【Jアラート】スマホ利用者必見「緊急速報メール」の仕組み

2017年8月29日の早朝、突然の警報音や緊急速報メールに驚いた方も多いのではないでしょうか。災害や有事に国民保護の必要のある事態が発生した時に発せられる警報が「Jアラート」です。地域の防災無線、TVなどのメディア、スマホ・ケータイに届くJアラートはどのようになっているのかについて解説します。


Jアラートって何?Jアラートのシステム(仕組み)について

Jアラート(J-ALERT)のシステムとは

Jアラートとは、総務省消防庁の設備で、「全国瞬時警報システム」の通称です。人工衛星と、各自治体の防災無線を利用して、当該地区にいる住民に対して緊急情報を伝えるシステムとなっています。

緊急情報を送信しなければいけない事態が発生した時には、まず総務庁消防庁が人工衛星から各自治体の地方公共団体などに緊急情報を送信します。緊急情報を受け取ると、自動的に防災無線が起動し、あらかじめ録音されている音声や防災無線の警報音が流れるようになっています。防災無線だけでなく、同時にケーブルテレビやEメール、コミュニティのFM放送でも伝わるようになっています。

フィルタリングによって当該地域のみ情報を流せる

Jアラートによる緊急情報を流す時には、この緊急情報が必要な地域に限定し、必要な人のみが情報を受け取れるようにしています。このしくみは、総務庁消防庁が情報の種類を識別する情報番号と対象地域コード情報を緊急情報と一緒に流す事によって、放送内容の自動選択や防災行政無線・有線放送を自動起動させる地方公共団体のフィルタリングが可能となっているのです。

Jアラートが「緊急情報」を流すのはどんな時?

Jアラートが流す緊急情報は、気象庁が作成する「気象関連情報」と内閣官房が作成する「有事関連情報」の2種類があります。

気象関連情報は大きく分けて以下4種類あります。
地震情報…緊急地震速報や震度情報、東海地震に関連する情報など計6種類
津波情報…大津波警報、津波警報・注意報の計3種類
火山情報…噴火警報や噴火予報など計2種類
気象情報…大雨、大雪、暴風、暴風雪、波浪、高潮の気象などの特別警報・警報・注意報、土砂災害や竜巻など特定気象に対する情報など計7種類

有事関連情報は主に以下の5種類です。
弾道ミサイル情報
航空攻撃情報(戦時中の空襲警報にあたる)
ゲリラ・特殊部隊攻撃情報
大規模テロ情報
その他の国民保護情報

Jアラートが流される目的とは

国民の身の安全を保護する

Jアラートの最大の目的は、「国民の身の安全を保護する為」です。

津波や大地震、大雨などの大災害から、北朝鮮からのミサイル発射など有事の時には、甚大な被害が出る事が予想されます。しかも、これらの災害や有事は予告なく発生する為、実際の対処までに時間の余裕がありません。

これらが発生する・した時にJアラートで瞬時に情報を流す事によって、国民は限られた時間の中でも、避難行動や予防のための措置を取る事ができ、身の安全を守れる確率が上がります。

地方公共団体の危機管理能力の向上

Jアラートの導入によって、地方公共団体の危機管理能力の向上が期待されています。

後述しますが、Jアラートの自動受信装置の設置は、東日本大震災を機に全国の地方公共団体に広がりました。これによって、不測の事態が起きた時に行動する訓練や備蓄、避難経路や場所の確保など、危機管理について考えさせられる機会となり、危機管理能力の向上に繋がりました。


非常事態から身を守れ! Jアラートを受信する手段を見てみよう

自治体の防災無線

緊急情報が発信されると、自治体の防災無線が受信・自動起動してあらかじめ設定された音声や警報音を出します。警報音は緊急情報の内容によって異なります。

警報音は、気象関連情報なら各自治体で公開している防災無線に関するホームページにて視聴できます。また、気象関連情報の中でも緊急地震速報の場合には、NHKで流れる緊急地震速報のチャイム音の採用が推奨されているため、気象庁を始めとした各自治体の防災無線、テレビなどのメディアでもNHKのチャイム音が採用されています。この緊急地震速報のNHKのチャイム音は、NHKホームページの緊急地震速報に関するページにて視聴できます。有事関連情報なら内閣官房「国民保護ポータルサイト」にて視聴できます。

