学校用務員の定義及び歴史について
「学校用務員」とはどのような職種なのか、学校用務員の定義や歴史についてご紹介します。
【学校用務員とは?】必要に応じて置くことができる職員、という位置づけ
小学校や中学校など、日本の学校教育制度に関する法律が「学校教育法」です。学校教育法では、学校に必ず配置しなければいけない教員などの「必置職員」を定めていますが、学校用務員は必置職員には該当しません。ですが、必要があれば設置できる職員、と定義されています。
なお、学校教育法上で定義が明確になっているのは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校の学校用務員です。
【学校用務員とは?】かつては住み込みで働くことも
学校教育法施行前の旧制学校では、学校用務員は「給仕」や「小使いさん」などと呼ばれていました。その後、学校教育法が施行後は学校用務員となり現在に至ります。なお、小使いさんなどの旧制における呼び名は、差別的な表現でもあるので現在は全く使用されていません。
また、1980年代前半までは、学校の用務員室に住み込みで働くスタイルが多かったですが、現在は一部の学校を除いてほとんどの学校用務員が家から通勤して働くスタイルです。
これに伴い、以前は深夜の学校敷地内の見回りなども仕事内容に含まれていましたが、住み込みの学校用務員の減少に伴い学校用務員の主な校務としては含まれなくなりました。その代わりに、深夜の学校敷地内の安全管理のためにセキュリティシステムや警備員を導入する学校が多くなりました。
【学校用務員とは?】「学校用務員」の名称も変わりつつある
時代の変遷と、学校用務員の働き方のスタイルが変化したことに応じて、「学校用務員」を指す場合校務員、学校主事、技能員、管理作業員、スクールヘルパーなどの名称を採用している学校もあります。
学校用務員の仕事内容について
小学校、中学校などに勤務する「学校用務員」の仕事内容についてご紹介します。
【学校用務員の仕事内容】学校によって学校用務員の担う範囲は異なる
学校の運営に必要な仕事を全て含めて「校務」と呼ばれています。(幼稚園の場合は園務)そして、学校用務員の仕事内容は校務の中でも多岐にわたります。ですので、人数が多かったり規模が大きかったりする学校の場合、校務を分担するために複数の学校用務員が配置されていることもあります。
また、学校教育法では「校務の一切については校長がつかさどる」としています。つまり、学校用務員が担う校務の内容は、その学校長の裁量によって判断されるので、分量や内容も学校ごとに大きく異なるのです。
次に、主に学校用務員が担う校務内容について見てみましょう。
【学校用務員の仕事内容】事務作業を伴う校務
学校の事務員と同じように、学校職員の給与計算や交通費、出張費清算手続き、奨学金手続き、福利厚生に関する校務や各種証明書の発行といった経理や総務の事務作業を行うこともあります。
また、通常は学校事務員が配置されている学校でも、学校事務員不在時にはその校務を一時的に学校用務員が兼務する場合もあります。
【学校用務員の仕事内容】管理に関する校務
【学校用務員の管理に関する校務】備品の調達
学校で使用する設備や備品を注文したり、買い付けを行って運んできたり、調達に関する校務を行います。
【学校用務員の管理の仕事】施設の管理に関すること
学校内の設備や備品が壊れた時の修繕や、校庭などの学校敷地内のごみや不要物の除去や撤去を行います。かつては、学校用務員や児童生徒が集めた枯れ葉などのごみは、集めて学校の焼却炉で焼却処分を行っていましたが、今はダイオキシンなどの有害物質発生や火災などの危険性を考慮し、焼却炉自体が使われなくなった学校も多くなっています。
そのため、現在では学校用務員自身が児童生徒が集めた枯れ葉などを、集積所へ持って行ったり、収集車が回収に来るまで管理したりする校務にとって代わりました。
【学校用務員の仕事内容】学校行事などでの校務
学校で運動会やバザーなどの行事が行われる時には、その準備や当日の警備などを行います。また、学校説明会や入学試験などが行われる時には、当日に行わなければいけない作業の補助や保護者への対応も、教職員と連携を取りながら進めることがあります。
【学校用務員の仕事内容】児童、生徒への指導に関する校務
近年の教職員数の不足に伴って、学校用務員が他の教職員と連携を取って、授業の補助や指導を行うこともあります。校外学習の時の引率や、総合的学習の指導や補助などが該当します。
学校用務員になるには?
