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【日本の高齢化が刑務所にも?】認知症になったら釈放になる?

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受刑者たちの高齢化

日本では世界一のスピードで高齢化が進んでいますが、刑務所ではそれが更に速くなっているといわれています。そして、これは刑務所泣かせでもあるのです。

なぜ刑務所が泣くのかといえば、とにかく手間暇がかかるからです。例えば、受刑者が朝食を済ませると工場(作業場)に移動してそこで働くのですが、それがスムーズにいきません。高齢になると歩く速度が遅くなり、普通の受刑者についていくことができません。

しょうがないので高齢者を先頭にすると、全体の行進スピードが遅くなってしまって作業開始時刻に間に合わなくなります。困った刑務所では、高齢受刑者だけで構成される工場を編成して、早めに部屋を出してゆっくりと歩かせたりするわけですが、高齢者の数が多くなるとそのような工場の数を多くしなければなりません。

しかし、高齢者でもできる作業には限界があるので工場を増やすことは簡単にいかないのです。

表れる様々な問題点

高齢になると失禁する人もいて、そのような人には終始オムツをはかせる必要がでてきます。また、耳が遠くなって職員の指示命令が聞き取れない人も出てきますし、目がよく見えない人もいますから、そのような人はもはや工場での作業が難しくなります。

そうなると1日中個室で過ごし、作業も部屋の中でするような生活しか選択肢がなくなりますが、刑務所の個室はそれほど多くなく、規律違反者の取調べや懲罰の執行(個室に一定期間入れて反省させる罰)に支障をきたしたり、反目関係にある暴力団の分散などに対応できなくなったりします。

認知症の受刑者

高齢受刑者に関してはまだ困ったことがあります。いわゆる認知症にかかった受刑者が増えていることです。

認知症も重度になると昼と夜が逆転してしまう人が出てきます。昼はおとなしいのですが夜になると急に元気になるのです。ほかの受刑者がスヤスヤ寝ていると一人むっくり起きだしてブツブツしゃべり出したり、大声を出したり、部屋の中を歩き回ったりします。

当然同じ部屋の受刑者は怒り出しますし、近くの部屋からも苦情が出ます。刑務所側で集団室に入れておけないと判断すれば、その受刑者を個室に移すわけですが、個室にしたところで夜中に大声を出したりする奇行は変わりません。すると、ほかの個室に入っている人が怒り出し、居室棟全体が不穏な状態になっていきます。

こうなると刑務所は本当に困ってしまいます。以前は、その都度部屋から出して刑務官が詰めている事務所に連れてきて諭したりして落ち着かせ、ほかの受刑者が静かになった頃に元に戻すといったことを繰り返していたのですが、はっきり言ってさほど効果はなく、刑務官はほとほと疲れ切っていたものです。

騒音問題の光明

その後、平成18年に法律が改正になってからは「静穏室」という特別の部屋が造られるようになりました。この部屋は、ほかの部屋からは独立した場所に造られ、防音設備が施されています。


したがって、多少大声を出してもほかの受刑者の耳には届かず、不穏な雰囲気が流れることが防げるようになったのです。こうして静穏室が整備された刑務所は、ほかの受刑者と同様に夜勤の刑務官もやっと静かな夜を過ごせるようになったのです。

もっとも、予算の都合上、静穏室の整備は大声高齢者の増加には追い付かず、そもそも静穏室が整備されている刑務所はそれほど多くないので、刑務官の苦労が全く無くなったわけではありません。塀の中の高齢化が急速に進んでいる現在、もっとスピードアップして整備が進められてほしいと思います。

議論を呼ぶ、認知症患者への刑罰

夜中の大声対策は静穏室で対処可能であると先が見えてきましたが、実は、認知症受刑者に関してはもっと基本的な所に問題があります。というのは、そもそも認知症を患った人は刑罰の対象にならないのではないかという疑念があるからです。

認知症がひどくなると、今刑務所に入れられていることすら理解できなくなったりします。あるいはなぜ刑務所に入れられることになったのか理解できない。もっとひどくなると自分は誰なのか、名前すら言えなくなったりもします。

このような人を刑務所に入れて、果たして意味があるのかということです。

心神喪失の人は、仮に罪を犯しても有罪判決を受けることがないように、強度の認知症になった人は刑罰の執行対象とはならないとして刑の執行を停止すべきだというのは、少なくとも理論上は筋が通る話だと思います。

重篤な病気にかかった受刑者の刑を執行停止する例もあるからです。関係当局には、刑罰の執行より福祉的な対応をすべきだという刑務所現場からの声をしっかり受け止めてほしいと思うのです。(小柴龍太郎)

本記事は、2017年10月21日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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