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【陸上自衛隊の仕事】陸上自衛隊「航空科」の「航空偵察訓練」

今回は、国家公務員である陸上自衛隊の「航空偵察訓練」についての解説記事です。航空偵察訓練を行う陸上自衛隊「航空科」についてや、訓練内容、使用する航空機の種類、任務の内容などについて解説していきます。

2018年01月27日更新

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目次
陸上自衛隊において航空任務を行う「航空科」
世界の軍隊の名称と違う陸上自衛隊の職種
陸上自衛隊の航空科の任務は大きく2つ
陸上自衛隊の航空機の種類
陸上自衛隊の偵察に使われるOH-6偵察ヘリ
ヘリコプターは有視界飛行で飛ぶ!
ヘリにエンジントラブルが起きるとどうなる?
ヘリの基本は大観小察(たいかんしょうさつ)
不安定な行動は山肌での空中待機!
動き出したものは見つけやすい!
光るものは特に見つけやすい!
【陸上自衛隊の仕事】陸上自衛隊「航空科」の「航空偵察訓練」

陸上自衛隊において航空任務を行う「航空科」

陸上自衛隊には航空隊があります。これは航空自衛隊の指揮下にある部隊ではなく陸上自衛隊の職種の一つです。つまり『航空科』です。なお、陸上自衛隊には、航空科を含めて全部で16種類の職種があります。

航空科の主力はヘリコプター

陸上自衛隊の航空科の主力はヘリコプターです。航空科部隊はその他の陸上部隊の隊員とは行動する土俵が違うので、航空科と陸上部隊が共同訓練をする機会はあまりありません。

航空科のヘリの目的及び用途は偵察・人員及び車両の輸送・対地攻撃などがあります。そのヘリの特性を理解するのと陸上隊員の偵察能力を向上させるために必要に応じて航空偵察の集合訓練が行われます。

集合訓練に参加する隊員は主に普通科部隊のレンジャー有資格者が選抜されることが多いですが参加者がレンジャー隊員と決まっている訳ではありません。

今回はその偵察訓練をご紹介しましょう。その前に、まず航空科を含む職種について簡単に説明します。

世界の軍隊の名称と違う陸上自衛隊の職種

陸上自衛隊の職種は世界の軍隊の職種の名称と違います。なぜかというと自衛隊からは、軍隊及び軍をイメージする名称が除かれているのです。世界各国の軍隊では徒歩兵の事を歩兵と言います。

ところが、陸上自衛隊では歩兵の事を普通科隊員と呼びます。従って歩兵部隊は普通科部隊となります。その他の職種については、陸上自衛隊では次のように読み変えられています。

世界の軍隊の職種の名称=陸上自衛隊の職種の名称

・砲兵=野戦特科隊員
・高射砲兵=高射特科隊員
・戦車兵=機甲科隊員
・工兵=施設科隊員
(以下省略)

では自衛隊は世界の国々からどう見られているのでしょうか。

言うまでもなく自衛隊は世界の国から見れば軍隊と認識されています。それなら、なぜ世界の国々と同じ武装集団でありながら陸上自衛隊の職種の名称は違うのでしょうか?

その理由は、日本国憲法に以下のような定めがある為です。

日本国憲法第9条

1 日本国民は、正義と国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達成するため、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」国の交戦権は、これを認めない。
出典:日本国憲法第9条

出典
日本国憲法

つまり『軍』という名称を使えば、陸海空軍その他の戦力ではないかという議論になるので軍という名称は使っていないのです。ちなみに陸上自衛隊で最大の単位部隊で『方面軍』と呼ばれる部隊も、陸上自衛隊では方面隊と呼んでいるのです。

ただし、師団、旅団、連隊などの世界標準の部隊の名称は、軍という文字が含まれてないので自衛隊でもそのまま使われています。

陸上自衛隊の航空科の任務は大きく2つ

陸上自衛隊で、少し毛色の違う職種である航空科の任務は『空中機動』と『人員輸送』です。空中起動とは空中機動作戦の事で、地上部隊よりも素早く敵を攻撃する事ができます。また、空中機動作戦には『空挺作戦(エアボーン)』と『ヘリボーン作戦』があります。