NHK 「揺れる前に知らせる緊急地震速報」

内閣官房「国民保護ポータルサイト」

テレビやラジオ、インターネットなどのマスメディア

緊急情報はマスメディアでも受信・自動起動できるようになっています。例えば、テレビを視聴中に緊急情報が発信されると、その情報に対応した警報音と共に、情報が画面に字幕スーパーとして出されます。

携帯電話の緊急速報メール

緊急情報が発信されると、NTT Docomoのエリアメール、KDDI、沖縄セルラー、ソフトバンクモバイルの緊急速報メールが各携帯電話ユーザーに届きます。携帯電話の場合の警報音も、緊急情報の内容によって異なるアラームが鳴ります。

携帯電話に届く緊急速報メールの警報音は、各携帯電話キャリアのホームページ内、緊急速報メールに関するページで視聴できます。

※ なお、各サイト内で視聴できる防災無線及び緊急速報メールの警報音を、録音してみだりに鳴らしたり、不安をあおるような行動をしたりするのは禁止されています。

ソフトバンクモバイル 緊急速報メールについて

各自治体の防災に関するサービス

各自治体によっては防災に関するポータルサイトを独自に設けている所も多くなりました。そして、自治体内の防災に関する情報が得られる登録制の防災メールを配信している所もあります。この防災メールからもJアラートと連動して緊急情報が発信されるようになっている自治体もあります。

仙台市避難情報ウェブサイト

杜の都防災メール(仙台市の登録制防災メール)

Jアラートの変遷を見てみよう

東日本大震災を機に大きく広がる

Jアラートは、2004年から総務庁消防庁が開発を始め、テスト運用などを経て2007年から一部の地方公共団体で運用が始まりました。

その後、2011年に東日本大震災が発生しましたが、その当時にJアラートを整備していた自治体数は全国でも半数以下となっていました。けれども、東日本大震災を機に、2014年には全ての地方自治体にJアラートの自動受信装置の設置が完了しました。けれども、現時点で防災無線を整備している自治体は80%台、防災無線以外でも自動起動する緊急情報を発信する装置を整備している自治体は40%台に留まっています。

Jアラートの今後の課題について

防災無線の整備

災害や有事の当該地区に緊急情報を流す手段として主に使用されているのが防災無線です。防災無線は屋内・屋外関係なく聞く事ができる、携帯電話やインターネット環境がない人でも受信できる、テレビやラジオなどを視聴していなくても受信できるなどのメリットがあります。


ところが、緊急情報の自動受信装置は設置していても、防災無線が整備されていない地方自治体があります。また、防災無線装置はあったとしても、聞き取りにくい、雑音が入るなどで正確な緊急情報を住民に届ける事ができない所も少なくありません。

また、最近のJアラートが運用された実例として、2017年8月29日の北朝鮮のミサイル発射がありましたが、この時も当該地区中、少なくとも7道県の16市町村で防災行政無線が流れなかった、防災メールが送信できなかったといったトラブルが起きており、いずれも、関連する機器が正常に作動しなかった事が原因とされています。せっかくのJアラートのシステムも、正常に作動しなければ意味がありません。

Jアラートによる緊急情報をより正確に流せるように、防災無線の整備及び性能の向上を図る、また関連する機器も正常に作動するように調整や点検しておく必要があります。

防災無線以外の緊急情報の伝達手段の強化

防災無線が整備されていない、もしくは届きにくい地域に住んでいても、携帯電話の緊急速報メールやテレビ、ラジオなどからJアラートを受ける事ができます。

ところが、電波情報によっては緊急情報を受信できないなどのトラブルがあります。また、2017年8月の北朝鮮ミサイル発射の際にも、いわゆる格安スマホユーザー当該地域でもJアラートによる緊急速報メールが届かず、携帯電話のキャリアによっては受信ができない問題が生じました。

今後は、防災無線以外の緊急情報の伝達経路を強化する必要があります。

より正確な情報を流すための誤作動の防止、かつ迅速性

緊急情報を「正確」に流す事もJアラートには求められています。

Jアラートによる緊急情報の誤送信は、今まで全国の各自治体で起きてしまっています。特に2008年6月に、福井県美浜市に「北朝鮮からミサイルが発射されました。当該地域に着弾の恐れあり」との防災無線や緊急速報メールが流れ、美浜原発もある美浜市はパニックとなりました。

