武力行使の「新三要件」とは。「集団的自衛権」を使う前提条件のこと
武力行使の「新三要件」とは、いわゆる「集団的自衛権」を使う場合の前提条件のことを意味しています。
「新三要件」の内容は次の通りです。
- わが国に対する武力攻撃が発生したこと、またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
- これ(武力攻撃)を排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
- 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
▼参考URL:防衛省・自衛隊|憲法と自衛権(外部サイト)
「集団的自衛権」とは?
「集団的自衛権」とは自分の国と密接な関係にある国が攻撃された場合に、自分の国が直接攻撃されていなくてもその国を助けて反撃できる権利のことです。
「集団的自衛権」は「個別的自衛権」とともに、国際連合憲章(国連憲章)の51条で認められている権利です。
「個別的自衛権」は、自国が攻撃を受けた場合に反撃できる権利のことです。
▼参考URL:学研キッズネット|辞典:しゅうだんてきじえいけん【集団的自衛権】(外部サイト)
「新三要件」は、自衛隊が他国で戦争参加することを可能にしました
2014年7月の閣議決定(安倍晋三内閣)で、政府は「集団的自衛権」を使うことを「憲法第9条の下で許容される自衛の措置」と位置づけました。
それまでの戦後の日本の歴代内閣は、「必要最小限度の実力の行使であって、日本国憲法第9条に反しない」との憲法解釈から、「個別的自衛権」については認めてきました。
しかし、「集団的自衛権」については、国連憲章第51条で認められており、日本も国として権利を持ってはいるものの、「必要最小限度を超えており、憲法9条との関係上行使できない」として、認めてきませんでした。
2014年7月閣議決定を受け、2015年9月には「集団的自衛権」の行使を可能にする「安全保障関連法」が成立。戦後初めて、「集団的自衛権」の行使が法律で認められることになったという経緯があります。
「新三要件」のポイント
2015年に成立した「安全保障関連法」の前提となった武力行使の「新三要件」では、まず「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合」というように、他国での戦争参加を明記しています。
さらに、憲法前文の「国民の平和的生存権」や13条の「生命、自由及び幸福追求権」に触れ、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」には、「必要最小限度」の武力行使ができるとしたこともポイントとなっています。
この「必要最小限度」の武力行使について、従来は他国での戦争参加も含まなかったところを、明確に含むようになりました。
▼参考URL
》内閣府|平和安全法制について(外部サイト)
》朝日新聞トピックス|武力行使の新3要件(外部サイト)
【内閣官房】安全保障制度についての一問一答
「集団的自衛権」を認める歴史的な憲法解釈をともなう「安全保障関連法」の制定について、当時議論になったあらゆる質問について、内閣官房が一問一答形式で回答を掲載しています。
憲法の解釈によって、どのように「集団的自衛権」、武力行使の新三要件が認められることになったのかについて、知ることができます。
▼参考URL:内閣官房|「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の一問一答(外部サイト)
まとめ
このページでは、今再び注目されている、日本の武力行使の「新三要件」について解説しました。
日本は「集団的自衛権」が認められた2015年成立の「安全保障関連法」以前は、自衛隊を他国の戦争参加のために出動させることはできませんでしたが、「新三要件」では可能となっています。
緊迫するウクライナ情勢に関連して、日本の自国の船も攻撃の対象となった今、他国での武力行使に踏み切る事態になるのか、注目が集まっています。
参考資料サイト
》防衛省
》外務省
》内閣官房|「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の一問一答
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