自衛隊の「物品管理」について -武具や装備品・服装まで

自衛隊の「物品管理」は、やり過ぎと思えるほど徹底しています。

今回は、武器を除く『個人装具』や『個人被服等』について、どのような物品があるのか?また、個人でどのような物品管理をしているのか、陸上自衛隊を例に説明します。

自衛官の物品管理

自衛官になると、武器・装具・被服などが『貸与』及び『支給』されます。これらの物品の管理は、部隊で管理する物品と個人で管理する物品に分かれますが武器と装具及び被服とでは管理方法が異なります。

武器の中には『個人装備火器』と言って入隊した時点で自衛官個人に貸与される武器があります。自衛官に最初に割り当てられる武器は、小銃と銃剣で、これは自衛隊を退職するまで隊員固有の武器となります。ただし個人で管理する事はしません。

幹部自衛官の場合、幹部に任官した時点で拳銃が貸与されます。ただし、幹部であっても、小銃を始めとする個人携行火器などの武器は、個人管理する事は出来ません。演習などの場合は演習場内で管理され、通常は駐屯地内の武器庫などで、所属する部隊単位で、保管及び管理されます。

今回は、武器を除く『個人装具』や『個人被服等』について、どのような物品があるのか?また、個人でどのような物品管理をしているのか説明します。なおこれらの物品は貸与されている官給品を主体に説明を進めて行きます。

武器と装具

個人で管理する物品の説明をする前に、武器とその他の装具について整理しておきましょう。まず、小銃・機関銃・大砲・戦車などは誰が見ても直ぐに武器だと理解できるはずです。

ところが、これらの武器の中には、パッと名前を聞いても直ぐに武器だと解るものと解りにくいものがあります。たとえば陸上自衛隊で管理している武器の中には『双眼鏡』があります。

双眼鏡は敵を殺傷する物ではないので厳密に言うと武器ではありません。ただし双眼鏡はどこの部隊でも武器庫に格納します。つまり陸上自衛隊では、双眼鏡は『武器』と同等の扱いをしています。

これと同じようなものに『防毒マスク』・『コンパス』・『方向版(大型のコンパス)』などの計測器具も武器と同じ扱いをしています。

次に防毒マスクはどうでしょうか?陸上自衛隊は防毒マスクの事を防護マスクと呼びます。厳密に言うと武器ではありませんが防護マスクも武器庫で管理されています。武器ではありませんが武器と同じように装具として扱っています。

それでは、頭に被るヘルメットはどうでしょうか?これも武器ではなく個人装具になります。つまり装具の中で戦闘行動に際して非常に重要な装具は、武器と同じように管理しているという訳です。

個人装具とは?

個人装具とは、武器庫や補給庫で管理しない個人装具を言います。元々、個人装備品は単品ごとに鉄帽・ライナー(ヘルメット)、背嚢(はいのう)と多くの装具がありました。ただし現在は『戦闘装着セット』という一つのパッケージになって個人に『貸与』されます。

これらの装具は手入れ・保管も含めて個人で管理しなければいけません。戦闘装着セットの細かい品目は次の通りです。

『戦闘装着セット』

・88式鉄帽
旧式の鉄帽の軽量化を図るとともに、日本人の頭部の一般的な形状に合わせた新型の鉄帽で、通常迷彩の鉄帽覆を装着して被ります。

・迷彩服2型及び3型・上下
1990年以降に登場した迷彩使用の戦闘服(上下)で3型の方が新しい様式です。大きな特徴は燃えにくい事(難燃性である)と、赤外線からの秘匿効果(ステルス性)が高い仕様になっています。

・防寒戦闘外衣・上下
一般的には『戦闘外被(せんとうがいひ)』と呼ばれ、戦闘服の上に着用します。

・弾帯・サスペンダー(吊りバンド)・弾入れ・救急品袋入れ
戦闘に必要な弾倉などを装着及び携行する為に必要な装具として、改良されてきた装具で、現在は全てに迷彩加工が施されています。また隊員個人で携行する応急処置をする為の医療セット(救急品袋)を入れる為の入れ物もセットになっています。

・水筒・水筒覆い・携帯シャベル・携帯シャベル覆い
水筒はアルミ製の大型コップの中に入る使用で、携帯シャベルは折りたたみ式になっています。なお覆いはすべて迷彩処理が施されています。

・飯盒(はんごう)
野外炊事をする為の用具で、軍隊で使われる伝統的な用具の一つです。
・戦闘手袋
最新式の物はニット生地で手の甲側が迷彩加工されています。

・戦闘靴2型
現在陸上自衛隊の主力となっている戦闘靴で、黒色の革製で指の部分を保護する強度が高く、防水性にも優れた仕様になっています。

・戦闘雑納2型
いわゆる野外用の軍用ハンドバッグで、折りたためば場所を取らない仕様で、迷彩加工されています。

・戦闘用背嚢(はいのう)
戦闘服を始めとする装具類を入れる為の大型のショルダーバッグです。縦長の形状で迷彩加工されており、担いだ時に肩や腰の負担を軽減するためのパットなどが装着されています。

・戦闘雨具(別名:セパレーツ)
迷彩加工の上下分離式の雨衣です。

装具点検

戦闘装着セットなどの装具は、定期的に部隊長及び管理官などの点検を受けます。点検項目は、装具などの員数、傷などの傷み具合で、傷み具合や損耗などによって、本来の機能を果たさないと判断されると交換して貰えます。

