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もう一人のトランプ「ポンペオ国務長官」の発言に見る米中問題

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目次

はじめに - マイク・ポンペオ国務長官について

みなさんはアメリカのマイク・ポンペオ国務長官をご存知でしょうか?

日本でもアメリカと中国の関係悪化の状況が伝えられているため、名前は知っているという人は多いと思います。実は、アメリカではこのポンペオ国務長官は「もう一人のトランプ」と言われているほどに強硬な姿勢の持ち主として有名です。

新型コロナウイルスの感染拡大によってアメリカが大きな影響を受けて以降、アメリカ政府による中国批判が続いていますが、実質的な中国批判の先頭に立っているのがポンペオ国務長官です。(日本で言うところの外務大臣)

関係悪化が深まるばかりの両国の様子を知る上で、ポンペオ国務長官の言動はこれまで以上に注目を集めています。そんなポンペオ国務長官が7月23日に、対中国政策について演説をおこないました。

そこで今回は、緊張状態が続いている中で、強硬派のポンペオ国務長官が何を語ったのかご紹介します。

公務員や公務員志望の方は、米中関係の鍵を握る人物を知るためにぜひ参考にして下さい。

ポンペオ氏が語った対中政策の概要

はじめに、ポンペオ国務長官の演説でどのようなことが語られたのかをご紹介します。

今回、ポンペオ国務長官が演説した内容は大きく分けて、中国の共産主義批判、同盟国による対中包囲網の構築、そしてスパイ活動に関する3つです。

ポンペオ国務長官は、デンマーク訪問から間を置くことなく、カリフォルニア州のヨーバリンダにあるリチャード・ニクソン大統領図書館・博物館に立ち寄り演説を実施しました。

今回の演説では、内容の他にも場所とゲストに注目が集まりました。演説場所として選ばれたリチャード・ニクソン大統領図書館・博物館は、名称の通りニクソン大統領に縁がある場所です。ニクソン大統領は、米中国交樹立に貢献した大統領で、両国の関係を強く意識した場所と言えます。

また、演説には1989年に起きた天安門事件で民主化運動の学生リーダーを務めた人物を招待しており、暗に中国に対して批判的な立場をアピールするこだわりようでした。


このような演説舞台で以下のようなことが語られています。

ポンペオ氏、共産主義の批判

ポンペオ氏は、演説を通して中国政府そして習近平国家主席を名指しで批判しました。

共産主義の批判では概ね「自由主義の国が中国を変えなければ、中国が私たちを変えることになる」と、強い警戒感を示す内容になりました。

また「習近平国家主席は全体主義のイデオロギー信奉者」と断定したうえで「共産主義による覇権への野望を持っている」と痛烈な批判をしています。トランプ大統領ですら名指しによる批判は控えているなか、ポンペオ氏の発言は衝撃的だったと言えるでしょう。

一方で、ニクソン大統領による米中国交の取り組み「関与政策」は失敗に終わったとしました。1970年初頭、ニクソン政権の対中政策では「中国は発展することで民主主義に向かう」という方針でしたが「ニクソン大統領が望むような変化を中国はもたらさなかった」と断定しています。

ニクソン政権以降、中国に対する経済支援を継続してきたアメリカが、自ら失敗と断定することで、共産主義の中国政府に「見切りをつける」かたちになりました。

また、かつてアメリカと冷戦状態に陥ったソ連を頻繁に引き合いに出し「中国共産党はソ連と同じ過ちを繰り返している」と非難したうえで、ソ連との冷戦に勝利したアメリカの方が優位にあることを暗に示しています。

昨今の米中関係は「新冷戦」とも例えられていることから、アメリカはソ連と中国を同じような扱いにしていると見られます。

同盟国による対中包囲網の構築

ポンペオ氏は演説の中で「自由主義諸国が行動するときだ」と述べたうえで、国際社会が協力して中国包囲網を築く必要があることを訴えました。

まずは、アメリカ以外の自由主義国家が、これまでのアメリカと同じように、中国政府に対して「互恵主義、透明性、説明義務」を求めるように促しています。

そして、中国が南シナ海で東南アジア諸国と権益を巡って対立している問題にも触れ、アメリカが東南アジア諸国を支持する決断をしたことを例に取り「自由主義諸国は同じ原則に基づいて方針を打ち出さなければいけない」と、諸外国に対してアメリカに同調するよう求めました。

対中包囲網の具体的な国や地域は、ヨーロッパ、アフリカ、南米、そしてインド太平洋地域の民主主義国家としています。

また、国連や北大西洋条約機構(NATO)、G7、G20など国際的な枠組みも挙げており、経済・外交・軍事力を持ってすれば中国の脅威に対処できると主張しました。

演説の途中では「現時点で我々と一緒に立ち上がる勇気がない国もある」と、名指しこそ避けたものの、中国と経済的な結びつきが強いイタリアやドイツを牽制し、強硬な一面も見せました。

1967年にニクソン大統領が残した「中国が変わらなければ、世界は安全にはならない」という言葉を引用し、中国の危険性を強調したうえで「中国共産党から世界の自由を守ることは私たちの使命だ」と主張を正当化しました。


