎撃システム器材や発射機等の点検・整備を行います。小さな部品の点検ミスが、器材の不具合や故障に繋がるため、日頃から徹底的な点検・整備が求められる職種です。

部隊間の意思疎通を支える「通信」

有線通信や無線通信を用いて電報などの送受信を行ったり、航空通信に関連する業務を行います。意思の伝達に必要不可欠なツールを取扱うため、幅広い知識の習得はもちろん、故障・不具合と言った様々な事態への迅速な対応が求められます。

通信員

全国各地にある航空自衛隊基地・分屯地の通信業務を行なっています。命令や連絡事項を各部署に漏れなく伝達する、重要な任務を担う職種です。

機上無線員

航空機に乗り込んで、航空機と基地の通信業務にあたります。空と地上という遠い距離での意思伝達を支える機上無線員は、防空作戦や大規模災害の発生等において、非常に大きな役割を担っています。

防空に必要不可欠なレーダーの整備を行う「無線レーダー整備」

航空機の通信や航法器材、警戒管制レーダー機器、無線通信機器、警戒管制用電子計算機など、各種器材の整備を行います。

機上電子整備員

航空機に搭載されている通信装置や航法装置の点検・整備を行います。またこれらの装置が故障した際は、原因究明や修理にも迅速に対応します。

警戒管制レーダー整備員

レーダーサイトや早期警戒機に搭載されている警戒管制レーダーは、所属不明の航空機特定に必要不可欠なもの。これらレーダーの点検・整備を行なっているのが警戒管制レーダー整備員です。警戒管制レーダー整備員は、領空侵犯対処任務において重要な職種となっています。

地上無線整備員

航空自衛隊内の無線通信に関わる機器の点検・整備を行います。無線は地上間の通信はもちろん、航空機と基地との通信にも使用されるもの。地上無線整備員は、空からの任務を影から支えています。

電算機整備員

防空には欠かせない自動警戒管制システムの点検・整備を行います。領空侵犯やミサイルから日本を守る自動警戒管制システムは、航空自衛隊の基盤とも言えるシステム。電算機整備員はシステムに不具合や故障などが起こることないよう、常日頃から徹底的な点検を行なっています。

航空攻撃に使用する武器・弾薬を取扱う「武装」

武装の職種に配属される隊員は、主に戦闘航空団に所属し、航空機で使用する武器・弾薬の整備及び搭載を行います。

計測器整備員

航空機、ミサイル、通信電子機器等の整備の際に使用する、精密計測器の整備・点検を行います。

武器弾薬員

全国各地にある航空団に所属し、戦闘機に搭載する武器や弾薬の管理・整備を行います。航空自衛隊の攻撃に必要不可欠な武器・弾薬をいつでも使えるようにしておくという、重要な任務を担っています。

火器管制装置整備員

戦闘機からの射撃をサポートする装置「火器管制装置」の整備を行います。火器管制装置は、正確な射撃には大変重要な役割がある装置。火器管制装置整備員は、戦闘機パイロットの任務遂行に大きく貢献しています。

まとめ

航空自衛隊の花形「パイロット」から、航空機を取り巻くシステム・器材の整備を行う職種まで、幅広い職種で構成されている航空自衛隊。各職種の任務遂行が、航空自衛隊全体の任務完遂に重要であることがお分り頂けたのではないでしょうか。次回は、航空自衛隊の職種<後編>をお届けしたいと思います。


本記事は、2017年9月23日時点調査または公開された情報です。
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