また、装具等の取り扱いが悪く、痛みが激しい場合や紛失した場合は指導を受けます。場合によっては弁償や処分される場合もあります。点検の回数は年に1回、あるいは2回と物品の種類によって決まっていますが、大小の点検を合わせると、総数は部隊によっても異なります。

その理由は、部隊長の臨時点検や、部隊長の命を受けた武器係、補給係などの事前点検がある為です。従って臨時点検の多い部隊は、年に何度も点検を受ける事に成ります。

ただし点検そのものは部隊の士気を高揚するような物ではないので、一般的に係による点検は、全ての装具を点検するのではなく、一部の装具や補給品を抜粋して点検する事も多いです。

管理方法は営内者と営外者で異なる

戦闘装着セットのような個人装具は個人管理します。ただし完全に個人管理しないといけないのは自衛隊の駐屯地内で起居する営内者です。結婚あるいは、その他の理由で隊外から通勤している営外者と幹部自衛官は少し管理方法が違います。

営外者及び幹部自衛官の場合は、個人装具は所属する部隊の部隊長が定める場所に格納して保管します。建前は個人管理ですが自宅で管理するのではなく部隊に保管して、個人で管理していると言う方法になっています。

基本的に官品は、みだりに自宅に持ち帰るものではなく部隊に保管して管理します。ただし野外訓練や演習への出発準備などで部隊長が許可した場合は一時的に自宅に持ち帰る事はあります。また個人被服については営外者などは、自宅で保管する事が出来ます。

自衛官の服装

自衛官は、規則上は制服着用が基本です。これを『常装』と言います。これは陸上自衛隊の隊員の服装を指定した物の中で一番基本的な服装と言う意味です。
それ以外に自衛官の服装の区分には次のようなものがあります。

常装、第1種礼装、第2種礼装、通常礼装、作業服装、甲武装、乙武装、
特別儀じょう服装、特別儀じょう演奏服装、通常演奏服装、演奏略服装、特殊服装

個人被服

上記の服装区分からも解るように、自衛官になると制服に始まって服装や下着類まで『貸与』あるいは『支給』されます。被服類に貸与と支給品があるのは、一部に消耗品があるからです。消耗品とは靴下や手袋の事で数年に一度交換してくれるものがあります。

ちなみに入隊した男子自衛官に支給される個人用被服は次のとおりです。

・正帽及び帽章
・外套 濃緑色のオーバーコート
・冬服第1種 濃緑色でシングルの4つボタンの背広で生地は分厚い。
・夏服第1種 濃緑色でシングルの4つボタンの背広で生地は薄い。
・夏服第2種 長袖シャツスタイルで第1種とズボンは同じ。
・夏服第3種 半袖シャツスタイルとズボン。
・制服用雨衣
・ネクタイ 2組
・バンド・バックル 2組
・白手袋 消耗品として定期的に交換できる。
・短靴 損耗等により定期的に交換できる。
・階級章・略章
・戦闘服 戦闘装着セットの戦闘服とは別に補給物品として貸与される。
・戦闘服用バンド
・戦闘帽
・手袋(OD色)2組
・戦闘雨衣
(以下省略)

官品と私物品

貸与される装具・被服等以外の個人の物品管理は、隊内では指定された場所に保管します。私物品の持ち込みは必要と認められる物については個人の自由ですが、陸上自衛隊の駐屯地等は防衛省が管理しています。従って個人物品である私物品を無制限に持ち込む事は出来ません。

なお官品と同じ様式の私物品つまり模造品もあります。それは正帽・制服に始まって被服や装具全般について私物品があります。たとえば戦闘服でも見た目は殆ど同じ物を自前で購入する事も可能です。

官品と、被服等の模造品との違いは物品番号と官給品である事を示す『Qマーク』が入っているかどうかを調べれば解ります。自衛官であればそのマークと番号を表示している場所は知っていますから本物か偽物かは直ぐに解ります。

ちなみに私物品の使用及び着用は、一昔前はおおらかでしたが、時代と共に官給品以外の着用や使用については厳しくなって来ています。ちなみに自衛隊内は私物のパソコンの使用も現在は、厳禁となっています。

またUSBメモリーなどの移動式の記憶媒体の使用や管理も厳重に管理されており、部隊内のパソコンで使用したUSBメモリーなどの記憶媒体の隊内への持ち込みや、隊外への持ち出しは禁止されています。

個人物品の管理

陸上自衛隊で勤務する自衛官は、個人装具、個人被服及び私物品も含めて個人で管理するのが基本です。なお営外者と幹部自衛官の場合は制服などの個人被服については、自宅等で保管し管理する事が許可されています。

すでにご説明したように、自衛隊の武器、装備品、被服などには、全て物品番号が付与されており厳重に管理されています。これらの物品は自衛隊の隊員としての身分を失った時に全て返納しなければいけません。また返納できない場合は、金銭納付による弁償をしなくては行けません。

その為、個人物品でも、定期的に検査や点検を受けて常に最良の状態に保てるように管理します。また官品をみだりに譲渡や販売する事は厳禁です。

自衛隊の物品管理は、やり過ぎと思えるほど徹底しています。例えば実弾射撃の後の空になった『薬きょう』でも一発単位で完全回収をします。その為、個人の物品の管理については、部隊名、氏名の記入は、必須事項となっています。

私物品については、官品ほど厳しくはありませんが営内居住する隊員の場合は、私物品の総量をある程度規制している部隊が多いです。

まとめ

いかがでしたか?

戦闘装着セットなどについても詳しくまとめました。

武具を扱う自衛隊、やりすぎるくらいしっかりと管理されているのがご理解いただけたかと思います。

本記事は、2018年10月16日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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