アメリカの政治状況について アリゾナ現地レポート 2017年

日米安全保障条約をはじめ、経済的にも密接な関係にあるアメリカ合衆国、オバマ大統領から、トランプ大統領へと大統領が交代し、日本でも、その政策や北朝鮮の外交問題など、日々ニュースで報道されています。今回は、アメリカ合衆国の南西部の州「アリゾナ州」に住む日本人の現地レポートです。

今回はアリゾナ州で、ビジネススクールに通う日本人(男性)のアメリカ生活は1年3ヶ月目となり、日本にいるときには知ることもなかった「アメリカの現実的な様子」についてレポートいただきました。

ーーー以下レポート

この20年で、特にインターネットやテレビが発達して日本にいながらにしてアメリカの様子が手にとるようにわかるようになりました。アメリカで起こる事件や、大統領選など重要なことは生中継され、すぐに日本語化される時代です。

日本人はアメリカの様子をよく分かっていると思いがちですが、やはり現実的な観点ではなかなか本当のところは伝わらないようです。もちろん、アメリカと日本だけに限らず、どの時代においても異国間の状況は「現実とは違う」ようです。

今回は、アメリカで生活してみて少しずつ分かってきたアメリカの政治的なことについて紹介したいと思います。あくまでもアリゾナ州の一部の町で感じたことなので、極めて狭い了見での話です。話半分程度に読んでいただければと思います。

キーワード1「メキシカン」

アリゾナは広大なアメリカのなかでもメキシコと接している州のひとつです。すなわちメキシコからアクセスしやすい州のため、合法、不法問わずメキシコ人が非常に多い州です。事実、町にはメキシコ料理やスペイン語表記の看板などがたくさんあります。

日本でも、トランプ大統領が大統領選に立候補した頃から「メキシカン(メキシコ人)」と言う言葉や「不法入国」などという単語を耳にする機会は増えたと思います。アリゾナ州で生活して実感するのは「アメリカ人よりもメキシコ人の方が多い気がする」ということです。

アメリカにやってきた当初は、どのような顔つきの人がアメリカ人で、どのような顔つきの人がメキシコ人なのか見当もつきませんでしたが、いまではほぼ100パーセントの確率でメキシコ人を判断できるようになりました。

アリゾナ州に住んでいるメキシコ人のほとんどは日本人と比較して、遥かに英語が上手です。しかし、スペイン語が母国語のメキシコ人は喋ると「巻き舌」になるため、すぐに分かります。一言、二言話すだけで「あ、メキシコ人だな」と分かるほど。

このように見たり、会話をすると、町にいるほとんどがメキシコ人であることがわかるようになってきます。そして、その数があまりにも多いということにただ驚愕します。学校、スーパーマーケット、ガソリンスタンド、アパートなど私の行動範囲にメキシコ人がいないことはまずあり得ません。それくらいアリゾナ州ではメキシコ人が身近です。

実はアリゾナ州以外にもカリフォルニア州でも同じようなことがありました。カリフォルニア州を代表する都市であるロサンゼルスやサンディエゴを訪れた際、アリゾナ以上にメキシコ人が多かった印象があります。

ロサンゼルスで私が滞在したエリアは、メキシコ人たちが集まるエリアだったらしく、ホームレスの人たちも一目で分かるメキシコ人でした。ファストフード店で食事をした際には、店員さんもメキシコ人、お客さんもメキシコ人。注文の際には英語圏でありながら、スペイン語でやりとりされていたほどです。

サンディエゴでは利用したレンタカー会社のスタッフは全員がメキシコ人(名札に書いてある名前がスペイン語)本当にどこに行ってもメキシコ人ばかりだなと感じた次第です。アリゾナ州もカリフォルニア州もメキシコとの国境に面しているため、メキシコ人が住むのには適しているのでしょう。

このように極めてメキシコ人が身近な環境で生活していると、メキシコ人たちの良いところ、悪いところが日常生活を通して分かってくるようになります。個人的な感覚では圧倒的に良いことの方が多く、クラスメイトのメキシコ人とも仲良くしています。

私のアパートの隣の部屋はメキシコ人の姉弟ですが、お味噌汁やお菓子のお裾分けをしたり、スペイン語を教えてもらったり、ただでWiFiを貸してくれたりと交流があります。

とにかく元気いっぱいで、明るくて、話をしているだけでこちらまで明るくなってしまうような人たちなので、個人的には大好きです。しかし、悪いところもあって、トランプ大統領が徹底的に糾弾しようとしているような人がいるのも事実です。

まず多いのが不法入国してきてそのままアリゾナ州やカリフォルニア州などに住み着いてしまうパターン。家族や知人の家に潜り込んで、家族や知人に雇ってもらいすべて現金収入、現金払いで生活を続けます。不法滞在なので、州政府のリストには載らないため、税金は支払う必要がありません。

怪我や体の具合が悪くなったらメキシコに帰国し、回復後に再び不法入国し同じことを繰り返す、というようなことが実際に起きています。ただし、一度不法に入国してアメリカで生活できる算段がついたら、二度とメキシコには帰らない(帰れない)という覚悟の人がほとんどです。なぜなら、一度アメリカを出国したら再び入国するのはほぼ不可能だからです。

とくにトランプ大統領が「目の敵」にしているのが、不法に入国したメキシコ人たちがアメリカ国内で子どもを作り、その子どもに市民権を合法的に取らせて家族みんなでアメリカに住み続けることを許す制度(移民救済制度・DACA)。日本では、この制度そのものは道徳的見解から支持する人が多いのですが、実は大きな落とし穴があります。

市民権を得たとなると、アメリカ人同様に公立の学校は無料で通えるようになり、条件によっては住宅手当も付き、生活に関することの多くで優遇されます。その費用をアメリカ人が払った税金で賄っていることにトランプ大統領は憤慨しているのです。

