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【タタミを土足で…】刑務所にもある、日本人と外国人の感覚の違い

日本の刑務所では「当たり前」のことも、外国人にとっては当たり前とは限りません。とても偉い方の刑務所訪問で発生した小さな事件は、その感覚の違いを象徴するものだったようです。東京オリンピックに向けて、外国人受刑者とのコミュニケーションが課題となることも考えられる今、読んでおきたいコラムです。

2018年03月06日更新

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目次
「外国の偉い方」の刑務所訪問
偉い方が起こした小さな事件とは・・・?
国が違えば文化が違う
外国人受刑者とのコミュニケーションはひと苦労
【タタミを土足で…】刑務所にもある、日本人と外国人の感覚の違い

「外国の偉い方」の刑務所訪問

ある刑務所で働いていたとき、外国の偉い方の訪問を受けました。その刑務所にはその偉いさんの国の受刑者(外国人受刑者)も収容していましたので、自国民が適切に処遇されているかどうかを確認しに来たということでした。下手をすれば外交問題に発展しかねないほどの偉いさんだったので、刑務所では特に慎重に対応することになりました。

当時私はその刑務所の幹部だったこともあり、その偉いさんを刑務所の構内に案内する役目を担うことになりました。偉いさんはとても熱心な方で、あれやこれやと質問もしてきました。そして、外国人受刑者が寝起きする個室(独居)に案内したとき小さな事件が起きたのです。

偉い方が起こした小さな事件とは・・・?

私はその部屋のドアを開けて中の様子などの説明をしようとしました。すると、その偉いさんが部屋の中に入ろうとしました。土足のままタタミ敷きの部屋に足を踏み入れたのです。私は咄嗟にその人の肩をつかみ、

「ちょっとお待ちください」

と言いながら動きを止めました。その方はびっくりしたように私を見つめましたが、構わずに(でも丁寧に)その偉いさんを廊下に引き下げさせました。私はできるだけ感情を抑えたつもりでしたが(何たって外交問題などに発展したら大変です)、内心では

(何てことすんだ。この野郎!)

と叫んでいました。本当に正直びっくりしました。タタミ(ピカピカの新品でした)の上を土足で歩くなんてとんでもない。どんなに偉い人か知らないが、とにかくそれは許されない。ここは日本だ!

国が違えば文化が違う

その偉いさんは何が問題なのかよく分からないようだったので、説明しました。幸い通訳の人が日本人だったので的確に伝わったようです。そしてお詫びの言葉を返してくれたので、ようやく私は留飲を下げたのでした。

この一件で、本当に国が違えば文化が違うということを改めて思い知りました。その偉いさんの感覚からすればタタミは体のいい地べたみたいなものだったのでしょう。だから土足のまま侵入した。でも日本でのタタミというのは家の中に敷かれる物。掃除機を当てるなどしていつもきれいにしておくものです。土足で歩くなどとんでもない。

偉いさんは私に謝りましたが、その人の感覚では、自国出身の受刑者は地べたの上で寝起きさせられていると感じた可能性があります。幸いその部屋にはベッドが置かれており、寝るときはベッドを使うので最悪の状態ではなかったのですが、居室を指定するときはその国の文化を理解した上で行うことも重要だと感じたのでした。

それまでの私の感覚では、タタミの上にベッドが置かれている方が何とも異様だと感じていたのですが、しかしこれは日本人だからだろうと思い直し、以後はその感覚にこだわらないようにしました。

外国人受刑者とのコミュニケーションはひと苦労

その当時私が働いていた刑務所には20か国くらいの国の外国人受刑者がいたように思います。全国にはこのように外国人を収容する刑務所が数庁指定されているのですが、日本に来る外国人が増えるにつれて外国人受刑者も増えてきて、刑務所では大変苦労をしてきました。食事の問題、言語の問題、宗教の問題などなど、なかなか手間暇がかかるのが外国人受刑者の処遇です。

例えば、少数言語を使う受刑者が入ると通訳を確保することが難しく、ジェスチャーゲームみたいなことを繰り返して何とかコミュニケーションを取ろうとしていたことを思い出します。それは刑務官にとっても大変なことですが、受刑者にとっても悲しいことです。

それを解決するために、相互移送条約を結び、日本で悪いことをした受刑者を出身国に送り、そこの刑務所で服役させるという運用が少しずつ拡大しています。しかしまだまだ不十分なので、当分は、外国人受刑者を収容する刑務所で働く刑務官の苦労は続きそうです。

政府は今、東京オリンピックに向けて更に外国人の受入れを進めようとしています。それは結構なことですが、どうか日本に来たら悪いことをせずにお帰りくださいと言いたい気分です。

(小柴龍太郎)

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