空挺作戦(エアボーン)とヘリボーン作戦について

エアボーン作戦は空挺隊員を乗せて敵の重要拠点の背後に降下して敵を急襲します。ヘリボーン作戦は車両(ジープ)や兵員を乗せ敵地に侵入して奇襲し、ヘリから降りて地上に展開した兵員が目的地を制圧する戦法です。

また『アパッチ』や『コブラ』などの攻撃ヘリは、敵の地上部隊を攻撃・撃破して、なお且つ味方部隊を援護します。さらにヘリコプターはホバリングという静止できる能力があるので複雑な地形でも自由に移動できるので詳細な地形偵察ができます。

陸上自衛隊の航空機の種類

陸上自衛隊の保有する航空機は、『固定翼』と『回転翼』があります。そして、その主力は回転翼(ヘリコプター)です。それぞれの航空機の種類は次のとおりです。

1 ビーチエアクラフト LR2

レイセオンエアクラフト社製の偵察機で双発のプロペラ機です。乗客数は16名で偵察及び患者輸送を行います。陸上自衛隊での保有数は少ないです。また、一般の人があまり見ることはありません。

2 ベル AH-1S コブラ

通称コブラと呼ばれ1号機の『AH1コブラ』は世界で初めて作られた『攻撃型ヘリ』です。正面から見ると極端に細い胴体をしており可動式機銃やロケット弾などを装備しています。現在の世界の攻撃ヘリの原型となった有名なヘリです。

3 マクドネル・ダグラス AH-64D アパッチ・ロングボウ

通称『アパッチ』と呼ばれる攻撃ヘリで、コブラの後継機です。コブラから様々な改良が加えられており、現在、『世界最強のヘリ』と言われています。欠点はかなり高価な事です。

4 ベル 富士重工 UH-1J イロコイ

多目的に使われるヘリで陸上自衛隊では『UH-1』と呼ばれています。左右のドアがスライド式になっているので乗り降りが容易にでき、少人数のヘリボーン作戦に使われます。

また、自衛隊のイベントなどでレンジャーの降下訓練の展示にもよく使われる汎用タイプのヘリです。一般的に日本国内でよく見かける親しみのある多目的ヘリです。

5 シコルスキー 三菱 UH-60JA ブラックホーク

UH-1の改良型の多目的ヘリで、アフリカの『ソマリア内戦』を描いた映画『ブラック・ホーク・ダウン』でその名前をよく知られています。陸上自衛隊ではUH-1の全てをブラックホークに置き換える予定でしたが、やはり価格が高価なのがネックとなって現在は『ハイローミックス』運用となっています。

※ハイローミックス
価格があまりにも高過ぎる航空機は必要数を揃えると予算オーバーになって定数を確保することができません。その為ワンランク下の旧式を採用して、定数を確保する方式です。

6 ボーイング・バートル CH-47J/JA チヌーク

通称『バートル』と呼ばれ、後方のハッチを開けばジープを搭載することができます。中隊・小隊規模のヘリボーン作戦にも利用されます。さらに10トン以上の輸送能力があり大砲を吊り下げて運搬することも出来ます。

7 ボーイング・バートル CH-47J/JA チヌーク

通称『OH-6』と呼ばれます。地方の部隊では『赤とんぼ』と呼ぶ部隊もあります。4人乗りの小型軽量ヘリで、主に、観測や偵察用ヘリとして使われます。

8 その他

川崎 OH-1 ニンジャ(観測ヘリ)、ユーロコプター EC-225LP(大型輸送ヘリ)、エンストロム TH-480B(多目的小型ヘリ)、ベル 富士重工 UH-X(次期多目的候補機)などがあります。

