MENU

アメリカ、コロナショックで失業者,600万人を超える!アメリカの失業保険制度について解説

当ページのリンクには広告が含まれています。


目次

はじめに – コロナショックで増え続けるアメリカの失業者

いまアメリカでは新型コロナウイルス感染拡大によって大きな問題になっているのが「増え続ける失業者」です。2020年4月10日時点で、失業保険申請者(失業者)は1,600万人を超えました。アメリカの総労働人口は約1億6,000万人ですので、いかに影響が大きいものかが分かります。

しかも、これはあくまでも氷山の一角とされており、アメリカの労働省が処理しきれていない申請を含めると2,000万人を超える可能性もあると言われています。コロナウイルスの感染者数や死亡者数だけに注目が集まっていますが、その影では着実に失業者の数も増えており、長期にわたって続く問題になりそうな気配です。

アメリカにも失業者を一時的に補償する「失業保険制度」がありますが、具体的にはどのような制度になっているのでしょうか?アメリカの失業保険の期間や財源、給付金の額、受け取るための資格など気になる点が多いですよね。

今回はアメリカの失業保険制度についてまとめて解説します。公務員志望の方は日本の雇用保険制度と比較するのにぜひ役立てて下さい。

アメリカの失業保険制度の概要

アメリカの失業保険制度は、1935年の社会保障法(Social Security Act of 1935)によって定められました。この法律では各州で失業保険を制定することが義務付けられており、失業保険の具体的な内容は「州によって異なる」ことが特徴です。州によって内容や制度が異なるため、同じ失業保険でも50通り以上のルールがあるということになります。

基本的には連邦政府が定めた失業保険ガイドラインに沿って作られているため仕組みそのものに大きな違いはありませんが、失業率が高いフロリダ州では給付期間が最大12週間に対して、マサチューセッツ州は最大30週間まで給付してくれるなどの違いがあります。

日本の雇用保険(失業保険)とは異なり「雇用保険受給資格者証」や「資格取得届け」の必要はなく、毎月の失業保険は事業主(雇用主)が支払います。つまり、アメリカの給与明細では雇用保険が天引きされているということはないのです。

アメリカの失業保険の財源

アメリカの失業保険の財源は「連邦失業税(Federal Unemployment Tax)」と「州失業税(State Unemployment Tax)」のふたつです。雇用者は従業員ひとりに対して、連邦失業税と州失業税を納付します。

連邦失業税は、年間給与総額のうち7,000ドル部分を対象にした6.0%($420)を収める必要がありますが、州失業税を納付することによって5.4%が控除されるため、実質的には0.6%($42)です。

州失業税は州ごとに差があり、従業員の給与などに応じて0.05%から14.37%と様々です。また、新規従業員向けの税率も用意されており、雇用主が納付する失業保険の大半は州失業税ということになります。

こうして集められた失業税は「失業信託基金勘定(Unemployment Trust Fund Account)」で管理され、州ごとに定められた給付条件に基づいて給付されます。


失業保険の窓口はAmerican Job Center

アメリカの失業保険は労働省(Department of Labor)の管轄です。実質的には各州の社会保障部門(Department Economic Security)が担当し、窓口となるのがAmerican Job Centerです。日本で言うところの「ハローワーク」です。American Job Centerでは失業保険の申請をはじめ、職探し、トレーニングなどをサポートしています。

ほとんどの州では失業保険の申請はオンラインを推奨していますが、新型コロナウイルス問題が発生してからはパンク状態になっており、窓口に行列が出来る事態になっている州もあります。アリゾナ州にあるAmerican Job Centerのひとつでは、スタッフの数を通常14名体制のところを100名体制にして対応しているとのことです。

失業保険の財源は不足気味

アメリカの失業保険の財源は失業信託基金勘定に収められていますが、必ずしも雇用主が納付した失業保険で賄えている訳ではありません。例えば、失業率が高いカリフォルニア州ではリーマンショックの影響で2008年頃から失業保険の収支バランスが崩れてしまいました。この結果、連邦政府からの借り入れを実施し、2012年時点で借り入れ総額は100億ドルに達しました。

同様のことが過去にミシガン州でも起きており、アメリカの失業保険は決して安心して頼れるものではないと言われています。新型コロナウイルス問題によって再び収支のバランスを崩す州が増えると予想されています。

