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【憲法裁判所とは?】日本の統治機構のありかたについて

法治国家である日本の根幹となる「法律」は、現在2000前後あると言われています。その中でも法律の最上位に位置するのが憲法です。今回は憲法の役割とはや違憲についてや憲法裁判所という考え方について解説します。

2018年03月02日更新

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目次
憲法は形骸化しているのか?
憲法裁判所とは何か?
日本に、憲法裁判所は設置できるのか
法律は好き勝手に作られてきたというわけではない
まとめ
【憲法裁判所とは?】日本の統治機構のありかたについて

日本は法律に基づいて運営されている法治国家です。

日本には現在2000前後の法律があると言われています。例えば国家公務員の働き方について定めた国家公務員法、道路の利用方法について定めた道路交通法、公教育の基本的なルールについて定めた教育基本法など様々なルールが法律として明文化されていて、私たちはこの法律に従って日々の生活や経済活動を行っています。

ここで法律について知っておくべきは、法律のすべてが並列的な関係であるのではなく、同じようなテーマの法律の中には、上位法・下位法という階層構造があるという事です。

例えば教育に関連する法律の場合、教育基本法という公教育全体に関するルールがあり、教育基本法に基づいてより詳しくルールを決めた学校教育法、更にその下に法律に基づいて文部科学省が作る学校教育の運用のガイドラインである学校設置基準、学習指導要領などのようにより細かいルールが設定されているのです。

法律はこのような階層構造になっており、下位法は上位法に整合するように制定されなければなりません。

日本の法の最上位にあるのが「憲法」

このような法律の階層構造の頂点に位置するのが「憲法」で、憲法に反する法律は作る事ができません。このように理屈上は憲法が法律全体をコントロールしているのですが、実際のところ憲法は制定されている法律にほとんど影響を与えてはいません。

このように憲法による法律のコントロールが形骸化しつつあるなか、注目されているのが憲法裁判所という裁判所です。これはフランスやドイツ、韓国にある裁判所の一種で、憲法問題を専門に扱う裁判所ですが、日本にはまだ存在しません。

本記事ではこの憲法裁判所に注目して、日本の憲法裁判の問題点と、憲法裁判所とはどのような機関なのか、なぜ憲法裁判所の設置が求められているのかについて説明します。

憲法は形骸化しているのか?

大日本帝国憲法から日本国憲法になって約70年以上が経とうとしています。この70年間、日本の裁判所は色々な事件を取り扱ってきました。司法統計によれば直近の1年間の新受事件総数は350万件程度で推移しているとされています。

このように、日本においても数多くの訴訟が提起されているのですが、戦後70年間で何らかの法律や行政処分が憲法に違反していたと認められた裁判例は、合わせても20数件しかありません。この数は他の先進国と比較しても少なく、日本では違憲判決が下されることはほとんどありません。

では、それほど憲法とその下の法律との間で矛盾が無いほど完璧な法体系が日本にあるのかというとそういうわけではありません。日本国憲法は世界でも変化の少ない憲法の1つで施行から70年程度1回も改正されていませんし、憲法9条と自衛隊の問題をはじめとして新しい権利の追加など様々な問題は発生しているのも事実です。

違憲判決がくだされることは少ない

では、なぜ違憲判決が下される事は少ないのでしょうか。

これにはいくつかの理由が考えられますが、大きな理由の1つは付随審査制を採用しているから憲法を裁判の論点にしにくいという事が挙げられます。

つまり、法律や行政の決定が憲法に反していないかという事を原告が提訴して、裁判所に審査を受けるためには、その違憲と思われる法律によって何らかの被害をこうむった被害者であるという「当事者適格」、その法律が憲法に矛盾している事を審査する事によって当事者が何らかの利益を得られると言う「訴えの利益」がなければ裁判で憲法問題を論点にできないのです。

また、最高裁判所の仕組み自体にも違憲判決が出にくい土壌があります。最高裁の判事は公務員出身者が多いので、法律や行政処分を行う側であった人間が多くなっていますし、裁判官は制定された法律の規定を重視するので、判断における憲法のウェイトが相対的に低いと考えられます。また、違憲審査基準の積み重ねが少なく憲法に反しているか否かよりも国の行為に裁量権の逸脱・濫用があったのかが審査の中心になりやすい傾向があります。

このような理由から戦後の日本の憲法は理念としては尊重されつつも、実際の法律の運用にあたっては形骸化しつつあると考えられます。

憲法裁判所とは何か?

