租税回避地(タックスヘイブン)とは?その実態にも注目

「パナマ文書」という言葉が、一時世間を賑わせました。これは、政治家や富裕層が「租税回避地」の利用実態を暴いた文書です。この文書を巡っては、所得税などの税金の申告漏れが10億円を超えることが、報道されています。 本ページでは、「租税回避地」について解説します。

租税回避地と外国子会社合算税制とは何か?

租税回避地(タックスヘイブン)とは?

海外から進出してくる企業に対し、税制上の優遇を与えている国があります。

その国の税率は、多くの場合ゼロ%から20%の範囲内と、日本の法人税率と比較すると非常に低いものとなっています。

企業は、この低い利率を利用して税負担額を減らそうという目的から、その国へ進出するということが起こりました。この場合の進出は、企業そのもののが実態として存在していることもありますが、多くの場合は、ペーパーカンパニーだといわれています。

この進出した先の国のことを、租税回避地・タックスヘイブンと呼びます。

イメージしにくければ、「タックスヘイブン」を直訳して「租税天国」という言葉からイメージすると、理解しやすいかもしれません。

現在、このタックスヘイブンを行っている国で有名なところに、モナコ公国やサンマリノ共和国があります。また、アジア諸国では事実上、税率が極めて低い香港やマカオ、シンガポールもその地域に該当するとされています。

これら、タックスヘイブン地域の特徴は、自国の産業をほとんど持たない小さな国であることです。普通、国を維持発展させていくと考えると、産業を行わなければ、流通がないので外貨を獲得することができず、国は衰退していきます。

しかし、これを回避するため、税金をゼロにする、極めて低い税率にするという方法で、自国へ外国企業を誘致します。外国企業を誘致するということは、その資産を確保したということになり、その方法で自分たちの国を潤そうと考えだしたのです。これが租税回避地から見た、日本を含む外国企業に対する考え方です。

もちろん日本企業を含む多くの外国企業は、少しでも税率の低いタックスヘイブンの地へ進出していくきっかけとなります。

企業が進出し、その低い税率と節税効果が認められると、企業だけではなく個人の資産家も、この方法を利用しだします。その為、日本は本来受け取ることができるはずの税金を受け取ることができなくなっていきました。

そこで政府は、具体的な対策を講じることになります。これが財務省が発表した「外国子会社合算税制」という税制創設の要因となりました。

外国子会社合算税制とは

財務省より発表された「外国子会社合算税制」とはどのような税制なのでしょうか。

まずその創設の目的は、「直接国際取引した場合により税負担を不当に軽減・回避し、結果として我が国での課税を免れる事態が生じる」事への対策です。

また、このような租税回避行為に対処するため、税負担率が20%未満の外国子会社等の所得に相当する金額について、内国法人等の所得とみなし、それを会社単位で合算して課税することとなりました。
(「財務省:https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/175.htmより)

しかし、依然として以下のような条件に該当する場合は、会社単位での合算課税の対象とはなりません。
(「JETRO:https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010814.html」より)

(1) 事業基準・・・主たる事業が株式の保有等、一定の事業ではないこと

(2) 実態基準・・・本店所在地国に主たる事業に必要な事業所等を有すること

(3) 管理支配基準・・・本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること

(4) 次のいずれかの基準
1.所在地国基準・・・主として本店所在地国で主たる事業を行っていること
2.非関連者基準・・・非関連者としての取引割合が50%超であること

※非関連者とは、統括会社が卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業の場合に適用され、50%超
出資会社等以外の者を指します。つまり、全く関係がない法人と考えるのがベストです。

タックスヘイブンに限らず、そもそも50%超の出資ということは、その段階で「子会社」という扱いをされることになります。

これらの要件を考えると、まずペーパーカンパニーではないということ(法人としての実態がある)がわかります。

実態があれば、それは事業をしているということですから、普通の企業と変わりはありません。

つまり、「ペーパーカンパニーの創設=租税回避」という考え方になるのです。

その他にも、20%未満の税負担水準で、外国子会社等が得る資産運用的な所得については、適用除外基準を満たす場合でも、内国法人等の所得とみなし、それを合算して課税することとされています。これを資産性所得の合算課税と言います。

この資産運用的な所得(資産性所得)には次のようなものがあります。

(1) 株式保有割合が10%未満の株式等の配当、またはその譲渡による所得(ただし、取引所または店頭における株式等の譲渡に限る)

(2) 債権の利子、償還差益または譲渡による所得(取引所または店頭における債権の譲渡に限る)

(3) 工業所有権及び著作権の提供による所得(特定外国子会社等により開発されたものから生ずる所得を除く)

(4) 船舶または航空機の貸し付けによる所得

※「特定外国子会社等」とは、居住者および内国法人、ならびに特殊関係非居住者がその発行済み株式等の50%超を保有する外国法人を外国関係会社と言い、「その外国関係会社の所得に対して課される税が存在しない国、または地域に本店または主たる事業所を有するもの」もしくは、「その外国関係会社の各事業年度の所得に対して課される租税の額が、当該所得の金額の20%未満であるもの」を言います。

