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消防士としての一歩からキャリアアップまで「消防の教育システム」について

【地方公務員の消防官】各自治体の消防局に属し、「消防職員」としての実際の勤務が始まる前に消防に関する知識の教育や訓練を受ける施設「消防学校」です。ここでは、消防学校を始めとした消防職員の教育システムや教育機関について解説します。

2017年10月07日更新

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目次
消防士としての第一歩が「消防学校」
消防学校で行われている消防職員教育は主に4つ
上級の消防教育機関「消防大学校」とは
スキルアップのための消防の教育コース
まとめ
消防士としての一歩からキャリアアップまで「消防の教育システム」について

消防士としての第一歩が「消防学校」

採用試験合格後に初めて行く場所

消防職員は地方公務員です。ですので、消防職員として勤務をするには、まず各自治体で行われている公務員試験である、消防職員採用試験に合格しなければいけません。

消防職員採用試験に合格すると、配属先が決まる前に行く場所があります。それが「消防学校」です。消防学校で決められた期間、消防に関する教育や訓練を受けて、必要な知識を身に着けた上で配属先が決まります。

都道府県の機関である消防学校

消防学校は、都道府県が直接管轄している機関で、都道府県ごとに設置されています。消防組織は市町村単位で設置されていますが、市町村ごとに消防学校を持つ事はそれぞれの市町村によって規模や予算に差が出るため、難しくなっています。その為、消防学校は市町村ではなく都道府県の直轄となっているのです。

例外として、一部の政令指定都市(※)では独自に消防学校を設置していますが、与えている教育や訓練の内容は都道府県直轄の消防学校と同じです。

※ 北海道札幌市・千葉県千葉市・愛知県名古屋市・京都府京都市・兵庫県神戸市・福岡県福岡市の6つの政令指定都市で、都道府県の消防学校と別に市の消防学校を設置している。また、消防学校ではないが専科教育や高度訓練などの教育・訓練に特化した訓練センターを、東京都渋谷区(東京都消防訓練所)・神奈川県横浜市(横浜市消防訓練センター)・大阪府東大阪市(高度専門教育訓練センター)の3つの政令指定都市で独自に設置している。
また、東京都のみ他都道府県と異なり、東京消防庁消防学校と、東京都消防訓練所が同一敷地内にて一体的に運用されている。

学校という名前だが、学校ではないので給料も出る

消防学校は、「学校」と名前が付いていますが、一般的な学校教育法で定められている巨幾機関ではありません。あくまでも、消防職員などに対する研修業務を行う機関として、消防組織法第51条に基づく施設となっています。

ですので、後述の採用試験合格後でまだ消防職員としての配属先が決まっていない場合でも、学生とはいえ身分は「消防職員」となりますので、初任教育期間中でも給料が支給されます。

また、自治体の消防職員だけでなく、消防団員への研修業務を行う施設としても利用されています。

消防学校で行われている消防職員教育は主に4つ

初任教育

消防職員として初めて消防学校で学ぶカリキュラムが「初任教育」です。消火や救急、救助など消防職員としてのあらゆる基礎の内容を学びます。

初任教育は、消防職員として新規採用された者に対して、消防の基礎を教える為の教育内容です。最低800時間の授業や訓練が行われ、初任教育の期間は約6か月にも及びます。

科目は、いわゆる教室で行う座学である学科と、各種訓練や体育にあたる実技に分かれています。学科では、火災や安全管理の消防に関する理論的な勉強の他にも、法律や生徒、地方自治などの基礎的な教育も学びます。実技は、最初の1か月間は「入門編」として、起立・礼・敬礼の仕方などの礼式やロープの結び方、防火衣の着装方法など、基本的な動作や活動の一部分を個々に教えられ、学びます。最初の1か月で身についた基礎を元に、技術を重ねた動きを「応用編」として学びます。基礎編・応用編までで約3から4か月ほどかかり、最後は仕上げとして実戦さながらの活動訓練が行われます。

初任教育期間中は、学校内で置かれた寮で生活します。寮生活では消防職員としてふさわしい態度や習慣も同時に身に着けます。ちなみに、半年間平日の外出は禁止、消防学校に入校後の最初の週末は外泊禁止、その後は週末と祝日のみ外出・外泊が可能となります。

初任教育期間の厳しい訓練や勉強、寮生活に耐えて卒業すれば、自治体ごとに配属先が決まり、消防職員として現場にデビューします。

初任教育におけるタイムスケジュール

消防学校、というとやはり初任教育を想像する方が多いと思います。ここで、初任教育の際の1日のスケジュールについて見てみましょう。

6:00〜 起床・体操・掃除
朝6時に起床したら、10~15分間でグラウンドに集合して点呼を行います。点呼の後は体操やマラソン、校内の掃除を行います。

7:00〜 朝食、授業の準備
掃除の後朝食、その後制服に着替えて点検を行い、授業の準備をします。点検では、消防士としての身だしなみや、消防手帳の所持などもチェックします。