このような憲法のルールとしての形骸化を防ぎ、立憲主義のルールに則った国の統治を取り戻すために導入が検討されているのが憲法裁判所と言う憲法問題を専門に審査する裁判所です。日本やアメリカにはありませんが、例えばドイツ・フランス・ポルトガル・イタリアなどのヨーロッパの先進国だけではなく、韓国、タイ、インドネシアなどアジアの国々にも設置されている裁判所です。

英米法と大陸法

法制度には大きく分けて2つの流派があり、法律の文面よりも実際の裁判の判例の積み重ねを中心として法制度が運用されている英米法と、実際に制定されている法律を中心に法制度を運用する大陸法があります。このうち大陸法は違憲審査に消極的な傾向があり、英米法では違憲審査が積極的に行われる傾向があります。

このように大陸法の国家は制定されている法律を中心に法解釈を行うので、いざ憲法と法律が矛盾している可能性があってもなかなか違憲審査が下される事がありません。このようなデメリットを解消するために設置されているのが憲法裁判所です。

憲法裁判所の最大の特徴は通常の裁判所の役割とは異なり、憲法と法律が矛盾していないかを審査する専門の裁判所で具体的な事件に関係なく抽象的に法律や行政行為の違憲審査を行う事が可能なことです。

違憲判決を出しにくい日本の制度

先ほど、日本の裁判所が判断を出しにくい理由として、付随審査制を採用している事を一番に挙げましたが、日本は大陸法のように制定された法律を重視する法制度の運用を行いながら、英米法の付随的審査制を採用しています。つまり、違憲判決を出しにくい大陸法の制度をベースとしているのに更に、英米法の憲法を論点とする事を抑止する仕組みの付随的審査制を採用しているので、制度上とても憲法問題を審査しにくいという事になっています。

仮に日本で憲法裁判所を設置すれば、付随審査制に従うことなく、具体的な事件から離れて抽象的な違憲審査ができるようになるのでオードソックスな大陸系の法制度に近くなり、違憲判決も出しやすくなると考えられます。

日本に、憲法裁判所は設置できるのか

現状、憲法裁判所を設置するべきか否かという事が日本の政治において主要な論点となった事はありません。

憲法の改正を論議する憲法審査会では論点の1つとして挙げられていますが、憲法裁判所の設置を公約として掲げている政党は日本維新の会のみで、まだまだ優先順位が低い政策であると考えられます。ちなみに2013年の衆院憲法審査会では民主党と日本維新の会が憲法裁判所の設置に賛成、自民党が導入の是非について党の公式見解は無い、公明党は導入には慎重な姿勢、共産党は反対という立場になっています。

また、実際に憲法裁判所を設置するためには憲法を改正する必要があります。憲法裁判所は憲法問題を専門に扱う最高裁から独立した裁判所ですが、日本国憲法76条では最高裁判所と法律に基づいて設置された下級裁判所に司法権が属するとしており、憲法問題を専門に扱う特別裁判所は設置することができないとしていますし、81条で最高裁判所が違憲法令審査権を有する終審裁判所であると規定しているので、憲法裁判所が最終的に違憲か合憲かを審査する事はできません。

憲法裁判所を設置するためには、このような憲法の規定を改めた上で、憲法裁判所の存在を改正された憲法に明記するべきだと考えられます。

法律は好き勝手に作られてきたというわけではない

このように、日本の裁判制度において憲法は判断基準として形骸化しやすいので、憲法裁判所を設置する事によって違憲審査を行い易い環境をつくるべきなのは上で説明した通りですが、もちろん、憲法を無視して様々な法律がこれまで制定されてきたというわけではありません。

日本の法律の多くは官僚が中心になって法案を作成、きちんとしたチェックを行っているので、憲法問題になりうる、後々裁判所が問題視しそうな法律はそもそも法案を作成している段階でボツとなりやすいのです。

特にこのような役目を行政の中でも内閣法制局が担っていました。内閣法制局とは内閣の下で法案や法制に関する調査を行う機関で、日本の行政の組織上、内閣法制局が法律と憲法が矛盾しない様に各種の調整を行ってきた慣習上の「法の番人」と呼ばれる事があります。

まとめ

憲法裁判所を巡る議論について説明してきましたが、一番重要なのは今の法体系の中で憲法にどのような役割を求めるのかと言う事です。

憲法と言えば、小学校高学年の公民の分野で一番初めに習う法律であり、日本において小中高でリーガル教育を重視することはありませんが、憲法だけはきちんと勉強します。つまり理論的には憲法がそれほど重要だと言う事です。

しかし、大人になれば憲法は単なるニュースの話題の1つに過ぎなくなります。政治家が選挙の際に公約に掲げたり実績をアピールしたりするのは、経済政策であったり、福祉政策であって、争点となりにくい憲法問題はどうしても副次的なテーマとして扱われがちです。

また、法制度上も内閣法制局が一応違憲審査で問題にならないか先回りして法案をチェックするものの、最高裁で違憲審査が行われると言うケース自体が非常にレアなので諸外国と比べても違憲となった例は少なく戦後わずか20数例しかありません。

このような状態から、日本の憲法は法律の枠組みを規定する具体的なルールではなく、国家のあり方を示すためのある種の理念的な扱いを受けて、制定から70年近くたちますが今まで憲法改正は行われてきませんでした。

憲法裁判所を設置することは、このような憲法の状態を是正し、憲法が法律を制限する最上位のルールとして再び復活するために必要なステップだと考えられます。ただし、憲法裁判所を設置するためには憲法の改正が必要です。

今後、本当に憲法裁判所が設置されるか否かは憲法改正が実現するか否か、各政党が憲法裁判所の設置と法制度の在り方についてどのように考えるのか、日本の法制度について考えるポイントになっています。

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