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日本の高度な救助技術披露の場「全国消防救助技術大会」とは

今回は、毎年開催されている「全国消防救助技術大会」についてです。

この大会は、全国の消防救助隊員が一堂に会し、競い、学び、そして全国市民の消防に寄せる期待に応えることを目的としています。2017年仙台市で行われた、第46回大会についてレポートします。

2018年03月27日更新

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目次
全国消防救助技術大会とは
「陸上の部」の基礎訓練について見てみよう
「陸上の部」の連携訓練について見てみよう
「水上の部」の基礎訓練について見てみよう
「水上の部」の連携訓練について見てみよう
2017年全国消防救助技能大会の内容はこれ!
まとめ

日本全国で活躍する消防・救助隊の持つ技術力の高さは、海外諸国からも評価されています。この救助技術の向上を目的として、開催されているのが「全国消防救助技術大会」です。第46回目となる2017年は、仙台・宮城大会として、東日本大震災以降初めて被災地での開催となりました。

全国消防救助技術大会とは

全国の救助隊の精鋭が参加

全国消防救助技術大会とは、年に一度開催されている大会です。2016年は神戸市、2017年は仙台市、2018年は京都市と、毎年全国の各地で開催されています。

この大会は、全国の消防救助隊員(レスキュー隊員)の救助技術の向上を目的とした大会で、全国各地での予選を勝ち抜いた約1,000名の救助隊員の中から、さらに精鋭な隊員がこの大会で救助技術を競い合います。

どんな技術内容を披露するか

全国消防救助技術大会は、「陸上の部」と「水上の部」に分かれています。さらにその中で、次の3つの訓練に分かれています。

「基礎訓練」は、隊員ひとりが基本的な技能訓練を行います。「連携訓練」は、隊員個人の技能と、隊員間の連携を錬磨する訓練を行います。「技術訓練」は、使用する資機材や訓練要領等を定めず、出場隊員の創意工夫のもと訓練想定から救助方法までを披露します。

陸上の部と水上の部、それぞれ「基礎訓練」と「連携訓練」を合わせて各7種目と、技術訓練を披露します。また、大会では訓練における「安全確実性」と「所要時間」が評価対象となり、各種目の上位自治体が入賞・表彰されます。

「陸上の部」の基礎訓練について見てみよう

ロープブリッジ渡過

ロープブリッジ渡過は、水平に張られた長さ20メートルの渡過ロープを、往路は「セーラー渡過」(ロープに沿って上体を起こして、そのまま渡る方法)、復路は「モンキー渡過」(ロープに対してぶら下がった状態で渡る方法)で往復40メートルを渡り、ロープ渡過における基本的な訓練技術を競います。

はしご登はん

はしご登はんは、自己確保の命綱を結索した後に、垂直はしごを15メートル登はんします。災害が起きた建物への侵入時など、はしご登はんは、消防活動には欠かせない訓練です。

「陸上の部」の連携訓練について見てみよう

ほふく救出

ほふく救出は、要救助者役の隊員を含み、3人一組で行います。ビルや地下道などの閉鎖された場所での事故や災害で、煙に巻かれた人を救出するための訓練です。

1人が空気呼吸器を着装して、長さ8メートルの煙道内を検索し、要救助者を屋外に救出します。その後、ふたりで安全地点まで要救助者を搬送します。

ロープブリッジ救出

ロープブリッジ救出は、建物内など取り残された要救助者を、隣の建物などから隊員が侵入して、救出する事を想定した訓練です。

要救助者役を含む4人一組で行います。まず、2人が水平に張られた往復20メートルの渡過ロープによって、対面する訓練搭上へ侵入し、要救助者を救出ロープに吊り下げて、けん引し、救出した後に脱出します。

引揚救助

引揚救助は、地下やマンホール内部などでの事故や災害を想定した訓練です。

要救助者役を含む5人一組で行います。2人が空気呼吸器を着装して、訓練搭上から塔下まで降下します。要救助者の検索を行った後、発見した要救助者を塔下まで搬送、4人で協力して塔上まで救出した後、ロープ登はんによって脱出します。