8:30〜 午前中授業(3時限)
初任教育は授業1時限あたり50分となっています。授業内容は前述の学科・実技に分かれた教育が行われますが、午前中は教室内の座学である学科を主に行います。午前中は3時限授業が行われます。

12:00〜 昼食・休憩
午前中の授業終了後、1時間の昼食休憩に入ります。

13:00〜 午後の授業(4時限)
午後は4時限授業が行われます。午後は、訓練などの実技授業や体力をつけるためのトレーニングが主に行われます。

17:15〜 終業
授業が終わったら、後片付けなどを行います。

18:00〜 夕食
夕食を取り、入浴後は外出や外泊は平日は禁止されていますが、寮の中では飲酒・喫煙などをしなければあとは個人で自由に過ごす事ができます。多くの人が、授業などで分からなかったところを教官に聞きに行ったり、体力トレーニングを行ったり、資格取得試験の為の勉強をしたりして過ごします。

22:00〜 就寝
22時ごろに最後の点呼が行われ、その後各部屋にて消灯、就寝します。

他にも、所属している自治体の消防学校によって、初任教育では消防職員としての体力作りや、協調性を養い全体の士気を向上させるための体育祭や合同体育大会などの行事も行われる事があります。

宮城県消防学校行事ページ 4月から6月(体育祭他)

専科教育

初任教育の後に消防職員として現場で活躍し、経験を積んでいくとその後は消防職員としてのキャリアを積む事になります。キャリアアップの為に、各消防職員のセクションや任務によって特化したプログラムの教育を受けるのが「専科教育」です。

消防戦術を災害現場などで指揮する為の職員を育成するための警防科、救助隊員になる時には救助科、救急隊員になる時には救急科の様に、専門的な知識と技術を習得する為に、現場で働きながらも消防学校に通う機会も少なくありません。また、警防課、救助科や救急科だけでなく、予防査察科や火災調査科など予防系、特殊災害科や危険物科などの特殊災害系のカリキュラムも実施されています。

東京消防庁の特別救助隊員になる為の特別救助技能研修など、希望者多数となる専科教育の場合には、事前に受講者を選定する為の選抜試験を設けています。

幹部教育

消防職員としてキャリアを積んでいくと、いずれは幹部のポジションにも就く事になります。消防学校における幹部教育は、消防に関する高度な知識や技術の習得、そして管理能力や職務遂行能力の向上など、幹部としての教育を受けるプログラムです。

特別教育

水難救助やはしご車捜査員、救急救命士など、消防職員の中でも特定の分野に関する専門的な知識及び高度な技術の習得の為のプログラムが、特別教育です。

上級の消防教育機関「消防大学校」とは

日本国内唯一の国立消防教育機関

消防学校は都道府県(特定の政令指定都市で独自の物もある)の管轄の消防教育機関です。これとは別に、総務省消防庁が設置する国内唯一の国立消防教育機関として東京都調布市に設置されている「消防大学校」があります。

消防組織における幹部職員の育成や教育を行うだけでなく、消防業務に関する研究も行われています。

消防大学校で設置されている主な教育課程

総合教育
幹部科・上級幹部科・新任消防長・学校長科・消防団長科

専科教育
警防科・救助科・救急科・予防科・危険物科・火災調査科・新任教官科

緊急消防援助隊教育科
指揮隊長コース・高度救助・特別高度救助コース・NBCコース・航空隊長コース

危機管理・防災教育科
危機管理・国民保護コース・自主防災組織育成コース・自主防災組織育成短期コース・
消防団教育訓練推進者養成コース

全国の消防レベルの統一ができる

消防大学校は上級の消防教育機関で、より高度で専門的な消防関連の教育を行っている機関です。消防大学校では、消防の現場における指導者や、消防学校の教官の養成を行っています。

消防局は市町村単位の組織ですので、規模や所属人数などにばらつきがあります。けれども、消防大学校で学んだ指導者が所属する各自治体の消防局などに戻り、指導の育成をする事によって、異なる市町村間での消防組織レベルのばらつきがなくなり、全国の消防本部で同じレベルの消防技術が保たれているのです。

全国各地の仲間との交流も

消防大学校は国立の消防教育機関ですので、全国の各自治体から消防職員が集まり、共に同じ教育を受けます。これは、消防という同じ組織の中にいるにも関わらず、普段は接する事のない全国各地の消防職員の仲間たちとの交流を深める事にも有効です。