小学校、中学校などに勤務する「学校用務員」になる方法についてご紹介します。
【学校用務員になるには】色々な立場の学校用務員がいるので、採用先も異なる
学校用務員は、かつては公務員職がほとんどを占めていましたが、現在では常勤、非常勤と色々な立場の学校用務員がいます。
まず、公務員職としての学校用務員は、学校の教職員や学校事務員などの都道府県教育委員会が採用する公務員ではなく、市町村の職員という位置づけになっています。市町村の職員としての学校用務員も、常勤から非常勤まで存在します。また、東京都の場合は23区それぞれの区の職員ではなく、「23区全体の職員」という位置づけです。
公務員の学校用務員の求人情報は、各市区町村の公式サイトなどで見ることができます。
なお、これは公立学校の場合で、私立学校の場合は私立学校に直接雇用される会社員、非常勤の場合はパートタイマーやアルバイトという立場になります。
この場合、求人情報はアルバイト情報サイトや、学校のホームページなどに掲載されることが多いようです。
また、公立学校私立学校に関係なく、民間の登録制人材派遣会社から派遣されて職務に当たる、非正規雇用の学校用務員も多くなっています。
派遣会社を通じた学校用務員の求人の場合、求人サイトや、派遣会社のホームページなどで、求人情報が掲載されている場合もありますが、必ずその仕事を紹介してもらえるわけではないので、気をつけましょう。
前述の通り、一言に学校用務員の採用といっても実際に担う校務の内容や量は実際に赴任もしくは派遣される学校の校長が決めるため、全く異なってきます。採用情報と同じく、学校用務員として働く際には、どの範囲まで校務として行うかをチェックしておきましょう。
【学校用務員になるには】学校用務員に有利な資格とは?
校務の内容に応じて有利になりそうな資格などがあれば、チェックし取得しておくと、採用が有利に進む場合があります。
例えば、遊具や学校施設の軽微な修繕も校務に含まれる場合にはDIYアドバイザー資格を取得しておくと有利な場合もあるようです。
【学校用務員になるには】市町村・23区の場合は市町村職員の採用試験を受ける
市町村もしくは23区の職員である学校用務員は、地方公務員という立場ですのでまずは地方公務員採用試験に合格しなければいけません。各自治体の職員採用に関しては、募集の時期に説明会やセミナーを開く自治体も多くなっています。常勤、非常勤ともに市町村または23区の採用になるので、詳細は自治体のホームページをチェックするようにしましょう。
例えば、仙台市では「仙台市職員採用試験情報」のページを仙台市のホームページ内に設けています。学校用務員を含む、職員の求人情報として、採用試験概要や実施状況、受験申込手続についての案内や、試験内容の案内、成績や合格発表、説明会やセミナーの日程なども合わせて紹介されています。また、非常勤の学校用務員として、市町村職員の求人募集が出た場合にも、随時ホームページ内で告知を行っています。
▼参考URL:仙台市職員採用試験情報(外部サイト)
▼参考URL:仙台市採用情報|募集情報(職員・各種募集)|非常勤嘱託職員などの募集情報(外部サイト)
【学校用務員になるには】人材派遣会社に登録して派遣される
非正規雇用の学校用務員の場合は、派遣会社に登録をして派遣されれば学校用務員として勤務ができます。ただし、学校用務員職は派遣会社の中でも人気であることに加えて、少数しか募集されないので、求人自体が少なくなっています。
また、一般の人材派遣会社だけでなく現在は一線を退いたシニア世代の人が、シルバー人材派遣センターなどから、期間限定で学校用務員として派遣され、活躍する場合もあります。今後は、高齢者の雇用機会増進の手段として、学校用務員が注目されるかもしれません。
学校用務員に求められるものとは?