ロープ応用登はん

ロープ応用登はんは、登はん者と補助者が2人一組で協力し、資機材を使用せず、自分の力だけで、塔上から垂らされている15メートルの長いロープを登はんする訓練です。

障害突破

障害突破は、補助者を含む5人一組で連携をして行う、陸上における救助の色々な要素を取り入れた訓練です。

4人が緊密な連携を行い、「乗り越える」「登る」「渡る」「降りる」「濃煙の中を通過する」の基本動作によって、与えられた5つの障害を突破する、色々な事故や災害現場での多様な障害を想定した訓練です。

「水上の部」の基礎訓練について見てみよう

複合検索

複合検索は、水中の行方不明者の捜索を想定した訓練です。

マスク、シュノーケル、フィンを着装した隊員が、シュノーケリングで障害物となっている救命浮環を突破しながら、水中に沈められている4つのリングを、検索して引き揚げる訓練です。

基礎泳法

基礎泳法は、水難救助の基本的な泳法を、習得するための訓練です。

「順下(じゅんか)飛び込み」で入水した後に、常に顔が水面に出た状態で基本的な泳法である「ぬき手」と「平泳ぎ」で、それぞれ25メートルずつ泳ぎます。

順下飛び込みの仕方は、高所から片足で踏み切り、飛び込む際に、走る時のように両足を前後に開きます。そして、入水と同時に両足を強く閉じ、両手で水を下に押し、頭部が水中に沈まないように飛び込ます。この飛込は溺水事故における救出救助に向かう際の入水方法として推奨されています。

「水上の部」の連携訓練について見てみよう

人命救助

人命救助は、要救助者役を含めた3人一組で行う訓練です。救助者が「二重もやい結び」のロープをたすき掛けにして、スタート地点から20メートル先の要救助者の元まで泳ぎ、要救助者をクロスチェストキャリー(溺者の胸を抱える方法)で確保、補助者が救助ロープをたぐり寄せて救出します。

その後、スタートから25メートル地点で、おぼれる要救助者に見立てた訓練人形を、再び水面に引き上げて救出します。

水中結索

水中結索は、水中におけるロープ結索の技術を習得するための訓練です。

3人一組で水中の結索環に、それぞれ指定された結索方法をリレー形式で行っていきます。第1泳者は「もやい結び」第2泳者は「巻き結び」第3泳者は「ふた回りふた結び」の、3種類のロープ結索を行います。

溺者搬送

溺者搬送は、要救助者役を含む2人一組で行います。救助者が「順下飛び込み」で入水後、スタート地点から20メートル先にいる要救助者を注視しながら「チンプール」(溺者のあごを水面に出す)で確保し、「ヘアキャリー」(溺者の髪の毛をつかんで搬送する方法)により救出する訓練です。

溺者救助

溺者救助は、要救助者役を含む3人一組で行います。救助者及び補助者の2人が、協力して小型救命浮環に救出ロープを結着した後に、補助者が浮環を、プールの中に投下します。救助者がスタート地点から25メートル先の要救助者の位置までこれを搬送し、要救助者に浮環を捕まらせます。そして、補助者が救助ロープをけん引して、要救助者を救助する訓練です。

水中検索救助

水中検索救助は、4人一組で行う訓練です。第1泳者が水面を、第1泳者が水中を交互に検索して、おぼれた要救助者に見立てた訓練人形を、発見し水面まで引き揚げます。その後、他の2人が対岸の救出地点まで、交互に運んで泳ぎ、救出する訓練です。

2017年全国消防救助技能大会の内容はこれ!

スケジュールを見てみよう(共通)

9:00~9:40 開会式
9:45~10:00 オープニングアトラクション

オープニングアトラクションとして、地元のJリーグサッカーチームであるべガルダ仙台のチアリーダーによるパフォーマンスが披露されました。

開会式とパフォーマンスの後には、「陸上の部訓練」と「水上の部訓練」が各会場に分かれて、同時進行で進められていきます。競技ごとの今年のスケジュールを見てみましょう。

陸上の部のスケジュール

10:00~10:20 陸上の部 技術訓練① 仙台市消防局

技術訓練は、定められた手法と資機材にとらわれることなく、隊員の創意と工夫の元で、より安全で適確、迅速な訓練を行います。主に、特定の事故や災害の状況を会場内で再現し、その場合における人命救助の方法を、その場で隊員が披露します。

今大会第1回目の陸上の部の技術訓練は、「東日本大震災における、仙台東部道路周辺での津波浸水被害からの救出救助披露」を仙台市消防局が披露しました。

東日本大震災で甚大な津波の被害が出た地域をはしる仙台東部道路は、盛土の道路構造が幸いにも、津波の流水を食い止める防波堤の役割を果たしました。震災当時は、沿岸地域の津波災害の救出救助における拠点としても使用されました。