実際に、東日本大震災では緊急消防援助隊として多くの消防職員が全国から被災地に集まりましたが、その時にも異なる自治体の消防職員の中に、消防大学校での同期がいたので、被災地の活動においての意思疎通もしやすかった、という声も多く聞かれています。

スキルアップのための消防の教育コース

専門的な研修を含む各種コース

近年の消防では、特に災害医療や緊急救命の上での制度が変わり、より高度な技術が必要となりました。例えば、救急救命士が、医師の指示の下なら特定の医療行為が可能になったり、逆に消防職員ではない医師や看護師などの医療従事者も、ドクターカーやドクターヘリ、DMATとして災害医療や緊急救命に携わったりといった機会も多くなりました。

これを踏まえて、救急医療では病院前救護・病院前医療(プレホスピタル)に関する知識のニーズも高くなっています。海外では既にプレホスピタルに関する教育を受けられる各種コースが整備されており、近年日本でもこれら海外のコースを日本式にした各種コースを実施するようになりました。

JPTEC

JPTEC(ジェイピーテック)とは、”Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care”の略で、日本救急医学会後任の病院前外傷教育プログラムです。アメリカのプログラムであるBTLS(Basic Trauma Life Support)やITLS(International Trauma Life Support)がモデルとなっています。

JPTECは、プラチナタイム(※)の間に傷病者の観察を2分以内、傷病者の観察開始から現場出動までを5分で完了、ロード&ゴー(※)の適応を判断して命の危機に関わる処置のみを行ってすぐに現場を出発、適切な処置が行える医療機関へ適切な搬送手段で行う為の方法を学ぶプログラムとなっています。

※プラチナタイム…傷病者が重大な外傷を負った時間から、手術や治療を受けるまでに1時間超えるか超えないかが生死を決めるとされており、この1時間をゴールデンアワーと呼ぶ。ゴールデンアワーの最初の10分をプラチナタイムと呼び、現場では患者と接触と同時にすぐに観察開始、必要な評価と措置のみを行い、すぐ搬送しなければいけない。

※ロード&ゴー…傷病者の生命維持に関係のない部分の観察や処置は現場では極力省略して傷病者の搬送時間を短縮、詳細な観察は救急車内収容後に行う事。

MIMMS

MIMMS(ミムス)とは””Major Incident Medical Management and Support”の略で、英国における大規模災害発生時の際の医療にかかわる傷病、救急、医療機関、警察、行政、ボランティアなどの各機関の役割や責任範囲、組織体系や機関の間での連携の方法や対処法、装備などに関する教育を、まとめて講義や訓練で行う少数人数向けの教育システムとなっています。

MIMMSのコースは、Advanced Life Support Group(ALSG)といいう英国の慈悲団体によって運営されており、日本を含め英国内だけなく、諸外国でも開催されています。また、日本のMIMMSのコースは英国のALSG公認コースとして、一般社団法人MIMMS日本委員会が、英国大使館や英国総領事館の後援にて運営・展開しています。

ITLS-Accessコース

救急救命に携わるスタッフの車両事故における外傷重症者救出のための手順や概要を学ぶコースです。ITLSとは、アメリカの救急医学会と救急医協会によって後援されているプレホスピタルケアの外傷処置教育訓練コースです。

交通事故の要救助者を安全に救出する事を目的として、車両の固定方法や破壊方法、安全確認や標準的な用語・定義、救助におけるチームの活動方針の決定方法などを学びます。近年、救急隊員の受講者が急増しています。

MCLS

MCLSは”Mass Casualty Life Support”の略で、災害が起きた場合、初動対応にあたる可能性のある消防や警察の各スタッフを対象とした、災害医療の研修会です。

消防や警察などの緊急対応を行う機関と、DMATの効率の良い連携の下で活動が行われる事を目的に、「多数傷病者への医療対応標準化コース」として、DMAT隊員が学んでいる内容を多く取り入れ、その理論や用語の普及と、各機関との共通化を目指しています。近年では、救急救命士を含む救急隊員や救助隊員が受講して、スキルアップを目指しています。

MCLSは一般社団法人日本集団災害医学会が管理・運営しており、平成22年に試行コースが全国で約20回開催され、平成23年に標準コースとして確立されました。

まとめ

消防職員としての基礎を学ぶだけでなく、その後の技術力や知識を培う為にも消防学校は重要な位置づけとなっています。また、各種研修コースが近年多く実施されるようになった事など、消防の教育システムもより高度化・多様化しています。

今後も日本の防災と救出救助を担う、優秀な消防職員の育成が期待されます。

(文:千谷 麻理子)

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