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北海道のド真ん中なのに人口増加!?東川町に見る地方創生のカギ

東京都の一極集中を是正し、日本全体の活力向上を目的とした政策「地方創生」ですが、各地方自治体が地域の活性化目指し、さまざまな取り組みを行っています。

その中で、町の人口増加および活性化に成功した、北海道の東川町の取り組みについて解説します。

2018年03月20日更新

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目次
北海道のど真ん中で人口増加!?東川町とは
東川町の取り組みについて
東川町の取り組みは、なぜすごいのか?
まとめ
北海道のド真ん中なのに人口増加!?東川町に見る地方創生のカギ

地方創生が重要だ、とここ数十年言われ続けていますが、一方で、実際に地方創生に成功した事例というのは、あまり存在しません。一度、過疎化、高齢化が進行した地域では、若年層が職を求めて域外に流出し、それに伴い地域の産業が衰えて、更に雇用が無いため若年層が域外に流出するという、負のスパイラルに陥ってしまいます。

このように、一度人口が減少し始めた地方の人口を増加させるのは、極めて難しいと言えます。本記事で紹介するのは、東川町という小さな町です。北海道のど真ん中という、不便な立地にありながら、人口が増加している稀有な事例です。東川町の事例を説明しながら、地域への移住を促進するのには、何が必要なのかについて考察します。

北海道のど真ん中で人口増加!?東川町とは

まず、東川町に関する情報を整理します。東川町は北海道の北海道最高峰の旭岳の麓に位置する町で、隣接する大きい都市・旭川市の南東に位置しています。かつては、鉄道が通っていたのですが、今は廃線となり、バスや自動車を利用しないと、移動する事は困難です。

このように、比較的不便な地域のため、人口は1950年の1万754人をピークにして、1994年には約6,900人まで減少しました。しかし、ここから積極的な移住促進策を行って、2017年末時点で約8,300人まで増加しています。つまり、約25年で約1,400人、増加率に換算して約20%人口が増加したという事になります。

町民の地道な活動が人口増に

このように人口が増加している東川町ですが、企業を誘致して企業城下町化したり、地域に有力な産業があって、それが人口増をけん引しているわけではありません。確かに、木工業が盛んで、旭岳という観光資源を活かしての観光産業などを行っていますが、他所の自治体が真似をできないような、ユニークな強みを持っているというわけではなく、役場を中心とした、町の住民の地道な活動の結果として、人口が増加しています。

東川町の取り組みについて

では、どのように東川町は、人口増加に成功したのかについて、東川町の取り組みの特徴について説明します。

ライフスタイルを提案する

まず、東川町の特徴として挙げられるのが、町での暮らし方について、ライフスタイルの提案を行っている事です。東川町は自分の町の事を「写真の町」「クラフトの町」としてブランディングを行っています。

「写真の町」としての東川町について、インスタ映え、などという言葉が誕生する、はるか昔の1985年に、東川町では「写真の町」宣言を行い、高校写真部を対象にした「写真甲子園」の開催や、世界から誘客する「東川町国際写真フェスティバル」のような、写真にまつわるイベントを開催しています。また、イベントだけではなく、写真の町という名前にふさわしいように、景観の保全にも力をいれています。

また、「クラフトの町」として、東川町には数多くの木工芸の職人が住んでおり、その住宅兼ギャラリーで、様々な木工芸を鑑賞したり、購入したりする事ができます。

さらに、旭岳は日本だけではなく、世界から観光客が訪れる山であり、そのような自然の観光資源を活かして、自然が豊かな町であるともアピールしています。

町のWebサイトによれば、東川町を一言で説明すると「大雪山の麓にある自然景観豊かで、文化が香る町です。」と説明がされています。このような都会では味わえない、東川町独自のライフスタイルをアピールして、移住を促進しています。

リーダー不在でも成功する環境を整える

また、強力なリーダーがいなくても、観光や移住促進を行う仕組みを構築している事も、東川町の特徴です。多くの地方創生の案件の場合、誰か強力なリーダーシップで、指揮を行う人がいなければ、結局、中途半端な移住促進になってしまって、上手くいかないものです。

しかし、東川町の場合、特にこの人がいるから、地域に人が集まっているという、明確なプレイヤーは存在せずに、仕組みを利用して移住促進を行っています。

まず、情報発信の拠点を集約させています。東川町の情報発信で、中心的な役割を果たすのが道の駅です。東川町の道の駅である「道の駅ひがしかわ道草館」は、観光情報や地域の物産の販売など、総合的な案内窓口に役割を果たしています。その近くには町役場があり、役場では「定住促進課」という専門の課を設け、移住を促進しています。

さらに、町のファンの醸成のために、「ひがしかわ株主制度」という、ふるさと納税の仕組みを使った、会員制度を展開しています。10株1万円以上から株主証を発行し、東川町の公共施設を町民価格で利用できたり、お土産を送ったり、特別町民に認定したりと、様々な取り組みを行っています。

道の駅が中心となって、町の情報をきちんと発信する、ファンを増やすために、ひがしかわ株主制度などの、接点を持てる制度を構築する、移住したい人が現れたときに、十分サポートできるように、定住促進課という専門の部署を設けて移住者をバックアップするという、仕組みが構築されているのが、東川町の特徴だと言えます。