この誤送信は、Jアラートの誤作動が原因でした。間違った情報を流す事は、余計なパニックを引き起こしたり、住民にしなくて良い心配や不安感を抱かせたりする原因になりますので、誤作動や誤送信が起きないようによりJアラートが整備されなければいけません。

また、Jアラートの誤作動だけでなく、「Jアラートのシステムメンテナンス中に間違った緊急情報を送信してしまう」「Jアラートの動作確認の時に、誤って緊急情報として流してしまった」「Jアラートではなく防災無線の操作ミスによる誤送信」などの人為的なエラーによる誤送信も起きています。これらを防止する為の対応もより強化していかなければいけません。

そして、大災害や有事が起きた時に、Jアラートが起動する時間や緊急情報が流される時間をより短縮し、今よりも迅速に住民が緊急情報を受け取れるように、各Jアラートのシステムの時間短縮のための取り組みも求められています。

各機関との連携

消防や警察などの各機関の機能と、Jアラートが連動・連携する事によって、住民への情報伝達だけでなく、緊急情報へのより早めの対処が可能となります。今後は、書記官とJアラートとの連動・連携も期待されています。

実際の緊急情報受信の様子を見てみよう!

緊急速報メールの場合

Softbank iPhoneユーザーの、2017年8月29日北朝鮮からミサイルが発射された時の緊急速報メールを、実際にミサイルが発射された時間~日本上空を通過した時間と比較しながら紹介します。

5:58実際に北朝鮮からミサイルが発射

6:02携帯電話に警報音と共に緊急速報メール1通目が届く

緊急速報メール

総務省消防庁がJアラートを発信したのは実際の発射から4分後の6:02、同時に緊急速報メールが携帯電話に届きました。
「ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射された模様です。頑丈な建物や地下に避難して下さい。」(総務省消防庁)
ミサイルの発射と、避難行動を促す文面となっています。警報音は「災害・避難情報の専用着信音」でした。

6:06北海道の上空をミサイルが通過

6:12北海道東側の太平洋沖にミサイルが着弾(襟裳岬東方1,180kmの太平洋沖に、3つに分離して着弾)

6:14携帯電話に警報音と共に緊急速報メール2通目が届く


緊急速報メール

「ミサイル通過。ミサイル通過。先程、この地域の上空をミサイルが通過した模様です。不審な物を発見した場合には、決して近寄らず、直ちに警察や消防などに連絡して下さい。」(総務省消防庁)
ミサイルの通過と、不審な物を発見した時の対処法について書かれている文面となっています。

携帯電話から確実に緊急速報メールを受け取るには?

設定を「受け取る」にしておく

今回の北朝鮮のミサイル発射が当該地区だったのに、緊急速報メールが届かなかった!という方も実は少なくありません。ここでは、Jアラートから緊急情報が発信された時に、確実に携帯電話から緊急速報メールを受け取る方法について見てみます。

緊急速報メールを受け取るには、自分の携帯電話の緊急速報を「受け取る」設定にしておかなければいけません。まず、この設定が「受け取る」になっているのか確認しておきましょう。

ソフトバンクモバイルのiPhoneの場合なら、「設定」「通知」の一番下の欄にある「緊急速報」の欄をオンにしておきます。また、他のキャリアでの設定方法も、各キャリアの緊急速報メールの利用方法に関するページにて確認できます。

NTT Docomo 「緊急速報エリアメール」

au 「緊急速報メール」

ソフトバンクモバイル「緊急速報メール」

なお、緊急速報メールはメールの受信料金はかかりません。月額の利用料金などもかからず、無料で利用できます。また、マナーモード中でも警報音が鳴ります。

まとめ

災害大国である日本は、避難の必要がある大災害が起きる可能性も高いです。また、国外の情勢が刻一刻と変化している事に加えて、有事に関する情報もいつ出るのか分からない状態になっています。今後もJアラートが正確、迅速に運用されるとともに、私たちもJアラートの緊急情報を正確に受信できるようにしておくと、いざという時には自分の身を守る為の行動が取れます。

(文:千谷 麻理子)

本記事は、2017年9月8日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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