アメリカの教員の労働環境の実態 – 教師の退職理由その1

どこの国でも、教員というのは、やりがいや喜びとおなじくらい、大変なことも多い仕事です。せっかく教師になったのに、精神的・肉体的に辛くなって離職する人も一定数います。

今回は、「アメリカで働く教師の離職」という問題についてまとめました。


はじめに

アメリカの教育現場での労働環境問題は悪化の一途を辿り、日本と同じように教員の離職率はとても高いです。私の住んでいるアリゾナ州では、教員として雇用された人の3年以内の離職率は約4割にもなります。

アメリカの教師の主な転職理由は2つあります。今回はその一つ目の理由、「アメリカの教師の過重労働」についてお話ししたいと思います。

日本とアメリカ教師の残業理由の違い

日本もアメリカも、教師の仕事は時間外労働のとても多い仕事だと思います。

アメリカの学校も日本の学校と同じく、教師が授業やそれに伴う準備などで残業しても残業代は出ませんし、授業のカリキュラム構成や宿題のチェックなどのデスクワークで、毎日平均1、2時間の残業を当たり前にしています。

そしてその残業時間の長さが過重労働につながり、転職の理由にもなります。

日本の教師の時間外労働は、教員本人がストレスで精神疾患になってしまうくらい、複雑かつ繊細な対応が求められるものが多いようですが、アメリカの教師たちの時間外労働は基本的に、生徒の学力向上と自分自身のためにするもので、他者からの依頼での残業はほとんどありませんし、する必要もありません。

学校によって多少の違いはありますが、アメリカではいじめや家庭環境の問題など生活指導に関することは、校長や副校長が担当しています。

生徒の心理面のサポートは、スクールセラピストやカウンセラーが担当します。

そして進路について話し合いが必要な生徒は、生徒本人や保護者がスクールカウンセラーやアドバイザーを予約して、相談をします。

アメリカには職員室がなく、教師一人ひとりが自分のオフィスや個人に割り当てられた教室を持っていて、ほとんどのオフィスワークは一人でするので、もし教員同士の人間関係がこじれたとしても、その同僚と席を並べて、長時間一緒にストレスを感じながら、仕事をする必要はありません。

アメリカの学校にも日本の運動会や文化祭に当たる、フィールドディやホームカミングなどの学校行事はあります。


しかしアメリカでは、望まないのであれば、教師が学校行事に参加する必要はありません。生徒も学校行事に強制的に参加させられることはなく、参加したい生徒が参加したい競技に参加するという形で進行します。

日本では、学校行事の準備と実施は教師の仕事の一環として扱われるようですが、アメリカでは学校行事の運営に大人の助けが必要な場合、先生たちよりも生徒の保護者に協力してもらいます。

もちろん学校行事の運営にボランティアとして参加する先生達もいます。しかしそれも先生の自由意志によるもので、学校側から強制されている訳ではありません。

アメリカの教師に求められる仕事

結論として、アメリカの学校での教師の仕事は、子供達に勉強を教えることであり、それ以外の仕事、学校行事の準備や参加、生徒の生活指導などは、教師達には要求されないのです。

しかしその反面、クラスの中では先生が生徒をきちんと指導しなければならない責任があります。

アメリカには学習指導方法のもとになる国で定められた学習指導要領は存在しないので、同じ学年でも、学校や先生によって学習している内容が全く違っていたりします。

授業内容や指導方法は、全て教師個人の裁量に任されていて、クラスによっては教科書を使わず、先生の手作り教材で授業を行うこともあり、教師一人ひとりの独創性が問われます。

そのため子供の成績や才能は、学校や先生の力量に大きく左右され、保護者は自分の子供を、より評判の良い学校の先生のクラスに通わせたいといつも考えています。

評判の良い先生のいる学校は、親同士の口コミで知ることもあります。

そのうえアメリカでは生徒だけではなく、 先生も期末ごとに自分の生徒とその保護者によって評価され、結果が一般公開されているので、それをみて評判の良い先生を探すことも出来ます。

そしてもちろん、教師は学校側からも評価されます。評価結果によっては、学校をクビになるケースもあるので、ほとんどの教師たちは、ただ教科書に沿って授業を進めるだけでなく、独自の教材を多く取り入れて授業やカリキュラムを工夫する必要があります。

しかし国で定められた学習指導要領がないアメリカでは、生徒の学習意欲をそそるような独創的な授業を常に提供しようとなると、先生の才能の他に、教員としての経験によって得られた知識も必要になってきます。

その結果、独自の授業やカリキュラムを一から作り出さなくてはならない経験の浅い若い先生たちは特に、長時間残業を余儀なくされ、慢性的な過重労働に陥り、やめてしまうことも多いのです。

まとめ

多くのアメリカの教師たちは、少しでも良い授業を提供しようと日夜頑張っていると思います。

しかしその一方で、頑張っている若い先生ほど過重労働に陥り、その結果教師を辞めてしまうのも、また避けられないアメリカの教育現場の現実です。


次回はもうひとつの教師の退職理由についてお話ししたいと思います。

関連記事

アメリカの教員の労働環境の実態 - 教師の退職理由その2

前回の記事では、アメリカで働く教師の離職原因の理由の一つである、「アメリカの教師の過重労働」問題についてまとめました。今回は、もう一つの問題である「低賃金問題」について、解説していきます。

本記事は、2020年3月27日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

気に入ったら是非フォローお願いします!
NO IMAGE

第一回 公務員川柳 2019

公務員総研が主催の、日本で働く「公務員」をテーマにした「川柳」を募集し、世に発信する企画です。

CTR IMG