これらの説明より、具体的に計算式で表すと以下のようになります。

日本企業の所得はなく、税負担が著しく低く経済実態のない外国子会社等に向け医師佐野を移転し、そこから第三国である外国企業へ無形資産の利用許諾を渡し、無形資産の使用量100を受け取った場合、この税制がなければ納税額は納税額はゼロ円です。

しかし、この税制を適用すると、
『所得100×税負担率(30%)=納税額30』(税負担率は概算例)
この算式が成り立ちます。

日本では所得がありませんが、外国子会社の所得を合算して課税するので、結果的に30の納税額が出ることになります。

実態がないというのは、意図的に租税回避をみなし、それを逃がさないために日本で課税することになります。

租税回避地を注目させた「パナマ文書」

「パナマ文書」とは

パナマも租税回避地の1つです。

その租税回避地にある、パナマの大手法律事務所であるモサック・フォンセカにおける、過去40年分の金融取引に関する機密文書のことです。

そもそもこの法律事務所は、租税回避地を利用した金融アドバイスを主たる業務としていました。

その「機密文書」が流出したことで、約1,100万件の情報が流出しました。

そこには数十万人規模の顧客が租税回避地に、ペーパーカンパニーを設立して、租税回避行為を行っていた事が記されていました。

この機密文書に記載されていた顧客には、世界各国の著名人が、多く含まれていたといわれています。

租税回避地利用の実態

かつては、税制の整備がされていなかったため「節税」の方法の一つとしてタックスヘイブンを利用していたかもしれません。

実際、「節税」と「脱税」は違います。

しかし日本政府は、この租税回避地の利用によって、本来徴収できるはずの税金がどのくらいあるのかを試算しました。

世界規模で試算した場合、およそ1,900億ドル(計算当時の日本円で約20兆円)あるとの試算結果が出ました。

個々から、実際に本に当てはめるとどのくらいあるのか計算すると、約5兆円あると予測されています。

この5兆円を回収することができていれば、消費税の増税問題なども出てこなかったかもしれません。

この金額の多さからもわかるように、かなり多くの資産家や企業が租税回避地を利用していたことが分かります。

この結果をうけ、企業の縛りを設けるために法人税の改正を行い、個人の資産家に一定の縛りを設けるために所得税の改正も行いました。

ここで一つ、疑問が生じてきます。それは、「租税条約」の存在です。

これは税法を適用する前に、すでに租税条約が締結されている場合は、そちらが優先されるという規定があります。

もちろんこれは、現状においては租税回避には該当しないのですが、一体どのようなことがあるのでしょうか。

租税回避ではない「租税条約」の存在

実は、租税回避地と同じように最近注目されているのが「租税条約」です。

日本は、世界56か国と二国間租税条約を締結しています。なぜ「二国間」なのかといえば「二重課税回避」のためなのです。

二重課税とは、日本企業や個人が外国で売上を手にし、その所得に対して国外の所得税が課せられます。

そして、当然日本でも所得に対して課税されます。

この時の所得の金額が、海外で課せられた税金を控除しない額で日本で課税をしてしまうと、海外で支払った税金部分にも日本の税金を課税することになり、「二重課税」が発生します。

この二重課税を排除するために、「外国税額控除」というものが、法人税と所得税には規定されています。

外国で納税した税金の額は、日本で所得を計算する際に控除して計算してもよいというものです。

そしてこれを適用するために、二国間条約が締結されています。

しかし、必ずしも海外で税金が課せられているとは限らないのです。

外国税額控除の中に「みなし外税控除」というものが存在します。

これは租税条約を結んでいる国の中でもブラジルやフィリピンなど発展途上国と言われる一部の国に対して認められているもので、法人、個人どちらにも関係があります。

どういった内容なのかといえば、本来は源泉徴収されなければ外国税額控除を利用できないのですが、この発展途上国に当たる一部の国に限り、租税条約のもと、源泉徴収されたとみなしてその税額部分は控除して、日本で課税をする、といったものです。

特に個人は、ブラジル国債等を購入すると、みなし外税控除が適用され、20%のみなし外税率が適用されることになります。

これは、復興所得税の除いた源泉所得税部分の金額に該当し、節税効果を得られるとされています。

実際、証券会社もこの租税条約を締結している国の債権を取り扱えるよう申請しており、大々的にその取扱いをアピールしているところもあります。

しかし近年、この租税条約も廃止される傾向にあるといわれています。

実際に、以前はもっと多くの対象国がありましたが、今は数えられるほどになっており、その控除率もブラジルの20%が最高となっています。

このように、租税回避目的のタックスヘイブンは、税制改正とともに規制がかかるようになりました。

意図せず「脱税」と判断されないよう、タックスヘイブン税制には注目が必要です。

本記事は、2020年3月27日時点調査または公開された情報です。
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