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【ゲーム依存症って何?】国際疾病に指定された「ゲーム依存症」について

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目次

ゲーム症・障害とは

ゲームによって社会生活に障害が出ている状態を指す

ゲーム症・障害とは、テレビゲームや携帯ゲーム、スマートフォンなどのゲームアプリ、パソコンなどのオンラインゲームなどあらゆるゲーム行動を「持続・または反復する」症状としています。以前まで具体的なゲーム症・症状についての定義はされていませんでしたが、2017年末の「依存症に関する会議」にて、初めて定義づけがされました。

新しく定義されたゲーム症・症状とはゲーム行動を持続、または反復する状態を指し、かつゲームをする衝動が止められない・ゲームを最優先する・問題が起きてもゲームを続ける・個人や家族、社会、学習、仕事などに重大な問題が生じることを具体的な症状に挙げています。

ゲーム症・障害として診断されるのに必要な継続期間は「最低12ヶ月」と定めましたが、幼少期は青年期よりもゲーム症・障害の進行度が早いため、12ヶ月以内の期間でも全てのゲーム症・障害に当てはまる症状が出ていて重症の場合は、ゲーム症・障害として診断されます。

2018年6月にWHOが公表予定の国際疾病分類「ICD-11」では、「物質使用または嗜癖行動による障害群 – 嗜癖行動による障害群」および「衝動制御症群」のカテゴリに属し、「ゲーム症/ゲーム障害」の名称にて疾病登録される予定です。なお、「物質使用または嗜癖行動による障害群 – 嗜癖行動による障害群」のカテゴリには「ギャンブル障害(Gambling disorder)」、「他の特定される嗜癖行動による障害(Other specified disorders due to addictive behaviours)」、「嗜癖行動による障害, 特定不能(Disorders due to addictive behaviours, unspecified)」が同じく分類されています。

なぜ国際疾病分類に登録されることになったか

ゲーム症・障害として国際疾病分類に今回登録される以前に、インターネット回線を通じて世界中の不特定多数の人と一緒にゲームがプレイできるオンラインゲームの依存症である「インターネットゲーム障害」に関しては、既にてアメリカ精神医学会(APA)の2013年版「精神障害の診断と統計マニュアル」に記述されています。さらに、国際疾病分類にオンラインゲーム以外のゲームも含めた「ゲーム症・障害」として登録することで、ゲーム症・障害が疑われる人々のための治療プログラム開発や、予防や治療措置の向上、および世界中の医療従事者からの関心度の高まりが期待できるからです。

WHOの国際疾病分類にも指定されるようになった「ゲーム症・障害」は日本では「ゲーム依存症」の名称で知られています。このゲーム症・障害の具体的な症状や世界各国での蔓延度などを見てみましょう。

自覚症状がない

ゲーム症・障害は症状の重さに応じて軽度・中度・重度と分類されます。ただし、ゲーム症・障害を発症している本人には自覚症状がない、またはゲーム症・障害を絶対に認めない、もしくは症状を認めつつ開き直るなどの態度を取る特徴があるため、治療は非常に困難です。

ゲーム症・障害への海外の取り組みとは

社会問題になっている国もあるゲーム症・障害には、各国で色々な取り組みが行われています。まず、中国、タイ、ベトナムではプレイ時間の規制があり、今後韓国でも規制ができる動きがあります。

さらに、中国ではオンラインゲーム依存症を含めた矯正のための施設「ネット依存症矯正施設」が中国国内に400か所以上あります。ネット依存症矯正施設では、軍隊のブートキャンプのような生活を強いられ、教官による軍事的な矯正プログラムが実施されています。

特にアジア圏での発症率が高い

インターネットゲーム障害である「オンラインゲーム依存症」は、精神障害の診断と統計マニュアル内ではアジア諸国の12~20歳の青年の有病率が最も高いとされています。特に中国、韓国、タイ、ベトナムではオンラインゲーム依存症が社会問題となっていて、中国・韓国ではオンラインゲームに熱中するあまり過労死する事例や、少年がオンラインゲームでの課金アイテムを購入するために家中の家財を売ってしまった事例、オンラインゲームを止めるように勧める家族に対して暴力をふるう事例などが起きています。