学校用務員に求められる資質や心構えについてご紹介します。学校用務員に必須の資格などはありませんが、向いている人物像や、特性についてご紹介します。
【学校用務員に求められるもの】細かいところに気付く視野の広さ
学校用務員の校務は、勤務する学校や勤務体系によって量も内容も異なってきます。ただし、ほぼすべての学校用務員が主な校務として担っているのが、学校敷地内全体の管理校務です。そのため、修繕が必要な箇所はすぐに気が付く視野の広さが必要です。
例えば、校庭のフェンスが壊れていた場合、すぐに修繕しないと野良動物や野生動
物、不審者の侵入経路にもなってしまいます。遊具のさび付きや塗装の剥げも放置していれば、児童や生徒が遊具で遊んでいる時に故障し、思わぬ事故の原因にもなるのです。
修繕や交換が必要な箇所にすぐに気が付き、かつ小規模の場合は自分で修繕や処置を行う、自分で対応できない時にはすぐに修理サービスの手配を行うなど、迅速に行動するための気付きは、学校用務員にとっては必須の要素です。
【学校用務員に求められるもの】柔軟性の高さ
学校用務員に与えられる校務は多岐にわたります。また、多くの児童や生徒が通学する学校という環境においては、イレギュラーな出来事が起きる場合も少なくありません。学校用務員の校務として担っていること以外の仕事を頼まれたり、一定期間だけ通常の校務に加えて通学路の児童生徒の見守りを行うなど、イレギュラーな仕事が発生したりすることもあります。
学校や児童生徒、教職員や保護者など、学校を取り巻く環境によって柔軟な対応ができる人が望まれます。
【学校用務員に求められるもの】根気があること
小規模の設備や遊具の修繕に加えて、経費精算などの経理や事務作業を任されることも。学校用務員は、細かく正確性が求められる校務も多いので、コツコツと同じく作業を行っても苦にならない、根気があることも求められます。
【学校用務員に求められるもの】子供が好きであること
学校用務員は、通学する児童や生徒が安心して学校に通えるように管理を行ったり、時には児童や生徒の指導を行ったり、授業や活動の補助を行ったりします。まずは、子供たちが好きであること、子供たちが安心して通える学校環境づくりのために尽力できることが求められます。
【学校用務員に求められるもの】地域社会との関わりができること
学校には通学する児童や生徒の保護者、PTAの役員、地域の関係者なども頻繁に訪れます。学校用務員は、学校説明会や学校行事でも担う役割も多く、地域の人々と関わる機会も多くなります。学校用務員は教職員と同じく、地域社会に関する人々とも分け隔てなく接することができる人が求められます。
まとめ
筆者が小学校に通っていた時にも、学校の設備で壊れているところがあれば、翌日には学校用務員の方が直しておいてくれた、ということもたくさんありました。行事で学校を訪れた保護者に挨拶や声がけをする姿も良く見かけました。学校用務員は学校を陰で支えているといっても過言ではありません。
このページでは、学校用務員の仕事内容や、なる方法について解説しました。学校用務員に必要な資格は特にありませんが、学校に関わるあらゆる人のことを考えられる人が求められているようです。
(文:千谷 麻理子 作成日:2018年2月18日/ 編集部更新:2021年6月8日)
コメント
コメント一覧 (1件)
個人的に学校用務員に憧れていたので、このサイトで知ることができて良かったです。もし面接にまでこぎつけたときは参考にしたいです。ただ、用務員を募集しているところについてもう少し詳しく知りたかったです。以前調べたときは、派遣会社がほとんどで、市町村の募集で見かけたことがなかったためです。