【新宿と同じ大きさ】北海道にある広大な刑務所「網走刑務所」の実態とは?

新宿と同じ大きさの刑務所があると聞けば、信じ難いと思う方がほとんどではないでしょうか?同じ刑務官として働いていた筆者も驚く北海道の刑務所「網走(あばしり)刑務所」の広大な自然と、その中でかつて行われた今では想像もつかない囚人たちの使命の歴史についてのコラムです。

日本で一番広い刑務所は北海道の網走(あばしり)にあります

日本で一番敷地の広い刑務所は北海道の網走刑務所で、その広さは東京の新宿区とほぼ同じだそうです(約1600ヘクタール)。刑務所の建物自体は格別大きいわけではないのですが、刑務所の農場が広いのでそういう結果になるのです。

その農場の中で代表的なのが「二見ケ岡農場」。面積は388ヘクタールで、この農場だけで千代田区の3分の1ほどあります。実際に私も何度か行ってみたのですが、とにかく広い。あちこちで牛が草をはんでおり、農場の端が見えないくらい。しかもここには塀がありません。塀がない所に受刑者たちが30人ほど働いています。

塀が無いのに逃走事故が起きない?その理由とは。

「大丈夫なの?」

と思わず職員さんに聞いてしまいました。もちろん逃走事故が心配になったからですが、その返事は
「誰も逃げようなどと思いませんよ。近くに人家や道路があるわけでもないし、下手に逃げたら熊に襲われて死んでしまいます。」

なるほど、仮に逃げたとしても、身を隠す場所すらない広大な土地の中ではすぐ見つかってしまいそうです。言ってみれば、この広い土地が見えない塀の代わりになっているのでした。それに、近年は位置情報を発信するベルト(のようなもの)を付けて作業をさせているとかで、逃げても居場所がたちどころに分かるようになっているとも聞きました。

これではさすがに受刑者たちも逃げる気にならないでしょうし、そもそも彼らは仮釈放での出所がほぼ間違いなしの受刑者から選ばれているとのことですので、無茶をしなくたって堂々とシャバに帰れるのですから尚更です。

イメージとは違った網走刑務所の姿

網走刑務所と聞けば高倉健を連想する人も多いと思います。そして殺人罪などの懲役囚など凶悪犯がたくさん入っている刑務所というイメージを持っている人もいるでしょう。

確かに昔は懲役8年以上の刑を持った人が多い刑務所だったのですが、その後収容区分が改められ、今では普通の累犯刑務所になっています。基本的に北海道内で刑が確定して送られてくる人を収容するのですが、東京拘置所で確定した受刑者が飛行機で送られてくる数も結構多い。そして、彼らの多くは網走行きを告げられると悲しむどころか喜ぶといいます。理由は冬を温かく過ごせるからだとのこと。

実際、いかに冬が寒くても東北以南の刑務所では最低限の暖房しか行われませんが、北海道の刑務所は全館暖房設備が整っています。そうしないと凍傷にかかったりして人権問題になりかねないからです。結果として北海道の刑務所の方が温かく冬を過ごせるということになっているわけです。

網走刑務所と「囚人道路」の関係

網走刑務所は明治23年に造られた刑務所で、現在ある刑務所の中では最も長い歴史を持つ刑務所の一つでもあります。西南戦争などで多くの受刑者が刑務所にあふれた時代、これらの人を収容するために北海道に幾つかの刑務所が造られたのですが、その最初が網走でした。

そして、網走刑務所には当時の仮想敵国であるロシアから日本を守るため、北海道に軍が展開できるようにするための道路づくりも命じられました。現在の網走から旭川まで結ぶ道路がそれで、刑務官を含め多くの犠牲者を出しながら突貫工事で220キロの長さの道路を完成させました。

この道路は「囚人道路」とも呼ばれており、今の北海道は彼らの犠牲の上に発展したと言ってもいいのかもしれません。当時苦労した受刑者が網走行きを喜ぶ受刑者を見たらどう思うだろうかと考えてしまいます。

広大な自然の中の刑務所

私が網走刑務所に行った時、刑務所の敷地内の側溝に鮭が上ってくると聞かされ驚きました。その昔、職員の子供などを対象とした幼稚園が刑務所の敷地内にあって、園児が鮭の稚魚を放流していたことから、今でもその幼稚園のあった場所から流れてくる水に誘われて遡上するのだそうです。

鮭を獲るのは法律違反!?

鮭はジャンプしながら側溝を泳ぎ上るので、時々鮭が側溝脇の地面に落ちてバタバタしているとのこと。思わず、

「そりゃラッキーでしょ。拾って食べられる。」

と言ったら、

「駄目ですよ。産卵のために遡上してくる鮭を捕獲するのは法律違反です。それに、そのような鮭はおいしくないですよ。」とのこと。海で泳いでいる鮭を獲るのは問題ないけれども、川に入ってきた鮭はアウトということでした。そうなんだ。

それにしても網走刑務所は自然一杯の所でした。刑務所の山で受刑者たちがエゾ松をチェーンソーで切り倒しているのも壮観でしたし、エゾ鹿に遭遇し、ジッと見つめられたのも忘れられません(シカトはされませんでした)。(小柴龍太郎)

本記事は、2017年12月10日時点調査または公開された情報です。
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