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全国の公立小中学校のエアコン設置率 調査レポート(2017年)

記録的な猛暑が続く中、今夏、小学校児童の悲しい熱中症の事故も起こり、学校のエアコン利用が話題になっています。

生徒達の熱中症対策として冷房設備の設置について、実際の公立小中校のエアコン設置状況がどのようなものか調べました。※国のデータのうち最新の2017年6月9日のデータを利用しています。

2018年08月10日更新

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目次
公立小中学校のエアコン(冷房)の設置は50%以下
都道府県別公立小中学校のエアコン(冷房)の設置マップ
公立小中学校の空調(冷房)設備設置状況の推移
都道府県別の公立小中学校エアコン(冷房)設置率
「学校施設環境改善交付金」について補足説明
千葉市では導入に60億円以上も、市長がツイッターで情報発信
まとめ - 今後のエアコン設置について国も動き始める

公立小中学校のエアコン(冷房)の設置は50%以下

まずは、全国の公立小中学校の冷房機能があるエアコン設置率についてです。

文部科学省の発表によると、全国の義務教育学校の前期課程を含む公立の小中学校のエアコン設置率は普通教室で49.6%、特別教室で34.6%です。生徒たちが普段多くの授業を受けたり、休み時間を過ごしたりする普通教室の方がエアコンの設置率は高く、それ以外の理科室や調理実習室などの特別教室は比較的エアコンの設置率が低いようです。

公立の小中学校では、全国的に子どもの熱中症対策としてエアコン設置を進めるべきとの要望が高まっているようです。また、公立小中学校には子どもたちだけでなく地域の人にとっても重要な役割を担う側面もあります。例えば、災害などの非常時に地域住民の避難所として使用される学校については、非常時に備えて地域のインフラとして小中学校にエアコンを設置するべきとの意見もあります。

このような声に対し、文科省では「学校施設環境改善交付金」という補助金制度によって、エアコン(冷房)の整備を推進しているようです。この交付金は空調整備事業に対して原則として工事費の3分の1を補助するというものです。しかし、その他の3分の2の財源については学校や自治体の予算から捻出する必要があり、実際に設置できる教室には限度があるというのが現実のようです。

都道府県別公立小中学校のエアコン(冷房)の設置マップ

全国の公立小中学校のエアコン設置率のマップです。赤は設置率50%未満の地域、青は50%以上の地域を表しており、濃い青ほど設置率は100%に近く、濃い赤ほど設置率は0%に近くなっています。小数点以下は繰り上げています。

【設置率が低い方が赤・高いのが青です】
・赤:公立小中学校のエアコン設置率(以下「設置率」)0%〜9%
 北海道・岩手県・秋田県・青森県・長野県・宮城県・愛媛県・奈良県・静岡県・長崎県
・薄い赤:設置率10%〜19%
 新潟県・山形県・山口県・高知県
・ピンク:設置率20%〜29%
 鳥取県・岡山県・宮崎県・島根県・富山県
・ピンク:設置率30%〜39%
 熊本県・三重県・大分県・愛知県・鹿児島県・徳島県
・ピンク気味の白:設置率40%〜49%
 和歌山県・千葉県・石川県・広島県・佐賀県
・水色気味の白:設置率50〜59%
 茨城県・岐阜県・兵庫県
・薄い水色:設置率60%〜69%
 福島県・福岡県・山梨県
・水色:設置率70%〜79%
 栃木県・埼玉県・大阪府・神奈川県
・薄い青:設置率80%〜89%
 沖縄県・滋賀県・京都府・群馬県・福井県
・青:90%~100%
 香川県・東京都

公立小中学校の空調(冷房)設備設置状況の推移

公立小中学校の空調(冷房)設備設置状況の推移(平成10年度~平成29年度)について

出典:文部科学省報道発表資料『公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況調査の結果について』

公立小中学校のエアコン設置率の推移を見ると、平成10年度には普通教室で3.7%とごくわずかだったのに対し、平成29年度には49.6%まで上昇しています。それでも全体としてはまだ半数の設置にとどまっており、約20年前より設置率は改善しているとはいえ、100%を目標とするなら、遠い数字です。

また、平成10年度では普通教室よりも特別教室の方がエアコン設置率が高かったのですが、平成26年度からは逆転して、特別教室よりも普通教室のエアコン設置率の方が高くなりました。平成22年度以降から、普通教室のエアコン設置が急激に進んできたことがわかります。

>参考記事:公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況調査の結果について
https://www.huffingtonpost.jp/uchida-ryo/school-20180718_a_23484228/

都道府県別の公立小中学校エアコン(冷房)設置率

全国の公立小中学校のエアコン設置率は約50%弱程度でしたが、都道府県別に設置率を見ると、県によって状況が異なります。文部科学省が2017年4月に普通教室の冷房設置率を調査した結果についてご紹介します。

