【陸上自衛隊と米軍の共同訓練】FTX訓練交流行事について

国家公務員である陸上自衛隊の訓練交流行事「FTX」についての解説記事です。FTXとは何かから、陸上自衛隊の役割、米軍で『入れ墨』をしている兵士が多い理由など実際に訓練に参加した自衛隊員の現場レポート記事です。

日米共同軍事訓練FTX交流行事

陸上自衛隊と米軍との共同訓練には二つあります。図上演習で行う指揮所のみの訓練をCPXと言い、実員が参加して行う実動訓練をFTXと言います。陸上自衛隊と米軍との実動訓練は日本国内の演習場が共同訓練の場所になります。

陸上自衛隊と米軍との共同訓練の目的は日米両軍の共同連携を密にして効果的な戦力を発揮できるように練度を向上させることにあるのですが、それ以外にも日米両軍の交流を図り隊員相互の融和親睦を深めると言う狙いもあります。

コミュニケーションが良好に取れている場合とそうでない場合とでは共同連携をとる場合の効果的な戦力発揮に大きな差が出ることは議論する必要もないほど重要な要素なのです。

この為FTX訓練を実施する際には、実動訓練に参加する部隊の第1部(第1科)が交流行事を企画・運営します。FTXは師団及び旅団レベルの部隊が実施しますが師団・旅団の場合は、行事関係を担当するのは、通常、第1部が担当し連隊では第1科になります。

ただし訓練編成の都合によっては、総務課など第1部以外の部署が交流行事を担当することがあります。

旅団等で企画する交流行事

FTXに参加する部隊は、師団又は旅団と、米海兵隊との間で行われます。日本国内に駐屯する米軍の陸上部隊というと沖縄県に駐屯する米海兵隊が頭に浮かびますがFTXに参加する部隊は沖縄に駐屯する海兵隊とは限りません。

ハワイなどに駐屯している米海兵隊がFTXの訓練に参加する場合もあります。訓練期間は1週間から数週間程度で通常の演習より長い演習になります。その訓練中の宿営地や、訓練を実施する演習場のある都道府県の観光地などの紹介を兼ねて部外行事を企画するのです。

交流行事の具体的な内容

交流行事を担当する第1部の隊員は訓練そのものには参加しません。第1部が担当するのは日米交流行事のウエルカムパーティー及びエンディングパーティーなどの親睦会、地域の自衛隊協力団体などが実施する交流行事などを企画運営や、部外協力団体との連絡調整業務です。

交流行事を一つのイベントと考えれば、第1部はイベントを運営するスタッフのようなものです。また訓練中でも宿営地で音楽演奏などの交流行事があります。例えば演習場内で行われる野外コンサートなども必ず行われるイベントの一つで演奏を実施するのは師団や旅団の音楽隊です。

またFTXは訓練だけでなく、同じ宿営地で日米両方の兵士が野営をすることになるので日米の生活習慣の違いだけでなく陸上自衛隊と米軍の習慣の違いなども相互に確認することができます。

米軍で『入れ墨』をしている兵士が多い理由!

共同訓練をしているとどうしても目につくのが米軍兵士の入れ墨です。自衛官の場合は陸・海・空に関係なく入れ墨をするのは禁止されています。また、入隊前に入れ墨をしている事が解ると入隊する事ができません。

その為、自衛官には入れ墨をしている隊員はいません。また日本人の場合はファッション感覚で入れ墨をする人が極端に少ないので自衛官の目から見ても米軍兵士に入れ墨をしている兵士が多いのは奇異に映ります。

ところが、米軍兵士に入れ墨をしている兵士が多いのにはファッション以外にも理由があります。これは実際に交流行事の際に通訳を通して米軍兵士が語ったのですが、実は入れ墨には『認識票』の代用という役割があります。
どこで戦死したのか解らないと『ママが悲しむ!』

米海兵隊は世界中のどこで戦争があっても『3日以内に戦争ができる』と言われるほど即応能力の高い部隊です。その為、米軍の海兵隊員は命令一つで世界のどこでいきなり戦争に参加するのか解りません。

その時、例えば戦地において地雷を踏んで体がバラバラになった時、首に掛けている認識票が無くなる場合もあります。本来なら身分証明書でもある認識票が無くなると、戦死しても、誰がどこで戦死したのか特定できません。

海兵隊員にとって自分がどこで戦死したのか解らないと故郷のママが悲しむというのです。最悪の場合でも、自分が何処で名誉の戦死をしたのかママに知らせたいという意味を込めて手首や足首に入れ墨を入れているのだと言います。

全ての米軍兵士が認識票の変わりに入れ墨をしている訳では無いのですが、実際に認識票の代わりにもなるという理由で入れ墨をしている海兵隊員が少なからずいるのは事実です。

演習場で反射テープのタスキをつけて走る米兵!

宿営地域では訓練が終わった後、ランニングで体力練成をするのは自衛官も米軍兵士も同じです。ただし米軍の兵士はランニングをする場合には昼間でも反射テープのついたタスキをつけてランニングをします。

これに比べて陸上自衛隊の隊員がランニングする場合は体育服装であれば、特に服装に制約はありません。また反射テープやタスキなどをつけて走ることはありません。

普通に考えると米軍の方が訓練時間外は自由でのびのびとしているイメージがありますが内容によっては日本より管理されている部分もあります。これは米軍から見れば日本の演習場は外国の訓練場になるので、外国で事故は起こしたくないという配慮からだろうと思われます。

また自衛官が演習場内をランニングする場合、それほど服装などを統制されないのは規則が緩いわけではありません。その秘密ですが、演習場管理規則は日本の方が米軍より厳しいからです。

例えば演習場内の宿営地周辺では車は30キロメートル以下で走らなければ行けません。また演習場内での暴走運転は厳禁ですし行動制限地域も多いのです。つまり自衛官にとって演習場の中の幹線道路は安全な地域なのです。

したがって演習場内を猛スピードで走る自衛隊車両もいないので、わざわざ反射テープのついたタスキなどをつけて走らなくても安全は確保されているというわけです。

国旗を見ない米兵士と見つめる自衛官!