陸上自衛隊の偵察に使われるOH-6偵察ヘリ

陸上自衛隊の戦闘訓練でよく使われる偵察ヘリがUH-1とOH6です。特にOH6は4人乗りの小型ヘリで、軽量で機体が小さいので山肌に隠れて偵察したり出来るので神出鬼没な行動により効果的な地形偵察が出来るのです。

そのOH6を使って『航空偵察集合訓練』が実施されることがあります。参加する地上部隊の隊員はレンジャー特技を持つ隊員が主に選ばれますがレンジャー資格を持っていない隊員が航空偵察訓練に参加する場合もあります。

参加する航空部隊は陸上自衛隊の方面飛行隊から訓練を実施する駐屯地に移動して1週間程度の偵察訓練を行います。航空偵察集合訓練の目的は、航空からの偵察能力を高めるのと空からの物の見え具合やヘリの特性などを把握して、普通科部隊と航空科部隊の情報共有を図る為に行われます。

ヘリコプターは有視界飛行で飛ぶ!


ヘリコプターは有視界飛行で飛行します。有視界飛行とは、目視にて位置を判断しながら飛ぶ方法です。高度や水平・方向などの機器は当然装備されているので計器は見るのですが目標に対して飛行する場合は、パイロッが目で見て飛んでいます。その為、雲や霧に弱いのがヘリの弱点です。

また、有視界飛行をするヘリは夜間飛行が苦手な航空機ということになります。ただし、夜飛べないという意味ではありません。離着陸は昼間より難しくなるのですが飛ぶ事は出来ます。

その為、陸上自衛隊のヘリは昼間に比べると夜間飛行訓練は少ないです。それほど夜間の有視界飛行は危険なのです。ただし、戦争は夜間でも起こりますから訓練をしないわけには行きません。

例えば、大阪の航空隊のヘリ部隊が滋賀県の演習場に夜間飛行訓練をしたとすると大阪・京都の上空を通過することになります。そういう場合ヘリはどういう目印を目当てにして演習場まで飛ぶのでしょうか?

そういう場合は国道が大きな目印になります。大阪の八尾空港からか滋賀県の今津町にある『あいばの演習場』に夜間飛行をする場合、琵琶湖西岸に南北に走る国道161号線の街灯の明かりを目印に北上するのです。

ヘリにエンジントラブルが起きるとどうなる?

ヘリのパイロットも搭乗員もパラシュートはつけません。そんな時、飛行中に、エンジントラブルや燃料切れを起こして回転翼が止まったらヘリはどうなるのでしょうか?

答えは飛行している高度にもよります。低空飛行の時のエンジントラブルは重大事故につながるのでとても危険です。ところが、高い高度を飛んでいる場合にヘリのローターが停止するとヘリは水平に回転しながら、垂直に落下して行きます。すると加速度がついて落下速度が早くなります。

そうなったら下方からの風を受けてローターが回転しはじめるのです。その結果浮力が回復するのです。ベテランのパイロットなら高度がある場合は安全に着陸できるそうです。

その理論から言うと燃料切れが起こりかけた場合、慌てて高度を下げるよりは、むしろ高度を上げたほうが助かりやすい場合もあるということになります。

ヘリの基本は大観小察(たいかんしょうさつ)

ヘリに搭乗した場合、空に上がって自分の位置を把握する為の方法で『大観小察』という鉄則があります。「空の上から周囲を見るのだから視界の制限はないのでどこを飛んでいるのかはすぐに解る」と考えがちですが実際は違います。

初めてヘリに乗った隊員は地図を携行していても飛び立つと多くの隊員は自分の現在位置を把握するのに苦労します。つまり機位を失してしまうのです。その理由は飛び立って直ぐ旋回する事が多いので方角が解らなくなる為です。

ヘリは離陸して目的地まで一直線的に飛ぶのではなく飛行ルートに乗る為に旋回するのです。また、偵察行動で何度も旋回すれば、益々方角が解らなくなります。

地形を見ても、どれもこれも同じ色の山や川ばかりです。こういう場合、現在位置を確認するために出来る限り大きな地形の大観を見ないと行けません。そして、そして、大きな地形の位置関係が把握できて、初めて細かい地形を特定するのです。これを大観小察といいます。

不安定な行動は山肌での空中待機!