「中国人によるスパイ活動疑惑」について

演説のなかでは、直近で問題になっている中国人によるスパイ活動にも触れています。

「中国政府の行動は私たちの国民と繁栄を脅かしている」と「中国人学生や中国人労働者の全員が普通ではないことを知っている」など、アメリカに滞在中の中国人がスパイ活動に関係していることを指摘しました。

これらの人物が中国共産党や、その代理のために知識を使って働いていると述べ、スパイ活動に対する取り締まりや犯罪を罰していると強調しています。

演説の2日前にテキサス州ヒューストンにある中国総領事館を閉鎖したことに触れ「同施設はスパイ活動と知的財産窃盗の拠点だった」と断定しました。

そして「このような中国を他の国同様に普通の国として扱うことはできない」とし、中国を問題視していることを明確にしました。

ポンペオ氏の狙いとは?

演説から見えるポンペオ氏の狙いはいったいどのようなことなのでしょうか?

中国の体制転換

今回、ポンペオ氏が実施した演説は非常に「手の込んだ」ものであり、これまで以上に中国へ圧力をかけるかたちになりました。ここまでするにはアメリカが「中国の体制転換」を狙っていると見られています。

2012年から始まった習近平政権で、中国の経済は急激な成長を遂げてきました。事実、2020年の世界GDPランキングでは、アメリカに次いで2位で、毎年着実にアメリカとの差を縮めてきています。(IMF公開データベース)

また、中国の国防費を見るとアメリカと同程度の割合にまで膨らんでおり、経済と軍事力の両面でアメリカに迫りつつあります。

アメリカとしては、このまま中国を無視していては世界一の称号を失う可能性もあり、世界に対する影響力低下が現実的になってしまいます。ましてや、新型コロナウイルスによってアメリカ経済が減速したことで、アメリカは焦りを隠せないでいます。

一方で、習近平政権は、現代版のシルクロード経済圏構想「一帯一路戦略(Belt and Road または One Belt One Road Initiative)」や、ハイテク産業や製造業の発展を目指す国家プロジェクト「中国製造2025(Made in China 2025)」などを遂行しており、経済成長の勢いは止まりません。

このような様相からアメリカ政府としては、中国の共産主義を理由に出来るだけ早く中国の成長を緩めたい狙いがあるとされています。

中国では憲法改正によって国家主席の任期が撤廃され、習近平政権が長期化する可能性があることから、アメリカが恐れる事態は極めて現実的なのです。

アメリカにとって最悪の事態を防ぐためには、習近平政権の転換が有効と見られていますが、ポンペオ氏はこの狙いの存在を否定しています。否定しなければ、アメリカが他国の政策に介入していることになるため、当然の回答と言えるでしょう。

ポンペオ氏、「反中路線」をより明確化

ポンペオ氏はこの演説に先立つ6月17日にハワイで中国外交担当トップの楊潔篪氏と直接会談を実施しています。

両国外交における実質的なトップ会談となったことから注目を集めましたが、ポンペオ氏は「口先ばかりで具体的な提案はなく、相変わらずの内容だった」と批判したうえで「楊氏の約束は空っぽだった」と切り捨てています。

この会談で両国の関係に進展が見られなかったことから、ポンペオ氏の対中政策が一層強硬路線に傾いたと考えられており、今回の非常に厳しい演説内容に繋がったと見られます。

ポンペオ氏はトランプ大統領に代わるかたちで中国批判の先頭に立っており、この他にもトランプ政権の主要人物が矢継ぎ早に中国政府批判を繰り返しています。

具体的には、香港を巡る国家安全法制で中国を批判したオブライエン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)や、中国のスパイ疑惑の実情を明らかにしたFBIのレイ長官、事業展開において中国政府と連携しているアメリカ企業を批判したバー司法長官などがいます。


トランプ政権は総意として反中路線を決め込み、外交のトップであるポンペオ氏がその象徴的な役割を買っているのです。

まとめ

以上、「もう一人のトランプ「ポンペオ国務長官」の発言に見る米中問題」でした。

ポンペオ氏は演説のなかで再三にわたって「過去の過ちを繰り返してはいけない」と、中国共産主義や全体主義を批判しました。

一方で、他国に対する政治介入という点においては、アメリカも同じ過ちを繰り返そうとしていると捉えることも出来ることから、アメリカ国内には慎重論もあります。

トランプ大統領そしてポンペオ国務長官という反中強硬派のふたりによって「新冷戦」がより現実的になる可能性があります。米中関係においてはポンペオ氏の言動に注視しましょう。

*捕捉:マイク・ポンペオ氏の名前は、英語ではMichael Richard “Mike” Pompeoとなり、メディアによっては「ポンペイオ」と表記される場合もあります。

参考資料サイト

IMF公開データベース
https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20200113-00157513/

本記事は、2020年7月28日時点調査または公開された情報です。
記事内容の実施は、ご自身の責任のもと、安全性・有用性を考慮の上、ご利用ください。

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この記事を書いた人

公務員総研の編集部です。公務員の方、公務員を目指す方、公務員を応援する方のチカラになれるよう活動してまいります。

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