演習場地域では、共同訓練期間中は日米合同で国旗掲揚が行われます。この時、日の丸と米国旗の両方の国旗掲揚を行いそれぞれの国家である『君が代』と『星条旗』の吹奏を行います。

この時、陸上自衛隊の『旗衛隊員(きえいたいいん)』は、国旗を掲揚する時、上がって行く日の丸に注目するので、最後は国旗を掲揚したポールを見上げながら敬礼する事になります。

ところが米海兵隊の旗衛隊員は直立不動のままで国旗に注目せず正面を向いたまま敬礼します。理由は不明ですが国旗の掲揚だけでも日米では違います。

ただし旗衛隊員が国旗を運んでいるのを認めた場合は歩行中でも停止して国旗に敬礼をするのは日本も米国も同じです。

ちなみに両国の国旗に対しては日米の区別はなく自国の旗にだけ敬礼するということはありません。日米両国の国旗に対しては日本も米国も等しく敬礼をすることになっています。

パーティーは全員が参加する

訓練開始にあたって最初と最後に日米双方の兵士と隊員が全員参加してパーティーが行われます。最初に行われるのが、いわゆるウエルカムパーティーで、訓練終了時に行われるのはエンディングパーティーです。

この時に大活躍するのが日米双方の通訳部隊です。ただしFTX訓練には日本の民間人の通訳も参加します。民間人の通訳は米軍の通訳に加わる場合が多いです。

それらの民間人の通訳と、米軍兵士の通訳係、そして陸上自衛隊の通訳係が加わります。陸上自衛隊の場合は通訳のできる隊員に加えて、FTXに備えて集合訓練で基礎英語力を習得した隊員を新たに養成して通訳部隊を増員します。

パーティーでの米軍は自衛官と比べて米軍はかなりリラックスしていて自由です。たとえば米軍司令官や自衛隊の部隊長がスピーチをした場合、わざとブラックジョークなどを言った場合に、米軍兵士の場合は遠慮なくブーイングをします。

自衛官の場合は拍手することはあっても部隊指揮官に対してのブーイングなどをする事は絶対にありえません。こういうプライベートなパーティーなどでは米軍の場合は公私混同をしない雰囲気が感じられます。

パーティーでよく見られる光景は『チェンジ』

パーティーの時にモノを交換するといった行為もFTX訓練でよく見かける光景です。米軍兵士の中には戦闘服なども平気で交換してくれと言ってくる兵士がいます。ところが自衛隊の制服や戦闘服は支給品なので退職する場合は返納しなければいけません。

しかも、全ての支給品はロット番号で厳格に管理されているので戦闘服などを交換することは規則上出来ません。そういう場合に備えて、隊員が自費で購入した私物品の戦闘服をパーティー会場に持って行く自衛官もいます。

見た目は同じですが、私物品の場合は、交換は禁止されてはいません。ちなみに自衛官が身に着けているもので米兵に人気があるのは自衛隊の戦闘服、識別帽、時計などです。ただし、繰り返しになりますが、交換するのはあくまで隊員個人の私物品だけです。

※官給品と私物の見分け方は『Qマーク』があるかどうかで見分けられます。官給品は被服の内側に桜のマークの中にQの文字が入っています。またロット番号という製造番号を記載した一連番号が入っているので解ります。

第1部が企画して行う部外交流行事

日米の訓練参加部隊の隊員の交流会は、部隊同士で事前に調整して行われ、綱引き大会や、それぞれ趣向を凝らした綱引きや軽運動会のようなイベントや、野外パーティーなどが行われます。

第一部は『部外の協力団体』と米軍兵士との交流会を企画運営します。その為、オープニングのパーティーが終わると部外交流行事の施設の偵察や経路偵察など交流行事に関わる業務の調整に奔走します。

協力団体には『自衛隊協力会』『自衛隊父兄会』『隊友会』などの協力団体があり、それ以外には訓練を実施する演習場がある都道府県の国会議員や、地元の地方議員なども参加して行われます。

まとめ 交流行事の会場は意外と素朴

交流会の会場は意外と質素で地元の集会場や公民館など場所によってはイベントホールなども使われます。内容は、その都度違っていて『餅つき大会』や『地方の伝統芸能の紹介』『交流パーティー』などが行われます。

交流行事の送迎なども第1部が担当しますが、部外交流行事に参加する米軍兵士は若い兵士が多く行事の感想を聞くと、多くの米軍兵士は『フレンドリー。ベリーグッド』と答えます。

実動訓練と同じく部外協力団体との触れ合いも日米の共同訓練の効果を高め、日米相互の融和親睦深めることに役立っているのです。これらの日米交流行事で培われた日米の絆が東日本大震災の時の『トモダチ作戦』につながっていると言えるでしょう。

>関連記事:アメリカとの共同軍事訓練(FTX)について

陸上自衛隊とアメリカとの共同軍事訓練(FTX)について解説します。この共同訓練には二種類あり、指揮所訓練をCPXと呼び、実働訓練をFTXと呼びます。訓練の内容から、微妙に違う米軍と日本の自衛隊の作法の差など解説します。

本記事は、2017年12月9日時点調査または公開された情報です。
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