航空偵察は危険な訓練になります。何故かと言うと敵地での偵察という想定で偵察をする必要性から速度の遅いヘリは山の裏側に隠れたりする必要があります。そういう場合山の裏側でホバリング(空中で静止)する必要があります。

ところが、実はこのホバリングが不安定で危険な状態なのです。理由は、地上数十メートルの高さでホバリングをする場合は回転で起こした風が地上に当たって跳ね返ってヘリに当たり浮力を与えてくれます。

それで機体が安定するのですが山の斜面でホバリングをする場合は風が地上に当たって跳ね返って来ません。その為、機体が不安定になるのです。実際、山頂付近でホバリングしている時のパイロットの手は頻繁に動きます。わずかな機体の傾きも命取りになるからです。
偵察した時の物の見え具合

高い空の上から見ているからなんでも一目瞭然!そう思って空に上ると想像以上に見えないことに驚かされます。高いからよく見えるだろうという思い込みは観光地の展望台から望遠鏡で見ているイメージで航空偵察を捉えるからです。

遠いところを飛行している航空機やヘリを銃で撃ち落とすのは不可能です。ただし、高度が極端に低い場合は撃墜される危険が大きくなります。したがってある程度の安全な高度を確保して飛ぶので地上のものが見えにくくなるのです。

それでは空の上から目標はどれくらい発見できるのでしょうか?戦闘服を来た兵士の場合、発見しやすいのは植生の無い開闊地(かいかつち)でポツンと立っている場合でそれはトラックや戦車も同じです。

動き出したものは見つけやすい!

ところが大型トラックであれ、戦車であれ、林縁に隠れている場合は極端に発見しにくくなります。林縁とは森と平野部との境界です。それなら完全に森の中に隠れられたら見えないじゃないかと言われそうですが、それではいざという時に直ぐに動けず役に立ちません。従ってそういう場所に隠れているのです。

また木の根元に寄り添って動かない隊員もまず解りません。ところが動き出すと発見しやすくなります。また反射物があるのと無いのとでは見え具合が全然違ってきます。そんな航空偵察を体験して初めて迷彩(カモフラージュ)の重要性が理解できるのです。

逆に考えれば有事の際に敵の航空機やヘリが飛んできたからと言って慌てて走って逃げるのは逆に危険になる場合があるということです。ある程度の高度を飛行しているのであれば、ヘリも、こちらが人間かどうか解っていない場合が多いのです。

完全に隠れていれば問題はないのですが、林縁で動かなければ航空機やヘリからは発見されにくいです。ただし人間の顔が見えるほど低空を飛んでいる場合は話は別です。

ではその目安の高度はどれくらいの高度なのかというと、これは数字で言う高さよりも、実際に見た目の距離感が重要で例えばヘリのパイロットが乗っているのかどうか解らないくらいの高さと距離があれば相手も同様です。

こちらからヘリを見て人間が乗っているかどうか解らないくらい距離が離れていれば、下手に動かずにじっとしていた方が発見され難いのです。この偵察訓練で学ぶのは空からの物の見え具合です。

光るものは特に見つけやすい!


それと、車のガラスが太陽に反射して光ったりすると発見が容易です。逆に考えれば反射するものを身に着けていると航空偵察に暴露しやすいのです。その為、世界各国の軍隊や陸上自衛隊の装具、被服は目立たない色で反射しにくいようにつや消し処理が施されています。

地上部隊の隊員が自ら空から地上部隊の隊員や車両あるいは敵陣地の見え具合を体験し、その状況を知る事は航空の敵から見を隠すにはどうすればいいのかを教えてくれる貴重な機会になります。

突然、航空機が現れ、とっさに身を隠す場所がない場合、建物や木の陰でじっとして動かないほうが発見されにくいのです。また反射するものを身につけない。さらに車のウインドウなどの反射する部分は毛布等で覆うなどすれば空からの偵察に対する有効な備えとなるのです。

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