今回の技術訓練は、訓練搭上を東部道路上、塔の下は津波による大量のがれきと浸水に見立て、浸水区域の中、津波によって押し流された家屋や車両の上で、救助を求める複数の住民が取り残されている現場を再現しました。

大津波警報の発令中に、東部道路上から隊員2人が浸水区域に侵入し、限られた人員と資機材で、いかに安全、確実、そして迅速に、要救助者を救出する事がテーマになっていました。

また、今回の開催地となった仙台市消防局による技術訓練ですので、実際に東日本大震災を経験した隊員も多数います。

その隊員は技術訓練の中で「未曽有の大災害の中で、全国から集まった消防車両が並ぶ光景は忘れられません。全国からの支援と、仲間たちから、勇気を奮いたたせてもらった事に対する感謝を忘れず、この災害で得た教訓を市民のために活かす事を、私たちはお約束します」と語られました。

10:20~11:17 ほふく救出(第1組から13組)前半
10:21~10:51 ロープブリッジ渡過
10:54~11:24 ロープブリッジ救出
11:25~12:45 引揚救助
11:29~13:00 ロープ応用登はん
12:47~13:26 ほふく救出(第14組~第26組)後半
13:04~14:43 はしご登はん
13:31~15:03 障害突破
15:20~15:40 陸上の部 技術訓練② 大船渡地区消防組合消防本部

今大会第2回目の陸上の部の技術訓練は、大船渡地区消防組合消防本部によって披露されました。同じく東日本大震災で大船渡地区は、津波による甚大な被害を受けました。その時の教訓と経験を生かして、「津波で被災した2階建ての建物屋上に、要救助者1名が取り残されている現場」が再現されました。

当時は、倒壊建物や津波によってがれきが散乱しているため、道路は閉鎖されており、建物の近くまで車両で近づく事はできません。また、津波によって建物屋内に侵入もできないので、建物家屋の階段を使用して、屋上まで行く事もできません。

そのため、隊員は携行した必要最低限の救助資機材を使用して、要救助者までの進入導線を確保し、シンプルに救出する事を目指した訓練が実施されました。

水上の部のスケジュール

10:00~10:50 複合検索
10:55~11:30 基本泳法
11:35~12:00 人命救助
12:05~12:35 水中結索
12:35~13:15 ハーフタイム
13:15~13:45 溺者搬送
13:50~14:20 溺者救助
14:25~14:45 水中検索救助
15:00~15:20 水上の部 技術訓練 旭川市消防本部

水上の部の技術訓練は、北海道旭川市消防本部によって行われました。

旭川市は、日本で3番目に長い一級河川である石狩川が、市内の中央部を貫流しています。そのため、石狩川流域で発生する水難事故や災害の発生する確率が、高くなっています。

今回の技術訓練では、「石狩川で釣りをしていた男性2名の内、1人が誤って川に落ちてしまい流され、それを救出しようとして入水した男性も流されてしまった現場」を想定した内容でした。

訓練内容は2部構成で、第1部では上流から流れてくる要救助者を、橋の上から懸垂降下して入水した2名の隊員が確保し、バックアップ隊員のスローバック補助によって、1人目の要救助者を安全、迅速、確実に救出しました。

第2部では、中洲にとどまっている、もう1人の要救助者を、ボートによって入水して救出します。石狩川の特性を考慮した巧みなボートコントロールで、中洲にいる要救助者の元までたどり着き、要救助者をボートに収容します。その後、バックアップ隊員によるスローバック補助によって対岸までボートを引揚し、安全、迅速、確実に行っていました。

まとめ

普段なかなか見る事ができない、日本の救助隊の持つ高い救助技術を、実際に見られる機会が「全国消防救助技能大会」です。毎年全国各地で開催していますので、お住まいの近くで開催される時には、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?

なお、当日の大会の様子はYouTubeでライブ配信もされています。遠隔地でも自宅でゆっくり大会の様子を見るることもできます。知り合いの救助隊員が出場する時や、お住まいの自治体・ひいきにしている自治体の救助隊が出場する時には、応援するのも楽しみ方のひとつです。

災害大国である日本の救助隊の、更なる救助技術の発展にも「全国消防救助技能大会」は大きな役割を担っています。

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