北海道・東北地方の公立小中学校エアコン(冷房)設置率は約10%

北海道・東北地方の公立小中学校の冷房設置率についてまとめます。

日本の中で最も北部にある北海道は冷房機能があまり必要ではないためか、エアコン設置率は0.3%と全国で最も低いようです。青森県は2.9%、岩手県は1.1%、秋田県は1.8%と、北海道に次いで全国で2番目、3番目、4番目に低い設置率です。東北地方では南下していくとエアコンの設置率が上昇し、宮城県は4.1%、山形県17.4%、福島県は東北地方の中で最も高い65.1%で、全国でも14位の高い設置率のようです。

北海道・東北地方の公立小中学校のエアコン設置率を平均すると、約10%程度でした。

関東地方の公立小中学校エアコン(冷房)設置率は約73%

関東地方の公立小中学校の冷房設置率についです。

東京都が全国1位の99.9%で、ほぼ全ての教室にエアコンが設置されています。群馬県は全国4位の85.7%、神奈川県が79.0%、埼玉県が76.0%、栃木県が73.3%、茨城県は50.8%と続きます。東京都に隣接する千葉県が44.5%と全国では21番目の設置率ではありますが、関東地方の中では最も低い設置率のようです。最高気温で話題になる群馬県の館林市や埼玉県の熊谷市などの暑い都市のある関東地方は全体的には冷房設置率が高いと言えるでしょう。

なお、関東地方の公立小中学校のエアコン設置率を平均すると、約73%でした。

中部地方の公立小中学校エアコン(冷房)設置率は約38%

中部地方の公立小中学校の冷房設置率についてです。

冷房設置率が高い順にご紹介すると、まず福井県が全国で3位の86.5%、山梨県が全国で12位の65.6%です。岐阜県が55.2%、石川県からは設置率が半数を下回る44.6%、愛知県が35.7%、富山県が27.6%、新潟県が12.9%です、静岡県は7.9%です。中部地方で最も冷房設置率が低い長野県は、全国でも下から5番目の3.7%のようです。

雪国のイメージがある北陸ですが、夏はフェーン現象などによって気温が高くなるようで、冷房設置率は県によって差があります。

温暖な気候で知られる東海地方の静岡県の冷房設置率が低い状況が見えてきました。避暑地としても有名な長野県は、やはりと言うべきか、冷房設置率も低いようです。気候の違いというよりも、県の方針の違いで差があるように思えます。

中部地方の公立小中学校のエアコン設置率を平均すると、約38%でした。

近畿地方の公立小中学校エアコン(冷房)設置率は約55%

近畿地方の公立小中学校の冷房設置率についてまとめます。

冷房設置率が高い順にご紹介すると、近畿地方で最も高いのが京都府の84.0%です。京都府は全国では5位の冷房設置率です。続いて、滋賀県が82.8%、大阪府が77.3%、兵庫県が58.8%、和歌山県が44.5%、三重県が32.8%です。比較的近畿地方の冷房設置率は高い傾向にありますが、奈良県は7.4%という全国でも下から8番目の設置率でした。

同じ近畿地方内であっても、各府県によって設置率には差があり二極化しているようです。近畿地方の公立小中学校のエアコン設置率を平均すると、ちょうど半数程度の約55%でした。

中国・四国地方の公立小中学校エアコン(冷房)設置率は約33%

中国・四国地方の公立小中学校の冷房設置率についてまとめます。

まず中国地方の冷房設置率が高い順にご紹介すると、最も設置率が高いのが広島県の45.2%で、既に半数を下回っています。続いて島根県が27.4%、岡山県が26.0%、鳥取県が23.6%、山口県が17.4%と、いずれも設置率が低い水準にあります。

四国地方については、香川県が全国で2位の97.7%で突出して高く、徳島県は38.9%、高知県は19.0%、愛媛県は5.9%で、四国全体で見ると、香川県をのぞく大部分でまだまだエアコン設置率は低い状況にあると言えます。

中国・四国地方の公立小中学校のエアコン設置率を平均すると、約33%という結果でした。

九州・沖縄地方の公立小中学校エアコン(冷房)設置率は約41%

九州・沖縄地方の公立小中学校の冷房設置率についてまとめます。

九州・沖縄地方の中で冷房設置率が最も高いのは、日本国内で最も南に位置する沖縄県で79.6%でした。しかし、沖縄県は全国では7位であり、南に位置するからといって特別に設置率が高いわけではないようです。続いて、福岡県が65.5%、佐賀県が47.2%、鹿児島県が35.8%、大分県が33.8%、熊本県が32.4%、宮崎県が26.7%、最も低い長崎県は8.6%でした。

九州地方では南部にある方が設置率が高いというわけではなく、県によって大きく差があります。国内では熱いイメージのある九州地方でも、福岡県以外はエアコン設置率が半分以下であり、多くの生徒が冷房の無い教室で学んでいるようです。

九州・沖縄地方の公立小中学校のエアコン設置率は、平均すると約41%でした。

「学校施設環境改善交付金」について補足説明

データに表れている通り、エアコン設置率の低さが全国的に課題となっていることに対し、文部科学省では「学校施設環境改善交付金」という補助金制度によって、エアコン(冷房)の整備を推進しているようです。