日本の場合

日本では、インターネット依存を専門的に治療・診断する外来を設けている医療機関にてゲーム症・障害を治療することになります。インターネット全般に依存している患者を対象にしている外来が多いですが、ほとんどの患者がオンラインゲーム依存で治療や診療を受けています。例えば、国立病院機構久里浜医療センターのネット依存専門外来を受診する患者の90%以上がゲーム依存由来です。オンラインゲーム依存が大多数を占めていましたが、近年ではスマートフォンの普及に伴って、パソコンのオンラインゲームだけでなくスマートフォンのゲームアプリ依存と診断された患者も、全体の40%に達しています。


さらに、国立病院機構久里浜医療センターのネット依存専門外来受診患者は過去6ヶ月間の内に、学校や職場の欠席や欠勤、外出できず引きこもる、物にあたったり壊したりする、家族に暴力をふるう、朝起きられない、昼夜逆転、食事をとらないなどの症状が出ています。また、ゲーム依存が原因で全体の患者の12%が退学または登校放棄、7%が失業しています。

日本ではアジア諸国のようなオンラインゲームを含めたゲームのプレイ時間の規制などはありません。ゲームを含めたインターネット依存の専門的な治療が受けられる医療機関や施設も数限りあります。しかし、日本ではすでに「ネットゲーム廃人」(寝食をいとわず、常にゲームをプレイしている状態の人)や「オンラインゲーム依存症」の言葉は当たり前のように使われています。

ゲームへの依存は、無理やりゲームを取り上げたり、インターネット回線を切断してしまったりしても治るものではありません。まずは患者本人自らが自分の症状を自覚して、自分からゲームのプレイ時間を減らしたり、ゲームを止めたりしなければいけません。そのため、早期の治療や取り組みが重要ですが、スマートフォンでも気軽にゲームがプレイできるようになったことを受けて、自分がゲーム症・障害になりかけているのに自覚がない人は今後増えていく恐れがあります。今後、WHOの国際疾病分類への登録に伴い、日本でもゲーム症・障害へのリスクや怖さの啓もうや関心の高まりを期待します。

WHO(世界保健機構)とは

健康に関する国際機関

WHOとは、世界保健機構“World Health Organization”の略称で、世界保健機関憲章第1条「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を掲げ、基本的人権のひとつである「人間の健康」の達成を目的とした国際機関です。

1948年4月7日に設立され、本部はスイスのジュネーブにあります。本部だけでなくアフリカはコンゴ・ブラザヴィル、アメリカ合衆国はワシントンD.C.、東地中海のエジプト・カイロ、ヨーロッパはデンマーク・コペンハーゲン、東南アジアはインド・ニューデリー、西太平洋はフィリピン・マニラと、管轄地域ごとに6つの事務局が設置されています。

人間の健康について、疾病の撲滅や医薬品・医療品の普及や研究、人間の健康的なライフスタイルの推進など、幅広い定義や活動を行っています。

本項では、以下「WHO」の名称にて統一します。

WHOの活動について

天然痘を始めとした疾病の撲滅

WHOの大きな功績として挙げられるのが、天然痘の撲滅成功です。感染すると高い致死率を持つ天然痘ウィルスですが、種痘で予防ができること、かつ人間にしか感染しないことから撲滅可能であると考えられ、WHOでは「世界天然痘根絶決議」を元に、1967年に医療や行政の整っていない発展途上国も含めて天然痘を撲滅させる計画のために特別予算を組み、1977年を目標に天然痘の撲滅計画が組まれました。その結果、1977年にソマリアで最後の天然痘患者が確認されたのを最後に天然痘患者は発生しなくなり、3年後の1980年にはWHOが天然痘の撲滅宣言を発表しました。