日本ではメキシコ人をアメリカから追放しようとするトランプ大統領が悪者に映るでしょうが、アリゾナ州にいると、税金を払っているアメリカ人たちは声を潜めながらトランプ大統領が言っていることは一理あると支持しています。(この件についてだけは支持という人がほとんどですが)

このように国境に壁を作ったり、アメリカにいるメキシコ人を追放することに力を入れていることだけに焦点を合わせるとトランプ大統領は悪者ですが、アメリカ人が払った税金を守るという観点においては良い人でもあるのです。

このような政治状況はアメリカに住んで、なおかつ日常的にアメリカ人やメキシコ人と接しているとよく理解できてくることです。日本で報道されていることがすべてではなく、現場では少し様相が違うことが多いと理解したほうがいいでしょう。

キーワード2「トランプ大統領」

アリゾナ州ではトランプ大統領を嫌う人が圧倒的に多いです。理由としてメキシコ人が多いことや、メキシコ人と関係がある人が多いということがあります。

2017年8月、トランプ大統領はアリゾナ州の州都であるフェニックスにやってきたときの話です。

いつものごとく色々と演説を行ったわけですが、フェニックスの町をはじめアリゾナ州全体でトランプ大統領を批判する抗議運動が起こり、その時だけは町がざわついたほどです。

私が住んでいる町でも、ダウンタウンエリアはデモ行進で封鎖されたり、学校の広場には血眼でトランプ大統領を批判する学生など、日本ではここまで抗議が強まることはないだろうと思うほど殺伐としたものでした。

日本でも福島の原発事故以降、原発再稼動を首相官邸前で行う「金曜デモ」が続いていますが、アリゾナ州でもトランプ大統領に関しては大統領選前から、就任一年後の今もまったく衰えることなく抗議運動が続けられています。

2016年11月にはトランプ大統領がイスラム教の入国を禁止すると発言したことに対して、学校で一斉に安全ピンを身につける「Safetypin運動」が活発化。1年経過した今でも続けている人もおり本当に徹底抗戦していると、どこか感心してしまうほどです。

ちなみに、私は大統領選の前からアメリカで生活していますが、これまで誰一人としてトランプ大統領を支持する人と接したことがありません。

キーワード3「銃社会」

アメリカにいると本当に銃社会であることを実感します。日本でも報道された通り、2017年10月のラスベガスの銃乱射事件、同年11月のテキサス州の銃乱射事件など本当に頻繁に銃関連の事件が起こっています。

日本では報道されることがない、小さな発砲事件や死亡者がでるような事件も日常茶飯事で、毎日のようにローカルニュースの見出しには「Shooting: one killed」などの文字が並びます。

アリゾナ州は銃に関連する事件は少ないほうとされていますが「Gun Show」と呼ばれる銃やライフルなどの展示会が毎年行われており、その時期だけは決して冗談ではなく、それぞれが自慢の銃やライフルをぶら下げて町を闊歩しています。もちろん本物の銃で、日本人の私からすれば恐ろしい光景にしか見えませんでした。

さらには、スーパーマーケットに行ったときに腰に拳銃を装着した若いお父さんが子どもと手をつないで買い物をしているのを見かけたことがあります。恐らく、自衛のためという理由なのでしょうが、子どもの目線の高さにはお父さんの拳銃があるというこれまた異様な光景に見えてしまいました。

自らの意思で銃の所持が規制されていない国にやってきているのだから、私がこれに関して意見するのはおかしなことなのかもしれません。しかし、実際にアメリカで生活をしていて実感したひとつの興味深いことがありました。それはラスベガスで58人が亡くなった銃乱射事件発生後の1週間後くらいに感じたことです。

事件発生直後は時間の経過に連れて犠牲者の数が増えていき、私が通う学校を卒業したばかりの女性も被害にあったことなど、被害状況に関連する報道が中心でした。そこから犯人の動機や、犯人の生活環境などに注目が集まっていきました。

そして、報道の矛先がいつものように「銃規制の必要性」になった瞬間にこの事件に関する報道はパタリと収まりました。ラジオでもテレビでもまるで事件などなかったかのように日常に戻ってしまったのです。

日本人の私にとっては、この報道の流れは異様にしか映りませんでしたが、アメリカの銃に関する問題は、どこか「聖域」のようなものを感じざるを得ませんでした。

イギリスから独立を果たした際に使ったものこそが「銃」で、自由の国を象徴するものこそが「銃」で、アメリカの誰もが主張する権利の象徴こそ「銃」なのでしょう。恐らくアメリカは今後銃規制に踏み切ることはないと感じました。

まとめ

英語の学習のためにアメリカに滞在していますが、アメリカの政治を通していろいろと英語以外にも学ぶことはあるものです。

アメリカは広く、州によって法律も違い、文化も異なるため「アメリカの政治」と一言で言い表すことは難しいものです。しかしながら、アメリカのひとつの州で生活していると不法移民、大統領への評価、銃問題など多くの「アメリカの実体」を感じられます。

私が通う語学学校では、トランプ大統領就任以降、明確に中東系からの留学生は減少しました。正当な方法でアメリカに留学を希望するメキシコ人もアメリカを避けて、カナダに行って英語を学ぶスタイルが主流になっています。

留学や駐在にあたり、良好な関係を続けている日本人への影響はほとんどないでしょうが、排他的で強引な政策はいつか大きな亀裂を生みそうな感じがします。

私はアメリカの教育機関に籍を置く学生として、減少する留学生や追い出されるメキシコ人たちを眼前にアメリカの政治の状況をこのように捉えています。

本記事は、2017年12月16日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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