この交付金は学校施設の環境を改善する事業の一つである「空調整備事業」に対して、原則として工事費の3分の1を補助するというものです。

しかし、実際に交付金を受けるためには審査があり、これまでには申請したけれど交付金に採用されなかったという自治体もあります。また交付金を受け取れることになったとしても、その他の3分の2の財源については学校や自治体の予算から捻出する必要があり、実際に設置できる教室には限度があるというのが現実のようです。

千葉市では導入に60億円以上も、市長がツイッターで情報発信

エアコンの設置には当然ながらお金がかかり、学校の教室規模の空調となると家庭用の何倍も費用がかかります。取付工事などの設置費に加えて、毎年の維持費も今後必要になるので、自治体では初期費用と維持費について財源を確保していく必要があります。

公立の小中学校でのエアコン設置率が0%の千葉県千葉市では、市長の熊谷氏がツイッターで、「公立小中学校のエアコンの導入には60億円以上が必要で、維持には2億円以上がかかる」との情報発信を行いました。千葉市教育委員会によると、市内の全ての公立小中学校の普通教室にエアコンを設置するためには約66億円かかるようです。エアコン導入初年度だけでなく、将来的にも予算、つまり税金の投入が必要な事業ということで、行政は慎重な判断を迫られています。

これに対し、千葉市の一部の父兄からは「子どもが熱中症になるのではないかと心配」という声が千葉市長のツイッターに続々と寄せられており、議論となっています。

千葉市としてもエアコン設置が急務との認識はあるようですが、国の補助金についても文科省の財源に限りがあるため、補助金を申請したとしても採用されない場合もあり、また採用されても実質6分の1しか補填できないとの試算もあり、実行に移せていない苦しい状態です。国からの補助金でまかなえる部分以外の財源の確保については各自治体が自力で行わねばならず、千葉市でははっきりとは目処が立たない状態が続いています。

なお、千葉県の高等学校の普通教室に冷房設備が設置されている県立高等学校は77校(県 全体の6割強)については、保護者による負担で設置されたとのことです。

それならば保護者がお金を出し合ってエアコンを設置できないか、という声もありますが、義務教育の小中学校の場合、保護者間の公平感の問題、学校毎の負担状況の違いなどエアコンの設置の財源負担を保護者で実現するのもそう簡単にはいかなようです。

実際の千葉県学校教育情報ネットワークの保護者でのエアコン設置のアンケートには、「賛成したいですが、いくら位かかるのかわからないと判断できない」や、「来年は卒業するので関係ない」と言った声もあり、行政・学校の対応が悪いと考えるのは偏った考えかもしれません。

とはいえ、近隣の市や、他県の同規模の市ではエアコン設置を実現させているところもあり、ツイッター上ではなぜ千葉市では設置が進まないのかと疑問視する投稿も目立ちます。財源の確保の問題と、子どもたちの健康の問題はどちらも早急に解決しなければならない問題であり、千葉市の公立小中学校のエアコン設置については今後も議論が続いていきそうです。

参考記事

・千葉県学校教育情報ネットワーク アンケート
https://cms1.chiba-c.ed.jp/ichikawaminami-h/jo1ibhnai-158/?action=common_download_main&upload_id=1026
・毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180721/ddl/k12/100/178000c

まとめ - 今後のエアコン設置について国も動き始める

このページでは、公立の小中学校の冷房機能としてのエアコン設置率がどのくらいの水準なのか、文部科学省の発表を元にまとめました。全国の冷房設置率はちょうど約50%でしたが、地方別に設置率を見ると、都道府県によって数値は大きく異なります。

比較的、北海道・東北地方の設置率は低い傾向にありましたが、東北地方でも設置率が高い県があり、反対に九州地方でも設置率が低い県があります。地方ごとに見ると、最も設置率が高いのは関東地方や近畿地方でしたが、やはり関東や近畿にも冷房設置率が低い県は存在するので、エアコンを設置するかどうかは、地方ごとの気候によって基準があるというよりも、都道府県の設置方針に委ねられてきたと言えます。

2018年の夏は記録的な猛暑になっており、子供たちの熱中症など健康被害についても心配されています。酷暑に対し教育環境が適切なものかどうか、見直しが必要な時期にきているのかもしれません。

また、度重なる災害の避難所としても使用される小中学校に、エアコン設置は急務との意見もあり、エアコン設置率の低さを地域の問題として捉える自治体も今後増えていくことが予想されます。

国としても、官房長官が会見にて猛暑が続く期間は授業を行わないよう「夏休み期間の延長」を検討するとともに、「小中学校のエアコン設置の補助」について早急な対応が必要との見解を示しています。文科相からも、各教育委員会でその地域の気候の状況に合わせ、夏休みの延長や冬休みの短縮など、学校休業日を弾力的に運用することを検討してもらいたいとの発言がありました。

国が明確にエアコンの必要性について言及したことで、全国的な予算不足が解消され、必要な学校・教室へのエアコン設置となるか今後の動向に注目です。

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