移住できる環境を整備する

移住できる環境整備に力をいれているのも、東川町の特徴だと言えます。田舎への移住の際に、よく問題となるのが住宅の問題です。田舎は家が余っているから、移住者もすぐに、住む家が決まるだろうと思われがちですが、実際は田舎になれば、なるほど移住者が住める家はありません。

そもそも、移住しようという人が少なければ、賃貸物件自体がありませんし、空き屋に住もうと思っても、人が住める状態の空き家が少なかったり、家主が貸し出しを行っていない、というケース少なくありません。

東川町では、このような住宅対策として、東川町土地開発公社という法人を作り、公営住宅の整備を行っています。さらに、子育て施設、医療施設などを整備し、移住者に対して助成、支援を行うなど、積極的に移住しやすい環境を整備しています。

ただし、まだ住宅の整備が町の人気に追いついておらず、それは今後の課題だと言えます。北海道でも有数の大都市である、旭川市に隣接している事から、旭川市に賃貸物件を借りて、東川町に働きにくるという人も少なくありません。実は、東川町は夜間人口よりも昼間人口の方が多くて、旭川市から東川町に働きにくる人の方が、東川町から旭川市に働きに行く人よりも多くなっています。

外国人との積極的な交流

また、外国人と積極的な交流を行っているのも、東川町の特徴です。東川町国際写真フェスティバルや旭岳への登山のために、外国から旅行者が訪れるのはもちろんの事、アジアからの外国人研修生の受け入れを、積極的におこなっています。東川町は、2015年に日本で初めて、自治体が運営する日本語学校を開設しました。

また、それだけではなく、台湾とタイに研修生の募集や、面接を行う海外事務所を保有しており、人口1万人以下の地方自治体で海外拠点がある自治体は、東川町だけです。このような効果もあってか、東川町の人口約8,000人のうち200~300人は外国人となっています。

東川町の取り組みは、なぜすごいのか?

以上のように、東川町の取り組みについて説明しました。確かに多くの町が「自分の町は○○の町だ」として、積極的に観光客にアピールしたり、移住を促進したりすることはありますし、どの自治体も移住促進の取り組みは行っています。これらを行っても、人口減少に歯止めがかからない地方自治体と、東川町との違いは何なのでしょうか。

コンセプトの深さ

これには、2つの違いが考えられます。1つはコンセプトの深さです。例えば、自分の町をラーメンの町だ、どんぶりの町だ、と食べ物で特色を出したり、●●川がある、●●温泉があるというように、観光名所で特色を出して、自分の町をアピールする事がありますが、それだけでは、移住者は増えません。

移住者を増やすためには、その町で暮らした時に、どのような生活が営めるかという、ライフスタイルの提案まで踏み込む必要があります。東川町では、写真や木工作品の町というブランディングを長期間かけて行い、旭岳に代表される豊かな自然資源と組み合わせて、「大雪山の麓にある自然景観豊かで、文化が香る町です。」と町のライフスタイルに昇華しています。このように観光だけではなく、ライフスタイルの提案まで昇華した、町のコンセプト作りが東川町の凄さの1つだと言えます。

移住促進策をやりきる力

また、もう1つの凄さは移住促進策をやりきる力です。地方自治体の財源は、潤沢でないために、国からの補助金が貰えた範囲で地方創生策を行うという、消極的な自治体も少なくありません。もちろん、東川町でも各種補助金によって、地方創生を行っていますが、一般的な自治体がやらないような、リスクをとっています。

例えば、海外事務所を設置している事を説明しましたが、海外事務所の維持だけでも、年間数千万円が継続的に歳出されるので、普通の人口1万人以下の自治体は、このようなリスクの高い取り組みを行いません。

また、アウトドア観光を振興するために、町の歳費で建物を立てて大手アウトドアショップを誘致するなど、リスクのある投資もきちんと行っています。このようにリスクも踏まえた上で、他所の自治体が行いにくいような投資まで、やりきれる力が東川町のもう1つの凄さだと言えます。

まとめ

以上のように、北海道のド真ん中という、比較的不便な立地でも人口が増加している、東川町の取り組みについて説明しました。地方創生が叫ばれていて、色々な自治体で様々な取り組みが行われています。

多くの自治体では、補助金ありきの取り組みや、他の自治体の事例を見ながら予算の許す範囲で模倣して取り組んでいる中、長期の戦略的な視点に則った、地方創生策を打ち出せている自治体は少数です。そして、東川町はそのような数少ない自治体の一つです。

地方創生というと、観光的側面ばかりがピックアップされがちです。確かに、地域外の「外貨」を獲得するために、観光産業というのは有効な切り口ですが、観光産業をいくら振興しても、町の人口は増加しません。その自治体での働き方や暮らし方が、魅力的でないと人は移住しないからです。

つまり、人口を増加させるために、都市部並みにインフラを整備して、都市部並みに便利にするというような、人口の多い都市を模倣するのではなく、その自治体独自のライフスタイルを提案する事が、地方自治体が地域創生を行うにあたって、求められている事だと言えます。

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