現在は、1988年に開始した「世界ポリオ撲滅計画(Global Polio Eradication Initiative)」を受けて急性灰白髄炎(ポリオ)の撲滅、及び、1995年に開始した「アフリカ・オンコセルカ症対策計画(African Programme for Onchocerciasis Control)」を受けてオンコセルカ症(河川盲目症)が進められています。両方の疾病共にいまだ撲滅には至っていませんが、ポリオはパキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアの3カ国を除いた世界各国では既に新規患者は発生していません。

世界保健デーの取り組み

WHOの設立した4月7日は、「世界保健デー」に制定されており、毎年決められたテーマに沿って取り組みが行われています。2018年は“Universal Health Coverage: everyone, everywhere”をテーマに掲げ「誰でもどこでも保健医療を受けられる社会」の実現のために、世界中で“Universal Health Coverage” 「全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」(UHC)の推進のための取り組みが行われました。

なお、日本では1927年の一部被用者に対する公的保険制度導入、1961年4月の国民健康保険法全面改正、1973年の医学部のなかった県に医科大学(医学部)を設置する「県一医大構想」の閣議決定など、早期にUHCを達成していることが現在の長寿国日本に繋がったといえます。

WHO総会の開催

WHOでは、毎年5月に年に一回WHO総会をスイスのジュネーブにあるWHO本部にて開催しています。WHO総会には加盟国の代表が参加し、事業計画や予算、保健医療に係わる重要な政策決定が行われます。

例えば、2017年5月22日から31日まで開催された第70回WHO総会では、WHO事務局長の選出、2018~2019年度のWHO予算案の決議および承認、健康危機プログラムの進捗や国際保健規則(IHR)の世界実施計画についての協議および実施の推進や承認が行われました。

情報の収集公開や国際基準の設定

WHOでは、疾病や死因の国際基準の統計発表を行っています。代表的なのが「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)」の公表です。国際疾病分類(ICD)と略称で呼ばれることが多くなっています。本項では「国際疾病分類」と記載します。

WHOでは、「国際疾病分類」を世界的な健康動向と統計の識別の基礎であり、病気や健康状態を報告するための国際基準と定義しています。実際に、国際疾病分類は、世界の医療従事者が疾病や症状を診断する時や、研究者が疾病や病症を研究・分類する際に指標として用いられています。


最新版の国際疾病分類には、A00 – B99感染症・寄生虫症、C00 – D48新生物、D50 – D89血液・造血器疾患および免疫機能障害、E00 – E90内分泌・栄養・代謝疾患、F00 – F99精神および行動の障害、G00 – G99神経系の疾患、H00 – H59眼および付属器の疾患、H60 – H95耳および乳様突起の疾患、I00 – I99 循環器系疾患、J00 – J99呼吸器系疾患、K00 – K93消化器系疾患、L00 – L99皮膚・皮下組織疾患、M00 – M99筋骨格系・結合組織疾患、N00 – N99腎尿路生殖器系疾患、O00 – O99妊娠・分娩・産褥、P00 – P96周産期疾患、Q00 – Q99先天奇形、変形および染色体異常、R00 – R99症状・徴候・異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの、S00 – T98損傷、中毒およびその他の外因の影響、V01 – Y98傷病および死亡の外因、Z00 – Z99健康状態に影響を及ぼす要因および保健サービスの利用、U00 – U99特殊目的用コードの全22分野での分類がされています。

なお、日本の厚生労働省でも統計学に基づく統計庁舎に国際疾病分類を用いており、精神額の領域でも代表的な診断基準として採用されています。

国際疾病分類は1900年に国際統計協会により制定され、およそ10年ごとに改訂が行われています。現在の最新版は10版目である「ICD-10」ですが、2018年5月のWHO総会を経て、6月には最新11版目である「ICD-11」の公表が予定されています。そして、ICD-11では、”Gaming-Disorder”(ゲーム症・障害)が新たに盛り込まれることが2017年末のトルコで開催された「依存症に関する会議」にて決定されました。

(文:千谷 麻理子)

本記事は、2018年5月16日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

憧れの職業から時事問題まで、母親と女性の視点から。子供達の成長と被災地復興を見守る「千谷麻理子」さんの執筆する解説記事・エッセイ・コラム記事です。

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