アメリカの失業保険の受給条件

では、実際にアメリカの失業保険を受け取るためにはどのような条件が必要なのか見てみましょう。

アメリカの失業保険の受給条件

アメリカの失業保険を受給するには以下の条件を満たす必要があります。

・離職前の12ヶ月間に一定の雇用期間と一定以上の所得がある
・働く意思と能力がある
・就職活動をしている
・すぐにでも働ける状態である
・懲戒解雇されていない
・正当な理由がない自己都合で退職していないこと

上記はあくまでも最低限の条件であり、州ごとに受給条件や審査内容は異なります。なかには4週間に1度American Job Centerで面接、一定時間の就職活動を義務付けている場合もあります。受給条件は日本と概ね同じと考えて良いでしょう。

アメリカの失業保険の給付金額

給付金額の上限は州ごとに異なります。例えば、カリフォルニア州では毎週最大450ドル、ハワイ州は毎週最大551ドル、アリゾナ州は毎週最大240ドルといったように大きな開きがあることが特徴です。

失業率が高い州ほど給付金が少なくなるとは限りません。同じ失業率(4.8%)のカリフォルニア州とワシントン州を比較すると、カリフォルニア州が毎週最大450ドルに対してワシントン州は毎週最大681ドルです。

日本は全国で統一された基準が採用されていますが、アメリカの失業保険は州によって全く異なる基準になっていることを覚えておくと良いでしょう。

アメリカの失業保険の給付期間

失業保険の給付期間は州によって12週間から30週間の開きがあります。最も給付期間が短いのはフロリダ州やノースカロライナ州で12週間、マサチューセッツ州はアメリカ国内で最も長い30週間です。その他の州はほとんどが26週間です。

その州の失業率の高さと給付期間は比例しておらず、失業率が高いのに給付期間が長い州もあります。日本の雇用保険と同じで再就職した時点で給付は停止されます。

この他に、すべての州ではありませんが「州追加給付」や「延長訓練」という制度を設けている場合があります。これは州が定める最大給付期間にさらに追加(13週から26週程度)する制度で、衰退しつつある産業で失職した人や、認定訓練プログラムで十分な進捗が見られる人などが対象になります。

アメリカの失業保険の待機期間

平均して3週間から6週間かかります。(州によっては2週間以内)これは申請後の審査に時間を要するためですが、災害による離職が理由の場合は最短で申請日の翌週から支給が始まります。


新型コロナウイルスは災害扱いですが、申請者が大量に申請したことでシステムが対応できず遅れが懸念されています。

アメリカの失業保険の受け取り方法

失業保険は銀行振込かデビットカードへの振込です。現金に対応していないことは日本と同じです。

新型コロナウイルスでアメリカの失業保険はどうなる?

アメリカでは新型コロナウイルスの影響によってしばらくの間は失業者が増え続けると予想されています。すでに2008年のリーマンショックを超えるペースで増えていることから、アメリカ政府は「緊急延長給付」に踏み切ると考えられています。

緊急延長給付とは、高失業が発生した際に失業保険の給付期間を13-20週間延長することです。3ヶ月平均の完全失業率が6.5%を超え、なおかつ3年前の同時期の水準の110%以上になった場合に適応されます。リーマンショックがあった2008年に施行された際は、最長47週間にわたって失業保険が支給されました。

新型コロナウイルスは終わりが見えにくい問題だけに、失業保険の給付期間は延長に延長を加えることになるかもしれません。ちなみに、この場合の財源は連邦政府と州政府で50%ずつ負担する決まりになっていますが、財政難の州政府が多いため連邦政府の負担は免れません。

まとめ

アメリカの失業保険がどのような仕組みなのかお分かり頂けたと思います。概ね日本と同じような仕組みですが、アメリカらしく州によって給付金も給付期間もまったく異なることが特徴です。

新型コロナウイルスの問題によってアメリカの失業保険はこれからさらに注目を浴びることになるでしょう。また、影響が長引くほど財政を圧迫することは確実です。トランプ大統領が失業者に対する保障と、財政のバランスをどのように取るのか注目しましょう。

「新型コロナウイルス感染症(covid-19)」に関する記事一覧はこちら

本記事は、2020年4月17日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

コメント

コメントする

目次